霊感のある者たち
秋子には霊感があった。初めて霊を見たのは三歳の時だった。母方のおばあちゃんの家に行った時のことたっだ。脚が弱っているはずのおばあちゃんが一人ですたすた歩いている姿を秋子は見た。
「おばあちゃん、元気になったの」当時おばあちゃんが大好きだった秋子はうれしくて駆け寄った。おばあちゃんは驚くべき早さで秋子から滑るように離れた。おばあちゃんは二度三度うなずいてそのまま外に出ていった。玄関の扉は閉まったままだった。その夜おばあちゃんは亡くなった。
北米に住むジェシーもまた自分の霊感には絶対の自信を持っていた。帰宅途中のジェシーは車を運転していた。道路脇に全身真っ赤な女性を見た。雨が降っているというのに傘もささず、ただじっと立っているように見えた。ジェシーは直感的な予感を感じてアクセルをゆるめて、ブレーキペダルにつま先を向けた。対向車線の車がわき道から飛び出してきた車に追突された。ぶつけられた車はまっすぐジェシーの方に飛ばされてきた。しかし、準備していたつま先でブレーキを力一杯踏みつけて間一髪止まることが出来た。赤い女性はもういなかった。
世界には、秋子やジェシーの様に霊感に絶対の自信を持つ人間が多数存在していた。ある時、彼や彼女達に霊感がひらめいた。見える。絶対に霊が見えると。しかし、誰一人霊を見ることは無かった。皆、首を傾げていた。
その頃、軍事衛星の画像を見ていた軍人が上官に報告した。
「地球に顔がうかんでいます。ピースマークでしょうか」たしかに気球を覆う、雲や海水が巨大な顔を浮かべていた。笑っているように見える。
「君はこれを見るのは初めてか」
「イエス・サー。初めてであります」
「ということは君には霊感は無いな。実は私は霊感には絶対の自信を持っていて……」
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