おせっちゃんの今日2

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言葉は使いようで

2020-11-20 14:44:07 | 言葉

わが家はずっと朝日新聞で通していますが、1面の「折々のことば」は朝目を通すことが習慣になっています。言葉を発した方、解説をしてくださっている鷲田清一さんに、わが知能がついていけず、読んでもよく理解できないことがあって嘆くこともありますが。

今日、心温まる言葉に出会いました。

「気が利いているねえ。一本というのがとてもいい。邪魔にもならずに格別にきれいだ」

田村隆一(詩人)が樋口幸子(文筆家)にかけた言葉だそうです。私はどちらの方も存じ上げないのですが、解説によれば、樋口は、フリーの校正者だった。田村の家を借りて、一つ屋根の下で暮らしたことがあるとのこと。
田村が入院をしたと聞き、夫婦で見舞った。一本のバラを手に。
田村は気儘な人間で、ひとを振り回してばかりの人と思われていたが、夫婦の困窮に思いを馳せこの言葉で礼を言ったらしい。繊細な心遣いである。
人の褒め方、労わり方が身に染みる言葉の力である。

貧しい夫婦はどんなに救われたことでしょう。たった一本のバラが、言葉一つで何にも増した素晴らしい贈り物として受け取られたのですね。
言葉の使い方ひとつ、その奥にひっそりと隠れている暖かな心遣い、貧しい夫婦の質素な見舞いが、豪華な花束にも増したものとなったのですね。
夫婦の持っていたであろう引け目も、きれいに拭い去られたことでしょう。文筆家として名が出たのも、このかけられた言葉一つが励ました結果でしょうか。