田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

文子恋に死す  麻屋与志夫

2010-04-24 11:28:17 | Weblog
part14 文子恋に死す 栃木芙蓉高校文芸部(小説)


68

文子の口から紡ぎだされることば。
呪文のようであった。

文子にしかできないこと。
文子だけが出来ること。
それはどういうことなのたろう。
 
低いが咆哮のようなうめき。
見るに堪えない苦しみ。
……にもだえる翔太を玉藻がみつめている。
玉藻がうけたかみ傷はもう肉があがり治りかけている。

「翔太はどうすれば助けられるの。
教えて」
すがるように文子にといかける。

「輸血。
それしかない。
それもわたしの血を輸血するしか。
翔太さんを助ける道はない」

血液型が合うとか合わない、
ということは、
文子の血にはもんだいはないのだろう。
だれにでも、
フィットするのだろ。
文子の命の秘密は、
すべてその血にあるのだろう。

「それをすると、
わたしは、
ひとの血を輸血してもらわなければならなくなる。
そして、
すべての能力をうしなう。
わたしは、ひとになる。
平凡な女になる。
普通の女になる。
翔太さんはひとにはもどれない。
だから玉藻さんと長く、
生きていける」

玉藻と龍之介はその内容の壮絶さに気づき絶句する。


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