田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

雪の上のけもの道 麻屋与志夫

2014-02-16 09:45:33 | ブログ
2月16日 日曜日

●雪の上に足跡が残っている。

けもの道ということばがふと頭に浮かんだ。

もちろん、街の住宅地だ。

けものがでるわけがない。

もっとも、絶対にでない。

とはいいきれない。

数年前、クマが出て大騒ぎになったことがある。

街の中心から数キロ離れると、鹿やウサギ、猿がでるのはさほど珍しいことではない。

●足跡は雪が解けかけているので、握りこぶしくらいになっている。

塀の外からつづいている。

塀の下部は風通しがいいように大きく空いているので、裏の空き地が見える。

点々とつづいている足跡は外猫のものだ。

●わが家では黒猫のブラッキと生活を共にしている。

可哀そうな野良猫を家にいれてもいいのだが、ブラッキが怯える。

外の厳しい生活を知らない飼い猫だ。

他の猫と接触するのがこわいのだろう。

●「外猫ちゃんが、きたらしい」

「子猫かしら。シルバーがじぶんとそっくりの子猫を産んだのよ」

「おれは、まだみていない」

「だいぶおおきくなって、もう母子の区別がつかないの――」

●足跡は、いつもカミサンが餌皿をおいておくあたりまでつづいていた。

●この寒さ、雪の中を餌をもとめてきたのだろう。


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超短編 48 漫画家になりたい   麻屋与志夫

2014-02-15 15:41:50 | 超短編小説
          漫画家になりたい  

1 絵の中の雪
仙台に着いた。
雪はさらにふぶいていた。
新幹線「やまびこ」は20分ほど遅れてプラットホームにすべりこんだ。
母、危篤の連絡をうけての帰省だった。
わたしは寒がりで、この雪を嫌い東京に嫁いだ。
構内を出る。
街はすっかり暮れていた。
震災の影響は駅前の風景をみただけでは何も残ってはいなかった。
空気は切りきりと澄みわたっている。
空からはいく億という雪がまいおちていた。
ルーフに雪を積もらせたタクシーがならんでいる。
そちらにいこうとした。
駅前で少女が手を振っている。
姪の亜莉沙だった。
わたしに似ている。
みまちがうわけがない。
小柄なので、幼く見えるが運転免許を取れる年になっていたのだ。           
「さすように冷たいわね。わたしはこの寒風をわすれていたわ」
「つい先ほど、おばあちゃんは息を引き取りました。すみません携帯しようとしたのに、父に止められたので」
兄らしいとおもった。
死んでしまったものは、もうどうにもならない。
あわてることはないのだ。そう、達観しているのだろう。
わたしが母の反対をおしきって……。東京で同人雑誌をやっている男と結婚したときもそうだった。
どうせ、ものにはならないよ。
それより年金のつく官吏がいいよ。
という母を説得してくれたのは兄だった。
わたしが嫌ったのは、寒さだけではなかったのだ。
両親の古い考えもいやだった。
わたしは理屈っぽい文学少女だったのだろう。

2 漫画家が希望
結婚は許されなかった。
スーツケースひとつで上京した。
だから、家出同然の身だった。悲しかった。
母にはあれいらい会っていなかった。
震災でも見舞にかけつけることはしなかった。
仙台に帰省したのも30数年年ぶりだ。
親の死に目に会えないなんて。
許されないまま、母に逝かれてしまった。
フロントにふきつける雪をワイパーが音を立ててぬぐっている。
粉雪だった。
このふりかただと、明日の朝までにはかなり積もるだろう。
家に向かう、見慣れていたはずの道はかわってしまっていた。
商店街も迫りくる薄闇のなかで人影もたえていた。
わたしはずっと黙ったままでいた。
すっかり忘れていた故郷の雪。
感動はなかった。
母の死を聞いた悲しみに、すっかり動揺していた。
元気なうちに、いちどあっておくべきだった。
心配をかけたことを詫びておきたかった。
いじをはりすぎた。

「あたし、美智子おばさん、漫画家になりたい。代々木の「アニメ学院」にはいりたいの。
大森の家に下宿させてくれますか。それなら父は許してくれるとおもいます」
沈黙をやぶったのは亜莉沙だった。
父は、ということは兄は許すが、義理の姉の友子は反対なのだろう。
むりもない。
わたしの夫もついに同人誌の作家からぬけだすことができなかった。
友達が、文学賞をとってはなばなしく世にでていくのを僻み。
かなり無理な努力を長年続けた。
昼は勤め。夜は創作に打ち込み。過労の日々。
それがたたった。
定年とともに人生にも別れをつげてしまった。

3 プロになれなかったら?
いまなら、わかる。
いまなら、母がわたしの結婚に反対した気持ちがわかる。
親というものは、子どもに無難な道を歩ませたがる。
波乱のない、安定した人生を過ごしてもらいたいと願う。
小説家とか漫画家になろうとすることは――。
この世でいちばんつらい人生を送ることになる。
いまは、マスコミでハヤシタテルから。
ごく一部の、成功したものたちが。幸運なひとたちが。
華やかにみえる。
でも、そのかげで、どれだけの若者が苦渋をのんで泣いていることか。
羽化することもなく。
消えていくことか。
わたしは、なんどか、死をかんがえたことがあった。
それに耐えられたのは、夫を愛していたからだろう。
子供には恵まれなかった。
いまは独り暮らしだ。
風が強くなった。
雪はよこなぐりに、窓をたたきだした。
雪がこんな音を立ててふきつけることなどすっかり忘れていた。
暗い洞窟のような道。
車はのろのろ運転で、進んでいた。
夜の底は雪明りでそこはかとなく明るかった。
空には暗雲が立ちこめていた。
暗かった。
ヘッドライトに照らしだされた雪はあくまでも白かった。
闇と雪の白が渦を巻いて前方から迫ってくる。
姪の隣の席から年寄りじみた声が答えていた。
「プロとして成功できなかったらどうするの。結婚する? 女はやはりフツウの人と結婚して。子育てをするのがいちばん幸せなのよ」
しわがれた声。
ああこれは母の声だ。
あのときの、母の考え方と同じだ。
夫との長年の苦労で……
いつの間にか世俗の垢にまみれてしまっている。

4 雪はいつも白い
人は一生夢をみつづけることはできない。
悲しいことだが、いつか破綻がやってくる。
夢をみつづけて死んでいった夫が恨めしかった。
雪はいつでも白い。
美しい結晶。
白の幻想をひとにあたえてくれる。
だが、人は老いる。
美しく思われたものが、いつまでも美しく魅惑的であるとはかぎらない。
命もつきるときがある。
どんなに愛していても意見がわかれる。
長い間には、幻滅もおそってくる。
とくに、逆境にある夫との生活では、そうしたことが間々あつた。
「美智子おばさんのことは、父からもおばあちゃんからも聞いていました。意外なご返事です」
わたしが、消極的な反対意見をのべたことが、ショックだったらしい。
わたしなら、亜莉沙の望みに賛成してくれる。
そう思っていたのだろう。
「つらいこともあるのわよ」
返事はない。
雪はさらにひどくなった。
「いますこしですから」
亜莉沙がしばらくしてからつぶやいた。
「おばさんなら、わかってもらえると思っていました。お会いできるのが、たのしみでした」

5 旅立ちの詩
「はいつきました」
運転手がドアをあけてくれた。
わたしはうとうとしていたらしい。
亜莉沙はどこにもいない。
夢でもみていたのだろうか。
だが車は懐かしい青葉区滝道の実家についていた。
玄関に家族のものがそろっていた。
「お母さんだめだったの」
「どうしてそれを……」
兄がけげんな顔をした。
さっさと、外に出ようとしている。
すっかり老いた義姉の友子の顔も青い。
何かおかしな雰囲気だ。
ふたりとも、せっぱつまった顔をしている。
亜莉沙の弟もいる。
妹もいる。
「亜莉沙が……美智子さんを向かいにいく途中で、スリップ事故で……」            
友子が咳き込んでいる。
病院に駆けつけるところだという。
不吉な予感。
今までわたしと話をしていた亜莉沙は、ゴーストだったのか。
わたしは、兄の運転するワンボックスカーにあわただしく乗りこんだ。
「あの子は、漫画家になりたいなんていいだしたの」
幕張メッセのコミック・マーケット。
自費で出した本をもって亜莉沙はなんども幕張まででかけていった。
と、友子がつぶやく。
「大森によってくれればよかったのに」
「あなた、大丈夫よね。亜莉沙は死なないわよね」
「ごめんなさい。そんなに重態だったの」
「昏睡状態らしい」
ああこれはだめだ。
最悪だ。
あの子は、わたしにお別れに来たのだ。
果たせなかった夢を。
わたしにだけは伝えておきたかったのだ。
座席に、亜莉沙のコミックブックがあった。
「旅たちの詩」と表紙の題字はよめた。
若い女の子が滝道の家から。
雪の雑木林を背景に出かけていく絵だった。
顔は私の娘時代に似ている。
家族の伝説となっているわたしの家出。
亜里沙は、自分の願いをわたしの無謀な家出に重ねた。
娘は真紅のロングマフラーで髪をおおつていた。
前方をきっと見つめるおおきな目が美しかった。
雪は金箔で表現れていた。
黄金色に輝く夢。
絵の中の雪。
解けることのない雪。
わたしは才能を感じた。
ストリーは東北の寒村に生まれた娘が、
小説家を志し太宰治の文庫本を片手に、
旅立っていくというものだった。

6 夢に生きる
病院の車寄せの庇には、雪があふれていた。
雪は常夜灯の光を反射してきらめいていた。
いまにもちいさな雪崩となっておちてきそうだった。
わたしたちは、無言で集中治療室にいそいだ。
「いま、気づきましたよ」
ああ、よかった。助かる。亜里沙は助かる。
担当の医師が寄ってきた。
脳震盪をおこしていたのだという。
怪我も左肩を強くうっただけ。
脳に異常はない。
少しなら話していいと許可が出た。

「美智子おばさん。わたし、わたし迎えにいけなくてごめんなさい」
「いいのよ。わかっているわ」
「おどかすなよ。ふたつ葬式を出さなくてはならないのかと……」
あとは言葉にならなかった。兄もすっかり老いていた。
涙もろくなっていた。
亜莉沙。
あなたの願いは、もうわかっていますよ。
世に認めてもらいたかった夫の夢を。
あなたと一緒に果たしたいわ。
小説家と漫画家のちがいがあっても。
願いは同じことよ。
漫画家になること賛成。
わたしも漫画の原案でも書こうかしら。
創作意欲が湧いた。
夫の原稿の清書に明け暮れた。
自分の作品を書きたい。
それができないできた。
わたしはねばり強く、これからは小説を書いていこう。
それがわたしを許してくれていた母への供養に成る。
夫も喜んでくれるだろう。
わたしも泣いていた。
ここちよい涙がほほをこぼれおちていた。
太宰の文庫本を手に家を出た情熱がよみがえった。
二人で、デビューをはたしたいわ。

7 それぞれの涙
「兄さん、友子さん、亜莉沙を養女にいただけないかしら」
「お母さんは、美智子はどうした。美智子に会いたいと、さいごまでいっていたぞ」
兄が涙声で言う。
母はわたしを心の中では、許していたのだ。それはわかっていた。世間的な母の願いが理解できていた。
死に水もとれないで、わたしは悪い娘だった。
親不孝者だった。
わたしのほほを大粒の涙がこぼれおちていた。
お母さんあなたの大切な孫をわたしにあずけてください。
立派に大成させてみせます。
それが母への償いのように思えた。
亜莉沙も泣きだしていた。
友子も、すっかりものわかりのいい母親の顔になっている。
涙が目じりににじんでいた。
みんなの涙に、わたしは、亜莉沙を養女にすることへの暗黙の同意をみた。
さらに涙がはらはらとこぼれおちた。
窓の外は雪がふりしきっていた。          
  完


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気候も人間も異常過ぎる。  麻屋与志夫

2014-02-15 09:25:17 | ブログ
2月15日 土曜日

●積雪40センチ。
いや、場所によっては、もっと積もっているかもしれない。

●この歳まで生きているが、このような大雪は初めての経験だ。
各地とも同じようなことらしい。

●気候がおかしくなっている。
いままででは考えられないようなことが起きる。
起こっている。

●暖房のきいた部屋から雪をみているぶんにはたのしい。
雑然とした色彩の街が白一色に変わっている。
美しい。
でも、この白い雪の下にいつもの街が埋もれているのだ。

●風が強い。
雪が横にながれている。
寒風吹き荒ぶ。
……そんな感じだ。
遠くで救急車の警笛が聞こえている。

●新聞やテレビを見ていると、刃モノによる殺傷事件がおおい。
それも身近な大切なものにたしてナイフを向ける。
刺し殺す。
などという凄惨な事件がおお過ぎる。
男が元カノを金銭のトラブルで刺殺。
未婚の60代の男が80過ぎている母親を刺殺。
陰惨な事件だ。

●社会が、人間がおかしくなっている。

●こうした社会現象も、このところの天候とおなじだ。
いままでの経験則では推し量ることはできない。

●ともあれ昭和一ケタうまれのGGには刺激が強すぎる。
そうかといって、この異常な出来事を作家であるからには、黙視するには忍びない。

●やはりこれは現実の社会現象と取り組むためにも警察小説。
もしくは、推理物でも書くことにしなければだめだ。

●怪奇伝記小説。
ライトノーベル。
ファンタジーを書いてきたわたしに、このsevereな現実をとらえることができるのだろうか。
文体からhardなものにしなければならないだろうから、精進、精進。

●現実と格闘するにはあまりにも無力とおもえる文体なので心配だ。

●すこしずつ、あせらず変貌していかなければならないだろう。

    
   日本さくら草 春はそこまできています
   


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新しい分野の小説を書きたい。麻屋与志夫

2014-02-14 17:42:28 | ブログ
2月14日 金曜日

●雪が降り積もり、視界が白い世界に変わっていくのを見ているのはおもしろい。

庭木が白くなるといままでとは、まったく別の――異次元にいるような気がしてくる。

このいままでとは違った感覚、ものの見方は、なにか外からの刺激がないとなかなかできないものだ。

●このところ自分の書く小説について省みた。

●惑惑星文庫に送った『怪談書きませんか/栃木芙蓉高校文芸部』来週には載ることにきまった。

ほっとした。

すごくうれしい。

●あいかわらず、吸血鬼のからむお話です。

省みた。

というのはこうして、吸血鬼のでる物語ばかりでは飽きられるのではないか。

シュールな話しなので、話にリアリティがなくなっている。

●そこで、まえまえから考えているのだが、恋愛小説、警察小説に挑戦しようと思う。

わたしのことだから、かなりの準備期間が必要なのだろうな。

それでも、やってやる。

書いてやる。

と意気軒高。

ご期待のほど、お願いします。



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朝から雪

2014-02-14 15:07:29 | ブログ
● 二階の教室から         

  

  

●降る雪を二階の書斎兼寝室の窓から見て過ごした。

窓際にベッドがある。

窓ガラス越しに眺める舞いおちる雪は、美しい。

一面に白くなっていく屋根。

小鳥も飛んでいない。

空には当然のことだが、雲など見えない。

●このところblue。

喉がはれている。

だるい。

何もする気力がわかない。

●カミサンとジャズをきく。

●これでいくぶん元気になる。

●雪の日、家にいてカミサンとジャズを聴く。

●こんな平穏な日があってもいいではないか。

●カミサンと、初デートの話でもしようか。

あのころのこと、いまでも覚えている。

●この、トキメク気持ちをカミサンに伝えたい。


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雪かきのしていないお店があった。  麻屋与志夫

2014-02-12 17:12:29 | ブログ
2月12日 水曜日

●春はまだとおい。

●いや、もうそこまで来ている。

日もだいぶ伸びてきた。

日差しも明るくなってきた。

周りに雪が残っているので寒いのだ。

●それにしても、風が強く、まさに寒風。

ベニマルまで買い物に行くのはパスした。

●ベニマルやVIVAはさすがに細かいところに心が行きとどいている。

買い物はいつもベニマルでする。

先日の雪の翌日、たまたまほかの場所の某店まででかけたのだが雪かきがしてなかった。

駐車場も正面玄関へのアプローチもつるつるすべってあぶなかった。

怪我人でもでたらどうするのだろうか。

こういうところで、その店の客にたいする気配りがわかってしまうのにな。

●カミサンとふたり東京と鹿沼を住みかとしている。

比較するから、いろいろなことがわかる。

田舎町ではスローライフを楽しむつもりなのだが、都会の方が気楽なこともある。

●人間――気のもちようだ。

どちらにもいいところがあると、最近では、達観している。




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恋愛小説でも書きましょうか。 麻屋与志夫

2014-02-11 17:50:11 | ブログ
2月11日 火曜日

●――愛よ。

愛なのよ。
とカミサンがいう。

●昨日upしたブログ。

『カミサンの笑顔に癒されて』と書いた。

インポイントが50入っている。

●わたしのブログでこうしたことは、あまり起きない。

インポイントはいつも30くらいなのだ。

これはもう、破天荒な出来事といっていい。

●やはり『愛』について書くのがいちばんいいのだなとおもった。

●しばらく、シュールな吸血鬼物語は封印して。

これから書きだす新作はリアルな『愛』の物語にしようかと思った。

●小説を書くのは、おもしろい。

なにからなにまで全部しぶんで決めて、実行できる。

●それだけに、まずthemeを決めるのがむずかしい。

全部自己責任なのだ。

●恋愛小説を読んだことがない。

読んでいるのは『若きウェルテルの悩み』とか『狭き門』くらいだ。

それも、60年以上もまえだ。

古いですよね。

でも、この歳で恋愛小説に挑戦するなんてトキメクな。

がんばってみるか?

ともかく、カミサンの提案をむしする訳にはいかないだろう。


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カミサンの笑顔に癒されて……。  麻屋与志夫

2014-02-10 07:33:24 | ブログ
2月10日 月曜日

●屋根に雪が降り積もったままだ。

周囲の空き地にも雪は残っている。

冷蔵庫に入っているようなものだ。

●昨日は雪の残る白い街を散歩した。

カミサンは靴から水が入ってしまった。

「もうこの靴はけない。新しいのを買う」と息まいていた。

●わたしが働きがない。

なにか新しいものを買う時には、それなりの動機を強調しなければ、悪いと思っているのだろう。

●生涯。

小さな旅ひとつしないで、ビンボ―なまま終わってしまうのだろうか。

わたしはカミサンと一泊でもいいから温泉にでも行きたい。

それがモチベーションとなって必死に小説を書いている。

小説の収入で、旅に出る夢を果たせるのはいつの日だろうか。

●せめて、毎日、仲良く街を散歩しょう。

これなら、金はかからない――。

●黒川に鴨が四羽泳いでいた。

カミサンは雪の上に小さな靴あとをつけてわたしから離れていった。

わたしは望遠レンズのケースを持たされたまま……彼女の去っていく後姿を見ていた。

彼女の彼方に府中橋が見える。

あの橋の上で待ち合わせて、彼女の昼休みの時間に散歩したことがあった。

父になにかいわれて、イライラしていた。

彼女に会いたくなって電話したのだった。

彼女はチェックのスカートをはいていた。

小走りに橋を渡ってきた。

あれからもう……50年以上が過ぎている。

●「いいピクチャーがとれたわ。散歩に来てよかった」

カミサンが爽やかな顔で近寄って来る。

この笑顔になんど救われたことだろう。

癒されたことだろう。

   

   

   




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わかりやすく書くのが一番むずかしい。  麻屋与志夫

2014-02-09 06:07:12 | ブログ
2月9日 日曜日

●見た目では30センチくらいの積雪。
雪は降り止んでいた。
風もおさまっている。

●『平成の雪女』チョットながめのショートショートを載せたので訪問者数が248。
閲覧数が584。
さらにがんばらなくては。
もっと皆さんに楽しんでいただけるような作品を書きたい。

●じぶんの欠陥はじぶんでよくわかっている。
例えば『欠陥』と書いてしまう。
『欠点』でもいいではないか。
弱点でもいい。
弱いところ、でもいいかな。
短所なんてことばもある。
できるだけ、日頃つかっていることばに近づけたい。
ところが心の中では『瑕疵』と書きたかった。
などとまだこだわっている。
てらいがある。
衒う。
衒学きどり。
いやな、性格だ。

●こうしたことを、改めなければいけないのだ。

●だいぶ前に書いた『平成の雪女』を載せてみてそう反省した。
なんと難解なことばをつかっているのだろう。
ごめんなさい。
平明に書く。
これからの課題だ。

●もうひとつ。リアルということを考えたい。
いままでのシュールなアサヤワールドはこれでヨシとして、ほかに警察ものを書きたい。
そのためには、現実的な事件。
それを書き表すために、写実ということを基礎から学び返したい。

●まだまだ、学ぶべきことがありすぎる。

●さて、今日は朝の10時から塾生が来る。
この雪では、来られないかもしれない。
一応、特訓をやると約束した。
まさか、こんな大雪になるとはおもわなかった。
スタンバイして待つことにしょう。

●午後からまた小説を書く。
分かり易くかくのだよ。




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超短編47 平成の雪女  麻屋与志夫

2014-02-08 11:03:19 | 超短編小説
平成の雪女



紙魚(しぎょ)の食った和紙の売上帳をもって老人はもどって来た。
麻で編んだ座布団(ざぶとん)に座った。
赤々と燃える囲炉裏(いろり)の火に和綴(わとじ)の帳面をかざした。
その綴じ紐(ひも)も麻を細くないあげたものであることを、わたしは懐かしくみてとっていた。
懐かしいどころか、江戸時代からの農作物の売上帳が保存してある、もと庄屋の律儀(りちぎ)さに感心した。
「栃木但馬屋和三郎と書いてありますな」
墨痕(ぼっこん)鮮(あざ)やかに王義之(おうぎし)風(ふう)の書体で買い付けた繭と麻の代金に添えて署名と花押(かおう)が書かれていた。
わが家の三代前の、祖々父の筆跡だった。
井桁(いげた)に三の商標もさらに懐かしさを誘うものであった。
終戦からは、数年が過ぎていた。
ビニロンやナイロンの合成繊維の開発以前のことで、郷里の栃木から鹿沼周辺ではまだまだ野州麻の栽培が盛んだった。
オートバイでその日、最後に乗りつけた小来川の奥の〈山窪〉という地名のの農家でのことだった。
「麻買いさまは、どこからきなさったね」
と言う問いにわたしが答えると、老人が「但馬屋」という名を聞いたことがあるという。
先祖代々の屋号がここででてくるとは思ってもみなかった。
先祖の功徳もあり、初めて訪れた農家なのに商談が成立した。
わたしは矢立をとりだし先程の帳面に署名した。
なにか、懐かしさに混入して、時間が止まってしまっているような……奇妙な感覚があった。
外はすっかり夕暮れいた。
雪をいただいた日光の峰々が薄暮のなかに消えていこうとしていた。
薄墨色の水墨画のような遠景に、男体山、女峰、太郎、赤薙の峰が純白に輝き夕日に映えていた。
窪地にあるなので目前の雪の山肌は文字通り見上げるという感じだった。
「麻買いさまは嫁さんはまだかね」
と夕食をよばれている席できかれた。
まだ学生だとこたえると……あまり落着いているから、もう嫁さんがいると思っていた、と老人が真面目な顔でいった。
孫娘を嫁にやりたい。
いいひとがいたら紹介してくださいよ、昔だったら兄さんくらいで、嫁とってもあたりまえだったんだがな……なにせ、この子の父が硫黄島で戦死してるのでな。
婚期がおくれてるのだが、ひとに頼むことをわしがしないもので……やはり、里まででて億劫がらずに頼んであるかんことには……と、くどき話しになった。
娘さんは、麻剥ぎにもどっていった。
土間に筵をすき、麻の茎から繊維を剥ぐ仕事をしていた。
冬だというのに一重もので立て膝で麻の束をかかえるようにして剥いでいる。
どきっとするような白い太腿が囲炉裏の火をあびてちらちらしていた。
陸中の(りくちゅう )雪(ゆき)晒(ざら)しとおなじでな、雪にひたして剥ぐと強い繊維がとれるものでな……さむくてかわいそうなのだが……。
老人がわたしの視線が娘さんに向いているのに気づいてなにげなく説明してくれた。
この皮麻も春になったら是非買いにきてくだされや、と軒下まで送ってくれた。
雑木林に止めておいたオートバイはキックスターターをなんどもふみさげてもかからなかった。
傘をさしかけてくれた、娘さんは心配そうにそばに立っていた。
降出した雪の中を一本の傘で送られてきたので、なんどか手が触れ合いわたしは動悸がたかまっていた。
先にもどってくださいとはいえないでいた。
長い黒髪に雪がふりかかっていた。
寒いでしょう……とようやくにして声をかけると、なれてますから、とはずかしそうに絶え入るような声で応じた。
たったその一言だけがわたしたちのかわした言葉だった。
雑木林には雪の鵞毛が舞っていた。
幻想的な白い世界にかわっていく。
小来川の宿場を通過するころは、雪は横殴りに吹き荒び、ライトのなかで舞い狂っていた。
林の中の道にはいった。
葉の落ち尽くした楢や櫟の繊枝に雪がまといついている。
白い枝に白い花が咲いている。
冷ややか雪の花だった。
枝の先の虚空で月はかげりがちだった。
音もなく雪がしんしんと舞い落ちてきた。
あまりの幽玄(ゆうげん)な美しさにわたしはバイクをとめた。
するといままで音もなくと思っていた雪が……なにかささやいている。
無人の林にひとのささやくような声がしていた。
囁きかけ、さそいこむような哀調(あいちょう)が低くながれてきた。恐怖が背筋をつたった。
わたしは震えていたようだ。
細微(ほそが )れた女の声がした。
嫋々(じょうじょう)とむせび泣いている。
雪明りに裸身の女が立っていた。
髪は膝のほうまで伸び……風にたなびきふっくらともあがった胸の白さは雪のそのものの白さであった。
雪の着物を纏っているように見えた。
白く痩せた体は透きとおるようで、ほんとうに……、背後に陰(かげ)るはず木が幽に(かすか )みえている。
女のうしろに陰るはずの木々にも雪は吹雪き、その背景の林は果てしなくひろがっていた。
降り頻(しき)る雪は下生えの枯れ草も切り株もすべて白銀色(しろがねいろ)に埋めつくしていた。
女の嗚咽はその白い視界のすみずみから沸きいでるようであった。
そして……ああ、わたしにむけて怨嗟を吐きかけているようであった。
わたしは見えない糸でたぐりよせられるように一歩前にでた……さらに一歩……。
女がこちらを見た。
瞳が金色に輝いていた。
黄金色のその光りは人間のものではなかった。
白い世界を切り裂くひとすじの赤みをおびた金色の光りは人間の眼光であるはずがなかった。
眉には白く雪がついていた。
綺麗だ。
美しい。
わたしは声にならない声で詠嘆した。
ありがとう。
あたしをこわがらないの……あたしをこわがらないで、綺麗だといってくれるのね。
あたしは綺麗なのね。
あなたの目に美しく映るのね……。
わたしの内密な声に対してこれまた頭に直接響いてくる声だった。
凍てつくような雪のなかでこころなしか声には暖かなものがながれているようだった。
いつしか雪も止み、月が林をこうこうと照らしていた。
降り積もった雪に女の足跡はなかった。
そのあたりは樹木が切り倒されていた。
雪原がつらなっていた。
凍えるように寒かった。
雪原のはてに炭焼小屋があった。
いくらさがしてもバイクのところにもどれなかった。
あかあかと燃える囲炉裏や麻剥ぎをする娘さんの幻影をみたようにおもった。
わたしは小屋の中に倒れこんだ。
女が囲炉裏にすわっていた。
囲炉裏には火はもえていなかった。
火はなかったが、破れ窓から差込む月光に囲炉裏の周囲はほのかに明るかった。
女の体を抱いた。不思議と冷たさはなかった。
それどころか、冷えきった体が、じわっとあたたかくなる。
氷のような女を抱いているのにあたたかなものが伝わってくる。
あなたが、あなたの心が優しいからよ……女の声が頭にひびいてくる。                 

2

その翌年、『倉敷レーヨン』が合成繊維のビニロンを開発した。
わたしはついに「山窪」に春になっても麻買いにはいけなかった。
農家で生産する大麻はビニロンに押されて売れなくなった。
江戸時代からつづいていたわたしの家も倒産してしまった。
約束した麻は買いにいけなくなってしまった。
倒産した家をなんとか復興させようと努力したがはたせなかった。     
東京に越し細々とサラリーマン生活をつづけ定年になった。
子供たちもそれぞれ所帯をもって離れていった。
見合いで郷里から嫁いできた妻はしかしいっこうに年をとらない。
いまも、鏡にむかっている。
「ねえ……着物をきられるような生活になるとはおもわなかったわ」
わたしは、妻のながい耐乏にむくいるために、退職金をはたいて大島紡ぎを買ってやった。
妻がえらんだのは六方晶系の雪の結晶を幾何学模様化したものだった。
妻がそれをきているとあの雪の夜の幻影へと連なるのだった。
「夜中になって、鏡にむかい着物をきだすなんておかしいわよね……」
「おまえのうれしそうな顔をみるのがすきだ……いつまでもきれいだな……」
「そんなこといってくれるの……あなだだけよ……もうお婆さんよ。……和服ってこんなにあたたかいとおもわなかった。足元からあたたまるのよ……スカートだとこのところ年のせいか……足が冷えるのよ」
「おまえも、やっぱり年なのかな」
「それはそうでしょう、あなたと一緒になって何年になると思うの」
わたしは、寝床でうとうとしていた。
「どう、似合う……」
いつになっても若々しい妻が立っていた。
綺麗だ。
美しい。
わたしは今宵こそ昔、雪の林で会った女の話しをしようとおもう。
もう疲れた。
このまま明日がこなくてもいいとおもう。
さいわい外は音が途絶えている。
わたしはこの気配をおぼえている。
夜の通りに、霏として粉雪が舞っているはずだ。
都会にはめずらしい雪の夜になりそうだ。
この汚濁した都会が、白銀色の世界になる。
雪原に横たわる若者が幻を見上げた。
妻の姿があの雪に裸身を晒した女に重なった。

3

「それでヤッパ最後の口づけをしたの」
「ヤダァヤダァ。N3は、口づけだなんて死語つかって」

冷凍冬眠室で最終処理台を見おろしながら、あたし、NIは応えていた。
処理台には患者用のブルーの検査着身につけたまま一人の老人が冷凍冬眠にはいっていた。
ひろびろとした治療室には医師の姿はなかった。
N3とNIのふたりのナースだけがあわただしくコンピーター処理にかかっていた。
NIが長年連れ添うように看護してきた老人が自然死ならぬ安楽死を願うキーワードーを口にしてからまだ数分しかたっていない。 

「じゃなんていえばいいの。おさしみ。せっぷん。口を吸う……」
「死語をつかって患者について話すなんて死者への冒徳よ。あんた、ひまだから20世紀の古典の読みすぎよ」
「でもさぁ、こういうオールド・タイプの人間ってめずらしいのよね」
「でも……いがいとNIのことよく読みとってくれていたのね」

モニターに文字化されている彼の記憶を記録しながら、あたしはN3に応えていた。
「ねえ、NI……おかしいよ……」
N3のおしゃべりに応えながら彼の最終処理をおこなうあたしの耳にあわてふためいたN3の声がひびく。
壁面のパネルでは赤いランプ点滅していた。
「NI――、蘇生ボタンを押したの?」

4


……かつてなく……妻に怯え……時は流れ去った……わたしは……むかし雪女に出会った夜のことを……妻に今宵こそ打ち明けよう……慎ましやかな物腰で……妻がわたしを上からのぞきこんでいる……わたしは……雪に埋もれて死にたい。いや……あのときわたしはすでに死んでいたのかもしれない……。



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