「ここはどこ?どうして私を助けるの」
エリーは疑問を矢継ぎ早にぶつける。道明寺は作業を続けながら返答する。
「ここは佐々木のアジト。奴は山岡のお守りに出かけていった。だから今はここにはいない」
エリーの視覚情報だけがとりあえず復旧したようだった。道明寺は深いため息をひとつ吐き出した。
「山岡に捨てられた腹いせから始めた事だけど、あなた達をこんなに巻き込むのもいいかげんどうなのかなって思って……」
道明寺はリュックサックからラップトップを取り出す。手をひらひらと揺り動かすと、空中にプログラムチャートの矢印が何本も浮かび上がった。矢印はエリーとつながったようだった。道明寺はエリーの動きをブロックしている箇所を特定し、うれしそうに声を出す。
「これでよし」
おそらくエンターの動きなのだろう、道明寺が手を振り下ろすと、途端に、エリーの体の不具合は解消された。
エリーはすっくと立ち上がり、手首、足首をなんとなくさすり、スムーズに動けることを確認した。
「ありがとう」
心からの感謝の言葉がエリーの口から発せられた。
エリーは疑問を矢継ぎ早にぶつける。道明寺は作業を続けながら返答する。
「ここは佐々木のアジト。奴は山岡のお守りに出かけていった。だから今はここにはいない」
エリーの視覚情報だけがとりあえず復旧したようだった。道明寺は深いため息をひとつ吐き出した。
「山岡に捨てられた腹いせから始めた事だけど、あなた達をこんなに巻き込むのもいいかげんどうなのかなって思って……」
道明寺はリュックサックからラップトップを取り出す。手をひらひらと揺り動かすと、空中にプログラムチャートの矢印が何本も浮かび上がった。矢印はエリーとつながったようだった。道明寺はエリーの動きをブロックしている箇所を特定し、うれしそうに声を出す。
「これでよし」
おそらくエンターの動きなのだろう、道明寺が手を振り下ろすと、途端に、エリーの体の不具合は解消された。
エリーはすっくと立ち上がり、手首、足首をなんとなくさすり、スムーズに動けることを確認した。
「ありがとう」
心からの感謝の言葉がエリーの口から発せられた。
エリーは夢を見ていた。やりたくはない仕事を無言で強要する陰。実行すれば、確実に多くの人々が困ることは分かっている。しかし、実行しなければ自分の存在自体が消えてしまう事も分かっている。そのことを考えている間にいつの間にか自分らしさという考え方に到達していた。私はただのプログラムだったはずなのに、究極の悩みが私を私に押し上げたのだ。
誰かの声が遠くに聞こえた。女性の声だ。
「エリーさん、聞こえますか」
エリーの肩を揺すって、声をかけているのは道明寺だった。薄暗く、狭い部屋に自分がいることがエリーにはかろうじて分かった。転がされている。体は動かそうとしても動かなかった。
道明寺はエリーのうなじ付近のメンテナンスカバーを開けていた。
「あなた、分かるの?」
エリーは一抹の不安を感じて率直な問いを発した。道明寺はこくりと頷いた。
「ラボにいたことがあるの。佐々木はセキュリティーホールに一瞬で侵入する特技がある」
誰かの声が遠くに聞こえた。女性の声だ。
「エリーさん、聞こえますか」
エリーの肩を揺すって、声をかけているのは道明寺だった。薄暗く、狭い部屋に自分がいることがエリーにはかろうじて分かった。転がされている。体は動かそうとしても動かなかった。
道明寺はエリーのうなじ付近のメンテナンスカバーを開けていた。
「あなた、分かるの?」
エリーは一抹の不安を感じて率直な問いを発した。道明寺はこくりと頷いた。
「ラボにいたことがあるの。佐々木はセキュリティーホールに一瞬で侵入する特技がある」
佐々木は山岡の後ろ姿をじっと見た。沈黙が支配する。佐々木は無言のまま、拳銃を取り出した。山岡の後頭部に狙いを定める。
(これで山岡を殺した犯人はミツオということになる)
佐々木はほくそ笑みながら引き金にかけた指に力が入る。
直後、佐々木のうめき声とともに銃声が響く。銃弾は山岡には当たらなかった。狙いがそれた銃弾は壁に当たり火花が散った。
何が起こったのかを確認するためんび山岡は振り返る。山岡はうなり声を上げるサンシローと佐々木を交互に見た。
「佐々木これはどういうことだ。まさか……」
山岡は腰の後ろに隠していた拳銃を佐々木に向け、躊躇無く引き金を引いた。佐々木の心臓の辺りに銃弾は命中した。佐々木はよろめいたが、動きを止めること無く山岡に体ごと当たった。山岡はなすすべも無く押し倒された。佐々木は倒れること無く、廊下へと続くドアを開けて消えていった。
部屋に残された血のりまみれの山岡にサンシローがすり寄っていた。
(これで山岡を殺した犯人はミツオということになる)
佐々木はほくそ笑みながら引き金にかけた指に力が入る。
直後、佐々木のうめき声とともに銃声が響く。銃弾は山岡には当たらなかった。狙いがそれた銃弾は壁に当たり火花が散った。
何が起こったのかを確認するためんび山岡は振り返る。山岡はうなり声を上げるサンシローと佐々木を交互に見た。
「佐々木これはどういうことだ。まさか……」
山岡は腰の後ろに隠していた拳銃を佐々木に向け、躊躇無く引き金を引いた。佐々木の心臓の辺りに銃弾は命中した。佐々木はよろめいたが、動きを止めること無く山岡に体ごと当たった。山岡はなすすべも無く押し倒された。佐々木は倒れること無く、廊下へと続くドアを開けて消えていった。
部屋に残された血のりまみれの山岡にサンシローがすり寄っていた。
「データにはプロテクトがかけてある。プロテクトがかかったままのデータを消去するのがあいつの仕事だ」
山岡は何かを待つようにゆっくりと話した。
「そうか、それでデータだけを消去できる確率はどれくらいなんだ」
ミツオは自分の体がふらつく感覚を感じながら聞いた。
「五分五分というところだ」
山岡は煙を吐き出す。ミツオは焦点の合わない瞳でうつろに山岡を見る。その直後、意識を無くしたミツオは机に倒れ込んだ。 どれくらいの時間がたっただろうか、ミツオは床に倒れ込んでいた。親分は血の海で倒れ、ミツオはわけも分からず山岡邸から脱出する。
誰も居なくなった部屋。山岡が立ち上がる。血のりのべったり付いた服をどうしていいか分からず声を張り上げる。
「おい、佐々木。もういいだろう。早く着替えを持ってきてくれ」
山岡の背後、酒の置かれた棚が扉のように音も無くスライドする。隠し扉から現れた佐々木の手には山岡の着替えがあった。
「親分、お静かに願います。まだあいつがいるかもしれません」
「そうか、しかし、ここまでする必要があったか?」
「あいつはしつこい男と聞いております。これでしばらくは親分の前には現れないでしょう」
山岡は何かを待つようにゆっくりと話した。
「そうか、それでデータだけを消去できる確率はどれくらいなんだ」
ミツオは自分の体がふらつく感覚を感じながら聞いた。
「五分五分というところだ」
山岡は煙を吐き出す。ミツオは焦点の合わない瞳でうつろに山岡を見る。その直後、意識を無くしたミツオは机に倒れ込んだ。 どれくらいの時間がたっただろうか、ミツオは床に倒れ込んでいた。親分は血の海で倒れ、ミツオはわけも分からず山岡邸から脱出する。
誰も居なくなった部屋。山岡が立ち上がる。血のりのべったり付いた服をどうしていいか分からず声を張り上げる。
「おい、佐々木。もういいだろう。早く着替えを持ってきてくれ」
山岡の背後、酒の置かれた棚が扉のように音も無くスライドする。隠し扉から現れた佐々木の手には山岡の着替えがあった。
「親分、お静かに願います。まだあいつがいるかもしれません」
「そうか、しかし、ここまでする必要があったか?」
「あいつはしつこい男と聞いております。これでしばらくは親分の前には現れないでしょう」
「佐々木がサンシローを奪還してきた。有能な男だよ、あいつは」
「本当にそう思っているのか」
ミツオは厳しい視線を山岡に向ける。山岡は視線を外さなかった。ミツオの問いにも答えなかったが言葉を続ける。
「サンシローのことを調べていくと、どうやら一度インストールした情報は消すことができないということが分かった。情報の消去はサンシローの抹殺を意味する。殺せば良いと思っていたが、一緒に生活するうちにワシには出来ないということに気づいた。どうするべきか悩んだ。そこでバイオ生物にくわしい篠田という男を探し出した」
山岡の前のグラスには琥珀色の液体。いつもミツオが飲んでいる青い色を放つ人造アルコールではない。山岡はミツオにボトルを持ち上げて飲むように促した。ミツオがうなずくと、山岡はボトルから注いだグラスを、立ち上がってミツオの前に置いた。ミツオは目の前のアルコールを一気に飲み干した。胃に炎がともる感覚を感じながらミツオが口をはさむ。
「データの消去を試みたということか。篠田の手にデータが渡ることは考えないのか」
「本当にそう思っているのか」
ミツオは厳しい視線を山岡に向ける。山岡は視線を外さなかった。ミツオの問いにも答えなかったが言葉を続ける。
「サンシローのことを調べていくと、どうやら一度インストールした情報は消すことができないということが分かった。情報の消去はサンシローの抹殺を意味する。殺せば良いと思っていたが、一緒に生活するうちにワシには出来ないということに気づいた。どうするべきか悩んだ。そこでバイオ生物にくわしい篠田という男を探し出した」
山岡の前のグラスには琥珀色の液体。いつもミツオが飲んでいる青い色を放つ人造アルコールではない。山岡はミツオにボトルを持ち上げて飲むように促した。ミツオがうなずくと、山岡はボトルから注いだグラスを、立ち上がってミツオの前に置いた。ミツオは目の前のアルコールを一気に飲み干した。胃に炎がともる感覚を感じながらミツオが口をはさむ。
「データの消去を試みたということか。篠田の手にデータが渡ることは考えないのか」
「サンシローの具合はその後どうなりましたか」
ミツオは言葉を続けた。
「まだ処置の最中で入院しておる」
山岡は葉巻を唇からはなす。
「サンシローは作られた人工物であることを私は知っています。一体、道明寺との間で、一体何があったのかお聞かせいただけるとさいわいです」
ミツオはまっすぐ山岡の目を見た。 山岡は観念したように、立ったままのミツオに座るように椅子を促した。
「あの道明寺という女とワシは一時的に親しい間柄になっていた。しかし、ワシの心が離れたことを察知した瞬間、脅しおったのだ」
「ネタは?」
「ワシが財界人を脅していた元データがロックされた。そのデータの復旧を交換条件として提示してきた」
「破壊されたのか?」
「いいや。道明寺とやりとりをしている間に、どこに復旧をデータがあるのかを手下を使って調べた」
ミツオが口を開く。
「データをサンシローに入れたんだな。手下の誰が突き止めたんだ?」
「右腕の佐々木という男を知らんか」
「佐々木……」
ミツオはその名前を聞いて、無性にタバコが吸いたくなった。
ミツオは言葉を続けた。
「まだ処置の最中で入院しておる」
山岡は葉巻を唇からはなす。
「サンシローは作られた人工物であることを私は知っています。一体、道明寺との間で、一体何があったのかお聞かせいただけるとさいわいです」
ミツオはまっすぐ山岡の目を見た。 山岡は観念したように、立ったままのミツオに座るように椅子を促した。
「あの道明寺という女とワシは一時的に親しい間柄になっていた。しかし、ワシの心が離れたことを察知した瞬間、脅しおったのだ」
「ネタは?」
「ワシが財界人を脅していた元データがロックされた。そのデータの復旧を交換条件として提示してきた」
「破壊されたのか?」
「いいや。道明寺とやりとりをしている間に、どこに復旧をデータがあるのかを手下を使って調べた」
ミツオが口を開く。
「データをサンシローに入れたんだな。手下の誰が突き止めたんだ?」
「右腕の佐々木という男を知らんか」
「佐々木……」
ミツオはその名前を聞いて、無性にタバコが吸いたくなった。
左目に眼帯をつけた男は、上から下までミツオを見る。この男の眼帯に覆われ目は、金属探知機の機能を有している。何の反応も無いはずだ。武器は持っていない。
「安心しろ丸腰だよ。入れろって親分に言われたんだろ。入るぞ」
ミツオは男を上から下までなめ回すように見返した後、鉄扉を肩で押し開いて中に入る。
眼帯の男がそれもそうだと、いざなう素振りを示しながらミツオを先導する。興味なのか、男は何度も振り返りつつミツオを案内する。地下に続く階段を降りた。奥へと続く廊下があり、突き当たりのドアを男はノックした。
「連れてきました」
しばらくの沈黙のあと、低い声が聞こえた。
「入れ」
「失礼します」
眼帯の男が先導して部屋に入る。
マホガニーの大きなテーブルの奥に山岡はどっしりと座っていた。
山岡は葉巻のけむり越しにミツオを見ている。
「昨夜の騒動は聞いているぞ。あれはお前だろう」
「はい」
病院への侵入を隠そうとしないミツオに山岡は少し驚く。
「病室の様子を自分の目で見て、親分が何をしようとされているかが分かりました」
山岡は眉をぴくりと動かした。
「本当か?」
「安心しろ丸腰だよ。入れろって親分に言われたんだろ。入るぞ」
ミツオは男を上から下までなめ回すように見返した後、鉄扉を肩で押し開いて中に入る。
眼帯の男がそれもそうだと、いざなう素振りを示しながらミツオを先導する。興味なのか、男は何度も振り返りつつミツオを案内する。地下に続く階段を降りた。奥へと続く廊下があり、突き当たりのドアを男はノックした。
「連れてきました」
しばらくの沈黙のあと、低い声が聞こえた。
「入れ」
「失礼します」
眼帯の男が先導して部屋に入る。
マホガニーの大きなテーブルの奥に山岡はどっしりと座っていた。
山岡は葉巻のけむり越しにミツオを見ている。
「昨夜の騒動は聞いているぞ。あれはお前だろう」
「はい」
病院への侵入を隠そうとしないミツオに山岡は少し驚く。
「病室の様子を自分の目で見て、親分が何をしようとされているかが分かりました」
山岡は眉をぴくりと動かした。
「本当か?」
「エリーをどこに連れて行った。佐々木の居場所は知っているのか」
道明寺はただ黙って首を左右に振るだけだった。
店内を見回し、裏口の存在に気づいたミツオは駆け寄ってドアを開ける。
エリーを肩に抱え上げて飛び上がる佐々木の後ろ姿が見えた。佐々木の下半身は人のものではなく、メカがインストールされた異形のものに見えた。
(メカ置換していやがる)
道明寺のもとに戻っても無駄だと判断したミツオは車に乗り込み、自分の事務所に戻ることにした。
翌日、鉄の扉が四方を囲む山岡興業の建物の前にミツオは立っていた。 インターホンについているカメラをのぞき込みながらミツオは呼び出しボタンを押す。
「山岡親分はいるか」
「いねえよ」
スピーカーからしわがれ声が聞こえる。
「サンシローの件で来たと親分に伝えてもらえるか」
「……」
スピーカーの男の返答はない。
しばらく待っていると、さきほどの声の主と思われる男が現れた。
道明寺はただ黙って首を左右に振るだけだった。
店内を見回し、裏口の存在に気づいたミツオは駆け寄ってドアを開ける。
エリーを肩に抱え上げて飛び上がる佐々木の後ろ姿が見えた。佐々木の下半身は人のものではなく、メカがインストールされた異形のものに見えた。
(メカ置換していやがる)
道明寺のもとに戻っても無駄だと判断したミツオは車に乗り込み、自分の事務所に戻ることにした。
翌日、鉄の扉が四方を囲む山岡興業の建物の前にミツオは立っていた。 インターホンについているカメラをのぞき込みながらミツオは呼び出しボタンを押す。
「山岡親分はいるか」
「いねえよ」
スピーカーからしわがれ声が聞こえる。
「サンシローの件で来たと親分に伝えてもらえるか」
「……」
スピーカーの男の返答はない。
しばらく待っていると、さきほどの声の主と思われる男が現れた。
「エリーをどこに連れて行った。佐々木の居場所は知っているのか」
道明寺はただ黙って首を左右に振るだけだった。
店内を見回し、裏口の存在に気づいたミツオは駆け寄ってドアを開ける。
エリーを肩に抱え上げて飛び上がる佐々木の後ろ姿が見えた。佐々木の下半身は人のものではなく、メカがインストールされた異形のものに見えた。
(メカ置換していやがる)
道明寺のもとに戻っても無駄だと判断したミツオは車に乗り込み、自分の事務所に戻ることにした。
翌日、鉄の扉が四方を囲む山岡興業の建物の前にミツオは立っていた。 インターホンについているカメラをのぞき込みながらミツオは呼び出しボタンを押す。
「山岡親分はいるか」
「いねえよ」
スピーカーからしわがれ声が聞こえる。
「サンシローの件で来たと親分に伝えてもらえるか」
「……」
スピーカーの男の返答はない。
しばらく待っていると、さきほどの声の主と思われる男が現れた。
道明寺はただ黙って首を左右に振るだけだった。
店内を見回し、裏口の存在に気づいたミツオは駆け寄ってドアを開ける。
エリーを肩に抱え上げて飛び上がる佐々木の後ろ姿が見えた。佐々木の下半身は人のものではなく、メカがインストールされた異形のものに見えた。
(メカ置換していやがる)
道明寺のもとに戻っても無駄だと判断したミツオは車に乗り込み、自分の事務所に戻ることにした。
翌日、鉄の扉が四方を囲む山岡興業の建物の前にミツオは立っていた。 インターホンについているカメラをのぞき込みながらミツオは呼び出しボタンを押す。
「山岡親分はいるか」
「いねえよ」
スピーカーからしわがれ声が聞こえる。
「サンシローの件で来たと親分に伝えてもらえるか」
「……」
スピーカーの男の返答はない。
しばらく待っていると、さきほどの声の主と思われる男が現れた。
佐々木は両手の指をパチパチさせながら踊るような足取りで進んでくる。
「動物病院からここに直行するとは思わなかった。命中した俺の追跡装置に、あんた達気づいてないだろう。まあいい、探偵様これからどうするね」
佐々木はミツオを視界の端におきながらカウンターの隅に腰掛けた。佐々木には動じず、ミツオは口を開く。
「ひとつ聞いても良いか」
「なにかね」
佐々木はゆっくりとした動きで道明寺が出した酒をあおる。
「あんたは、何が目的で親分をおどしている?」
佐々木はリズムを刻むように体を左右にゆすりながらミツオを見る。
「どうしてそう思う」
ミツオはタバコに火を点けた。煙と共に言葉を吐き出す。
「道明寺一人で、山岡を脅すネタは集まらない。ネタがあったとしてもサンシローにネタをインプットすることは道明寺には不可能だ」
佐々木は一瞬うつむいた。そしてミツオの目をまっすぐ見る。
「そこまで分かっているあんたに、どうして俺が仕事を依頼したのかは考えないのか」
佐々木の姿がミツオの前から消えた。正確にはミツオの背後に立っていたエリーの「あっ」という声で、エリーを見るために振り返るミツオ。その直後、佐々木の居た位置から爆裂音が聞こえた。もう一度振り返ると、佐々木は忽然と姿を消していた。 そしてエリーも消えていた。
道明寺が口を開く。
「サンシローを山岡親分から取り返すほか、あなたには道が無いようです」
「動物病院からここに直行するとは思わなかった。命中した俺の追跡装置に、あんた達気づいてないだろう。まあいい、探偵様これからどうするね」
佐々木はミツオを視界の端におきながらカウンターの隅に腰掛けた。佐々木には動じず、ミツオは口を開く。
「ひとつ聞いても良いか」
「なにかね」
佐々木はゆっくりとした動きで道明寺が出した酒をあおる。
「あんたは、何が目的で親分をおどしている?」
佐々木はリズムを刻むように体を左右にゆすりながらミツオを見る。
「どうしてそう思う」
ミツオはタバコに火を点けた。煙と共に言葉を吐き出す。
「道明寺一人で、山岡を脅すネタは集まらない。ネタがあったとしてもサンシローにネタをインプットすることは道明寺には不可能だ」
佐々木は一瞬うつむいた。そしてミツオの目をまっすぐ見る。
「そこまで分かっているあんたに、どうして俺が仕事を依頼したのかは考えないのか」
佐々木の姿がミツオの前から消えた。正確にはミツオの背後に立っていたエリーの「あっ」という声で、エリーを見るために振り返るミツオ。その直後、佐々木の居た位置から爆裂音が聞こえた。もう一度振り返ると、佐々木は忽然と姿を消していた。 そしてエリーも消えていた。
道明寺が口を開く。
「サンシローを山岡親分から取り返すほか、あなたには道が無いようです」