The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』

2019-08-01 | 映画
”Young Sherlock Holmes”

1985年公開 パラマウント映画



大昔に観た様な記憶があるものの、内容は全く覚えていないこの作品ですが、以前からもう一度
観たいと思いつつなかなか機会がありませんでした。
そんな折Huluを検索していた所 配信されていたのを偶然見つけ 飛びつきました。(数か月前
の事なので、今配信されているかは不明です)

スティーブン・スピルバーグ製作総指揮による34年前の作品です。

キャスト :
監督 : バリー・レヴィンソン
脚本 : クリス・コロンバス
製作 : マーク・ジョンソン
製作総指揮 : スティーヴン・スピルバーグ、フランク・マーシャル、キャスリーン・ケネディー

出演:
シャーロック・ホームズ :ニコラス・ロウ
ジョン・H・ワトソン : アラン・コックス
エリザベス・ハーディー : ソフィー・ワード
レイス教授 : アンソニー・ヒギンズ
レストレード : ロジャー・アシュトン=グリフィス


正典には描かれていなかった10代のホームズを描いたこの作品のオリジナルストーリーを執筆した
のは後に『ホーム・アローン』、『ハリー・ポッターと賢者の石』、『ハリー・ポッターと秘密
の部屋』等を手掛けたクリス・コロンバス。
大胆なアレンジをしつつ、正典のイメージを損なうことなく、レスペクトを感じる心配りが行き
届いた作品であると感じます。

この作品は、1870年という時代設定ですが、これはシャーロック・ホームズの誕生年(1854年生
まれ)から、16歳を想定して創り出されている。
そしてホームズ役には当時新人であったニコラス・ロウを抜擢したのですが、これは正典に表さ
れている「痩せて背が高い」、「ワシ鼻」、というホームズの外見的特徴を重視した上での選択で
あったとの事。

正典通り、後年のワトソンが思い出を語るという形式をとっています。
冒頭雪の降る中 田舎の学校からロンドンのパブリックスクールに転校してきた少年ワトソンが同
室のホームズから突然素性を推理される事から始まります。





ところで、このワトソン役のアラン・コックスがね、もう某お笑い女性にそっくりで・・・(笑)
同時に、この学校の雰囲気、服装、ディナーの雰囲気等が『ハリー・ポッター』にそっくり!と思っ
たら、それもそのはず、脚本は後にハリーポッターの監督を務めるクリス・コロンバス。 『ハリー・
ポッター』に似ている、ではなく、『ハリー・ポッター』がこの作品のオマージュなんだろうなぁと
感じさせられます。『ハリー・ポッター』の原型とも言える訳ですね。



又この作品はCGが全盛となる前のILM(インダストリアル・ライト&マジック)でフル・デジタル
技術でキャラクターを創造した画期的な映像で、ステンドグラスの騎士が動き出すシーン等で 映
画にデジタル・メイキングの礎となったと言われています。





邪教集団ラメ・タップの陰謀を絡め、正典『マスグレーブ家の儀式書』を引用する部分もあり原作
を引用し巧みに活かした脚本作りがされています。
当然ながら、ホームズ語録で良く知られた ”The Game is Afoot” も活かされています。

そして、ホームズとエリザベスの淡い恋を描きながら、後年女性に懐疑的だとか女性嫌い等と言
われているホームズの性格も 女性不信ではなく、実はこのエリザベスとの悲しい別れに原因が
あるのではないかと思わされるロマンティックな描き方もしています。



又、ホームズ愛用のインバネス、鹿討帽、パイプ等の由来もちゃんと盛り込まれていますね。



最後に忘れてはならない点が、マーベル作品等でもお馴染みになった「ポスト・クレジット・シー
ン」と言う、いわゆるエンドロール後のサプライズ演出のスタイルを定着させた作品でもあります。
エンド・クレジット後、ホームズとの対決で敗れ死亡したと思われたレイス教授が現れ、ホテルの
受付で名前を記帳する。
”モリアーティー”と・・・・。 お~ッ!という衝撃を与える演出になっています。

パスティーシュ物の先駆けともなったこの作品は、全体を通して、正典、シャーロッキアンに十分
気を使い、細やかな演出と当時最新の技術等を駆使した作品になっていると感じます。

個人的にはかなり気に入った作品でした。

追加情報として、

この作品で、ホームズを演じたニコラス・ロウは、2015年初公開となったサー・イアン・マッケ
ランが老ホームズを演じた”Mr.Holmes” 「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」で、作中映画で
ホームズを演じていました。概略感想はこちらに書きました。


↑ 映画を見ているホームズです。
最初観た時は、何処かで見た事ある人だけど、誰だっけな~?と感じたのですが、再度観なおした
時時気付きました。何となく嬉しかったですね。
(このシーン、ホームズが自分の映画を見て何となく困った表情をしているのが面白いのです)


古い作品ですが、DVDは出ています。