「すぐ帰ってくるから、だれが来ても玄関は開けないでね」
と言ってお父さんとお母さんはでかけた。
私、一人で留守番。
苦手なキーウィが朝ご飯に並んでいてお母さんと喧嘩した。
「いい子にしていないとおばけがくるぞ」
お父さんがそう言った。
おばけなんているわけ無いのに何言ってるのよ。
お父さん嫌い。
そう思った。
さち子は今年、小学4年生になった。
生意気ざかりだ。
アニメのDVDを見ながらおやつを食べた。
まだ二人は帰ってこない。
ソファーに横になってあくびを一つ。
ねむいなぁ・・・目を閉じた。
その時コトリ、コトリ、コトリ・・・
「えっ誰かいる」
怖くて声が出ない。
コトリ、コトリ・・・
誰かがゆっくり歩いて部屋を一周している。
目をうすく開けて様子をうかがう。
誰もいない。
コトリ、コトリ、コトリ・・・
歩いている音は続いている。
「わるい・・・こは・・・いねぇか・・・」
はっきり耳元でそう聞こえた。
「えっ」
さち子はそう言うのが精一杯だった。
「わるいこはいねえかー!さち子はわるい子か!」
「さち子、悪い子じゃないよ」
目をしっかり閉じたまま、誰もいない部屋に返答した。
「悪い子じゃないんなら、お父さん、お母さんの言うこときくかー!」
「だれなのよー」
「そんなことはどうでもいい!言うことをきくのか、きかないのか」
「ききます。ききます。ごめんなさーい」
「そうか。それなら今日のところはこれぐらいで勘弁してやる。」
コトリ、コトリ。
足音が遠ざかっていった。
「ただいまー」
お父さんとお母さんが帰ってきた。
さち子は泣きながら二人に抱きついた。
「おいおい、さち子どうした」
そう聞いたが、二人の顔は半笑いだ。
ちょっと懲らしめてみようか。
発端は父母のちょっとしたいたずら。
出かけたと思わせて駐車場の車に隠れた。
あとはリビングルームに設置したサラウンドのスピーカーと携帯電話をつないだ。
「デジタルなまはげ」と父は命名した。