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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

経団連報告を斬る

2008年02月03日 | 格差社会
 ★ 経団連報告を斬る
 08春闘 問われる労働者の闘い


 日本経団連は昨年末、08年の春季労使交渉の経営側指針(『経営労働政策委員会報告』、以下『報告』)を発表した。
 新聞各紙(12/20)は、「経団連、賃上げ容認」「家計に業績還元の方針」「内需拡大に期待」(毎日)「ベア容認、家計に配慮」(朝日)「賃上げ容認明確に」「消費底上げ配慮」(日経)「経団連、賃上げ促す」「家計重視で異例方針」(神戸)などと、まるで08春闘は、経団連のお墨付きをもらって賃上げが決まったかのように報じている。
 しかし、情勢は甘くはない、ただマスコミをして、賃上げ当然といわせるほど、企業と労働者の状況の格差が広がっているのである。問われているのは、労働者の闘いである。

  「開かれた賃金制度」
 ★ 「格差」の拡大を容認


 『報告』では確かに、「個人消費の増税鈍化が懸念され」、「わが国の安定した成長を確保していくには、企業と家計を両輪とした経済構造を実現していく必要がある」と明記されている。しかし、あくまでも企業ごとの支払能力を基準にしている。
 「個別企業の支払い能力を無視して横並びで賃金を引き上げていく市場横断的なベースアップは、すでに過去のもととなっており、もはやありえないことはいうまでもない」し、「企業規模別・業種別・地域別に相当にばらつきがみられる現状において、賃上げは困難と判断する企業数も少なくないと予測される」としているのである。

 しかも賃上げには、「グローバル競争の視点」「総額人件費の視点」「人口減少という大きな時代の流れの中で安定成長」という3つの前提条件が付いている。
 いわば世界的な競争に勝ち抜く大企業のみが賃上げを「容認」され、規模別・業種別・地域別の「格差」はさらに拡大することになる。そして、それが当たり前だという思想が前面に出ているのが最大の特徴である。
 さらに「職種別同一賃金は労働市場の流動化・産業構造の高度化に逆行」とことさら強調し、「開かれた賃金制度」の整備をうたう。
 とりわけ年功型賃金について、「ICTの発展・普及などにより、勤続年数と仕事の習熟の度合いとの関連性が薄れる傾向がある」だけでなく、「長期従業員のみの優遇で、『非正規』の登用の阻害の要因」となっており、「企業は、単純に勤続年数に比例する年功型賃金を見直し、仕事・役割・貢献度を基軸とした賃金制度・評価制度を整備する」という。「正規」「非正規」の枠を取り払って、個々人の成果・貢献度に対する評価と処遇を整合する制度を構築するという。
 これでは、企業間格差だけでなく、「非正規」労働者の劣悪な労働条件を利用し、労働者間の競争(差別)も激化するだろう。

 ★ 労働力市場の弾力化
  仕事と生活の調和へ


 『報告』は、「正規」「非正規」の格差を認める。バブル崩壊後の就職氷河期に生まれた「非正規」労働者には一定の同情さえ示し、「社員の年齢構成のゆがみを招く」(技術の伝承)と反省もしている。
 しかし、「企業は、経営資源の中でも人材を最も重視」するのであり、「適性があり、能力のある従業員」は長期雇用するし、同時に「需給の変動や、専門性」を求め、「求職者の希望に応じて」、「非正規」労働者を活用するのは当然としている。
 それどころか、少子化にともない若年労働力人口が減少していく中では、「全員参加型社会の実現」をめざし、「新卒採用に加え、第二新卒、派遣社員等や、女性、高齢者などを積極的に採用する」という。「性別・年齢・国籍にとらわれない、多様な人材確保」である。
 しかし、そこに求められているのは、労働力市場のさらなる弾力化(「需給調整機能の強化」)であり、要するに企業にとって効率のよい日本型雇用システムの構築なのである。
 その基軸になっているのが、ワーク・ライフ・バランスである。「仕事と生活の調和」というが、仕事は成果が上がるように効率的に働きなさい、生活を重視したいなら「時間・場所にとらわれない」短時間勤務・テレワーク・在宅勤務に就きなさいということである。
 そのために、「自主的・自立的な働き方を可能にする制度」のために、労働時間法制の見直し、労働者派遣制度のさらなる弾力化などが盛り込まれている。
 労働者を商品(奴隷)扱いする姿勢はさらに強まっている。地域ユニオン運動を軸にした「非正規」労働者の主体的な闘いの強化とそれを組織し支える労働運動の再生が求められている。

  非正規労働者の闘い
 ★ 最大の安全網は団結


 いずれにしても、『報告』はグローバル競争に勝ち抜くために、いかに労働者を効率的にこき使うかという姿勢に貫かれており、問われるのは労働者側の構えである。
 資本のほうは、国際競争力確保のためには、企業の税・社会保障負担の軽減まで言及している
 アメリカ発サブプライムローン問題に端を発し、カジノ資本主義の矛盾が噴き出している。
 ガソリンや食料の高騰、社会保障制度の後退など、働くものの生活の危機は増大している。
 日本経団連に「春討」などと椰楡されるのではなく、根本的なセーフテイネソトは団結権の行使であるという労働組合本来の役割を見せるときである。
(松枝佳宏)

『週刊新社会』2008年1月15日(火)

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