ピピピピピ・・・
目覚まし時計の電子音で目を覚ました。
朝8時。
「お目覚めですか。今朝のお気分はいかがですか?」
空中に投影されたホログラムの美しい女性が話しかける。
「ああ、万事OKだ。」
残念ながら彼女は人工知能「ケリー」。
実在はしない。
「朝食のご用意出来ていますよ。」
「ああ、ありがとう。」
別に返事を返す意味は無いのだが、返事を返さないと何回も確認される。
必ず返答を返してやりとりが終了する。
これを理解するまでイライラしたが、分かってしまえば彼女は有能なAIだ。
ゼリー状人工食料。
本日は「緑色」。
色はなぜか毎日変わるが、味は同じだ。
彼女の気分。ファジー理論搭載ってやつだ。
意味なんて無い。
コーヒー風人工飲料を飲みながらテレビをつける。
どのチャンネルも映らない。
ガンと軽く一度たたいてみた。
同じだ。
映らない。
ため息をひとつ。
蛇口をひねり水を出す。
飲料水は空気中の水分より十分な量を生成するテクノロジーが確立された。
ただし電力消費量が莫大なのは玉にきずだ。
電力に関してはあるテクノロジーが発明された。
電気を自然発生させる切手大のチップ。
ウインド・ヒューマン社「イーナズMA(エム・エー)」。
イーナズMAは生活に革命をもたらした。
あらゆるものがコードレスになり、いわゆるユビキタス社会の悪のり状態になった。
顔を洗う。
ひげは剃らない。
比較的、身だしなみに関しては自由な職場だ(苦笑)。
ドアをあける。
そこは外ではない。
真っ白でピカピカの廊下。
左隣にもう一つドアがある。
職場は隣だ。
「おはようー」と言いながらドアを開ける。
なんてね。
誰もそこにはいない。
あるのはコネクターにつながれたボディスーツとフレーム部が青く光る箱が一つ。
ボディスーツを装着する。
思った以上に軽い。
(1)箱に片足を乗せ、よいしょと箱の上に乗る。
(2)前を向いたまま、片足を後ろに下ろし、よいしょと下りる。
以下、(1)~(2)を繰り返す。
踏み台昇降。
これが仕事だ。
ここは、ウインド・ヒューマン社。
イーナズ・MAチップを作っている。
この部屋6面はすべてセンサーが配置されており、人間の空間移動した痕跡をエネルギー変換する。
何だか分からないが、人間の動きをまねたロボットではチップを作れなかったらしい。
休憩、昼食を挟み、3時で退社だ。
となりの部屋に帰る。
外には帰らない。
この部屋はもともと福利厚生的な意味合いのただの休憩室だ。
生活する事が本来の目的の部屋ではない。
「どうしてこんな事になったのかな・・・」
「またその質問ですか?」
ケリーが空中より問いかける。
「いや、いいんだ。」
もうこの暮らしも5年になる。
もともとこのエリアへの入室自体、カギは自分では持っていなかった。
この部屋につれてくるだけが仕事の人物につれてこられるだけだった。
ある日の昼休み、テレビをここで見ていた。
ズズズ・・爆発音と同時に振動。
断続的に続く爆発音と振動。
ニュース速報で世界同時的に重要施設が攻撃を受けている事を知る。
ウインド・ヒューマン社も標的にされたらしい。
外に逃げ出そうとインターフォンを鳴らす。
すでに応答はない。
軟禁状態がスタートした。
日を追うごとに世界規模での混乱が加速度を増していった。
ある日、テレビ放送が止まった。
何が起こったのか分からない。
放送が止まってから2ヶ月が経ったある日、電気が消え、ライフラインが途絶えた。
「えっ!」
自給自足が可能な建物であるという安心感はあったのだが、電気が途絶えたらしい。
「やばい、これはやばい。死ぬぞこれは。」
そう感じながら、思いだした。
自分の作業により、この建物のイーナズ・MAチップへのエネルギー補給も行われていると最初の説明を受けた。
もしかしたら・・・
いや、動いてくれ。
そう願いながら作業を試してみた。
当然、この混乱の中、仕事なんてしていなかった。
何ヶ月ぶりだろう。
電力は復旧した。
そうして定期的に仕事をしながら(仕事をしないと電力がとだえる)、人工で合成される食物及び飲料水を口にしながらこの生活を続けているのだ。
唯一の話相手はケリー。
ケリー自体も外部へアクセスが出来ないらしい。
二人とも記憶の中での思い出を話し合う。
グッドエンディングでも良い、バッドエンディングでも良い、この生活を早く終わらせたい。
目覚まし時計の電子音で目を覚ました。
朝8時。
「お目覚めですか。今朝のお気分はいかがですか?」
空中に投影されたホログラムの美しい女性が話しかける。
「ああ、万事OKだ。」
残念ながら彼女は人工知能「ケリー」。
実在はしない。
「朝食のご用意出来ていますよ。」
「ああ、ありがとう。」
別に返事を返す意味は無いのだが、返事を返さないと何回も確認される。
必ず返答を返してやりとりが終了する。
これを理解するまでイライラしたが、分かってしまえば彼女は有能なAIだ。
ゼリー状人工食料。
本日は「緑色」。
色はなぜか毎日変わるが、味は同じだ。
彼女の気分。ファジー理論搭載ってやつだ。
意味なんて無い。
コーヒー風人工飲料を飲みながらテレビをつける。
どのチャンネルも映らない。
ガンと軽く一度たたいてみた。
同じだ。
映らない。
ため息をひとつ。
蛇口をひねり水を出す。
飲料水は空気中の水分より十分な量を生成するテクノロジーが確立された。
ただし電力消費量が莫大なのは玉にきずだ。
電力に関してはあるテクノロジーが発明された。
電気を自然発生させる切手大のチップ。
ウインド・ヒューマン社「イーナズMA(エム・エー)」。
イーナズMAは生活に革命をもたらした。
あらゆるものがコードレスになり、いわゆるユビキタス社会の悪のり状態になった。
顔を洗う。
ひげは剃らない。
比較的、身だしなみに関しては自由な職場だ(苦笑)。
ドアをあける。
そこは外ではない。
真っ白でピカピカの廊下。
左隣にもう一つドアがある。
職場は隣だ。
「おはようー」と言いながらドアを開ける。
なんてね。
誰もそこにはいない。
あるのはコネクターにつながれたボディスーツとフレーム部が青く光る箱が一つ。
ボディスーツを装着する。
思った以上に軽い。
(1)箱に片足を乗せ、よいしょと箱の上に乗る。
(2)前を向いたまま、片足を後ろに下ろし、よいしょと下りる。
以下、(1)~(2)を繰り返す。
踏み台昇降。
これが仕事だ。
ここは、ウインド・ヒューマン社。
イーナズ・MAチップを作っている。
この部屋6面はすべてセンサーが配置されており、人間の空間移動した痕跡をエネルギー変換する。
何だか分からないが、人間の動きをまねたロボットではチップを作れなかったらしい。
休憩、昼食を挟み、3時で退社だ。
となりの部屋に帰る。
外には帰らない。
この部屋はもともと福利厚生的な意味合いのただの休憩室だ。
生活する事が本来の目的の部屋ではない。
「どうしてこんな事になったのかな・・・」
「またその質問ですか?」
ケリーが空中より問いかける。
「いや、いいんだ。」
もうこの暮らしも5年になる。
もともとこのエリアへの入室自体、カギは自分では持っていなかった。
この部屋につれてくるだけが仕事の人物につれてこられるだけだった。
ある日の昼休み、テレビをここで見ていた。
ズズズ・・爆発音と同時に振動。
断続的に続く爆発音と振動。
ニュース速報で世界同時的に重要施設が攻撃を受けている事を知る。
ウインド・ヒューマン社も標的にされたらしい。
外に逃げ出そうとインターフォンを鳴らす。
すでに応答はない。
軟禁状態がスタートした。
日を追うごとに世界規模での混乱が加速度を増していった。
ある日、テレビ放送が止まった。
何が起こったのか分からない。
放送が止まってから2ヶ月が経ったある日、電気が消え、ライフラインが途絶えた。
「えっ!」
自給自足が可能な建物であるという安心感はあったのだが、電気が途絶えたらしい。
「やばい、これはやばい。死ぬぞこれは。」
そう感じながら、思いだした。
自分の作業により、この建物のイーナズ・MAチップへのエネルギー補給も行われていると最初の説明を受けた。
もしかしたら・・・
いや、動いてくれ。
そう願いながら作業を試してみた。
当然、この混乱の中、仕事なんてしていなかった。
何ヶ月ぶりだろう。
電力は復旧した。
そうして定期的に仕事をしながら(仕事をしないと電力がとだえる)、人工で合成される食物及び飲料水を口にしながらこの生活を続けているのだ。
唯一の話相手はケリー。
ケリー自体も外部へアクセスが出来ないらしい。
二人とも記憶の中での思い出を話し合う。
グッドエンディングでも良い、バッドエンディングでも良い、この生活を早く終わらせたい。