映画はコーラとともにポップコーンを食べながら見ると決めている。シンプルな塩味のポップコーンが最高だ。私は腕時計を見る。上演時間が迫る。この映画のために今日は一日仕事の段取りをつけてやってきたのだ。チケットは持っている。ポップコーン売り場にはすでに十人近くのお客がすでに並んでいる。いけるか?私は焦りながらも並んだ。
「いらっしゃいませ。本日はご来店ありがとうございます。心をこめて一生懸命ポップコーンを焼かせていただきます。何にいたしましょうか」
「塩味のポップコーンとコーラ。両方ともLサイズ」
「かしこまりました。では塩は伯方の塩か、岩塩か、有明海の塩か、アルデンヌの塩かいかがいたしますか?」
「そんなにあるの?めんどくさいな。急いでるから伯方の塩でいいよ」
「かしこまりー。トウキビは北海道産かアメリカ産か、カナダ産か中国産か、メキシコ産か、名古屋産かいかがいたしますか」
「めんどくさいな。じゃあ、北海道産で」
「かしこまりー、コーラはメッツコーラか、ダイエットメッツコーラか、レモンコーラか、コカコーラのコーラか、コカコーラのダイエットコーラかいかがいたしますか」
「メッツコーラ」
「かしこまりー。では釜に火を入れます。ご一緒にご唱和お願いします。キビ・キビ・キョン!」両手でとうもろこしをほぐす動作が伴う。
「何その儀式」
「これを一緒にやっていただかないとポップコーンの味の出来上がりが違ってきます」
「そうなの?じゃあやるよ、でも急いでね」
「かしこまりー。ご一緒に。キビ・キビ・キョン!着火!では釜に火が入りましたので、釜が暖まるのが1時間30分ほどかかりますので、出来上がり次第お席にお持ちいたします。ではいってらっしゃいませ」
「映画終わっちゃうよ」