日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
http://onimimicola.jimdofree.com

◎本日の感想話(洗濯と歯磨きと私)

2016年04月09日 | ◎これまでの「OM君」
歯ブラシを手に取り、歯磨き粉をチューブより押し出す。
歯を磨く。
歯を磨きながら洗濯機のふたを開け、汚れた洗濯物を洗濯層に投げ入れる。
ここまで無心。
何も考えなくても無意識で出きる手順。
その時ふと考えた。
無意識でやってしまえることが増えすぎた。
年は本当に取りたくない。
刺激が減ってしまったのだ。
感動しなくなったというのだろうか。
昔はゲームウオッチの「ファーヤー」を夢中でやったものだ。(火災現場のビルから救護者が次々に飛び降りてくる。謎のトランポリン風の担架でうけとめる。
受け止められた救護者は跳ね上げられる。
跳ね上がってる最中に二人目も跳ね上げる。救護者の三人ぐらいは同時に空中にいる。
救急車に投げ入れる事がレスキューのゴールとなる。
ひたすらジャグリングをする「ボール」にも夢中になった。
ゲームウォッチの画面が横長になり少し大きくなる。「オクトパス」にも夢中になった。(海底に沈む宝を潜水夫が海面の船まで手で運びあげるのだが、巨大タコが終始手足を伸ばして襲ってくる。その間隙を縫って潜水夫が右往左往する。
潜水夫のシルエットはアクアラングの様なボンベを背負ってはいない。船上より空気を送るチューブを引きずっているはずなのだ。巨大タコは容易にその命綱ともいえるチューブを絡め取る事は出きるだろうに、その恐怖に耐えながら潜水夫は何度も何度も海底に潜らされ、お宝の引き上げを強要される。とんだ蟹工船の物語なのだ。
それがどうだ、手を変え品を変え、ハードを進化させ何十年にもわたりゲームをやりつづけた結果、飽きてしまったのだ。
なんという体たらく。
まるで無意識で歯を磨くぐらいの刺激しかなくなったのだ。
そこまで考えながら頭を振った。
自分を追いつめるのはよそう。
それでもゲームが好きなのだからしかたない。

そう思いながら洗濯を開始するための液体洗剤をカップにはかり取った。
当然次の行動は測り取った液体洗剤を洗濯槽に入れるのだが。
無意識とは恐ろしい。
洗濯準備と同時に進行していた歯磨き。
口をゆすぐために口の中の歯磨き粉を吐き出した。
洗濯槽に…。
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◎本日の空想劇場「奇跡は信じるか?」

2016年04月03日 | ◎これまでの「OM君」
昨夜は飲み過ぎた。
最悪の頭痛と吐き気で目覚める。またやっちまった。
給料が出て気が大きくなっていた。
見慣れた常連さんとバカ騒ぎ。
2軒目までの記憶はある。
その後は定かではない。

「奇跡は信じるか?」
仙人のような風貌のじいさんと話したような話さなかったような…
何かしっかりとしたものを手渡されたような手渡されていないような…。
しかし、手にはその感触があった。
(あのじいさん、なんだったのか…)
テーブルの上には見慣れない金属製のケースがあった。
よろめく足取りでテーブルに近づく。
バイクのマフラーのようなチタン焼けが一面を覆っている。
アタッシュケースというよりも手提げ金庫風の形状。
持ち上げてみると軽い。
まるで何も入っていないような軽さだ。
しかし持ち手には4桁のダイアルがあり、青白くあやしく点滅している。
電源が供給されているのだ。

「奇跡は信じるか?」
あのじいさんと俺は話したのだな。
ケースを見て思う。
何て思わせぶりな台詞だろうか。

4桁の数字の組み合わせ
1から初めて9999まで。
総当たりが不可能な数でもない。
その日から退屈な日常は一変した。
何が入っているのか。
わくわくしながら想像の世界を楽しんだ。

1ヶ月後のある夜。
ピーという電子音と共にロックが解除された。
瞳孔が開くのを感じる。
心拍数が上がる。
震える手で慎重にケースを開けた。

中にはスイッチが一つ。
何という事だ。
金目のものは何もない。
ただの電気をつける様な形状のスイッチが綺麗にケースの中に納められていた。
スイッチの下には文字が刻まれている。
「スイッチを押し、ケースを閉めろ」
スイッチを押す。
何も起こらない。
まあ、世の中そんなものだ。
この1ヶ月、鍵開けゲームを楽しんだ。そう思うようにした。
ケースを閉じる。

次の瞬間、ケースは消えた。
どうやら今夜も飲み過ぎたらしい。
早々に床についた。

その頃、地球の裏側では、人的大災害に繋がる機械的エラーが奇跡的に発見され、世に公表されることなく何万もの人々の命が救われていた。


「奇跡は信じるか?」
仙人のような風貌のじいさんが泥酔してつっぷしている女性と話している。
手にはチタン焼けしたケースがあった。
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◎本日の空想劇場(メイドアンドロイドの結末)

2016年04月02日 | ◎これまでの「OM君」
休日の午後。僕は街に出かけた。着飾った男女が颯爽と歩く。
僕は少し引け目を感じながら歩く。40歳。独身。貯金少し。
周囲の人々にすべて見透かされているのではないか。被害妄想的な卑屈な気持ち。
いやいや、今日は目的があって歩いている。
気持ちを切り替えてショールームに向かう。
メードロボットカンパニーを目指している。
テレビで盛んにCMを流しているのだ。
「アンドロイドバージョン7.9。お掃除、洗濯、料理、世間話、何でも出来ます。レンタルも出来ます。どうぞご相談ください」
僕には身分不相応かもしれないが、この先、結婚出来る保証もない。趣味らしい趣味も無い。ペットを飼うくらいならロボットメイドをレンタルしてみよう。
そう思ったのだ。
問題はレンタル料だ。
いったいどれくらいの金額なのか…。

「いらっしゃいませー」
自動ドアがひらいた。
髪の毛をピン止めしたスーツ姿の若い女性がやってくる。
苦手だ。女性が苦手なのだ。
「メイドロボットレンタルの金額プランをお聞きしたいのですが」
「どうぞこちらにお掛けください」
イスを勧められる。
「性能的なご質問は大丈夫ですか?実は私もメードアンドロイドなんです」
「えっ、ああ、大丈夫です。(まったくアンドロイドとは分からない。どこからどう見ても綺麗で知的な女性にしか見えない。まさかこれほどの事に世の中なっているとは)」
「そうですか。では料金プランのご説明をさせて頂きます。ワンデー、マンス、シックスマンス、ワンイヤー…」
テーブルの上のタブレットに表示された金額を見て時間が止まる。
だめだ。
僕の給料では到底払えない。
その後、アンドロイドとどんな会話をしたかあまり覚えはない。
しどろもどろになりながら、ショールームを後にした。
やはり僕には高嶺の花だったか…
そう思いながら重い足取りで岐路についた。


「すいません。今メードロボットカンパニーから出てこられましたか」
後ろから声を掛けられた。振り返るとシルクハットをかぶった老紳士が立っていた。
「はい、そうですが」
「お高かったですか?」
「そうですね。手が出ませんでしたが、それが何か?」
「実は私、バージョン7のメードアンドロイドをレンタルでは無く保持しております。格安でお貸しいたしますがどうでしょうか」
「格安とはどれくらいですか」
老紳士の言った金額は一桁違った(もちろん安い方にだ)
それを聞いた僕は俄然乗り気になった。
話を聞くとアンドロイドは車に乗っているというのだった。

「こんにちは。私はメードアンドロイドバージョン7.0「ナナ」と呼ばれています。」
僕はナナを見て老紳士と契約をかわした。

ナナとの生活が始まった。
朝起きるとすでにナナは朝食を作ってくれている。
キッチンに行くとナナは挨拶してくれる。
「おはようございます。はい、朝刊です。今日は午後から雨が降るそうなので傘をお持ちくださいね。本日のお帰りは何時くらいですか」
「いつもと同じくらいになります」
「そうですか。ちなみに今晩は何を食べたいですか?」
「そうですね、マーボー豆腐なんかどうでしょう」
「かしこまりました。ちなみに辛い方がお好きですか」
「辛いのがいいですね」
「かしこまりました」

ナナはとてもアンドロイドとは思えないほど人間的で優秀だった。
ただひとつ気になることはこの部屋には通いでやってくることだった。
朝早くやってきて、老紳士の家に帰っていくのだ。
メンテナンスと充電の為らしい。
この部屋にずっといてくれればいいのに。
そう思えてきた。

直帰の仕事が不意にあり、いつもとは違う時間に駅についた。
ナナだ。
向かいのホームに仕事を終えたナナが電車を待っていた。
僕は老紳士の家を知らない。
ナナにはずっと僕の家にいてもらいたい。
老紳士に掛け合いたい衝動にかられた。
気づいた時には足は反対側のホームにむかっていた。

車内のナナは本当に人間のように振る舞っていた。
他の人と同じようにスマホをいじり、鞄から手帳を取り出し、何かを書き込み、そして目を閉じて居眠りした。
ああ、ナナが人間なら僕の胸の内を伝えられるのに。
そう感じていた。

ナナは立ち上がり電車を降りた。
後を追う。
そのまま改札を出て、ナナはある建物に入った。
僕は目を疑った。
ナナは耳鼻科に入っていったのだ。
アンドロイドがなぜ耳鼻科に入るのだ。
そのとき、肩をたたかれた。
老紳士がそこにいた。
「どうして後をつけたのですか。お気づきのようにナナはアンドロイドではございません。人間です。ロボット技術の進歩により人間のできる仕事が激減したのです。ですからロボット偽ってでも仕事をしているのです」
僕にはそんなことはどうでもよかった。
ナナがロボットでは無い。
その事実が僕には心の底からうれしかった。
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