田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

木造家屋解体機が思い出を破壊している。 麻屋与志夫

2018-03-08 10:14:50 | ブログ
3月8日 Thu.

●朝。重機の唸り声で目覚めた。二階の書斎兼寝室の北側の窓からのぞくと、裏の空き地の先の長屋の解体工事がはじまっていた。木造家屋解体機がもう動きだしていた。昔とは違い手作業ではない。屋根を外し、柱を一本一本抜いて、再利用できるものはする。そうした配慮のある壊しかたではない。

●重機の巨大なハサミで引きぬいたり、ネジ切ったり、叩きつけて破壊する。木片の断片がすでに、うず高く積まれていた。まことに効率的な仕事ぶりだ。

●ひだりから三軒目が福田さんという建具屋さんだった。ここに立川市曙町から戦時中同級生の新井隆君が縁故疎開してきた。六年生の時だ。いまから72年? 前になる。

●隆くんから「大菩薩峠」を借りて読んだ。すぐ裏だったので、毎日遊んだ。隆君の本は全部読ませてもらった。終戦で直に東京にもどってしまった。それから6年もたってから訪ねて来てくれた。「ぼくは立教大学を受験すらからおいでよ。またふたりで一緒に勉強できるよ」と誘われたときはうれしかった。

●わたしの妻も疎開児童だった。都会育ちなのでブヨに刺されて肌が赤くはれ、膿み、ひどかった……とよく話している。そういえば、隆くんの二人いた妹さん達も足に包帯を巻いていたのが痛々しかった。

●わたしたちの世代ではまだ戦争の記憶は終わっていない。思いでの家屋は解体されても、わたしたちの悲しい記憶は残っている。

●家屋の解体が進み、その陰になっていた宝蔵時がよく見えるようになった。集団疎開で牛込区の津久戸国民学校の生徒が疎開してきていた。夕暮れ時になるとぼんやりと南の東京の空を見上げていた。みんな元気なのだろうか。

    

    

    

    


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