日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日の想像話「シェフの気まぐれはどの程度なのかという話」

2016年09月25日 | ◎これまでの「OM君」
天ぷらが食べたい。
特に目的地は決まっていない、ただ何となく車を走らせながら義男はそう思った。
よし、本日の昼ご飯は天ぷら定食と決めた。
どこの天ぷらを食べるのか…。
それが問題だ。
そうと決まれば一人作戦会議を開くために義男はコンビニの駐車場に車を止めた。
そしてアイスコーヒーLサイズを店内で買い求め、運転席に座る。
おいしい天ぷら屋さんをスマホで探す。

気になる店が画面に表示された。
「てんぷら北野」本日15分間限定、寡黙な店主の気まぐれ天ぷら御前。
15分間?開始時間はもうすぐ。
店は今いる場所の近所。

5分後、車を「てんぷら北野」につけた。
外観は、一戸建ての民家。
普通の民家なのだが、たしかに看板がかかっていて、場所は間違い無いらしい。
入りずらい。非常に入りずらい。
しかし、きまぐれ御前の開始時間はあと2分後だ。迷っている暇は無い。
一枚扉を引いて開ける。
靴箱のある普通の玄関。
一段あがってフローリングの廊下が見える。
廊下の奥のガラス戸に小さな陰が見えて、そろりと引き戸が開く。
その隙間からのぞき込む4歳くらいの女の子と目が合う。
「こ、こんにちは。あの天ぷらを食べに来たんだけど大丈夫ですか?」
思わず敬語で聞いてしまった。
「あ、お客さんですね。いらっしゃーい」
そう言うと、真っ赤なスカートを履いたおかっぱ頭の女の子がトテテテと飛び出してきた。
「ドーゾ、ドーゾ」
女の子にうながされるまま靴を脱ぎ廊下に上がった。
廊下の奥はキッチンになっていた。
対面式の調理場には割烹着にサンダーバード式の帽子をかぶった、おとうさん、いや、板さんがいた。
「いらっしゃい…」
節目がちの寡黙な板さんという出で立ちの男がそこにはいた。
人物自体は堂に入っているが、状況は完全におかしい。
なにせ、ここはふつうの民家のキッチン。
座らされたのは、おそらく家族が食事をするであろうテーブルだ。
新聞もテレビのリモコンもテーブルの上に置いてある。
おずおずと言う。
「あの…寡黙な店主のきまぐれてんぷら御前をお願いします」
「はい…、かしこまりました」


「お客さん、どちらからいらしましたの?」
テーブルの下から手だけが出てきて水を置いてくれた。
さきほどの女の子だ。
「ああ、えっと、近所なんだよ」
「そうなんですね」
そう言うと女の子はテーブルに四脚あるイスの一つに腰掛けると、紙をテーブルに広げ、クレヨンでお絵かきを始めた。
「どうじょ、お気にせずごゆっくり」

対面キッチンでは、ちまきのような太さの箸を駆使して寡黙な店主が天ぷらを揚げていた。
ごはんと味噌汁が運ばれ、付け合わせである、大根の漬け物の千切り、ゆず大根、塩、カレー塩、一味等の調味料も運ばれた。
エビ三尾、イカ、なす、ピーマン、たまねぎ。
揚がった順で一品ずつ店主が運んでくれた。
あつあつの揚げたてはどれも格別で、衣はさくさくとし、身はぷりぷりで非常に贅沢なひとときを味わった。

満足して店を出た。
追いかけるように女の子も外に飛び出してきた。
「どうしたの?」
「うん、看板をはずすの」
女の子は「てんぷら北野」の看板をはずした。
案の定、下から「北野」と書かれた表札が現れた。
「15分の間だけ、おうちがてんぷら屋さんになるの。おじちゃん、また来てね」
そういうと女の子は元気いっぱい手を振りながら家の中に消えていった。
まさに正真正銘の気まぐれ店主だった。
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◎本日の想像話「亜光速スペースシップ「ワルキューレ号」の冒険」

2016年09月22日 | ◎これまでの「OM君」
モニターを見つめながらコーヒーをすする。
先ほどまで人工冬眠のカプセルの中で眠っていた。
半年ぶりの目覚めは、すっきり爽快というわけにはいかないが、目標が近づいた事と同じ意味と思うと悪くない気分だった。
モニターには我が亜光速シップ「ワルキューレ号」が進んだ軌跡が点線で点滅している。
このワルキューレ号は父の船だ。
父もまた祖父から譲り受けていた。
年代ものの宇宙船を運転する俺は生まれついての宇宙飛行士なのだ。
ワルキューレ号はメインフレームが頑強に設計されていたおかげで幾多の改修にも耐え、そして亜光速エンジンを載せることも出来た。
エンジンを載せたのは俺だ。
父にエンジン載せ変えの構想を報告したのは病院のベッドの上だった。
「そうか…」
父はそう一言つぶやいた。


今回の目的はスパチュラ星人との商談だ。
スパチュラ星には通貨というものは存在しない。すべて物々交換によって取引を行う。
今回のお目当ては、亜光速エンジンの制御にかかせない鉱石「カプリウム」
現在スパチュラ星と他、数カ所でしか「カプリウム」の存在は確認されていない。
なのでスパチュラ星人との物々交換の成功、及び情報は成功者の特権として決して明かされはしない。
トップシークレットであることは十分理解できる。しかし、それにしても情報がなさ過ぎた。
雲をつかむような話だった。
それでも俺は独自ルートで調査した条件をもとに今回の商談に挑んでいる。
要は奴らが何を欲しがっているかなのだ。
ここでスパチュラ星人の外観及び分かっている気質を紹介しよう。
外観は青い雪だるまに細長い手足がにゅっと生えている。
手足はいつも小刻みに動いていて、全体的行動のスピードはすごく緩やかだ。
決して走ったりはしない。
集団で行動し、単独行動はしない。
オスメスという明確な性別は無く、雌雄同体で、生まれついた気質により後天的に性格が確定される。
そして特徴的気質は旺盛な物欲。
それからするとまったく「カプリウム」獲得は簡単な話のはずだ。

スパチュラ星のスターゲートに無事着陸した。
族長とその家来たちが俺を待っていた。
握手を交わした。
彼らの体温は冷たかった。

俺は積み荷のコンテナシップを切り離し、彼らを招き入れた。
地球で考えられる金、銀、ダイヤ、プラチナ、貴重な鉱石、そしてそれらをふんだんに使用した装飾品。
おもちゃ、ゲーム、マンガ、DVD、カメラ、時計…
考えられるアイテムを満載して俺はここにいるのだ。

彼らの表情を見る。
だが、反応は薄い。
手に取ろうともしない。
しまった…、失敗したか…そう思った刹那、
彼らはうれしそうに俺の目を見た。
そして指をぱちんとならした。
そうすると族長の家来たちはゆるゆるとした動きで希少金属「カプリウム」をワルキューレ号の荷室に乗せ始めた。
驚いた表情の俺に族長は指でオーケーサインを出しながらワルキューレ号のコックピットに案内するようゼスチャーで示した。
そして地球への帰還ルートの入力をうながした。
狐につままれた表情の俺は言われるがままオートパイロットの入力を終えた。
エンジンを点火させれば自動でワルキューレ号は地球に帰るのだ。

族長は一言「商談成立」と言うと、今までの緩慢な動きとはうってかわって、俊敏に俺の背後に回り込み、腕を固められ、そのまま前に倒された。
!!
「どういうつもりだ」
「あなたの青い目。その美しい青い目が欲しくなりました。何代もの世代を経て、時間をかけ、交配を繰り返し、奇跡的に発生した、その美しい青い目。その青い目が今回の取引の対価です。この船は地球に送ってあげます。ただしあなたにはここにいてもらいます。住まいは我々の鑑賞用の檻の中になりますが、なかなか快適かと思いますよ」
「ふざけるな!」
俺はうつ伏せに倒された状態のままリストバンドのボタンを押した。
室内の照明が青白く切り替わり、蛍光色にすべてのものが光った。

ぐおおおぅ!
スパチュラ星人たちは表皮から煙を発しながら苦しみだした。
「ただのブラックライトなんだがな、あんたらには殺人光線になるらしいな。おやじから聞いてたんだ。おやじも偶然知ったらしい。半信半疑だったが、これほどのことになるとは思いもよらなかったぜ。できれば両方ハッピーなまま商談を成立させたかった。残念だ」

俺は荷室いっぱいのカプリウムを載せ、この星を離れた。
用意した金銀財宝のレンタル料の支払いと、燃料代、カプリウムの売値の引き算を考え、にやにやしながらコールドスリープのボタンを押した。
どうやら、ぐっすり眠れそうだ。
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◎本日の想像話「限界の先」

2016年09月14日 | ◎これまでの「OM君」
深夜二時。
俺はハンドルを握り、アスファルトに吸い付くスピードで駆け抜ける。
この時間に高速度路を走る車の数は少ない。
それでもテールランプを縫うように走る。
ハイビームを前方に向け続ける。
周囲との速度差はそれぐらい自分の存在をアピールして丁度いい。
俺にはある種の才能がある、特殊能力とでもいうのか、他車の動きが3手先まで俺にはわかる。
とにかく持って生まれた生き残る才能だ。
何度助かったことか。
あと1時間で渡されたブツを渡すのが今回の仕事。
ブツはジュラルミン製のブリーフケース。
中身には興味はない。
ただし、爆発物では無い事を依頼人の目の前でチェッカーをかけたので確認済みだ。
以前、爆発物がトランクで爆発したことがあった。
車の後ろ半分が吹き飛んだ。
それ以来この儀式は欠かせない。

数時間で移動不可能な距離を移動するにはこの時間しか無い。
俺の生業は運び屋。
アクセルを踏み込む。
タコメーターの針がレッドゾーンに到達するまでの悪魔的な加速。
体は後方に向けてシートに押しつけられる。
溶けて流れる視界。
しかし、心臓の鼓動も、呼吸もあくまで冷静、平時とまったく変わらない。
心臓ばくばく、荒い呼吸、ゆがむ口元。
そんな事ではプロ失格だ。

しかし、今夜はいつもとは違っていた。
回避不可能なタイミングでふらふらとトラックがこちらの進路をふさぐ。
フルブレーキをくれてやる。
ABSよりも効率よくスピードを殺す。
真っ赤に加熱するディスクブレーキ。
パワードリフト気味にトラックを抜き去る。
危険な割り込みは今日これで5度目だ。
他車の動きがまったく読めない。
まるでこちらのハイライトにまったく気づいていないよう挙動だ。
追い抜きざまに割り込んだ運転手の顔をにらみつける。
不思議なことに何事も無かったかのように平然とたばこをくもらせて前方をぼんやりと見ている。
さっきからこの調子なのだ。

このスピード域で追ってくる車がある。
もう30kmは走っただろうか。
つかずはなれず一定の距離を保ちつつ追従してくる。
奴の見当はおおよそ付いている。
「チューイン」と呼ばれる同業者。
いつもガムをくちゃくちゃと噛んでいて、ここ一番のカーブの前には口からガムを出し、車のサンバイザーの裏に張り付けるのが奴のくせだ。
実は、今運転している車は奴のチューンドカーなのだ。きっかけはたわいもない賭だった。
どちらが速いか…
その賭に勝った俺は報酬として相手の車をぶんどった。それだけの事だ。
しかし、俺は奴に恨まれている。

ルームライトで後方を見る。
その瞬間、スキール音が響きわたった。
あぶねえ!
危険なタイミングで奴の車の前方に割り込む車を驚異的なドライビングテクニックでかわす。が、かわした先にもう一台がせまる。
今夜はおかしい。
そう思った時だった、俺の車の横腹をななめ後ろから商業バンがせまった。
相手の運転手と目があう。
相手はまったくの無表情、そして静かに、大きくあくびをした。
くそっ!

その頃、高速道路の状況を監視する中央管理センターには当直の若手2人がコーヒーを飲んでいた。
「せんぱーい、知ってます1ヶ月前の事故?」
「一ヶ月前?ああ、あれでしょ、深夜未明にチューンドカー2台がカーブにつっこんで2台の運転手とも亡くなった事故」
「そうっす。実はその事故のあと、あの曜日、あの時間、あのカーブに車2台分のヘッドライトが壁に吸い込まれていくのを見たって通報が入るんですよね。そうちょうど、この曜日のこの時間なんですけど…」
ルルルルルー♪ルルルルルー♪
その時、電話の呼び出し音が鳴った。
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◎回転木馬の荒々しい表情を目撃

2016年09月09日 | ◎これまでの「OM君」
回転木馬の馬の表情はこんなにも荒々しいものだったのか。
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◎本日のどくろ その2(ヒャッハー!その2)

2016年09月05日 | ◎これまでの「OM君」
ヒャッハー!その2
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◎本日のどくろ(ヒャッハー!)

2016年09月04日 | ◎これまでの「OM君」
ヒャッハー!
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