東京都教育委員会 教育長 中井敬三 様
1.東京都教育委員会が、東京都立石神井特別支援学校教員・田中聡史さん(7月15日実施予定)、都立高校教員・YTさん(7月19日)、都立高校教員・KSさん(7月25日)、都立石神井特別支援学校教員・田中聡史さん(8月29日実施予定)に対して、東京都職員研修センターに呼び出し行おうとしている、日本国憲法で保障された「思想・信条・良心の自由」を侵害する「服務事故再発防止研修」=「転向強制研修」を中止せよ。
1.東京都教委は、田中聡史さんに対し、これまでの月1回の「指導主事訪問研修」に替えて、一方的に期日を指定して、新たに「月1回のセンター研修」を通知してきた。これまで、被処分者の所属校での「指導主事訪問研修」は、本人の希望を事前に聞き、授業のない時間帯等に実施していたにもかかわらず、今回、本人の希望・学校の事情等を無視し、一方的に6月・7月・8月に東京都職員研修センターに呼び出しての研修(6月15日「地方公務員法及び適正な教育課程の実施」及び演習「振り返りシート」、7月15日「事例問題等の演習」、8月29日「研修内容の振り返り」)を行うとする東京都教委の「通知」に断固抗議し、「通知」の即時撤回を求める。
1.私たちは、改めて、東京都教育委員会による東京都立石神井特別支援学校教員・田中聡史さんへの憲法違反の卒業式「君が代」不起立に対する「懲戒処分」(減給10分の1、1月)に断固抗議するとともに、東京都教育委員会が、田中聡史さんへの憲法違反の不当処分を直ちに撤回することを求める。同時に、東京都立高校教員YTさん、都立高校教員KSさんへの不当な「戒告処分」を直ちに撤回することを求める。
1.本抗議・要請書に対する誠意ある回答を、「ひのきみ全国ネットワーク」連絡先宛に求める。
「ひのきみ全国ネット」は、都教委宛の抗議・要請書を、3月29日付、4月5日付、4月15日付、6月13日付で提出した。しかし、都教委からは、4月22日付、5月17日付、6月27日付で、都教委から「都教委宛要請書」に対して、以下のたった2行の文書回答が「全国ネット」小野宛FAXで送られてきた。
*******************************
<抗議・要請の理由について>
1.2016年4月15日、東京都教育委員会は、私たちの不当処分を行うなとの要請にもかかわらず、2016年3月24日の東京都立石神井特別支援学校卒業式で「君が代」斉唱時に起立しなかった教員・田中聡史さんに対して、「懲戒処分」(減給10分の1、1月)の発令を強行したことに対し、怒りを込めて抗議するものである。今回の処分により、田中聡史さんに対する「君が代」不起立処分は、「減給10分の1、1月」が7回、「戒告」が3回、合計10回の処分となった。
東京都教委による今回の処分は、この間の東京都教委による「君が代」不起立処分に関する裁判において、最高裁判決及び東京地裁・東京高裁判決が確定した、「懲戒権者の裁量権の範囲を超え、違法」を理由に減給以上の処分を取り消した判決の流れに対抗するものであり、東京都教委が直ちに不当処分を撤回することを求めるものである。
同時に、私たちは、3月24日、東京都教育委員会が、第5回定例会において、東京都立高校2校の卒業式で起立しなかった教員2名、式場に入場しなかった教員1名の懲戒処分(「戒告」)を決定し、3月25日、東京都教育庁人事部職員課管理主事が2校に出向いて処分発令を強行したことに強く抗議する。さらに、東京都教委が4月5日に行った「君が代」不起立など都立高校卒業式関係被処分者2名への「服務事故再発防止研修」にも重ねて強く抗議し、処分の撤回を求めるものである。
2.東京都教育委員会が教育に支配介入し、「子どもの最善の利益」を保障する教育を破壊し、都教委の政治介入「10.23通達」を発出し、「君が代」起立を拒否する教職員を処分すること、全教職員が起立する姿を子どもたちに見せることによって、子どもたちの心に、「我が国と郷土を愛する意識の高揚」・「日の丸・君が代」の尊重を刷り込むことは、「個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求する人間の育成」を目的とする教育条理に反し到底許されるものではない。
「君が代」不起立処分は、この間の東京都教委による「君が代」不起立処分に関する裁判において、最高裁判決及び東京地裁・東京地裁判決が確定した、「懲戒権者の裁量権の範囲を超え、違法」を理由に減給以上の処分を取り消した判決の流れに対抗するものであり、東京都教委による教育支配介入、「君が代」不起立による処分が国際社会に通用するものではないことは自明の理である。
3.2015年5月28日、東京高裁(須藤典明裁判長)は2007年「君が代」不起立停職6月処分取り消しと損害賠償を求めた事件で、根津さん・停職6月処分の取り消しと河原井さん・根津さんの損害賠償(各10万円)を認める判決を出した。河原井さんの停職3か月処分については地裁で処分取り消し、都は上告せず、敗訴した東京都は、根津・停職6月処分と2人の損害賠償について、上告及び上告受理申し立てをしていたが、今回、最高裁第3小法廷は、5月31日付で都の「上告を棄却」し、「上告審として受理しない」ことを「裁判官全員一致の意見で決定した」との「決定」を出した。
2012年1月16日最高裁判決は、「職務命令は違法とは言えない」として戒告を容認したが、「戒告を超える重い処分は違法」とし、根津さんを除くすべての人たちの減給以上の処分を取り消した。「過去の処分歴」「不起立前後の態度等」(2つを一緒にして「過去の処分歴等」という)がある場合は「戒告を超える重い処分」も可とし、根津さんの停職3月処分を取り消さなかった。これに倣って、これ以降の裁判は、どれも同じ判決が続き、根津さんだけは敗訴し続けた。
しかし、2016年5月28日に最高裁決定により確定判決となった2015年5月28日の須藤判決は、根津さんについて、2006年処分から2007年処分に至るまでの間に処分を加重する新たな個別具体的な事情はないとして、停職6月処分を取り消した。
「過去に同様の行為が行われた際に停職処分がされていたとしても、懲戒権者において当然に前の停職処分よりも長期の停職期間を選択してよいということにはならない」、「処分の加重を必要とするような特段の事情が認められるか否かという点に加えて、停職処分を過重することによって控訴人根津が受けることになる具体的な不利益の内容も十分勘案して、慎重に検討することが必要」と判じ、同一の「過去の処分歴」を使っての機械的累積過重処分を断罪した。
「停職6月処分を科すことは、・・・控訴人根津がさらに同種の不起立行為を行った場合に残されている懲戒処分は免職だけであって、次は地方公務員である教員としての身分を失う恐れがあるとの警告を与えることとなり、その影響は、単に期間が倍になったという量的な問題にとどまるものではなく、身分喪失の可能性という著しい質的な違いを控訴人根津に対して意識させざるを得ないものであって、極めて大きな心理的圧力を加える」と、停職6月の意味することを明示したうえで、
「自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や心情を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることとなり、・・・日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」と判じる日本国憲法19条の実質的侵害に踏み込んだ判決であった。また、損害賠償については、「停職期間中は授業をすることができず、児童生徒との信頼関係の維持にも悪影響が生じ、精神的な苦痛を受けるだけでなく、職場復帰後も信頼関係の再構築等で精神的な苦痛を受けるものと認められ、そのような苦痛は、本件処分の取り消しによって回復される財産的な損害の補てんをもっては十分ではない」とし、都に損害賠償金の支払いを命じ、東京都教委の上告を最高裁が棄却し、2016年5月28日に最高裁決定により須藤判決が確定判決となったことを、東京都教委はしっかりと肝に銘じなければならない。
4.2014年7月24日に発表された国連・自由権規約委員会の「総括所見」においては、「日の丸・君が代」に関して、以下のように表明されていることも確認されなければならない。
★「公共の福祉」を理由とした基本的自由の制約
22 本委員会は、「公共の福祉」の概念はあいまいであり、無制限であるということ、そして、規約(arts. 2, 18 and19)の下で許容されるものを大きく超える制約を許容するかもしれないということへの懸念を改めて表明する。
本委員会は、以前の最終所見(CCPR/C/JPN/CO/5, para.10)を想起し、第18、19条の第3項における厳しい条件を満たさない限り、思想、良心、宗教の自由や表現の自由の権利に対するいかなる制約をも押し付けることを差し控えるように締約国に要求する。
Restriction of fundamental freedoms on grounds of “public welfare”
22.The Committee reiterates its concern that the concept of “public welfare” is vague and open-ended and may permit restrictions exceeding those permissible under the Covenant (arts. 2, 18 and 19).
The Committee recalls its previous concluding observations (CCPR/C/JPN/CO/5, para. 10) and urges the State party to refrain from imposing any restriction on the rights to freedom of thought, conscience and religion or freedom of expression unless they fulfil the strict conditions set out in paragraph 3 of articles 18 and 19.
上記の見解は、委員会が18条だけでなく、19条にも言及した背景に、学校における「日の丸」掲揚、「君が代」斉唱に抵抗した教員に対する懲戒処分が、思想、良心、宗教の自由を侵害するものであるという主張について考慮された見解である。国連・自由権規約18条第3項に該当しない「思想・良心・宗教の自由」に対する制約は、国際規約上許されるものではないので、「10.23通達」及び、「10.23通達」に基づく職務命令は、国際条約違反であり、職務命令違反の処分は全て無効である。
5.私たちは、この間、東京都教委が卒業式・入学式「君が代」不起立を理由にした被処分者への「服務事故再発防止研修」を長期間に渉って行っていることに強く抗議するものである。
東京都教育委員会が行う被処分者に対する「服務事故再発防止研修」は、私たちが再三指摘しているように、日本国憲法で保障された「思想・信条・良心の自由」違反、自由権の国際基準違反であり、「思想転向研修」である。被処分者は、「思想・信条・良心の自由」を侵害され、個人の尊厳を奪われ、精神的苦難と減給による経済的損失を受けるとともに、「再発防止研修」という名の「思想転向研修」を強制されるのである。
6.「再発防止研修」に関しては、2004年7月、不起立・不伴奏者対象に初めて再発防止研修が行われる直前の執行停止申立に対して東京地裁・須藤裁判官は、2004年7月23日、本件研修が未実施であることから現段階では却下と決定したものの、実際に実施される研修が「例えば、研修の意義、目的、内容等を理解しつつ、自己の思想、信条に反すると表明する者に対して、何度も繰り返し同一内容の研修を受けさせ、自己の非を認めさせようとするなど、公務員個人の内心の自由に踏み込み、著しい精神的苦痛を与える程度に至るものであれば、そのような研修や研修命令は合理的に許容されている範囲を超えるものとして違憲違法の問題を生ずる可能性があるといわなければならない」として、
やり方によっては「違憲・違法」の問題が生ずることを指摘していたことを改めて確認しなければならない。私たちは、「君が代」不起立被処分者に対するすべての「服務事故再発防止研修」の中止を強く求めるものである。
7.私たちは、東京都教育委員会による「日の丸・君が代」強制、「日の丸・君が代」不起立処分、そして「日の丸・君が代」不服従被処分者への転向強制研修の3点をセットにした東京都教育委員会による権力的行為が、学校現場で、子どもたちや教職員の人間としての尊厳を奪い、「思想・信条・良心・教育の自由」を全面的に破壊していることに対し断固抗議する。
8.私たちは、東京都教委が行っている「都教委という行政権力の命令・行為にひとりの不服従者も許さない」ことにより「もの言わぬ教員」をつくろうとする暴挙が、2016年3月29日の安保法制の施行により「新たなる戦前」に向かう日本の「軍国主義教育」の新たなる始まりと密接に繋がっていることも重視している。
東京都教育委員会は、安倍政権による集団的自衛権行使容認と安保法制施行を前提に、戦争準備体制の強化と軍国主義教育の開始とが密接に結びついた事実を積み重ねているのである。
9.日本の戦前の教育は、国家が教育を全面支配し、学校は「教育勅語」に基づく教育によって、忠君愛国の精神で天皇のために命を捧げる「少国民」を育成する場として、子どもたちと人々を侵略戦争に動員する上で決定的な役割を果たした。そのことを、歴史的事実としてだけでなく、現在の話として想起しなければならない。「教室から、学校から、戦争は始まる」。
10.私たち、<許すな!「日の丸・君が代」強制、止めよう!安倍政権の改憲・教育破壊 全国ネットワーク>は、卒業式・入学式などで「君が代」斉唱時の起立・斉唱、ピアノ伴奏を強制する都教委の2003年「10.23通達」による処分が、「思想・信条・良心・教育の自由」に基づく正当な権利行使としての「君が代」不起立への「弾圧・いじめ」であり、日本国憲法で保障された内心の自由・良心の自由・思想の自由・表現の自由・教育の自由を侵害し、自分で考えずに指示に従う子どもや教職員にすることに繋がる「君が代」処分であることに抗議し、断固として処分を許さず、また、「服務事故再発防止研修」という名の「思想転向強制研修」の中止を強く求めていく運動を進めていくものである。
私たちは、全国各地の現職教員や退職教員、保護者、市民、労働者とともに、今回の都教委の不当処分と「君が代」不起立被処分者への不当な「思想転向強制研修」を止める日まで、東京都民・全国各地の教員・保護者・市民とともに、その中止を求め、徹底して抗議の声を上げ闘い続ける決意である。
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2016年7月14日
許すな!「日の丸・君が代」強制、止めよう!安倍政権の改憲・教育破壊
全国ネットワーク★連絡先:「ひのきみ全国ネット」代表世話人・小野政美
許すな!「日の丸・君が代」強制、止めよう!安倍政権の改憲・教育破壊
全国ネットワーク★連絡先:「ひのきみ全国ネット」代表世話人・小野政美
◎ 東京都教育委員会による東京都立石神井特別支援学校教員・田中聡史さん他2名への憲法違反の「服務事故再発防止研修」に断固抗議し、即時中止を要請する!
1.東京都教育委員会が、東京都立石神井特別支援学校教員・田中聡史さん(7月15日実施予定)、都立高校教員・YTさん(7月19日)、都立高校教員・KSさん(7月25日)、都立石神井特別支援学校教員・田中聡史さん(8月29日実施予定)に対して、東京都職員研修センターに呼び出し行おうとしている、日本国憲法で保障された「思想・信条・良心の自由」を侵害する「服務事故再発防止研修」=「転向強制研修」を中止せよ。
1.東京都教委は、田中聡史さんに対し、これまでの月1回の「指導主事訪問研修」に替えて、一方的に期日を指定して、新たに「月1回のセンター研修」を通知してきた。これまで、被処分者の所属校での「指導主事訪問研修」は、本人の希望を事前に聞き、授業のない時間帯等に実施していたにもかかわらず、今回、本人の希望・学校の事情等を無視し、一方的に6月・7月・8月に東京都職員研修センターに呼び出しての研修(6月15日「地方公務員法及び適正な教育課程の実施」及び演習「振り返りシート」、7月15日「事例問題等の演習」、8月29日「研修内容の振り返り」)を行うとする東京都教委の「通知」に断固抗議し、「通知」の即時撤回を求める。
1.私たちは、改めて、東京都教育委員会による東京都立石神井特別支援学校教員・田中聡史さんへの憲法違反の卒業式「君が代」不起立に対する「懲戒処分」(減給10分の1、1月)に断固抗議するとともに、東京都教育委員会が、田中聡史さんへの憲法違反の不当処分を直ちに撤回することを求める。同時に、東京都立高校教員YTさん、都立高校教員KSさんへの不当な「戒告処分」を直ちに撤回することを求める。
1.本抗議・要請書に対する誠意ある回答を、「ひのきみ全国ネットワーク」連絡先宛に求める。
「ひのきみ全国ネット」は、都教委宛の抗議・要請書を、3月29日付、4月5日付、4月15日付、6月13日付で提出した。しかし、都教委からは、4月22日付、5月17日付、6月27日付で、都教委から「都教委宛要請書」に対して、以下のたった2行の文書回答が「全国ネット」小野宛FAXで送られてきた。
「服務事故再発防止研修は、懲戒処分の原因となった服務事故の再発を防止するため、懲戒処分を受けた者に対し、関係規定に基づき、適切に実施します。(所管:教職員研修センター部教育経営課)」「処分の撤回は考えておりません(所管:人事部職員課)」とする「要請書に対する回答」があっただけである。私たちは、都教委による誠意のかけらもない「回答」に断固抗議するとともに、誠意ある回答を厳しく求めるものである。
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<抗議・要請の理由について>
1.2016年4月15日、東京都教育委員会は、私たちの不当処分を行うなとの要請にもかかわらず、2016年3月24日の東京都立石神井特別支援学校卒業式で「君が代」斉唱時に起立しなかった教員・田中聡史さんに対して、「懲戒処分」(減給10分の1、1月)の発令を強行したことに対し、怒りを込めて抗議するものである。今回の処分により、田中聡史さんに対する「君が代」不起立処分は、「減給10分の1、1月」が7回、「戒告」が3回、合計10回の処分となった。
東京都教委による今回の処分は、この間の東京都教委による「君が代」不起立処分に関する裁判において、最高裁判決及び東京地裁・東京高裁判決が確定した、「懲戒権者の裁量権の範囲を超え、違法」を理由に減給以上の処分を取り消した判決の流れに対抗するものであり、東京都教委が直ちに不当処分を撤回することを求めるものである。
同時に、私たちは、3月24日、東京都教育委員会が、第5回定例会において、東京都立高校2校の卒業式で起立しなかった教員2名、式場に入場しなかった教員1名の懲戒処分(「戒告」)を決定し、3月25日、東京都教育庁人事部職員課管理主事が2校に出向いて処分発令を強行したことに強く抗議する。さらに、東京都教委が4月5日に行った「君が代」不起立など都立高校卒業式関係被処分者2名への「服務事故再発防止研修」にも重ねて強く抗議し、処分の撤回を求めるものである。
2.東京都教育委員会が教育に支配介入し、「子どもの最善の利益」を保障する教育を破壊し、都教委の政治介入「10.23通達」を発出し、「君が代」起立を拒否する教職員を処分すること、全教職員が起立する姿を子どもたちに見せることによって、子どもたちの心に、「我が国と郷土を愛する意識の高揚」・「日の丸・君が代」の尊重を刷り込むことは、「個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求する人間の育成」を目的とする教育条理に反し到底許されるものではない。
「君が代」不起立処分は、この間の東京都教委による「君が代」不起立処分に関する裁判において、最高裁判決及び東京地裁・東京地裁判決が確定した、「懲戒権者の裁量権の範囲を超え、違法」を理由に減給以上の処分を取り消した判決の流れに対抗するものであり、東京都教委による教育支配介入、「君が代」不起立による処分が国際社会に通用するものではないことは自明の理である。
3.2015年5月28日、東京高裁(須藤典明裁判長)は2007年「君が代」不起立停職6月処分取り消しと損害賠償を求めた事件で、根津さん・停職6月処分の取り消しと河原井さん・根津さんの損害賠償(各10万円)を認める判決を出した。河原井さんの停職3か月処分については地裁で処分取り消し、都は上告せず、敗訴した東京都は、根津・停職6月処分と2人の損害賠償について、上告及び上告受理申し立てをしていたが、今回、最高裁第3小法廷は、5月31日付で都の「上告を棄却」し、「上告審として受理しない」ことを「裁判官全員一致の意見で決定した」との「決定」を出した。
2012年1月16日最高裁判決は、「職務命令は違法とは言えない」として戒告を容認したが、「戒告を超える重い処分は違法」とし、根津さんを除くすべての人たちの減給以上の処分を取り消した。「過去の処分歴」「不起立前後の態度等」(2つを一緒にして「過去の処分歴等」という)がある場合は「戒告を超える重い処分」も可とし、根津さんの停職3月処分を取り消さなかった。これに倣って、これ以降の裁判は、どれも同じ判決が続き、根津さんだけは敗訴し続けた。
しかし、2016年5月28日に最高裁決定により確定判決となった2015年5月28日の須藤判決は、根津さんについて、2006年処分から2007年処分に至るまでの間に処分を加重する新たな個別具体的な事情はないとして、停職6月処分を取り消した。
「過去に同様の行為が行われた際に停職処分がされていたとしても、懲戒権者において当然に前の停職処分よりも長期の停職期間を選択してよいということにはならない」、「処分の加重を必要とするような特段の事情が認められるか否かという点に加えて、停職処分を過重することによって控訴人根津が受けることになる具体的な不利益の内容も十分勘案して、慎重に検討することが必要」と判じ、同一の「過去の処分歴」を使っての機械的累積過重処分を断罪した。
「停職6月処分を科すことは、・・・控訴人根津がさらに同種の不起立行為を行った場合に残されている懲戒処分は免職だけであって、次は地方公務員である教員としての身分を失う恐れがあるとの警告を与えることとなり、その影響は、単に期間が倍になったという量的な問題にとどまるものではなく、身分喪失の可能性という著しい質的な違いを控訴人根津に対して意識させざるを得ないものであって、極めて大きな心理的圧力を加える」と、停職6月の意味することを明示したうえで、
「自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や心情を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることとなり、・・・日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」と判じる日本国憲法19条の実質的侵害に踏み込んだ判決であった。また、損害賠償については、「停職期間中は授業をすることができず、児童生徒との信頼関係の維持にも悪影響が生じ、精神的な苦痛を受けるだけでなく、職場復帰後も信頼関係の再構築等で精神的な苦痛を受けるものと認められ、そのような苦痛は、本件処分の取り消しによって回復される財産的な損害の補てんをもっては十分ではない」とし、都に損害賠償金の支払いを命じ、東京都教委の上告を最高裁が棄却し、2016年5月28日に最高裁決定により須藤判決が確定判決となったことを、東京都教委はしっかりと肝に銘じなければならない。
4.2014年7月24日に発表された国連・自由権規約委員会の「総括所見」においては、「日の丸・君が代」に関して、以下のように表明されていることも確認されなければならない。
★「公共の福祉」を理由とした基本的自由の制約
22 本委員会は、「公共の福祉」の概念はあいまいであり、無制限であるということ、そして、規約(arts. 2, 18 and19)の下で許容されるものを大きく超える制約を許容するかもしれないということへの懸念を改めて表明する。
本委員会は、以前の最終所見(CCPR/C/JPN/CO/5, para.10)を想起し、第18、19条の第3項における厳しい条件を満たさない限り、思想、良心、宗教の自由や表現の自由の権利に対するいかなる制約をも押し付けることを差し控えるように締約国に要求する。
Restriction of fundamental freedoms on grounds of “public welfare”
22.The Committee reiterates its concern that the concept of “public welfare” is vague and open-ended and may permit restrictions exceeding those permissible under the Covenant (arts. 2, 18 and 19).
The Committee recalls its previous concluding observations (CCPR/C/JPN/CO/5, para. 10) and urges the State party to refrain from imposing any restriction on the rights to freedom of thought, conscience and religion or freedom of expression unless they fulfil the strict conditions set out in paragraph 3 of articles 18 and 19.
上記の見解は、委員会が18条だけでなく、19条にも言及した背景に、学校における「日の丸」掲揚、「君が代」斉唱に抵抗した教員に対する懲戒処分が、思想、良心、宗教の自由を侵害するものであるという主張について考慮された見解である。国連・自由権規約18条第3項に該当しない「思想・良心・宗教の自由」に対する制約は、国際規約上許されるものではないので、「10.23通達」及び、「10.23通達」に基づく職務命令は、国際条約違反であり、職務命令違反の処分は全て無効である。
5.私たちは、この間、東京都教委が卒業式・入学式「君が代」不起立を理由にした被処分者への「服務事故再発防止研修」を長期間に渉って行っていることに強く抗議するものである。
東京都教育委員会が行う被処分者に対する「服務事故再発防止研修」は、私たちが再三指摘しているように、日本国憲法で保障された「思想・信条・良心の自由」違反、自由権の国際基準違反であり、「思想転向研修」である。被処分者は、「思想・信条・良心の自由」を侵害され、個人の尊厳を奪われ、精神的苦難と減給による経済的損失を受けるとともに、「再発防止研修」という名の「思想転向研修」を強制されるのである。
6.「再発防止研修」に関しては、2004年7月、不起立・不伴奏者対象に初めて再発防止研修が行われる直前の執行停止申立に対して東京地裁・須藤裁判官は、2004年7月23日、本件研修が未実施であることから現段階では却下と決定したものの、実際に実施される研修が「例えば、研修の意義、目的、内容等を理解しつつ、自己の思想、信条に反すると表明する者に対して、何度も繰り返し同一内容の研修を受けさせ、自己の非を認めさせようとするなど、公務員個人の内心の自由に踏み込み、著しい精神的苦痛を与える程度に至るものであれば、そのような研修や研修命令は合理的に許容されている範囲を超えるものとして違憲違法の問題を生ずる可能性があるといわなければならない」として、
やり方によっては「違憲・違法」の問題が生ずることを指摘していたことを改めて確認しなければならない。私たちは、「君が代」不起立被処分者に対するすべての「服務事故再発防止研修」の中止を強く求めるものである。
7.私たちは、東京都教育委員会による「日の丸・君が代」強制、「日の丸・君が代」不起立処分、そして「日の丸・君が代」不服従被処分者への転向強制研修の3点をセットにした東京都教育委員会による権力的行為が、学校現場で、子どもたちや教職員の人間としての尊厳を奪い、「思想・信条・良心・教育の自由」を全面的に破壊していることに対し断固抗議する。
8.私たちは、東京都教委が行っている「都教委という行政権力の命令・行為にひとりの不服従者も許さない」ことにより「もの言わぬ教員」をつくろうとする暴挙が、2016年3月29日の安保法制の施行により「新たなる戦前」に向かう日本の「軍国主義教育」の新たなる始まりと密接に繋がっていることも重視している。
東京都教育委員会は、安倍政権による集団的自衛権行使容認と安保法制施行を前提に、戦争準備体制の強化と軍国主義教育の開始とが密接に結びついた事実を積み重ねているのである。
9.日本の戦前の教育は、国家が教育を全面支配し、学校は「教育勅語」に基づく教育によって、忠君愛国の精神で天皇のために命を捧げる「少国民」を育成する場として、子どもたちと人々を侵略戦争に動員する上で決定的な役割を果たした。そのことを、歴史的事実としてだけでなく、現在の話として想起しなければならない。「教室から、学校から、戦争は始まる」。
10.私たち、<許すな!「日の丸・君が代」強制、止めよう!安倍政権の改憲・教育破壊 全国ネットワーク>は、卒業式・入学式などで「君が代」斉唱時の起立・斉唱、ピアノ伴奏を強制する都教委の2003年「10.23通達」による処分が、「思想・信条・良心・教育の自由」に基づく正当な権利行使としての「君が代」不起立への「弾圧・いじめ」であり、日本国憲法で保障された内心の自由・良心の自由・思想の自由・表現の自由・教育の自由を侵害し、自分で考えずに指示に従う子どもや教職員にすることに繋がる「君が代」処分であることに抗議し、断固として処分を許さず、また、「服務事故再発防止研修」という名の「思想転向強制研修」の中止を強く求めていく運動を進めていくものである。
私たちは、全国各地の現職教員や退職教員、保護者、市民、労働者とともに、今回の都教委の不当処分と「君が代」不起立被処分者への不当な「思想転向強制研修」を止める日まで、東京都民・全国各地の教員・保護者・市民とともに、その中止を求め、徹底して抗議の声を上げ闘い続ける決意である。
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