孫のいる横浜を越えて、けいこが東京までやってきた。
「双子は平等に育てないといけない」とけいこは本当に思ってきただろうことは、小さな頃から感じている。
しかし最近は孫のかわいさに負けて、私のところへ来る回数といもうとのところへ行っている回数に差が出てきた。
仕方がない、孫はかわいいのだから。
私だって、姪はかわいいと思うのだから。
しかし私にも会っておかなければと、私が土日に仕事をしていることを知っていながら、柿やらパンやらを持ってやって来た。
特に何をするでもなく、よく食べる姪と、やんちゃな甥の話を二人でする。
彼らが生まれてくれたことは、“家族”にとって良いことに他ならない。
昼は外で、夜は家でご飯を食べる。
夜のメニューは、鉄板のお味噌汁、鶏肉とねぎを醤油とみりんで煮たもの、鶏肉ともやしの温サラダ、小松菜のおひたし、ご飯、柿。
私としてはいつもより少し肉の量が多いが、お互いに変わりばえしない晩ご飯を食べる、私が仕事で出かけていたので別々の時間に。
「久しぶりに食事に行くのだから焼肉にしよう!」などとは決してならない。
私の家庭は、家族そろっていただきますをする家庭ではなかった。
「お父さんが帰ってきたら」とか「料理が全部できてから」とかでもなかった。
けいこが作った大皿料理を席についた順から食べていく方式だった。
ついでに言うと、けいこは家族の料理を作らされていると感じている節が常にあって、晩ご飯のときは結構な頻度でイライラしていた。
4人もいる兄弟で、野蛮な取り合いこそさほどしなかったけれど、遅れをとればおかずがなくなるのでご飯の前では「待て」ができない。
それは作り手のけいこも同様で、とりあえずお腹が空いたら人のことは気にせずに食べる。
今日のお昼だって、私が10~15分遅れると連絡すると、「お腹が空いたのでどこか入って先に食べています」とメールの返信があった。
さすがにこれには私も少々びっくりしたのだけれど、まあ本当に全然構わないし、そうしていてもらいたい。
もちろん、東京だからと言って“東京らしいもの”を食べたいともならない。
私は普通の夜の時間には寝られないので、当然好きな時間に寝てもらう。
シャワーはいいから顔だけ洗いたいと言われ、独立洗面台はお湯が出ないのでキッチンの方でお湯を出すよというのに、お湯を一杯沸かして洗面台に水と混ぜて溜めて洗うからいいと言われる。
そっちの方が面倒だと思いながら渋々電気ケトルでお湯を沸かしてけいこに渡すと、水を入れ過ぎたようで冷たい冷たいと言いながら顔を洗っていた。
寝支度を終えてテレビを見ながら、吉田山田というデュオの詞がいいよとけいこは言っていた。
私はなんとなくしか聞いたことがないけれど、私は「ふーん」とだけ言っておいた。
オーストラリアの写真をスマートフォンで見せていたら、ふと私が書いた書が出てきて「梵我一如」というのを気に入っていた。
「色即是空空即是色」よりも「梵我一如」の方が書として良いと言っていたが、それは私も同感である。
あげようかと思ったけれど、あいにく現物は捨ててしまっていた。
けいこは早々に私のベッドに入っていった。
久しぶりに詞を書きたい気持ちに駆られて筆をとる。
超有名な曲らしいが私はこの曲を知らなかった。
居酒屋で、初めてYouTubeで聴いて、久しぶりにぎゅうっとなった。
そういうのは、甘えなのだろうか。
こっそりと紅さすその手は初紅葉

「双子は平等に育てないといけない」とけいこは本当に思ってきただろうことは、小さな頃から感じている。
しかし最近は孫のかわいさに負けて、私のところへ来る回数といもうとのところへ行っている回数に差が出てきた。
仕方がない、孫はかわいいのだから。
私だって、姪はかわいいと思うのだから。
しかし私にも会っておかなければと、私が土日に仕事をしていることを知っていながら、柿やらパンやらを持ってやって来た。
特に何をするでもなく、よく食べる姪と、やんちゃな甥の話を二人でする。
彼らが生まれてくれたことは、“家族”にとって良いことに他ならない。
昼は外で、夜は家でご飯を食べる。
夜のメニューは、鉄板のお味噌汁、鶏肉とねぎを醤油とみりんで煮たもの、鶏肉ともやしの温サラダ、小松菜のおひたし、ご飯、柿。
私としてはいつもより少し肉の量が多いが、お互いに変わりばえしない晩ご飯を食べる、私が仕事で出かけていたので別々の時間に。
「久しぶりに食事に行くのだから焼肉にしよう!」などとは決してならない。
私の家庭は、家族そろっていただきますをする家庭ではなかった。
「お父さんが帰ってきたら」とか「料理が全部できてから」とかでもなかった。
けいこが作った大皿料理を席についた順から食べていく方式だった。
ついでに言うと、けいこは家族の料理を作らされていると感じている節が常にあって、晩ご飯のときは結構な頻度でイライラしていた。
4人もいる兄弟で、野蛮な取り合いこそさほどしなかったけれど、遅れをとればおかずがなくなるのでご飯の前では「待て」ができない。
それは作り手のけいこも同様で、とりあえずお腹が空いたら人のことは気にせずに食べる。
今日のお昼だって、私が10~15分遅れると連絡すると、「お腹が空いたのでどこか入って先に食べています」とメールの返信があった。
さすがにこれには私も少々びっくりしたのだけれど、まあ本当に全然構わないし、そうしていてもらいたい。
もちろん、東京だからと言って“東京らしいもの”を食べたいともならない。
私は普通の夜の時間には寝られないので、当然好きな時間に寝てもらう。
シャワーはいいから顔だけ洗いたいと言われ、独立洗面台はお湯が出ないのでキッチンの方でお湯を出すよというのに、お湯を一杯沸かして洗面台に水と混ぜて溜めて洗うからいいと言われる。
そっちの方が面倒だと思いながら渋々電気ケトルでお湯を沸かしてけいこに渡すと、水を入れ過ぎたようで冷たい冷たいと言いながら顔を洗っていた。
寝支度を終えてテレビを見ながら、吉田山田というデュオの詞がいいよとけいこは言っていた。
私はなんとなくしか聞いたことがないけれど、私は「ふーん」とだけ言っておいた。
オーストラリアの写真をスマートフォンで見せていたら、ふと私が書いた書が出てきて「梵我一如」というのを気に入っていた。
「色即是空空即是色」よりも「梵我一如」の方が書として良いと言っていたが、それは私も同感である。
あげようかと思ったけれど、あいにく現物は捨ててしまっていた。
けいこは早々に私のベッドに入っていった。
久しぶりに詞を書きたい気持ちに駆られて筆をとる。
超有名な曲らしいが私はこの曲を知らなかった。
居酒屋で、初めてYouTubeで聴いて、久しぶりにぎゅうっとなった。
そういうのは、甘えなのだろうか。
こっそりと紅さすその手は初紅葉

