日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日の空想劇場「ワインの海」

2014年09月28日 | ◎これまでの「OM君」
私は自分を見下ろしている。
奇妙な光景だったが、冷静だ。
私は掛け布団をはね飛ばし、うつ伏せで眠っていた。
昨夜、飲みすぎて終電間近でアパートにたどりついた。
メイクも落とさず着の身着のまま眠っている。
なんてだらしない女だろう。
自分でもそう思う。
実はこの離脱体験は私の得意技だ。
社会人になり、深酒をするようになってからしばしば発生するようになった。
はじめての時はさすがに焦った。
宙に浮かび、自分を見下ろす。
体に戻ろうとして宙を泳いだが、無情にも1mmも前には進まなかった。
焦れば焦るほど自暴自棄になった。
あー酒の飲みてえ~
そう思った瞬間、自分の意識は液体に浮かんでいた。この液体はワインだ。
テーブルに出しっぱなしのワインの瓶の中で浮かんでいた。
これはありがたい。
ワインをがぶ飲みした。
目を開けると、そこは自分のベットの上だった。
それからと言うもの、この状態になった場合は速やかにアルコールの液体にダイブする事になっていた。
しかし、今夜は全部飲んでしまった。
この部屋にはアルコールは無い。
しまった。
こういうところが自分のダメな所だ。
備えをおこたる。
さあ、どうしようか。
このまま幽体離脱したまま眠ってみるか。
いやいや、だめだ。
目が覚めなくて死んでしまってはだめ。
想像ではアルコールを飲めば必ず体に意識が戻るはずだ。
アルコール、アルコール
私ははっと気づいた。
そして実行するかどうかコンマ5秒悩んだ。
しかし、意を決してアルコールの海にダイブした。
たしかにこの液体にはアルコールの気配はある。
しかし、しかし、しかし…
飲み込むには抵抗がある。
しかし、飲み込む。
うすれゆく意識。
ここは
私の胃だ。
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◎本日の空想劇場「塩ラーメン」

2014年09月27日 | ◎これまでの「OM君」
603号室の男は鍋に水を入れ、コンロに火を点けた。
お湯が沸くまでの間テーブルの上に置いてある新聞を読んだ。
見出しには「増える偶然の一致」と書かれている。
ある電車に乗り合わせた1両全員の名字が偶然「井上さん」だった。
あるカフェで4日間連続女性客しか来店しなかった。
など全国で奇妙な偶然が増えているという記事だった。
「へえ、そんなこともあるもんかね…」
独り言をぼそりとつぶやくと、「函館一番」塩ラーメンの袋を開ける。
男は四角い乾燥麺を沸騰したお湯に投入した。
1分間、麺ほぐした後、卵を割り入れ2分間待つ。
合計3分ちょいで男は乾燥スープを鍋に入れた。
よくまぜた後、完成したラーメンをどんぶりにうつした。
ラーメンを食べる男。
男はよほど腹が減っていたらしい。
4回程度、箸を上下させただけで器には麺がほとんどなくなった。
「うまい」
そう男はつぶやいた。


マンションをながめている目があった。
その目は10階建てマンションの5階部分にあった。
5階部分、ベランダの外。
「クククク…」
どうやら壁を見透かせるらしい。
全住人の動きを観察している。
というか、
全住人を動かした。
その動きを満足げに見ていた。
函館一番塩ラーメンを約3分で作り上げ、箸の上下4回で食べきり、「うまい」と言う。
意味の無いマスゲームを眺めて宙に浮いていた。
明日は、ここの住人全員にレトルトカレーを同時刻、同時進行で食べさせようと「それ」は考えていた。
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◎本日の空想劇場「代償」

2014年09月23日 | ◎これまでの「OM君」
もうだめだ。
真夏の太陽が照りつける。
立っているだけでめまいがする。
日雇いのお金も底をついた。
住むところも追われ、所持金は32円。
ひもじい。
もう冷静な考えはおよばない。
水を飲もう。
ふらふらと公園に足を踏み入れる。
熱い。
景色が歪んで見える。
ベンチに座ろうと思ったが、老人が座っていた。
背広をきっちりと着込みうなだれて眠っている。
手提げ鞄が無造作に置かれている。
(盗ろう…)
そう俺の頭の中で声がささやいた。
老人の横に少し距離を置いて慎重に座る。
老人は微動だにしない。
(眠っているな…)
そっと鞄に手を伸ばす。
俺の心は決まっている。自分でも驚くほどスムーズに音を立てず鞄を手元に引き寄せた。
ごろごろと固まりが転がる感触があった。
鞄の中を見る。
そこには大量の札束があった。
目を大きく見開く。そして真っ直ぐ前を見たまま立ち上がり、足を踏み出す。
その直後、バタリと老人が前倒しで地面に倒れた。
(え…何?どうする)
パニックになる。
老人のか細い声が聞こえた。
「どうする?」
心臓が止まりそうだ。
人の気配は無い。
俺は足を止めず、後ろも見ず、歩きだした。
真っ直ぐ前を見たままだ。

1時間以上歩いた。
少し冷静になると鞄の重みがずっしりと肩にかかっている。
あのじいさん何だったんだろう。
いや今は、食い物だ。
1万円札を1枚抜き取り、牛丼屋に入った。
特盛り、大盛り、ビールを一瞬で平らげた。
ああ、なんてうまいんだ。
食欲が満たされ、罪悪感におそわれた。
しかし、もうやってしまったことだ。
そう自分に言い聞かせ、ビジネスホテルに泊まった。
何日ぶりに足を延ばして眠る。
泥の眠りをむさぼった。

朝、急いでニュースを見るためにテレビをつける。
あのじいさんの写真が画面一面にうつる。
女性キャスターが言った。
「…昨日、都内の公園で死亡が確認されました。山口忍さんは世界的に有名な作曲家で数々の名曲を世に残されました。死因は心筋梗塞で…」
あのじいさん死んだのか、俺のせいなのか…
そのとき青白い閃光とともに真っ黒い人型が現れた。
大きくひらいた口が話しだした。
「そうだ、おまえのせいでもあり、おまえのせいではない。くくく。
何を言っているか分からんな。
これはあの爺さんの賭だったんだよ。」
「おまえは、なんだ。何を言っている」
「質問は1こづつ言え。そうだな、俺はお前達の世界で言う所の悪魔だな」
「!!!」
「そしてあの爺さんは末期ガンだ。今日明日にも死ぬ運命だった。そんな瞬間にあの爺さんは俺を呼び出せた。当然こっちにしたら悪魔の契約で命を助けろと言うと思うじゃないか。ところが爺さんは違った。交渉してきやがった。おっと一方的にしゃべっているが話は分かるか?」
「いや、分からない」
「そうだろうな、ならもう少し俺の話を聞け。その爺さんはこう言った。悪魔と契約を交わすと魂は地獄に持って行かれる。魂を地獄に持って行かない賭をしたいと…
盗人は老人を助けるか、助けないか。まあそういう掛けだ」
「つまり助けなかったということか」
「そうだ」
悪魔の後ろからあの爺さんが現れた。
そして俺の体は爺さんにのっとられた。
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◎本日の空想劇場「メールの反応」

2014年09月21日 | ◎これまでの「OM君」
毎日が退屈だった。
そのせいかもしれない。
得体の知れないメールに返信したのは。
「黒か白か返答してください」
次の行には「花井 道夫」と書かれていた。
花井道夫は知っている。
ゴシップ記事で今、話題の人物だ。
連続通り魔殺人の容疑者として逮捕されたが証拠不十分で無罪になった。
その後、南米と思われる場所より犯人は自分であるというネット投稿を行い世間が蒼然とした。
(花井 道夫が黒か白かって?黒でしょう)
クリックを1回。
返信は「roger」だった。
なんだロジャーって?何でも安いロジャースかっていうの。
安易にメールに反応したことに少し後悔しつつその日は眠った。

1週間ほどして、メールの事など完全に忘れていたがニュースを見て思い出した。
「花井 道夫死亡。コロンビアの路地裏で自動小銃による銃殺」
えっ死んだんだ。
まさかあのメール…
まさか、まさか、関係ないよ。
恨みも買った人生だったのだろう。
俺とは関係ない。
そう思った。
その日の深夜メールが届いた。
「道上 司  黒か白か?」
その名前も知っていた。
有名人だ。
現代版ネズミ講。
多額の出資金を集め倒産。
自殺者が多発し社会現象となっている。
本人は捕まっているが、初犯のため刑は軽い。
即、返信した。
「黒」
「roger」
毎日が退屈だった。
今はそうじゃない。

次の日、拘置所で道上司は死んだ。
警護官に殺された。
隠し持ったナイフで刺殺された。
刺した職員は「指示に従った」と意味不明の供述を繰り返しているらしい。
やった。
これメールと絶対に関係あるよ。
その日は興奮して眠れなかった。

次の日メールが来た
「梶原 逸 黒か白か」
血の気がひいた。
梶原 逸。
これは俺の名だ。
返答出来るわけがない。
もう一通メールが来た。
「roger」
いや!返信していないぞ俺は。
何を了解したんだ!
ドアの外で物音がした。
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◎本日の空想劇場「ユリ」

2014年09月13日 | ◎これまでの「OM君」
ユリと結婚して今年で十五年になる。出会いは二人とも大学生の頃だった。当時居酒屋のバイト仲間にユリはいた。失敗しても素直に失敗を認めるところに惹かれた。
二人には子供はいなかった。
日常をくりかえす幸せを感じていた。
そのユリが最近おかしい。
どこかよそよそしく、同じ時間を共有しない。食事を終えるとそそくさと食器を洗い、自室に引き上げる。何を聞いても「そんなことないわ」「きのせいよ」としか言わなかった。
ユリはどうしたのだろう。
ある朝、目が覚めて部屋の中の静けさが嫌に気になった。気配が無い。まるで僕一人だけのような…はっとして飛び起きた。
「ユリ!」
声を上げてユリの寝室に飛び込む。そこには綺麗に畳まれたふとんとA4の紙があった。パソコンで一言印刷されていた。「さよなら」
思い当たることが何もない。どうしてこうなったのかわからない。分からないのがすべての答えよ。ユリがそう言っているように思えた。
足下がぐらつく。
立っていられない。
床にしゃがみ込む。


自分の涙で目が覚めた。
「あなた、大丈夫」
ユリがいた。いつもの笑顔だ。
「おまえどこにいったんだ」
「何言ってるのよ。どこにもいかないわよ。夢でもみたんじゃない」
そうか。夢だったのだ。


「来年もこれで良いですか」
「ええ、お願いします」
リノリュームの床。
少し薄暗いが電子機器の光がまたたく一室。
そこにユリはいた。
「こんなことしなくてもご主人はあなたの前からいなくならないと思いますよ」白衣を着た技術者はそう言った。ユリは自嘲気味に笑いながら「私、不安なの。私にはあの人しかいない。捨てられる不安から逃れられないの。だから年に一度だけ夢をあの人に見せてもらっているの」
ここはどんな夢でも自由にみせることのできるラボだ。

ユリが帰った後、技術者達はコーヒーを飲みながらいった。
「あの人、知らないだろうな。だんなもここに来て、同じ依頼をしてる事を…」
「まあ、ある意味、似たもの夫婦なんじゃないの…。お似合いだよ」
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◎コッピーがやってきました

2014年09月12日 | ◎これまでの「OM君」
コッピーという種類の熱帯魚が縁あってやってきました。
このコッピーという魚はとにかく無駄に元気。
泳ぎのキレはメダカなんて目じゃない動きをします。
湾岸ミッドナイトにおけるポルシェは点と点をつなぐワープ走法でミッドナイトしますが、これぞまさにワープ泳法。
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