電波障害のある暮らし
昔は良かった。電波障害というものが無かった時代。人々は自由にスマホでギガをやりとりし、wifiをワイワイファイファイと飛ばしていた時代。ある時から電波が飛ばなくなった。大気中の成分の変化か、はたまたミノフスキー粒子の影響か、原因は分からなかった。
電話は有線に戻り、スマホが使えなくなった人々は公衆電話でのやりとりにもどった。アプリの幸福を忘れられない大衆は公衆電話にランケーブルを繋いだ。公衆電話はアクセスポイントと化した。一台の公衆電話に何十本ものケーブルが繋がれた。長さが五メートル以上のランケーブルが爆発的に売れた。
家の中ではあらゆるリモコン、コントローラーが有線化された。テレビからひもが出ていてリモコンにつながっている。ゲーム機のコントローラーはもちろん有線。VRゴーグルも有線。くるりと一回転してしまうとケーブルが首に巻き付いた。
wifiが無くなった家族はリビングのADSL端末に群がった。
電波が飛ばなくなって良かった事は家族が一つの部屋に集合したことだった。