日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日の想像話「悩みの電脳」

2013年09月28日 | ◎これまでの「OM君」
「Aさん。セーブデータがいっぱいになりました」
眠ろうとして目を閉じるとまぶたの裏にこの文章が浮かんだ。
その日から眠れない。
もう2週間になる。
自分の体の80%程度は機械化したので特に疲労困憊という気分ではない。
どちらかというと、命令したコマンドが実行されない苛立ちの方が強い。
「どうしちまったんだ」
そうつぶやく。
習慣。
本当は眠る必要はない。
布団から起きあがり、酒をあおる。
のどから胃がかっと熱くなる。
この感覚でさえ機械化された体が疑似的におこす反応だ。
事実、酒を飲んだからといって、睡魔がおそってくるわけでもなかった。
機械化の技術が導入されてまだ60年もたっていない。
こんな弊害も十分ありえる。
人柱だ。
事実、莫大なお金のかかる機械化が施されているのは自分が献体として志願したからだった。
機械化はとても庶民の収入では不可能な金額が必要だった。

まず最初は頭脳の電脳化に着手された。
コマンドの入出力を円滑に行うためだと説明された。

電脳化にともなう効果はすさまじかった。
時間の概念がふきとんだ。
1000分の1秒単位、もっともっと短い時間での計算も可能だった。
もともと人間の目は優秀で、そのデータさえあれば、あらゆるものがゆっくりと見え、動きの計算もできた。
すばらしい。
神様にでもなった気分だ。

「あー、Aさんまた悩んでますね。」
ここはパソコンのずらりと並んだ研究室。
機械化、電脳化に伴う技術的な研究を行う施設。
「そうそう。まあわざと難題をぶち当てているからしょうがないんだけど」
Aさんは存在しない。
架空の経歴、架空の人格。
電脳化に伴う不具合をどう受け止め、どんなダメージを受けるか観察されるための疑似データ。
ブン・・・
「あっ、動き出しましたよAさん」
「あっAさん外付けハードディスクを外部コネクタでつなぎましたよ」
「あー、セーブして寝ましたよ。よかったですね」
「くすくすくす。ここまでは折り込み済み。ここから先は頻繁に「セーブします」の文字が現れ、外部ハードディスクのチェックが頻繁に始まるぞ。さてどうするかな」
Aさんの受難は続く。
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