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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

予防訴訟判決 Q&A(2)

2006年10月11日 | 日の丸・君が代関連ニュース
●教基法違反という点について

Q9 本件判決では、教育基本法違反という判示もなされたそうですが、どのようなことですか。


A9 本来、各学校には、各学校毎の特色を生かした自主的な教育課程を編成する権限があるはずです。それが、一〇・二三通達に象徴される都の強権的教育行政の下ではどうなったでしょうか。
 本件判決は、一〇・二三通達及びこれに関する都教委の一連の指導が、「入学式、卒業式等の式典における国旗掲揚、国歌斉唱の実施方法等、教員に対する職務命令の発令等について、都立学校の各校長の裁量を許さず、これを強制するもの」「教育の自主性を侵害するうえ、教職員に対し一方的な一定の理論や観念を生徒に教え込むことを強制することに等しく、教育における機会均等の確保と一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準を逸脱しているとの誹りを免れない」とし、教育基本法一〇条一項の禁ずる「不当な支配」に該当するものとして違法、と判示しています。

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Q10 校長に対する都教委の「指導」という名の強制の実態についても、詳しく、かつ広範囲に事実認定されたという風に聞きましたが、その点はいかがですか。


A10 「一〇・二三通達及びこれに関する都教委の一連の指導」の実態については、校長自身がいちばんよく知っているはずです。元校長の勇気ある詳細な証言は、裁判所の事実認定に大きな役割を果たしました。本件判決が認めているとおり、入学式、卒業式等の式典における国旗掲揚、国歌斉唱の実施方法や、教職員に対する職務命令の発令等について、校長にはまったく裁量の余地はありませんでした。これら事実全体に基づいて都教委の「指導」が教育基本法一〇条にいうところの「不当な支配」該当するとしたのです。
 「最後の授業」とも言うべき卒業式を初めとして、重要な教育活動の一環である学校行事において、教職員集団というだけでなく、校長自身が自分たちの学校にふさわしい行事のあり方を何も自主的には決められないという現状は、たいへん貧しく、情けないことです。対面式やフロア形式の卒業式が出来ないこと、生徒の卒業制作を壇上に飾れないこと、養護学校において肢体不自由な生徒を国歌斉唱時に無理やりにでも立たせていること、といった諸々の事実も強制の実態を示しています。

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Q11 校長が一〇・二三通達に基づき教職員に宛てて発した職務命令も「重大かつ明白な瑕疵」があり、教職員は起立、斉唱、伴奏の義務を負うことはないと判示されたそうですが、いかがですか。


A11 「校長の職務命令に重大かつ明白な瑕疵がある場合には、これに従う義務はない」という判例を具体的に当てはめて検討した結果、起立、斉唱拒否は積極的妨害行為でもなく、生徒扇動行為でもなく、学習指導要領の国旗国歌条項の教育目標を阻害しないこと。ピアノ伴奏は必須ではなく代替的手段があり、事前に確認して必要な措置を執っておけば式典進行も阻害しないこと。したがって、校長の職務命令は憲法一九条違反で重大明白な瑕疵があると認定され、つまり、起立、斉唱、伴奏の義務を負わない、むしろ拒否の自由があるということになります。

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●都教委の対応は?

Q12 一〇・二三通達及びそれに基づく職務命令が、裁判所の判決で憲法違反、教育基本法違反と明確に断罪されたにもかかわらず、都教委は判決翌日の二二日に臨時校長連絡会を招集し、「控訴するのだから、私たちの行政行為が何ら阻まれるものではない」と開き直っています。このことをどう考えたらよいのでしょうか。


A12 原告団・弁護団は、判決を受けて直ちに「一〇・二三通達を取り消せ」「これまでの処分を取り消せ」「判決を真摯に受けとめ控訴するな」の申し入れを行いました。しかし、都教委は二二日の校長連絡会で「従来どおりの方針で臨む」と校長たち指導したと言われています。これは、都教委が本件判決で教育の自主性を侵害すると厳しく指摘された、校長らに対する強権的手法を、更に重ねていることに他なりません。
 三権分立の下では、行政権は司法権の判断に従って行動すべき義務を負うのは当然です。確かに、我が国では三審制が採られていますが、上級審で争うことができることと、地裁判決を考慮尊重しないことは全く別問題です。地裁判決が出た以上、行政権が従前と対応を同じくするということはありえないのであって、そうだとすれば、三権分立という憲法の基本を否定するものといわなければなりません。都教委は、憲法尊重擁護義務(憲法99条)に明白に違反しています。
 また、地裁判決によって一〇・二三通達は違憲無効ということが確認されたのですから、従来どおりの対応をするということは、都と都教委は、一〇・二三通達が違憲無効なものであることを認識しつつ、違憲無効な行政を進めるということになり、より責任が重くなると言わねばなりません(いわば、過失犯だったものが、故意犯になるようなものと言うべきか)。

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Q13 都と都教委は九月二九日に控訴の手続きをとりました。今後の動きはどのようになるのでしょうか。


A13 都立高校保護者の申し入れや、ネットを通じた呼びかけで二晩で一二〇〇人もの賛同者を得た市民の申し入れもありました。また東京弁護士会、東京第2弁護士会からは判決を高く評価する会長声明も出されました。こうした良識の声を無視しての控訴です。。
 都教委が、今後も卒業式等における国旗国歌の強制を繰り返せば、原告らは、そのたびに、懲戒処分等の強制の下、自己の信念に従って職務命令を拒否するか従うかの岐路に立たされます。しかも、原告らに対する懲戒処分は重くなり続けるのですから、そのことによる原告らの思想・良心の侵害は著しい。にもかかわらず、控訴を選択した都教委の姿勢は、思想・良心の自由は権利侵害後の事後的救済にはなじまないとして国歌斉唱義務不存在および処分の差し止めを認めた本判決をまったく無とするものであり、許されません。
 私たちは都側の控訴を堂々と受けて立ち、勝利判決をめざします。
 われわれは、控訴審においても、本件判決が認めた、民主主義社会における思想・良心の自由の保障の重要性、教育に対する行政権力の不当・不要な介入から教育の自主性を守ることの重要性などを引き続き強く訴え、司法判断を確実なものにしていきます。

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●もし、教基法が改悪されたら?

Q14 安倍新政権が誕生し、教育基本法改悪を当面の最大課題として取り組むという所信が表明されました。教育基本法が改悪されたら、この裁判の行方はどうなってしまうのでしょうか。


A14 教育基本法が政府案どおりに改悪される事態になったら、この裁判に困難な局面が生じることはたしかです。今国会での改悪ストップの闘いにともに全力で取り組みましょう。
 しかし、たとえ万が一、教育基本法が改悪されたとしても、私たちがすべての法的根拠を失うわけではありません。憲法は健在です。思想・良心の自由を侵害する一〇・二三通達は違憲という判断は維持され続けます。判決の中では原告側の主張として、国際人権規約や子どもの権利条約にも言及されました。日本はこうした条約を批准しているのですから、国内法規の上位に位置するこれらの規約・条約を根拠に、日の丸、君が代の強制の違法性を主張することは十分に可能です。あきらめて敗北主義に陥ることはありません。
 引き続き、この裁判への大きな関心とご支援をお願いします。


      発行責任者 永井(五商定)宮村(千歳丘)
      連絡先
            「日の丸・君が代」強制反対 予防訴訟をすすめる会
      〒160-0003 東京都新宿区本塩町4番地4 祥平館ビル9階  東京中央法律事務所気付

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