早朝の三島大社。ここから小田原城下までを「箱根八里」。ほんとに32kmぴったりありました。
昇降口の縦にならんだ下駄箱の前に小さな椅子がある。
通常、靴を履き替えるために使う。
赤いラインのスクールバスがそろりと近づいてきて、昇降口前に横づけされ停まる。
前方の扉が開く。もうアキくんが、そこで降りるのを待っている。
右足、左足、最後はジャンプして両足で着地。
着地が決まった体操選手のようにニヤリと笑う。
先生に手を引かれ、不思議なステップ?を交えて昇降口まで来ると、上履きに履き替える。スムースだ。
訳がある。早く例の椅子に座ってバスを眺めたい。
アキくんはもう特等席にいる。
子ども達を下したバスが停車場所を開けると、次の色のバスが角度を変えながら入ってくる。
両膝を手のひらで叩いて、次に2~3回拍手。もうバス大歓迎。
バスが好き。彼はこういう特等席をもっている。
次のバスはまだか、首を伸ばすアキくんの横顔は無心だ。
そんな様子をこちら側から見ていると、無心であることのが羨ましくも感じる。
子どものころの無心さの中で人は自分の特等席を見つけるのかな?
などとぼんやり考えていると、
「アキくん、そろそろ行くよ」
と担任の先生。
ずっと特等席にはいられない。そういうものだ。
同級生も上履きに履き替え待っている。ずっとそこにいられない子もある。
その子たちを束ねる担任の先生もこっちを見てる。
こんな時先生にも「手」がある。
まだバスに未練のある彼に近づき、教室のイラストが描かれたカードを見せ、
「お・わ・り」
と言う。いつも視覚支援。
すると、特等席をさっと立ち上がり一度大きく手をたたく。
「仕方がない、行くか」
と心の中で言ったかどうか分からない。
でもその時小さな決意があったことは確かである。
「ずっと座っているわけにはいかないな」
と。
特等席を離れて現実に向かっていく。
大人になっていくということ?。
子どもの無心から離れて、折り合いをつけた。
友達と先生と手をつないで、静かに廊下の奥に歩いて行く背中を見送る。頑張ったねぇ。
思い出して時計を見る。
自分ももうすぐ来客対応だ。その後高等部に応援に入り、報告書2本、会議、打合せもあり今日も退勤は夜だ。
こっちも「行くか」と思っている。
※「アキくん」は仮名です。
昇降口の縦にならんだ下駄箱の前に小さな椅子がある。
通常、靴を履き替えるために使う。
赤いラインのスクールバスがそろりと近づいてきて、昇降口前に横づけされ停まる。
前方の扉が開く。もうアキくんが、そこで降りるのを待っている。
右足、左足、最後はジャンプして両足で着地。
着地が決まった体操選手のようにニヤリと笑う。
先生に手を引かれ、不思議なステップ?を交えて昇降口まで来ると、上履きに履き替える。スムースだ。
訳がある。早く例の椅子に座ってバスを眺めたい。
アキくんはもう特等席にいる。
子ども達を下したバスが停車場所を開けると、次の色のバスが角度を変えながら入ってくる。
両膝を手のひらで叩いて、次に2~3回拍手。もうバス大歓迎。
バスが好き。彼はこういう特等席をもっている。
次のバスはまだか、首を伸ばすアキくんの横顔は無心だ。
そんな様子をこちら側から見ていると、無心であることのが羨ましくも感じる。
子どものころの無心さの中で人は自分の特等席を見つけるのかな?
などとぼんやり考えていると、
「アキくん、そろそろ行くよ」
と担任の先生。
ずっと特等席にはいられない。そういうものだ。
同級生も上履きに履き替え待っている。ずっとそこにいられない子もある。
その子たちを束ねる担任の先生もこっちを見てる。
こんな時先生にも「手」がある。
まだバスに未練のある彼に近づき、教室のイラストが描かれたカードを見せ、
「お・わ・り」
と言う。いつも視覚支援。
すると、特等席をさっと立ち上がり一度大きく手をたたく。
「仕方がない、行くか」
と心の中で言ったかどうか分からない。
でもその時小さな決意があったことは確かである。
「ずっと座っているわけにはいかないな」
と。
特等席を離れて現実に向かっていく。
大人になっていくということ?。
子どもの無心から離れて、折り合いをつけた。
友達と先生と手をつないで、静かに廊下の奥に歩いて行く背中を見送る。頑張ったねぇ。
思い出して時計を見る。
自分ももうすぐ来客対応だ。その後高等部に応援に入り、報告書2本、会議、打合せもあり今日も退勤は夜だ。
こっちも「行くか」と思っている。
※「アキくん」は仮名です。