今日もまた「折々のことば」から。
中脇初枝という方が、絵本「つるかめつるかめ」のあとがきに使っているのだそうです。
「自分の力ではどうしようもないことがあった時、昔の人たちはおまじないを唱えてきました」
解説者は「天にすがるというより、その音調にのせられ、怖くてもひとりじゃないよと誰かに言ってもらっているような気持ちになる」と書いています。
おまじないの例として他に「まじゃらくまじゃらく」「とーしーとーしー」「ちちんぷいぷい」などをあげています。
幼い頃を思い出してみても、我が家ではあまり使わなかったような気がします。知っているのは「ちちんぷいぷい」。「つるかめつるかめ」は読書の中で知ったような、やや古臭い言葉の印象があります。
言葉でおまじないはあまりしませんでしたが、育ったN村には医者よりも信じられている医療がありました。今でも(というより、医学の進んだ今はより一層)不思議な加療で、おまじないとしか思えないのですが、確かに効いたのです。
田舎のことですし、戦後の物のない時代、蚊取り線香さえ不自由していました。私は虫に刺されると、真っ赤に腫れあがり、ひどい時は脚の付け根のリンパ腺がしこってぐりぐりになって、苦しみました。そんな時、先述したおまじないのおばあさんを訪ねて行くのでした。
村では旧家の立派な玄関のあるお宅でしたが、丁重に座敷に通されます。おばあさんは半紙を畳の上に広げ、傷んだ方の脚をその上に乗せ、真っ直ぐ立つように促します。そして、刷った墨をつけた筆で、私の足型を書きとるのです。脚には少しも触りません。すれすれのところに筆を走らせます。足形が取れたところで、その中央にお灸を一つ。手を合わせてお祈りをします。
それでおしまい。「じきに治りますから。お大事に」
これで効くのかなあ、疑いながらお礼を言って帰宅するのですが、これが見事に効くのです。リンパ腺のしこりも消え、痛みも取れるのです。
医療というよりはこれこそおまじないですよね。今でも不思議で仕方ありません。偶然に治る時期が来て治ったと考えることもできますが、私は幾度かやってもらいましたし(効きました)他の村人も困った時はたずねるようでしたから、確かに効いたのだと思います。不思議~!!。