田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

友だちの墓守の歌える 麻屋与志夫

2023-07-22 18:46:00 | 
23 友だちの墓守の歌える

ぼくのまわりにいた友だちはみんなあの世に移住してしまったから
大谷石の塀の上に頭をピコピコ出して訪れ 門扉を開け 
いたかぁ と声をはりあげるものはいなくなった 寂びしいよ

国会議員になった詩人は苦労がおおかったのだろうな
こころざし半ば七十歳であの世に旅立った 
詩人になると最期までいっていたので 作品は読ませてもらっていた
最後までわけのわからない詩を書いて 政治と詩で二刀流を貫き通した なにかと苦労がおおかったのだろう かわいそうにやりたいことはもっとあったろうそれを遂げられず 他界した

出版社の社長になった友だちは営利経済原理の世界では大成功を
収めて軽井沢に別荘を買ったそうだが 地政学的負の世界でいまだに
売れない原稿を書いている昔の友だちのことなんかすっかり
わすれてしまっている お盆に帰省しても電話一本かけてよこさない

眼鏡をかけた大学教授は友情論を書いてベストセーラになった

画家になった友だちは絵画は深層心理の吐露であると一席ぶっていた

一番弱くて二十歳まで生きられないだろうといわれていたぼくは
卒寿になってもまだ面白くもない小説をあいかわらず書いている

ぼくは友だちの墓守をしてこんな嘆きの言の葉を紡ぐだけの
老いぼれとなってしまった だれも開けはなしているのに訪れるひとのいない
門扉を眺めている老人になってしまった 寂しいよ 悲しいよ


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