朝日の気配を感じる室内。
啓介は目をさました。
薄暗い寝室。
妻の京子と息子の芳雄は窮屈そうにくっついて眠っている。
休日の朝は早起きする。
平日は目覚まし時計が鳴り響いて、いやいや起きるというのに、休みの日は眠っていられない。
自然と早くに目が覚める。
妻と子供が眠っている間に撮りためたビデオをチェックする。
階下に降りリビングのソファに座った。
妻は家事は苦手だ。
昨夜の食器がシンクに放置されている。
しょうがないな…
そう思いながら食器を洗う。
冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出し、氷を入れた大きめのグラスに注ぐ。
昨夜の後輩の一言が蘇る。
「先輩、リアル・ワンって知ってます?ネットの噂ですごいらしいんです」
書類を片づけながら生返事を返した。
「ねえ、聞いてます先輩。自分の欲求が現実化するアプリらしいんです」
(リアル・ワンねえ)
そんな事をぼんやり考えながらテレビを点けた。
月曜日
昨日はショッピングモールにかり出された。
1日中妻と子供はモール内を歩き回っていた。
元気なもんだ。
後輩が話しかけてきた。
「おはようございます先輩」
「おお、おはよう」
「アプリ入れましたよ。最高です」
何だかうれしそうだ。
「何の話だっけ?」
「アプリですよ。俺、実は借金があって金がほしいって入力したんですよ。そしたら次の日の朝、ポストに封筒に入った現金が放り込まれてたんです」
「いくら入ってたの」
「200万」
絶句した。
「そんな大金、おまえ大丈夫なのかそれ」
「大丈夫っすよ。先輩もダウンロードした方がいいっすよ」
そう言いながら部屋から出て行った。
昼休みにスマホで検索する。
リアル・ワン
噂では確かに入力した希望が実現する夢のアプリらしい。
庭の草を刈ってほしい。
野良猫がうるさい。
ゴミ出しの監視がうるさい。
などなど。
次の日の朝には改善されているらしい。
しかし金となると話は別だ。
どこから来た金なのか。
どっちにしろ正体不明のアプリだと思った。
仕事が終わり家に帰った。
息子が出迎えてくれる。
妻も出迎えてくれた。
夕食の食卓で妻に言った。
「そういえば後輩が変なアプリにはまっているらしい」
「変って?」
聞いた話をそのまま言った。
妻はいぶかしがるどころか、興味津々なのが意外だった。
火曜日、会社の近所で金融機関が襲われたのを営業車のラジオで聞いた。
白昼堂々の犯行だった。
しかし、盗難車を何台も乗り継ぎ消えたとの事だった。
夕方、会社に戻り、車から降り、エレベータを待っていた。
後輩が営業車で戻ってきた。
よっと軽く手を挙げて挨拶したが、後輩は真っ直ぐ前を見たまま無視した。
変な感じだな。
そう思ったが、エレベーターは到着し、そのまま乗り込んだ。
そんな事もあるかな。
水曜日にはコンビニ、木曜日は銀行が襲われた。
いずれも会社の近所だ。
その日の夜、妻と話していた。
あれそういえば家の中が綺麗なことに気づいた。
以前は、洗濯物は2週間に1度、食器は3日に1回洗うのがやっとだったのに今は家のすみずみまで磨かれている。
「どうしたんだ。家事に目覚めたのかい。がんばってるね」
「うん、まあね」
そう言ってあいまいな表情を浮かべ、妻はキッチンに消えていった。
金曜日の夜、たまらない睡魔に襲われた。
妻が意味深にこちらを観察しているような気がした。
悪い予感がした。
(この眠気はおかしい。)
そう思った俺は直感的にトイレに這うように向かった。
そして指をのどに押し込み、吐いた。
これは薬物だ。
そう思ったのだ。
次の瞬間、誰かが背後から俺ののどを絞めた。
ぐう
なんだかわからい。
そのまま真後ろに飛び下がる。
廊下の壁にたたきつける。
首をしめる手の力がゆるんだ。
手を振り払い立ち上がる。
そこには気を失った妻が倒れていた。
なんで…
土曜日の早朝、後輩が捕まった。
会社の近所で多発していた連続強盗犯だ。
本人にはまったく覚えが無いとの事だが、奪われた同じ番号の現金が部屋から発見され逮捕された。
アプリでもらったと意味不明の供述を繰り返しているとの事だ。
妻はまだ眠っている。
妻の行動はいまだ理解出来ない。
なぜだ。
妻のスマホの電源を入れた。
そこには「リアル・ワン」があった。
起動する。
「なにをして欲しい?」
その問いかけに妻は「炊事」「洗濯」と打ち込んであった。
金曜日の朝はこう入力されていた。
「自分の時間が欲しい」
その後リアル・ワンの実体があきらかになってきた。
欲望を実行するのはアプリに操られた無意識の自分だったのだ。
啓介は目をさました。
薄暗い寝室。
妻の京子と息子の芳雄は窮屈そうにくっついて眠っている。
休日の朝は早起きする。
平日は目覚まし時計が鳴り響いて、いやいや起きるというのに、休みの日は眠っていられない。
自然と早くに目が覚める。
妻と子供が眠っている間に撮りためたビデオをチェックする。
階下に降りリビングのソファに座った。
妻は家事は苦手だ。
昨夜の食器がシンクに放置されている。
しょうがないな…
そう思いながら食器を洗う。
冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出し、氷を入れた大きめのグラスに注ぐ。
昨夜の後輩の一言が蘇る。
「先輩、リアル・ワンって知ってます?ネットの噂ですごいらしいんです」
書類を片づけながら生返事を返した。
「ねえ、聞いてます先輩。自分の欲求が現実化するアプリらしいんです」
(リアル・ワンねえ)
そんな事をぼんやり考えながらテレビを点けた。
月曜日
昨日はショッピングモールにかり出された。
1日中妻と子供はモール内を歩き回っていた。
元気なもんだ。
後輩が話しかけてきた。
「おはようございます先輩」
「おお、おはよう」
「アプリ入れましたよ。最高です」
何だかうれしそうだ。
「何の話だっけ?」
「アプリですよ。俺、実は借金があって金がほしいって入力したんですよ。そしたら次の日の朝、ポストに封筒に入った現金が放り込まれてたんです」
「いくら入ってたの」
「200万」
絶句した。
「そんな大金、おまえ大丈夫なのかそれ」
「大丈夫っすよ。先輩もダウンロードした方がいいっすよ」
そう言いながら部屋から出て行った。
昼休みにスマホで検索する。
リアル・ワン
噂では確かに入力した希望が実現する夢のアプリらしい。
庭の草を刈ってほしい。
野良猫がうるさい。
ゴミ出しの監視がうるさい。
などなど。
次の日の朝には改善されているらしい。
しかし金となると話は別だ。
どこから来た金なのか。
どっちにしろ正体不明のアプリだと思った。
仕事が終わり家に帰った。
息子が出迎えてくれる。
妻も出迎えてくれた。
夕食の食卓で妻に言った。
「そういえば後輩が変なアプリにはまっているらしい」
「変って?」
聞いた話をそのまま言った。
妻はいぶかしがるどころか、興味津々なのが意外だった。
火曜日、会社の近所で金融機関が襲われたのを営業車のラジオで聞いた。
白昼堂々の犯行だった。
しかし、盗難車を何台も乗り継ぎ消えたとの事だった。
夕方、会社に戻り、車から降り、エレベータを待っていた。
後輩が営業車で戻ってきた。
よっと軽く手を挙げて挨拶したが、後輩は真っ直ぐ前を見たまま無視した。
変な感じだな。
そう思ったが、エレベーターは到着し、そのまま乗り込んだ。
そんな事もあるかな。
水曜日にはコンビニ、木曜日は銀行が襲われた。
いずれも会社の近所だ。
その日の夜、妻と話していた。
あれそういえば家の中が綺麗なことに気づいた。
以前は、洗濯物は2週間に1度、食器は3日に1回洗うのがやっとだったのに今は家のすみずみまで磨かれている。
「どうしたんだ。家事に目覚めたのかい。がんばってるね」
「うん、まあね」
そう言ってあいまいな表情を浮かべ、妻はキッチンに消えていった。
金曜日の夜、たまらない睡魔に襲われた。
妻が意味深にこちらを観察しているような気がした。
悪い予感がした。
(この眠気はおかしい。)
そう思った俺は直感的にトイレに這うように向かった。
そして指をのどに押し込み、吐いた。
これは薬物だ。
そう思ったのだ。
次の瞬間、誰かが背後から俺ののどを絞めた。
ぐう
なんだかわからい。
そのまま真後ろに飛び下がる。
廊下の壁にたたきつける。
首をしめる手の力がゆるんだ。
手を振り払い立ち上がる。
そこには気を失った妻が倒れていた。
なんで…
土曜日の早朝、後輩が捕まった。
会社の近所で多発していた連続強盗犯だ。
本人にはまったく覚えが無いとの事だが、奪われた同じ番号の現金が部屋から発見され逮捕された。
アプリでもらったと意味不明の供述を繰り返しているとの事だ。
妻はまだ眠っている。
妻の行動はいまだ理解出来ない。
なぜだ。
妻のスマホの電源を入れた。
そこには「リアル・ワン」があった。
起動する。
「なにをして欲しい?」
その問いかけに妻は「炊事」「洗濯」と打ち込んであった。
金曜日の朝はこう入力されていた。
「自分の時間が欲しい」
その後リアル・ワンの実体があきらかになってきた。
欲望を実行するのはアプリに操られた無意識の自分だったのだ。
「わあー、いいにおいー」
牛丼屋の店内に響きわたる子供の声。
テーブル席に座っている家族連れだ。
子供は思ったことを何でも口にするな。
私はそう思いながら牛丼をかき込んだ。
あいかわらずうまい。
しょうがを牛丼と牛丼の合間に口に放り込んだ。
「お母さん今日もいっぱいいるね」
ん、いっぱい?
妙なことをいうな。
昼近くに目が覚めて、だらだら部屋の中で過ごしてからここに来たので中途半端な時間。
午後3時前。
お客は私とその家族だけだ。
お父さんとお母さん、そして4歳ぐらいのぼっちゃん。
お父さんは小声で言った。
「そうだね。いつもここは一杯だね」
お母さんも小声で言った。
「あのお兄さんのいるところなんて特にいっぱいね」
ちらっと気の毒そうな顔でこちらを見るお母さんと目が合う。
慌てて目をそらすお母さん。
(なんだ、私の周りに何かが、いっぱいいるのか?)
お父さんはお母さんの肩をぽんとひとつ叩いて立ち上がった。
こちらに来る。
脇にある自動販売機にお金を投入しながら話しかけられた。
「それを食べたら、自分に何が起こったのかよーく考えてごらん。
何を言っているか今は分からないだろう。
でも、よーっく思い返してごらん。
私の言っている事が理解できるから」
ぎょっとして私はそのお父さんを下から見上げた。
その視線を真っ向から受け止め、目を閉じ、ひとつ頷き、そのまま無言で家族は店内を後にした。
何をいっているんだ。ただ牛丼を食べているだけだぞ私は…
思い返せだって…
昨日は仕事がおわって、まっすぐ家に帰って…
いや
帰る途中のあの交差点。
あの信号。
赤信号で立っていたんだ。
キキキー
スキール音。
迫るヘッドライト。
衝撃。
フロントガラスに頭を砕かれる。
堅いアスファルトに投げ出される。
俺は、昨夜…
死んだんだな。
そう気づいた。
その瞬間、店内の風景が一変した。
たくさんの血みどろの幽霊で店内はいっぱいだ。
私もそのひとりだった。
牛丼屋の店内に響きわたる子供の声。
テーブル席に座っている家族連れだ。
子供は思ったことを何でも口にするな。
私はそう思いながら牛丼をかき込んだ。
あいかわらずうまい。
しょうがを牛丼と牛丼の合間に口に放り込んだ。
「お母さん今日もいっぱいいるね」
ん、いっぱい?
妙なことをいうな。
昼近くに目が覚めて、だらだら部屋の中で過ごしてからここに来たので中途半端な時間。
午後3時前。
お客は私とその家族だけだ。
お父さんとお母さん、そして4歳ぐらいのぼっちゃん。
お父さんは小声で言った。
「そうだね。いつもここは一杯だね」
お母さんも小声で言った。
「あのお兄さんのいるところなんて特にいっぱいね」
ちらっと気の毒そうな顔でこちらを見るお母さんと目が合う。
慌てて目をそらすお母さん。
(なんだ、私の周りに何かが、いっぱいいるのか?)
お父さんはお母さんの肩をぽんとひとつ叩いて立ち上がった。
こちらに来る。
脇にある自動販売機にお金を投入しながら話しかけられた。
「それを食べたら、自分に何が起こったのかよーく考えてごらん。
何を言っているか今は分からないだろう。
でも、よーっく思い返してごらん。
私の言っている事が理解できるから」
ぎょっとして私はそのお父さんを下から見上げた。
その視線を真っ向から受け止め、目を閉じ、ひとつ頷き、そのまま無言で家族は店内を後にした。
何をいっているんだ。ただ牛丼を食べているだけだぞ私は…
思い返せだって…
昨日は仕事がおわって、まっすぐ家に帰って…
いや
帰る途中のあの交差点。
あの信号。
赤信号で立っていたんだ。
キキキー
スキール音。
迫るヘッドライト。
衝撃。
フロントガラスに頭を砕かれる。
堅いアスファルトに投げ出される。
俺は、昨夜…
死んだんだな。
そう気づいた。
その瞬間、店内の風景が一変した。
たくさんの血みどろの幽霊で店内はいっぱいだ。
私もそのひとりだった。
スマホを買った。
ピカピカの最新機種だ。
ショップで買った帰り道、早速使っている。
ふふふ、前に座っているあのサラリーマンのは前の機種だ。
見せつけるように操作しながら横切る。
見てる、見てる。
気分いいな。
さあさあ、どけどけ、歩きながら操作するぜ。
最新のスマホと俺。
どうですか、世間の皆様。
俺様を見て下さい。
その時、メールを受信した。
見覚えの無い名前。
件名:天知る、地知る、人ぞ知る。至急読め!
で始まるメールだ。
本文に進む。
「15秒以内に以下の内容を5人のお友達に知らせて」
(ん、この感じはチェーンメールか。不幸の手紙なんて今時悪趣味だな)
怒りでスマホを持つ手に力が入り、歩く速度も気持ち早足になった。
メールはこう続いていた。
「歩きながらのスマホは危険です。今すぐ立ち止まって5人のお友達にこのメールを送って!
どうやら止まる様子はありませんね。加速度センサーがスマホには搭載されているのであなたの状況はわかります。
今すぐ止まれ!
10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・ゼロ
ブー
時間切れ」
グニ…
スニーカーの底に嫌な感触を感じる。
立ち止まり、靴底を確認する。
犬のうんこ。
メールは余白をはさみ続いていた。
画面をしばらくスクロールさせる。
「ほらね。言ったでしょう危険だって」
ピカピカの最新機種だ。
ショップで買った帰り道、早速使っている。
ふふふ、前に座っているあのサラリーマンのは前の機種だ。
見せつけるように操作しながら横切る。
見てる、見てる。
気分いいな。
さあさあ、どけどけ、歩きながら操作するぜ。
最新のスマホと俺。
どうですか、世間の皆様。
俺様を見て下さい。
その時、メールを受信した。
見覚えの無い名前。
件名:天知る、地知る、人ぞ知る。至急読め!
で始まるメールだ。
本文に進む。
「15秒以内に以下の内容を5人のお友達に知らせて」
(ん、この感じはチェーンメールか。不幸の手紙なんて今時悪趣味だな)
怒りでスマホを持つ手に力が入り、歩く速度も気持ち早足になった。
メールはこう続いていた。
「歩きながらのスマホは危険です。今すぐ立ち止まって5人のお友達にこのメールを送って!
どうやら止まる様子はありませんね。加速度センサーがスマホには搭載されているのであなたの状況はわかります。
今すぐ止まれ!
10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・ゼロ
ブー
時間切れ」
グニ…
スニーカーの底に嫌な感触を感じる。
立ち止まり、靴底を確認する。
犬のうんこ。
メールは余白をはさみ続いていた。
画面をしばらくスクロールさせる。
「ほらね。言ったでしょう危険だって」
何にでも相性があるのだな。
人間関係しかり。
誰とも気が合いそうで、誰とも気が合わない。
卑屈な態度を取るという訳ではないが、相手の下手下手に出る。
いつかこちらの我慢の限度を超える。
その相手と疎遠になる。
その繰り返しで現在にいたる。
まあ、そんな事はどうでも良い。
相性の話だ。
現在の俺の生業はハッキングだ。
たくさんの人々のパソコンから少額の金を盗む。
まあ、ほとんどの人間は気づかない。
そうやってコツコツと盗みを続け、生活には困らないレベルを維持している。
生活に余裕が出ると、趣味に走る。
情報への侵入。
不思議と昔のパソコンを使って侵入すると、思いもよらない領域へ入れる事がある。
5インチのフロッピーを入れ替え、こちらのプログラムを立ち上げ侵入する。
そうすると、相手のコンピュータがこちらを迎え入れる、そんな感覚になる瞬間がある。
先日も、そんな領域に踏み込んだ。
どうやらパラメータを自動で振り替え、計算し、ある数字を導いているプログラムに出会った。
20075日
社会貢献度100
行き先:天国
31025日
社会貢献度-500
行き先:地獄
次の日の朝、新聞を見て数字の意味が分かった。
早すぎる死、人気作家ガンのため死亡。55歳。
最後の戦犯。獄中死85歳。
各の年齢に365日を掛けると、先日の数字になった。
どうやら死亡するまでの日数及び死後の行き先は件のプログラムが自動で振り分けているらしい。
俺は間違いなく地獄行きだ。
人間関係しかり。
誰とも気が合いそうで、誰とも気が合わない。
卑屈な態度を取るという訳ではないが、相手の下手下手に出る。
いつかこちらの我慢の限度を超える。
その相手と疎遠になる。
その繰り返しで現在にいたる。
まあ、そんな事はどうでも良い。
相性の話だ。
現在の俺の生業はハッキングだ。
たくさんの人々のパソコンから少額の金を盗む。
まあ、ほとんどの人間は気づかない。
そうやってコツコツと盗みを続け、生活には困らないレベルを維持している。
生活に余裕が出ると、趣味に走る。
情報への侵入。
不思議と昔のパソコンを使って侵入すると、思いもよらない領域へ入れる事がある。
5インチのフロッピーを入れ替え、こちらのプログラムを立ち上げ侵入する。
そうすると、相手のコンピュータがこちらを迎え入れる、そんな感覚になる瞬間がある。
先日も、そんな領域に踏み込んだ。
どうやらパラメータを自動で振り替え、計算し、ある数字を導いているプログラムに出会った。
20075日
社会貢献度100
行き先:天国
31025日
社会貢献度-500
行き先:地獄
次の日の朝、新聞を見て数字の意味が分かった。
早すぎる死、人気作家ガンのため死亡。55歳。
最後の戦犯。獄中死85歳。
各の年齢に365日を掛けると、先日の数字になった。
どうやら死亡するまでの日数及び死後の行き先は件のプログラムが自動で振り分けているらしい。
俺は間違いなく地獄行きだ。