都内でも人気の動物園。閉園時間が訪れる。
名残惜しげに手を引かれて帰る子供達を見送る視線があった。その視線はするどい眼光のパンダだった。
最後の客を見送ったパンダは、飼育員にお疲れと言いながら、シャワールームに向かった。
シャワーのカランをひねる。
適温の湯が心地よい刺激とともに空間を満たしていく。
パンダは自問自答していた。俺は道化だ。
でも人気者になりたかった。もう後戻りはできない。人間達もだましている。
パンダの足下は見る間に白色になっていく。鏡に写る姿はパンダではなく真っ黒なツキノワ熊になっていた。
ノックを2回すると、扉が透明になる冷蔵庫があるらしい。
扉を開けずに中身を確認できるテクノロジー。
このテクノロジーをコピー用紙の残量が確認できるように用紙トレーの扉も同様にしてほしい。
おっと、待てよ。
最初から透明の扉をつくればいい話じゃあないのかい?
(中身が見えて困る場合は外付けのカーテンで対応する)
水槽の中に金魚が泳いでいる。少女がえさを水面に落とす。真っ赤な金魚が水面に顔をだす。「かわいいね」丸い球形の水槽を一緒に見ていたお母さんに少女はつぶやいた。
「そうね」お母さんは少女を見つめてうなずいた。
大きくて、丸くて青い色の球体を眺める視線があった。水をあげたり、日を当てたり。せっせと青い球体をおせわする。球体の表面にはびっしりと二本足で立つ小さなものが活動している。
「かわいいね」
「そいうかい?」
見つめるもの達がかってな事を言っている。