日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日の想像話 「信用できるのは自分」

2013年09月05日 | ◎これまでの「OM君」
伊藤ひろし 37歳 独身。
職業エンジニア。

木曜日の夜。
会社からの帰り道。
特に予定もなく、最寄り駅からアパートまでの途中にあるレンタルビデオ屋でバカSFアクション映画を借りた。

携帯電話が鳴った。
画面に光る「自宅」の文字。
自宅!
誰かが俺の部屋から電話をかけている。
一人暮らしだぞ。
特におつきあいしている女性もいない。
あわてて電話に出る。
「もしもし・・・」
「大変な事になった」
相手はそう言った。
なんだが、聞き覚えのある声だ。
「誰?」
「うわっ出た。誰?」
「誰ってそっちこそ誰だよ。どこに電話してるんだ」
「おれだよ。おれ。伊藤ひろしだよ。とにかく早く帰ってきてくれ」
相手はそう言って電話を切った。
俺?
相手は俺だと言った。

道路から2階にある自分の部屋を見る。
カーテンの隙間から明かりが漏れていた。
消灯及び戸締まりは今朝確認した。
駐車場に停めてある自分の車のトランクからタイヤレンチを取り出す。
非常階段で2階にかけ上がる。
レンチを握りしめながらドアの前に立った。
鍵は開いていた。
そっと室内に入る。
人の気配。
携帯から自宅の電話番号にリダイヤルする。
ドアの向こうで呼び出しベルが鳴る。
「もしもし・・・」
受話器を上げて話す声が聞こえた。

レンチを持ち上げ、室内に飛びこむ。
相手の出方によっては即座にたたき込むつもりだ。
「誰だ」
「わわわ・・・落ち着け、俺だよ」
体を硬直させ、その場に立ち尽くしていたのはまるで写真そのままの自分だった。

「どうしたっていうのか・・・」
「分からない。ついさっきまで一人で飲んでたんだ。
それで・・・」
「それで?」
「うん。気がついたら自分の部屋に立ってたんだ。
靴をはいたまんま。
そんなに飲んだわけでも無かったのに変だな・・・靴をげた箱に戻しながら考えてたんだ。
それで、テレビをつけたんだ。
そしたら、ニュースの内容が2年前」
ここでピンと来た。
「完成したのか?」
「完成したね」

ある論文が評価されて今の会社に引き抜かれた。
「空間移動における時間消去」
移動スピードを上げずに経過時間を減らす論文。
タイムマシンの発明。

その夜二人は話し合った。
判明したことは二つ。
(1)タイムマシンを発明した。しかし未来から過去への一方通行の動きしか出来ない。
(2)タイムマシンに不可欠な主要エネルギー初回蓄電時間に1.5年かかる。


「それじゃあ行ってくる」
「ああ」
次の日会社に出社したのは未来から来た自分。
昨夜、タイムトラベルが成功した原因とシステムの検証、及び機械自体の制作にとりかかるためだ。
「俺がタイムマシンを発明するとはな」
なんて事を一人つぶやいてみたが、完成させたのは未来の自分。
この時点ではアイデアは具象化していない。
「まあ、でも未来の自分が理論及び設計図を見やすいレジメに起こすといっていたし、なんたって機械も作るっていってたから、まさに上げ膳据え膳、自分さまさまだな」
今後の計画はこうだ。
未来の自分はアクシデントで2年前の過去にやってきた。
上着のポケットにはスマホが入っていて、そこには趣味の競馬のデータが入っていた。
ここではこれから起こる未来のレース結果だ。

未来の自分は会社に出社する。
現在の自分が全国を行脚して全国のレースで勝ちまくる予定だ。
もうけは折半。
未来の自分が言うには、2年後にもう一度過去に飛ぶと言っている。

2年後・・・
競馬の儲けは2億に達していた。
アパートのベッドの下に隠している。
「そろそろ行くよ」
「いろいろありがとう。タイムマシンの特許も取ってもらって」
「いやいや、いいんだ」
「それじゃあ」

気がつくと見知らぬ場所にいた。
あれ自分の部屋じゃない。
荒野。
みわたす限りの荒野。
未来の自分は目の前にいない。
「やられた」
過去に飛ばされたのは自分らしい。
しかも、人類が存在しないくらいの過去かもしれない。
見たこともない尾の長い巨大な鳥が目の前を飛んで行った。
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