The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

『湖畔荘』ケイト・モートン著

2018-11-08 | ブックレヴュー&情報
『湖畔荘』 “The Lake House” 上&下

2017/8/31 東京創元社刊
ケイト・モートン(著)、青木 純子(翻訳)

内容紹介
ロンドン警視庁の女性刑事が問題を起こして謹慎処分となった。女児を置き去りにして母親が失
踪したネグレクト事件を担当していて上層部の判断に納得がいかず、新聞社にリークするという
荒技に走ったのだった。ロンドンを離れ、コーンウォールの祖父の家で謹慎の日々を過ごすうち
に、打ち捨てられた屋敷・湖畔荘を偶然発見、そして70年前にそこで赤ん坊が消える事件があり
その生死も不明のまま迷宮入りになっていることを知る。興味を抱いた刑事は謎に満ちたこの事
件を調べ始めた。70年前のミッドサマー・パーティの夜、そこで何があったのか?仕事上の失敗と
自分自身の抱える問題と70年前の事件が交錯し、謎は深まる!
内容(「BOOK」データベースより)

数か月前、『忘れられた花園』が面白いと勧められていて、一応読むべきリストに入れてあった
のですが、その前に偶然同じ作家の作品とは気付かず手に取った作品です。
なので、初読みの作家さんの作品です。

訳者あとがきにもあります様に、ケイト・モートンはゴシックロマンス風ミステリー作家として
世界中に熱狂的なファンを持つオーストラリアの若手実力派と言われています。

今回初めて読んで、独特の作風を感じましたした。

ストーリーはかなり入り組んでいて、大きく3つの年代に別れています。
1.-1910年代ロンドン 
2.-1930年代コーンウォール
3.-2003年ロンドン

先ず、1933年コーンウォールにあるエヴァダイン家の屋敷「湖畔荘」(ローアンネス)で開かれた
ミッドサマー・パーティーの夜一歳の誕生日を目前にした末の息子セオドアが姿を消した事から
始まります。 警察の捜査にも拘わらず身代金の要求も無く、行方が全く分からなくなって未解決
事件となっています。

70年後の2003年、ロンドン警視庁の女性刑事セイディ・スパロウは事件で問題を起し謹慎処分を受
け 育ての親である祖父バーティーが暮らすコーンウォールの家に身を寄せていた。
ある日犬を連れ周囲をジョギング中のセイディが偶然見つけた廃屋、全ての家具等が放置されたまま
の家に興味を持ったセイディがこの屋敷で過去に起きた事を調べ始める。
そして、エヴァダイン家の次女、事件当時16歳であったアリス・エヴァダインが今は超売れっ子の推
理作家(86歳)である事を知り アリスに接触し謎を解こうと行動し始める。
アリス、長女のデボラ姉妹もそれぞれに事件に関する秘密を心に抱え70年過ごしてきた。

戦争で心を病んてしまった父親、母親エリナの苦悩、家族それぞれが抱える秘密と悩み等を織り込み
ながら時代を行き来しながら物語りが進みます。
時代が行きつ戻りつしながら、又同時に登場人物が入れ替わり、それぞれの視点、立場で描かれる場
面転換で、同じ場面に居ながら、それぞれの立場からの視点で異なる現実が次第に見えてきますが、
アチコチに散りばめられたピースが多く次々に予想が覆されます。

男児失踪事件の謎解きと共に、かつて湖畔荘に住んでいた家族の秘密が徐々に明らかになり、それぞ
れの人々が抱える秘密、罪悪感等が入り混じり、又同時にセイディ自身が過去に犯した罪と苦しみ等
が並行して描かれていきます。

そして、最後に至って思いもよらかなった「えッ?そうだったの?」という驚き。

本格推理小説でもあり、又同時にそれぞれの登場人物の心情を細かく表した人間ドラマとしても素晴
らしく良く書かれている作品だと感じました。

結末は心安らぐ心地よさで後味の良い作品でした。