「ついにできたぞ喜びたまえ」
いつになく興奮ぎみの博士が助手を呼ぶ。
「例のあれですね」
「そうじゃ」
博士はコーヒーサーバーからコーヒーをたっぷりカップに注ぎ、ぐびりと飲んだ。
「匂いの順番がずれる不具合が直ったのですね」
助手は眼がねを目頭に持ち上げながら博士に聞いた。
「既存のスマホ向けテレビ電話の機能を一歩押し進めた今回の発明、4D電話じゃ。あらゆる状況を双方向で伝えるのじゃ」
「匂い、風、雨、天気すべての状況を伝えあうのですね」
助手もサーバーからコーヒーを注ぎ、グイッと飲んだ。
「だが、匂いは混線の不具合があったんじゃ。匂いの再現には時間がかかるため、通話中でなくてもデータ収集を端末は常にやっておる」
「そうですね」
「君も承知だろうが、例えばトイレに入った後、カレー屋で食事中に電話がかかってくるとする。他のお客さんに気を使って店外に出る。喫煙所があってお客さんがたばこを吸っておる。
相手との画像と通話はリアルタイムで進行するが、匂いがずれる。カレー皿の前ではトイレのアンモニア臭を再現し、喫煙所の前ではカレーの匂いを再現する」
「どうやって混線を防いだんですか」
「リアルタイムでの混線は防げんかった」
「はっ?」
助手は口に含んだコーヒーを吐き出しそうになるのをこらえた。
「だめじゃないですか」
「だからワシは匂いを単純に順番どうりに相手に送ることにした。そのためにリアルタイムで処理できる、通話と画像を三十秒遅らす技術を取り込んだ。このアプリで通話するとどんなに短気な人でも、のんびり、ゆったりした人物になるのじゃ」
「博士、これは売れませんよ」
「そうじゃな助手」
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