ヒロトが、マーシーが、あと5メートルで手が届くくらいのところにいた。
ライブだからと、私はヒールの高さ7センチくらいのウエッジソールで準備していた。
フジロックのサカナクションでモッシュを経験しているからと完全に鷹をくくっていた。
ヒロトとマーシーのファンは数知れず、その盛り上がり方は確かに常軌を逸していた。
好きな人のためでなければあんなに人間の色んなものが撒き散る場所になんかいられない。
普段はどちらかというと潔癖な嫌いのある私が、誰とも知らない人の汗や蒸気にずぶんと入るなんて本当に考えられない。
でも、それができる。
自分の身を自分で守るのにも必死で、冷静と情熱の間を行ったり来たりしながら人間の熱気風呂に入り続けた。
足を踏まれて、どうしてそうなったのかはわからないが足の親指の爪が半分もげた。
痛みを感じたのはほんの一時で、あとは血でぬるっとした感触がするだけだった。
戦っているボクサーはアドレナリンのおかげで痛みを感じないというが、たぶんそんな状況だったのだと思う。
ライブが終わってもそれは痛くなくて、血にまみれた足の親指がサンダルと一緒にじんじんとしていた。
痛み出したのは、帰宅してお風呂に入ったときだった。
いつもDVDを観ているのと同じヒロトの笑顔があった。
ヒロトは本当に瑞々しくて、どうしてこんなにこの人には「今」しかないんだろう。
人の笑顔でなんでこんなに泣きそうになるのだろう。
荒れ狂う人と人の合間からヒロトとマーシーを追った。
ライブだからみんな踊り狂っているけれど、私は彼らをもっと凝視したかった。
みんな止まってほしかった。
「最後まで楽しんでってください」
とライブのときいつもヒロトは言う。
職業:ロック歌手のヒロトのすごさ。
一方的な想像ばかりしているけれど、彼らの生き方や在り方が、私は本当に好きなんだと思う。
彼らが生きていることは、事実として知っているけれど、その本物さと今この同じ空間にいることが奇跡的でどんなにありがたいことだろう。
3人で一緒に会場に入った私たちはみんなそれぞればらばらに出てきた。
同じくヒロトとマーシーが大好きな彼女と、三ツ矢サイダーを飲みながらZepp東京の観覧車の真下で横たわった。
仄かに温かいコンクリートで、そのまま寝てしまいたいと話した。
爪はもげているし、自分の汗か人の汗か判別できず濡れていて。
好き、ということは偉大だなと思う。
それが跳ね返ってこない良さも、ある。
実際の人間関係は育めるからいいのだけれど。
ここ2,3年の私は人生の転機と呼べるようなことがいくつかあるのだが、「ブルーハーツとの出会い」というのも間違いなく入る。
もし学生のとき、私が私をインタビューしていたら、「随分と気が狂った人もいるものだ」と思ったに違いない。
ライブだからと、私はヒールの高さ7センチくらいのウエッジソールで準備していた。
フジロックのサカナクションでモッシュを経験しているからと完全に鷹をくくっていた。
ヒロトとマーシーのファンは数知れず、その盛り上がり方は確かに常軌を逸していた。
好きな人のためでなければあんなに人間の色んなものが撒き散る場所になんかいられない。
普段はどちらかというと潔癖な嫌いのある私が、誰とも知らない人の汗や蒸気にずぶんと入るなんて本当に考えられない。
でも、それができる。
自分の身を自分で守るのにも必死で、冷静と情熱の間を行ったり来たりしながら人間の熱気風呂に入り続けた。
足を踏まれて、どうしてそうなったのかはわからないが足の親指の爪が半分もげた。
痛みを感じたのはほんの一時で、あとは血でぬるっとした感触がするだけだった。
戦っているボクサーはアドレナリンのおかげで痛みを感じないというが、たぶんそんな状況だったのだと思う。
ライブが終わってもそれは痛くなくて、血にまみれた足の親指がサンダルと一緒にじんじんとしていた。
痛み出したのは、帰宅してお風呂に入ったときだった。
いつもDVDを観ているのと同じヒロトの笑顔があった。
ヒロトは本当に瑞々しくて、どうしてこんなにこの人には「今」しかないんだろう。
人の笑顔でなんでこんなに泣きそうになるのだろう。
荒れ狂う人と人の合間からヒロトとマーシーを追った。
ライブだからみんな踊り狂っているけれど、私は彼らをもっと凝視したかった。
みんな止まってほしかった。
「最後まで楽しんでってください」
とライブのときいつもヒロトは言う。
職業:ロック歌手のヒロトのすごさ。
一方的な想像ばかりしているけれど、彼らの生き方や在り方が、私は本当に好きなんだと思う。
彼らが生きていることは、事実として知っているけれど、その本物さと今この同じ空間にいることが奇跡的でどんなにありがたいことだろう。
3人で一緒に会場に入った私たちはみんなそれぞればらばらに出てきた。
同じくヒロトとマーシーが大好きな彼女と、三ツ矢サイダーを飲みながらZepp東京の観覧車の真下で横たわった。
仄かに温かいコンクリートで、そのまま寝てしまいたいと話した。
爪はもげているし、自分の汗か人の汗か判別できず濡れていて。
好き、ということは偉大だなと思う。
それが跳ね返ってこない良さも、ある。
実際の人間関係は育めるからいいのだけれど。
ここ2,3年の私は人生の転機と呼べるようなことがいくつかあるのだが、「ブルーハーツとの出会い」というのも間違いなく入る。
もし学生のとき、私が私をインタビューしていたら、「随分と気が狂った人もいるものだ」と思ったに違いない。