日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日の想像話「コンビニ前にて」

2019年08月11日 | ◎本日の想像話

 コンビニ前にて

 私は仕事終わりの重い足取りで最寄り駅の改札を後にした。コンビニに寄って、発泡酒と豆腐を買う。それが唯一の楽しみなのだ。闇夜に浮かび上がる店の光はほっと感じる部分もあり、日常という現実をつきつける薄ら寒い部分もあった。店の前に男が一人立っていた。こちらをじっと見ている。危険を感じた私は男を出来るだけ見ずに店内に入ろうとした。
「イクスキューズ・ミー」
男が甲高い声で私に話しかけてきた。
「はい」私は飛び上がりながら答えた。
「ふー・あむ・あい」
(英語?純和風のおっさんに見えるが)
「私は誰でしょうって?困ったな英語は苦手なのに。何かお困りですか」
「ヘルプ・ミー。アイム・ベリー・ハングリー」
「お腹すいてるって言われても困るな。あー・ゆー・とらべらー?旅行でここにこられたのですか」
男はラスタカラーの衣服を身に纏っていて真っ赤なメガネをかけている。肌艶も良く、到底やつれているようには見えない。
「いや、春日部生まれの春日部育ちだ」
「何だ、日本語話せるのか。空腹と言われても困るよ。働いてないの」
「今、働いている。お兄さん、俺の予言を千円で買わないか。買った方がいいと思う。予言を告げします。千円を男に払わなかった場合、あなたに不運がおとずれます」
私は無視して、男の肩を押し退けるように店内にはいった。まったくばかばかしい。早く酒を買って帰ろう。
 レジをすませて店外に出ると男の姿は無かった。いったい何だったのか。
 アパートに到着し、自分の部屋のドアを開けた。室内は真夏の空気を一日中閉じこめていて熱々だ。熱気にひるみながら後ろ手にドアを閉じたつもりだった。
 ドアが勢い良く引っ張られた。私は靴を脱いでいる途中でもあったので尻餅をついて転んでしまった。痛む腰を感じながら、かろうじて見上げるとあの男が立っていた。
「ね、悪いことが起きると言ったでしょう」

 

「はい、本日のバーチャル防犯教室はいかがでしたか?」
私は冷や汗をかきながらゴーグルを外した。
私の目の前には制服姿の警察官が立っている。地域防犯の一環で自治会主催の防犯教室に私は参加しているのだ。しかもVRゴーグル使用の主観映像のため恐怖もひとしおだ。


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