つぼみな日々

いろんな花の蕾をもっていたい。たくさんの花を咲かせたい。
言葉を紡ぎたい私のブログです。

妄想の湖

2014-05-14 15:30:54 | 日記
朝もやの中ゴミを出しに行くと、またハノイの情景が蘇った。
朝もやの滲んだ空気感だけがそうさせるのではなく、今住んでいる建物の古い鉄骨の匂いがそうさせるのかもしれない。
同時にいつも、フランス語の「アパルトマン」という言葉が思い浮かぶ。
外見はちょっとだけ可愛らしくて、古くて、暗くて、埃っぽくて、中に入るとキッチュに可愛い、私の勝手なそんな感じのイメージ。
旅中に宿泊していたハノイの宿はそんな感じだった。

そもそもハノイだったのか、ニャチャンだったのか、ホイアンだったのか、よく考えると全然定かではない。

今住んでいる建物は、前まで住んでいた所謂都会のマンションという感じの整然として清潔な共用部ではなく、住居なのか事務所なのか見まごうような雑居ビルだ。

家に来る人が、口をそろえて「変なところに住んでいるね」と言う。
この部屋を探すとき数多くの物件を見るのにとても疲弊してしまって、最終的には、広さ、空気の抜け感、あとはインスピレーションを重視していたので、その他の部分は私にとってはさほど問題ではなかった。

本当に良いところを見つけられた、と思っているのは今でも変わらないけれど、私はこの住居のヘンテコなところを今さらながら「あぁ変なのかもしれない」と思い始めた。
もちろんヘンテコな部分を認識してはいたけれど、何度も人に言われるので、改めて一歩引いて我が部屋を見てみるとその変さは「確かに」と思うのである。

鍵のない郵便受けや、事務所感たっぷりのガラス扉に押して開く式の取っ手、業務用の大型のエアコン、無理やり配置したお風呂とキッチン、洗濯機置き場、網戸のない窓。
キッチンの隣が洗濯機置き場だし、そのすぐ目の前がお風呂だ。
業務用大型エアコンの空気が届くように、寝室との仕切りの壁は天井が15cmほど空いている。
扉は見えないようにモザイクシートを貼っているし、さらに暖簾のような布も掛けている。
ベランダがないので洗濯物は全て部屋干しだ。
一階はかなり古くからありそうなガラス屋さんである。
大家さんに自転車置き場と案内されたところは、隣の敷地との狭間の電気メーターがあるただの草の生えたスペース。
あとこれはヘンテコなところではないけれど、テレビの受信状況が良くなくて、特に昼間は映らないチャンネルも多い。

これからの季節、網戸は欲しいなと思うくらいで後のところは特に問題はない。
先日した模様替えせいで、ソファスペースまで結構距離があって遠いけれど。


ある種の人間性の近しさを持った人と出会うと、お互いの匂いを確認し合って嬉しくなる。
同時に、それが本当は幻想であることのリスクヘッジをしてしまう卑しさと、その近しさの部分への切なさも抱く。
偏見に満ちた見方と接し方を取り払いたいと思ってできる限りそうするけれど、まずは自分への偏見を取らなければならないのだとも思う。

その人は、自分が価値観を変えるほど影響を受けた曲、を謙虚に教えてくれて、それは私が好きではないヒップホップのものだったけれど、その人にとっての影響度合いというのは十分に推察することができた。
私のそれも教えたら、その曲に対するとても新鮮で素直な感想が返ってきた。
さほど自覚がないであろう素直さに、感じたことのないようなハッとする感じを覚える。

最近よく、自分の期待とも思える、現実の続きのようなとてもリアルな夢を見る。
私の強欲さは、安全な場所にぶつけられて、空を切っている。