ある日、あるとき、よしおくんたちは河原でバーベキューを楽しんでいました。
「おかあさん、僕たち以外に誰もいないね」
ひろいひろい河原には、よしおくんとお母さんしかいません。
「そうね。わたし、ネットでマニアックな案件を探して申し込んだから誰も申し込まなかったのかしら」
炭火焼きのいい香りが、よしおくんの食欲をたかめます。
「お母さん、おいしそうだよ」
「そうね、なんだか参加費はお安いのに、A級のお肉だし、お酒はドンペリだし、どうしちゃったのかしら。失礼して飲んじゃおう」
お母さんは、氷いっぱいのバケツからピンクのドンペリを手に取り、景気よく栓を抜きます。
ポン
ポン
同時刻、はるか上空。
開栓の音を聞くものたちがいました。
プライベートジェットがまさるくんとお母さんのいる河原の上空をぐるぐると旋回していました。
機内には、ドラム缶ほどの大きのレンズにだきつくような姿勢でカメラをのぞき込む人々がいます。
まさるくん達を観察していました。
「いやーいいですね」
「一度、超高高度から世に存在しないような望遠レンズで写真を撮ってみたかったのです」
「まったくまったく」
お金持ちの道楽につきあっているとはつゆ知らず、よしおくんとお母さんは舌鼓を打ち鳴らしておりました。
「おかあさん、僕たち以外に誰もいないね」
ひろいひろい河原には、よしおくんとお母さんしかいません。
「そうね。わたし、ネットでマニアックな案件を探して申し込んだから誰も申し込まなかったのかしら」
炭火焼きのいい香りが、よしおくんの食欲をたかめます。
「お母さん、おいしそうだよ」
「そうね、なんだか参加費はお安いのに、A級のお肉だし、お酒はドンペリだし、どうしちゃったのかしら。失礼して飲んじゃおう」
お母さんは、氷いっぱいのバケツからピンクのドンペリを手に取り、景気よく栓を抜きます。
ポン
ポン
同時刻、はるか上空。
開栓の音を聞くものたちがいました。
プライベートジェットがまさるくんとお母さんのいる河原の上空をぐるぐると旋回していました。
機内には、ドラム缶ほどの大きのレンズにだきつくような姿勢でカメラをのぞき込む人々がいます。
まさるくん達を観察していました。
「いやーいいですね」
「一度、超高高度から世に存在しないような望遠レンズで写真を撮ってみたかったのです」
「まったくまったく」
お金持ちの道楽につきあっているとはつゆ知らず、よしおくんとお母さんは舌鼓を打ち鳴らしておりました。
「手を洗ってきてね。お母さん、よしおくんの大好きなドーナツ買ってきたから」
とても寒い日の昼下がり、お母さんの声がキッチンから聞こえてきました。
よしおくんはいそいそと夢中で遊んでいたブロックをかたづけます。 お母さんはどんなドーナツを買ってくれたのだろう?
よしおくんの想像は広がります。
イチゴチョコかな?
クリームサンドかな?
ぼくはこう見えて、シンプルなドーナツも結構好き!
よしおくんはお母さんのいいつけどおり手を洗ってすべりこむように、テーブルのいつも座る自分の席に着席します。
よしおくんはテーブルの上を見ます。
しかし、ドーナツはありません!
「お母さん、ドーナツはどこにあるの?」
お母さんはくすくすと笑っています。
「よしおくん。いつまでもあるようでないものは、お金と親よ。そしてすぐそばにあるのに、ないと思うのは自分の視点のせいなの。そういうことなの」
そう言うと、お母さんは悠々と自分のために入れた紅茶をおいしそうに飲みました。
「お母さん、言っていることが突然難しくて、よしおくんわからないよ」
お母さんはすっとよしおくん首元を指さしました。
「よしおくん。いま巻いているマフラー、ずいぶんガサガサしなかった?」
よしおくんは自分の首元に巻かれているマフラーをさすりながら言います。
「うん、どうしてビニールでできているのかなって思ってた」
「首に巻いてるマフラー。それマフラーじゃないの」
「ええ!」
「ビニール袋の中身、実は、一個の大きなドーナツなの!」
「ええ!」
とても寒い日の昼下がり、お母さんの声がキッチンから聞こえてきました。
よしおくんはいそいそと夢中で遊んでいたブロックをかたづけます。 お母さんはどんなドーナツを買ってくれたのだろう?
よしおくんの想像は広がります。
イチゴチョコかな?
クリームサンドかな?
ぼくはこう見えて、シンプルなドーナツも結構好き!
よしおくんはお母さんのいいつけどおり手を洗ってすべりこむように、テーブルのいつも座る自分の席に着席します。
よしおくんはテーブルの上を見ます。
しかし、ドーナツはありません!
「お母さん、ドーナツはどこにあるの?」
お母さんはくすくすと笑っています。
「よしおくん。いつまでもあるようでないものは、お金と親よ。そしてすぐそばにあるのに、ないと思うのは自分の視点のせいなの。そういうことなの」
そう言うと、お母さんは悠々と自分のために入れた紅茶をおいしそうに飲みました。
「お母さん、言っていることが突然難しくて、よしおくんわからないよ」
お母さんはすっとよしおくん首元を指さしました。
「よしおくん。いま巻いているマフラー、ずいぶんガサガサしなかった?」
よしおくんは自分の首元に巻かれているマフラーをさすりながら言います。
「うん、どうしてビニールでできているのかなって思ってた」
「首に巻いてるマフラー。それマフラーじゃないの」
「ええ!」
「ビニール袋の中身、実は、一個の大きなドーナツなの!」
「ええ!」
二つ鬼の声が遠くになっていく。(何もするな…とはどういう意味なのか…)
鬼吉の思考もうすれていく。
気付くと鬼吉は、木の上で横たわっていた。気持ちのいい風が吹き抜ける。ササは鬼吉の胸の上で眠っている。
ササが目を覚ます。
「私、眠ってしまったみたい」
目覚めののびをしながら、ササはあくび混じりに言った。
「ササ、さっきの話はどういうことだと思う」
「さっきの話ってなんだ」
「覚えていないのか。二つ鬼と大伍とメメの兄弟」
「何のことにゃー。大伍とメメならお父さんとお母さんと一緒に暮らしているにゃ」
「今もか」
「今もにゃ」
きょとんとしているササを自分の胸から下ろして、小屋の見える丘へと鬼吉は走った。
息を切らして鬼吉が丘の上から見た光景、それは…何事も無く、家族が幸せそうに遊んでいる風景だった。
大伍とメメが笑っている。
その笑顔を見て、鬼吉はすべて理解した。
安心した鬼吉は思わず座り込む。 追いついてきたササが不思議そうな表情で鬼吉を見つめている。
ササの頭をなでながら、鬼吉はササには折を見てゆっくり話そうと思った。
鬼吉の思考もうすれていく。
気付くと鬼吉は、木の上で横たわっていた。気持ちのいい風が吹き抜ける。ササは鬼吉の胸の上で眠っている。
ササが目を覚ます。
「私、眠ってしまったみたい」
目覚めののびをしながら、ササはあくび混じりに言った。
「ササ、さっきの話はどういうことだと思う」
「さっきの話ってなんだ」
「覚えていないのか。二つ鬼と大伍とメメの兄弟」
「何のことにゃー。大伍とメメならお父さんとお母さんと一緒に暮らしているにゃ」
「今もか」
「今もにゃ」
きょとんとしているササを自分の胸から下ろして、小屋の見える丘へと鬼吉は走った。
息を切らして鬼吉が丘の上から見た光景、それは…何事も無く、家族が幸せそうに遊んでいる風景だった。
大伍とメメが笑っている。
その笑顔を見て、鬼吉はすべて理解した。
安心した鬼吉は思わず座り込む。 追いついてきたササが不思議そうな表情で鬼吉を見つめている。
ササの頭をなでながら、鬼吉はササには折を見てゆっくり話そうと思った。
鬼吉とササは何が起こったのかまったくわからない。ただ閻魔と二つ鬼にだまって視線を送ることしか出来なかった。
「俺が偽物を見つけられない理由がやっとわかった。門番の閻魔がそいつを生み出していたのだからな」
「どうぞ、勘弁ねがいます」
閻魔はがっくりとひざまずいて手をついた。
「どういうことでしょうかね」
鬼吉は二つ鬼と閻魔の前に立つ。
「私の失脚が閻魔の望みらしい」
「俺が偽物を見つけられない理由がやっとわかった。門番の閻魔がそいつを生み出していたのだからな」
「どうぞ、勘弁ねがいます」
閻魔はがっくりとひざまずいて手をついた。
「どういうことでしょうかね」
鬼吉は二つ鬼と閻魔の前に立つ。
「私の失脚が閻魔の望みらしい」
「そこまでで結構だ」
鬼吉とササは背後からの突然の声にとびあがって驚く。振り返るとそこには本物の二つ鬼が閻魔と一緒に立っていた。しかし閻魔は苦痛の表情を浮かべている。二つ鬼が閻魔の手を後ろでひねり上げているためだった。
鬼吉とササが押さえつけていた二つ鬼はおとなしくなり、ぐったりと横たわった。動揺する二人の前で二つ鬼の色彩がうすくなる。地面が透けて見える。自分の目がおかしくなったのかと確かめる意味で二人は目をこする。
そうこうしているうちに横たわる二つ鬼の偽物の姿がきれいに消えた。
鬼吉とササは背後からの突然の声にとびあがって驚く。振り返るとそこには本物の二つ鬼が閻魔と一緒に立っていた。しかし閻魔は苦痛の表情を浮かべている。二つ鬼が閻魔の手を後ろでひねり上げているためだった。
鬼吉とササが押さえつけていた二つ鬼はおとなしくなり、ぐったりと横たわった。動揺する二人の前で二つ鬼の色彩がうすくなる。地面が透けて見える。自分の目がおかしくなったのかと確かめる意味で二人は目をこする。
そうこうしているうちに横たわる二つ鬼の偽物の姿がきれいに消えた。
二つ鬼が室内に体ごと振り返った。 その背を確認しながら鬼吉は渾身のドロップキックをお見舞いする。
二つ鬼はしまったという表情をうかべながら前方にもんどり打つ。
巨大なナタは手から離れた。ナタが壁に当たる金属の音が反響する。鬼吉は着地した後、その勢いで二つ鬼に迫る。鬼吉は家から持ってきた布団袋を二つ鬼の上半身にすっぽりとかぶせた。鬼吉は駆けつけたササに縄を投げた。ササは空中で縄を器用にくわえた。
鬼吉は暴れる二つ鬼を袋の口でぎゅっと閉めながら、下半身を蹴りつけてひざをつかせる。
二つ鬼は、縄で縛られながらわめいている。
二つ鬼はしまったという表情をうかべながら前方にもんどり打つ。
巨大なナタは手から離れた。ナタが壁に当たる金属の音が反響する。鬼吉は着地した後、その勢いで二つ鬼に迫る。鬼吉は家から持ってきた布団袋を二つ鬼の上半身にすっぽりとかぶせた。鬼吉は駆けつけたササに縄を投げた。ササは空中で縄を器用にくわえた。
鬼吉は暴れる二つ鬼を袋の口でぎゅっと閉めながら、下半身を蹴りつけてひざをつかせる。
二つ鬼は、縄で縛られながらわめいている。