日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
http://onimimicola.jimdofree.com

◎本日の想像話「鳴り止まない音、それはハイヒールの靴音」

2016年05月29日 | ◎これまでの「OM君」
その日も俺は同僚と居酒屋で安酒を飲んでいた。
「そういえばあの女の子はどうしたの?昭子ちゃん。まだつきあってるの」
目の前の同僚は俺に聞いた。
「とっくに別れた。もともと二股かけてたし。ちょっとばれたらぎゃーぎゃー騒ぐから部屋から放り出した。それっきり」
「いいよなお前はイケメンだもんな。でも何やっても許されるわけじゃあないぞ」
「いいんだよ。イケメンは何やっても許されんだよ」
そういって俺はグラスの酒をあおった。

背後からハイヒールの足音が聞こえた。
振り返ったが誰も歩いていない。
なおハイヒールの音は聞こえ続けている。
「おい、なんか聞こえる?」
「別に」
「女ものの靴音聞こえない?」
「いいや。なんか聞こえるの。お前だけ?それって歴々の振った女の呪いじゃねえの」
「変な事、言うなよ」
俺の顔は強ばった。
ネットの時代だぞ今は。呪いなんてばかばかしい。俺は信じないぞ。
しかし、事実、ハイヒールの足音は鳴りやまない。
平静を装いながら、早めのお開きとした。
いくら酒を飲んでも酔いやしない。
相変わらず聞こえているのだ。
しかも、最初はすごくゆっくりだった歩調だった。
今や完全に全力で走っているのだ。
俺は今や気が狂わんばかりだ。
店を出て最寄り駅に向かった。電車に乗っている。
ずっとだ。
ずっと足音がついてきている。
これ、このまま家に帰っても大丈夫なのか?
部屋の中に一緒に入ってきて姿を現すってオチじゃあないの。
電車は停車した。
降りる駅じゃあないがだまって電車に乗っていられる心境ではない。
ドアが開ききるのも待ちきれず、開いている最中のドアの隙間に体を斜めにねじ込みながら降りる。
ホームを走る。
階段を上る。
改札を出る。
聞こえる。
全力疾走のハイヒールの靴音が追いかけてくる。
階段を下る。
そのとき、つまずいた。
普段、運動の「う」の字もしていない。
足がもつれた。
体は宙に投げ出された。
踊り場までまっさかさまだ。
顔面をしたたか打ちつけた。
鉄の味が口の中にひろがる。
起きあがれない。
体のどこをどう痛めたのか、見るのも怖い。
俺を見下すいろいろの人の顔が視界に入る。
あれっ、昭子。
なんでここにいる……


「これが超指向性スピーカーになります。一見スマホ風の外観に仕立てました。この指向性スピーカーは向けた相手にだけ音が聞こえるように出来ています。これが現代の呪いです。さあ、昭子さん。存分に恨みを晴らしてください。ああ、お代は結構です。ただし、実行の日時を教えてください。私、人が苦しむのを観察するの事が大好物なんです」
こういったやりとりが新宿の喫茶店であった事をイケメンは知らない。
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◎本日の卵

2016年05月29日 | ◎これまでの「OM君」
誕生
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◎本日の卵

2016年05月29日 | ◎これまでの「OM君」
変化
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◎ほんじつの卵

2016年05月29日 | ◎これまでの「OM君」
はじまり
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◎本日の空想話「アウトドア命の男」

2016年05月08日 | ◎これまでの「OM君」
俺はアウトドアが大好きな男。
37歳、独身。
火気OKのキャンプ場に到着した。
さあ、俺様のアウトドアライフを周りに見せつけてやるぜぇ~。

車は4×4。
でも搭乗人数は俺一人。
なんて贅沢。
おもむろに運転席から降りる。
後部ドアを開ける俺。
まずする事は猫車を荷台から下ろすことだ。
猫車と言っても改造猫車だ。
一輪はやめてインチダウンさせた4輪になっている。
そして荷台は箱型にした。
仰々しいがここまで用意しておくとすべての道具が一度に運べるのだ。
ちなみにこの改造猫車は変形する。
テーブルになる。
この猫車テーブルが食事などのアウトドアライフの中心となる。

次に下ろすのは発電機。
ガソリン式ではなくガス式だ。
発電機の騒音は周囲の迷惑となる。
ガソリン式ではなおさらだ。
ジェントルなアウトドアマンはスマートにガス式をチョイスする。
そして、炊飯器、電子レンジ、ホットプレート、パソコン、パーソナル冷風機、テレビ、ブルーレイを下ろし、乗せる。
運ぶぞ。

さあ、本日のアウトドア空間に到着した。
まず米を炊く。
無洗米だ。
炊飯ジャーに無洗米を入れ、水を入れ、スイッチオン。
かってに炊けるだろう。
米が炊けるまでの間は昼寝でもして待とうか…。


おっ、米が炊けたようだ。
では続きましてコンビニで買ってきたお総菜を電子レンジでチーンとします。
ウグイスの鳴き声がアウトドア気分を高めてくれます。
草木のにおいも最高です。
ただちょっと蒸し暑いので冷風機のスイッチを入れます。
おーさわやかな冷風が吹き付けます。
アウトドア最高。
ホットプレートのスイッチを入れ、松坂牛の生肉をじゅーっと焼きます。
さあ、最高のランチが青空の下、できあがりました。
うまい。
アウトドア最高。

食事の後は50型テレビとブルーレイハードディスクをつないで、撮りためておいたテレビを見ます。
ああ、アウトドア最高!


遠くで見ていた子供がお父さんに聞きました。
「あの人、お家みたいになっててすごいね」
「ああ、すごいね。
ある意味すごいよ。まあ、俺はしないけど」
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◎本日の空想話「歓迎される強盗」

2016年05月07日 | ◎これまでの「OM君」
とある昼下がりの出来事だった。
「金を出せ!」
カウンターに並んでいた男が突然叫んだ。
手にはピストルが握られている。
しかしその場にいる人々、行員の反応は薄い。
ATMの処理を淡々とするもの、雑誌から顔を上げ、つまらなそうにまた雑誌に視線をおとすもの。
男一人だけが心拍数を上げ、汗をかいていた。
「いらっしゃいませ。どうか興奮されずにこちらのカウンターまでどうぞ」
男を呼ぶ女性行員はいたって冷静だ。
男は行員に走り寄り「金をだせ!」
先ほどと同じ台詞を言った。
「はい、かしこまりました。ちなみにお伺いいたしますが、警察を呼ばれるのはお好みですか?」
「だめに決まってるだろ!早く金をだせ!」
「はいはい、お金はお出しします。が、最後にお聞きいたしますが、警察沙汰にはしたくないのですね」
「金は欲しい。警察にはつかまりたくない。当たり前だろ」
「かしこまりました。それではとりあえず500万円お出しいたしましょう。」
カウンター下をゴソゴソとさぐった行員は100万円の束5個をトレーの上に出した。
「おう」
男は手を出し、お金を取ろうとした。
女性行員はそのタイミングでトレーをひっこめた。
「なにしやがる」
男はいらついた。
「お金を渡すのはいいのですが、ご納得していただけますか?ただではありませんよ」
男には何のことだか分からなかったがとりあえず「分かった」と答えて金を袋に詰め、店を後にした。
エンジンをかけたままにしておいた車に乗り込み、男は走り去った。


ここまでくれば大丈夫だろう。
2時間ばかり逃走しやっと部屋にたどりついた。
しかし、不思議だった。
逃げている間、多数のパトカーがサイレンを鳴らして走り回るわけでもなかった。
いつもと同じ日常の風景。
銀行強盗がおこった事を報じるニュースもない。
男がビクビクして暮らしたのは最初の1週間だけだった。
なぜ通報しなかったのか。
男には分からなかったが、100パーセント成功した。
短絡的に、そして盲目的に自分を信じた。
2週間目からは豪遊が始まった。
金が無いつらさを男はすっかり忘れた。
男はあれだけ飲めていた酒にめっぽう弱くなった。
まあ、そんな事もあるかな。
男は気にはしなかった。
手元にある金がすっからかんになるにはそれほど時間はかからなかった。

4週間後。
男はまたあの銀行の前に立っていた。
「金をだせ!」
男を見た行員は笑顔を浮かべた。
「いらっしゃいませ。どうぞこちらへ。この前はありがとうございました」
(ありがとうございますだと?なにを言ってやがる)
「金だ!金をだせ」
「ありがとうございます。前回と同じでよろしいですか?」
「ああ、前回と同じでいい。警察沙汰にならないようにな」
「かしこまりました。では500万円になります」
カウンターに出された5束の札束。
手にとった瞬間、地球の重力が3倍にも感じられた。
少しよろめいた。
「大丈夫ですか?」
行員は聞いた。
「ああ、大丈夫だ」
よろよろと車に乗りこんだ。

行員はにやりと笑う。
行員は視線を自分の手に落とした。
手には男の心臓が握られていた。
手の中にある心臓は緩やかに鼓動をくりかえしている。
男が店を後にすると、銀行だった建物は消えた。
そこには何もなかった。
そして日常が繰り返されていた。
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◎本日の空想話「いないのにいる話」

2016年05月05日 | ◎これまでの「OM君」
とある夕暮れ。
男が一人歩いていた。
その瞳には他者の存在はまったく映っていない。ただまっすぐ正面を見据えたまま歩いている。
長身、黒ずくめの服を身にまとっている。
でっぷりとした体格。
黒ソーセージのようだ。
黒ソーセージ男はいたって愉快だった。
男はこう思っていた。
俺はタンカーなのだ。
俺が波をかき分けているのだと。
一応に男とすれ違った人々の反応は同じだった。
顔は強ばり、拳は握られ、怒りの表情を浮かべている。
男は「怒りの神」なのだ。
人々の目には怒りの神の姿は見えない。
ただ訳もなく不意にわきたつ怒りに人々は耐えているのだ。

その時、もう一人の男が黒ソーセージの前方から歩いてきた。
身につけているものはすべて白。
細身の体躯と相まってまるでろうそくのようだ。
ろうそく男が歩いた後の人々の表情は消えていた。
「初期設定の神」と呼ばれている。
心理状態をデフォルトに戻すのだ。

「よう」
黒い声で怒りの神が先に声をかけた。
「……」
初期設定の神は初期設定らしく無言だった。
(いやな神と会う)
初期設定の神は無言だったが、実は怒りの神が苦手だった。
夜明け前の湖のように静まり返った自分の心が乱されるのを感じるのだ。
そしてあろう事か心がムカムカしてきた。
ふつふつと怒りがこみ上げてくるのが自分でも分かった。
いつも黒い格好しやがって。
黒さえ着ていればおしゃれだと思ってやがるな。
服装じゃあねえんだよ。
その体型、顔つきがお前がゲスである事をあらわしてるんだよ。
世の中、怒ってもしょうがねえんだよ。
他人との衝突をいかにして回避するかが人生の99パーセントをしめるんだ。
怒り散らして、他人をねじ曲げて、お前はそれで満足かもしれないが、めんどくせえんだ。
お前は他者の存在しない、無人島にいやがれ。
お前の存在が迷惑なのだ。
ぶん殴ってやろうか。


怒りの神はそのときこう思っていた。
初期設定の神。
おいら苦手だぜ。
こいつと話していると、おいらの煮えたぎる怒りが凍り付くのを感じるんだ。
話しかけて無視されればとんでもない怒りでぶっ殺すところだが、なぜだか心が落ち着く?
穏やかになるんだよな。
まあ、こいつも悪い奴じゃあねえんだよな。
しかし、腑に落ちない事もあるものだ。
日に5、6回は必ずこいつと出会うのはなぜだろう。
いい調子で歩き回っていると必ず出会う。
まあ、冷静になって考えると俺たち二人はペアーで動いた方が世の中うまくいっているような気がする。
イソップ童話の「北風と太陽」みたいに怒りだけでは世の中回らないよな。
時には冷静になって、自分の悪いところは直す。
相手がいつだって一方的に悪いわけはないんだ。
100パーセントの善悪なんてない。
主観によってどうとでもなるはずなのだ。
しかし、不思議だ。
俺は神のはずなのに、誰かに操られているように感じるのはなぜだろう…
まあ、世の中、平和ならそれはそれでいいか。

黒いソーセージと白いローソクは一瞬とも永遠とも思える時間ですれ違っていった。

彼らがすれ違った後の人々はちょうどいいバランスの精神状態なのだった。
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