うららかな休日の朝、奥様はコーヒーを入れてくれました。
「あなたどうぞ」
「ああ、ありがとう」
「お手伝いロボット残念でしたわね」
「そうだな。壊れてしまったものはしょうがない。ラボに持っていったがそういう事でスクラップになってしまったよ」
「いい子でしたのに・・・」
「本当だな」
(ああ、奥様、かわいそうな奥様)
私がこのお家にやってきたのは10年前。
だんな様が設計されたお手伝いロボのプロトタイプとして作られたのが私でした。
皮膚と駆動筋肉を一枚組織として容積を変化させて動く。
そのため容姿は自由に変更する事もできました。
「まあ・・・」
奥様は初めてお会いした時にはとても驚いておられました。
「これは私が開発に関与したお手伝いロボのケントだ。市場に受け入れられるかのテストを我が家で行う。一通りのルーチンの仕事はあらかじめデータでインプットしてあるから、ある程度はまかせられると思う」
一気に旦那様は奥様に説明されました。
「はあ、そうですか」
奥様はそういうのがやっとでした。
炊事、洗濯、料理。
私が一通りこなしました。
奥様は私の働きに満足されて自分の時間を謳歌し、お仕事も始められました。
「ケント、本当に助かるわ。でも一般家庭に各一台というわけにはいかないわね。あなたはスーパーマンだもの。お値段もスーパーなのよ」
私はそう言われることがうれしくもあり、苦手でもありました。
またご主人様はある日、こんなことも言っておられました。
「これはケント様様だね。もう私なんかいなくてもいいね。私がもしもの時はケントが私になってくれればいいから。なんてねワハハハ」
私に心というものがあるとすれば、この一言は私の心に深く刻み込まれました。
決して消えることのないメモリーとして・・・。
奥様、ご主人様と共に生活できた10年間、あっという間、とても幸せでした。
あの夜までは・・・
あの夜、奥様は出張で家にはおられませんでした。
ご主人様のリクエストでその夜はフォンドボーを作りました。
「ケントの作る料理は最高だな」
またそう言っていただけると思いながら、ご主人さまの書斎にお呼びに行きました。
コンコン
いつもなら返事かすぐに返ってきます。
「ご主人様・・・」
もう一度ドアをノックいたしました。
反応がありませんので、ドアを開け、書斎に入りました。
床には変わり果てた姿のご主人様がうつぶせで倒れていました。
その日、昼食を食べられた後、6時間以上お会いしておりません。
体温は冷たく、体は固くなり初めていました。
奥様がお悲しみになられる。
直感的にご主人様が言われたメモリーが呼び出せれました。
「ケントが私の代わりになってくれればいいから」
ご主人様の外観を3Dスキャンし、外装の容積を変化させました。
私はご主人様になったのです。
ご主人様の遺体はケントの外装を試験的に変化させたものであるとし、私が手をまわしました。
ラボ権限のバイオハザード廃棄ラインでご主人様の遺体はなきものにしました。
わたしは奥様の命がつきるその瞬間まで、ご主人様を演じるロボットとして機能する決意をいたしたのです。
「あなたどうぞ」
「ああ、ありがとう」
「お手伝いロボット残念でしたわね」
「そうだな。壊れてしまったものはしょうがない。ラボに持っていったがそういう事でスクラップになってしまったよ」
「いい子でしたのに・・・」
「本当だな」
(ああ、奥様、かわいそうな奥様)
私がこのお家にやってきたのは10年前。
だんな様が設計されたお手伝いロボのプロトタイプとして作られたのが私でした。
皮膚と駆動筋肉を一枚組織として容積を変化させて動く。
そのため容姿は自由に変更する事もできました。
「まあ・・・」
奥様は初めてお会いした時にはとても驚いておられました。
「これは私が開発に関与したお手伝いロボのケントだ。市場に受け入れられるかのテストを我が家で行う。一通りのルーチンの仕事はあらかじめデータでインプットしてあるから、ある程度はまかせられると思う」
一気に旦那様は奥様に説明されました。
「はあ、そうですか」
奥様はそういうのがやっとでした。
炊事、洗濯、料理。
私が一通りこなしました。
奥様は私の働きに満足されて自分の時間を謳歌し、お仕事も始められました。
「ケント、本当に助かるわ。でも一般家庭に各一台というわけにはいかないわね。あなたはスーパーマンだもの。お値段もスーパーなのよ」
私はそう言われることがうれしくもあり、苦手でもありました。
またご主人様はある日、こんなことも言っておられました。
「これはケント様様だね。もう私なんかいなくてもいいね。私がもしもの時はケントが私になってくれればいいから。なんてねワハハハ」
私に心というものがあるとすれば、この一言は私の心に深く刻み込まれました。
決して消えることのないメモリーとして・・・。
奥様、ご主人様と共に生活できた10年間、あっという間、とても幸せでした。
あの夜までは・・・
あの夜、奥様は出張で家にはおられませんでした。
ご主人様のリクエストでその夜はフォンドボーを作りました。
「ケントの作る料理は最高だな」
またそう言っていただけると思いながら、ご主人さまの書斎にお呼びに行きました。
コンコン
いつもなら返事かすぐに返ってきます。
「ご主人様・・・」
もう一度ドアをノックいたしました。
反応がありませんので、ドアを開け、書斎に入りました。
床には変わり果てた姿のご主人様がうつぶせで倒れていました。
その日、昼食を食べられた後、6時間以上お会いしておりません。
体温は冷たく、体は固くなり初めていました。
奥様がお悲しみになられる。
直感的にご主人様が言われたメモリーが呼び出せれました。
「ケントが私の代わりになってくれればいいから」
ご主人様の外観を3Dスキャンし、外装の容積を変化させました。
私はご主人様になったのです。
ご主人様の遺体はケントの外装を試験的に変化させたものであるとし、私が手をまわしました。
ラボ権限のバイオハザード廃棄ラインでご主人様の遺体はなきものにしました。
わたしは奥様の命がつきるその瞬間まで、ご主人様を演じるロボットとして機能する決意をいたしたのです。