◆ 国連自由権規約委員会に、「国旗国歌強制」は規約違反と通報レポート
1.人権保障(思想・良心・宗教の自由)の国際標準
自由権規約18条の規定は、日本国憲法19上と比べて極めて具体的であり、人権制約がやむを得ない場合の条件も第3項に具体的に記されている。その条件とは“law solely”“purpose”“necessary”の3つである。
2.国連自由権規約委員会第7回日本政府報告書審査の経過
2017年07月 [CCPR ← NGO] 市民から情報提供レポート提出 <A>
2017年11月 [CCPR → 日本政府] 国連から日本政府に「質問リスト(List of Issues)」 <B>
2020年04月 [CCPR ← 日本政府] 質問リストに対する回答の形で、政府報告書 <C>
2020年09月 [CCPR ← NGO] 政府報告書に対して再び市民からカウンターレポート <D>
2020年10月~11月 ジュネーブで日本政府報告審査・・・の予定だったが、コロナのため無期延期。
<A> NGOレポートで、国連に通報したこと
○2003年「10・23通達」以来毎年良心的不服従者は絶えることなく、東京の被処分者数は累計480名に達した。
○被処分者には「再発防止研修」で、「日の丸・君が代」に敬意を表するよう思想改変が強要される。
○退職教員の抗議行動に「公共の福祉」名目で刑事罰を科されたことから萎縮効果が高まっている。
<B> 自由権規約委員会が日本政府に回答を求めたこと(List of Issues)
事前質問(List of Issues)30項目の中に、私たちの通報に対して応答した質問が2つあった。ポイントは、パラ23では「どんな対策を講じたか」、パラ26では「10・23通達の規約適合性を説明せよ」
<C> List of Issuesに対する日本政府の回答
質問23に対して
→質問26の答は、最高裁判所の国内判例を引用して正当化を図っているだけで、国際基準を無視している。
<D> 政府報告に対し、NGOがカウンターレポートで反論
質問23「公共の福祉」
○聞かれている「講じた対策」に何も触れていない。前回の勧告から6年間、放置してきた政府の怠慢は明らか。
○人権制約概念の国際基準(注1)はどうなっているのか、「公共の福祉」が他国の憲法では(注2)どのような扱いを受けているのか、何の研究も行わず、主観的な自国の解釈を国際社会の中で押し通そうとしているだけ。
○担当部署ないし審議機関を設けて、期限を定めて解決に向けて対策を講ずるよう、勧告を求めた。
(注1) 人権制約概念の国際基準は、『世界人権宣言』(1948)29条2項(自由権18条3項と同趣旨)
(注2) 「公共の福祉」を用いている憲法は、ドイツ・デンマーク・ブラジル・韓国。前三者は「所有権」「財産権」の制約に限る。
質問26「10・23通達」
○「10・23通達」が名指して問われているのに、発出した東京都教育委員会は「締約国の地方公共団体として国際人権規約について答える立場にありません」と、条約遵守義務を否定し、NGOの質問に一切答えていない。
○「10・23通達」は、普通に考えて、規約18条第3項の人選制約が許される厳しい3条件を満たしていない。
・「立法」(law solely):「起立斉唱」を明文化した法令はない。東京都の場合は、法律によらず処分するため、「10・23通達」に「教職員は国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」と記載し、「職務命令」違反という外形を用意した。
・「目的」(purpose):敬意表明行為の国家による強制は、愛国心という一定の価値観の押しつけであり、「慣例的な儀礼的所作」という表現は、政治的意図を覆い隠す詐術。都教委の真のねらいは、生徒の起立斉唱への誘導。
・「必要不可欠」(necessary):CD放送代替も可能だし、教員の不起立によって式典に影響が生じたことは立証されていない。
○教職員の市民的権利が尊重され、不利益に扱われないよう勧告を求める。
東京・教育の自由裁判をすすめる会国際人権プロジェクトチーム 花輪紅一郎
1.人権保障(思想・良心・宗教の自由)の国際標準
自由権規約18条の規定は、日本国憲法19上と比べて極めて具体的であり、人権制約がやむを得ない場合の条件も第3項に具体的に記されている。その条件とは“law solely”“purpose”“necessary”の3つである。
※自由権規約第18条(思想・良心・宗教の自由)
1 (略)
2 (略)
3 宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。
4 (略)
※日本国憲法19条(思想及び良心の自由)
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
2.国連自由権規約委員会第7回日本政府報告書審査の経過
2017年07月 [CCPR ← NGO] 市民から情報提供レポート提出 <A>
2017年11月 [CCPR → 日本政府] 国連から日本政府に「質問リスト(List of Issues)」 <B>
2020年04月 [CCPR ← 日本政府] 質問リストに対する回答の形で、政府報告書 <C>
2020年09月 [CCPR ← NGO] 政府報告書に対して再び市民からカウンターレポート <D>
2020年10月~11月 ジュネーブで日本政府報告審査・・・の予定だったが、コロナのため無期延期。
※ CCPR(国連自由権規約委員会)、NGO(東京・教育の自由裁判をすすめる会など)
<A> NGOレポートで、国連に通報したこと
○2003年「10・23通達」以来毎年良心的不服従者は絶えることなく、東京の被処分者数は累計480名に達した。
○被処分者には「再発防止研修」で、「日の丸・君が代」に敬意を表するよう思想改変が強要される。
○退職教員の抗議行動に「公共の福祉」名目で刑事罰を科されたことから萎縮効果が高まっている。
<B> 自由権規約委員会が日本政府に回答を求めたこと(List of Issues)
事前質問(List of Issues)30項目の中に、私たちの通報に対して応答した質問が2つあった。ポイントは、パラ23では「どんな対策を講じたか」、パラ26では「10・23通達の規約適合性を説明せよ」
23.前回の総括所見(パラ22)を踏まえ、「公共の福祉」という曖昧で制限がない概念を明確化し、規約第18条及び第19条の各第3項に規定される限定的な要件を超えた、思想、良心及び宗教の自由又は表現の自由に対する権利への如何なる制限も課さないことを確実にするために講じた措置について報告願いたい。(日弁連訳)
26.2003年に東京都教育委員会によって発出された「10.23通達」を教員や生徒に対して実施するためにとられた措置が規約に適合するかどうかに関して、儀式において生徒を起立させるために物理的な力が用いられており、また教員に対しては経済的制裁が加えられているという申立てを含めて、説明願いたい。(日弁連訳)
<C> List of Issuesに対する日本政府の回答
質問23に対して
201.「公共の福祉」の概念およびその実際の施行は、規約に基づいて日本が提出した第6回定期報告のパラ5で述べられているとおりである。質問26に対して
216. 学校において国旗および国歌について生徒に教えることは、学習指導要領の「入学式や卒業式などにおいては,学校はその意義を踏まえ,国旗を掲揚し,国歌を斉唱するよう生徒を指導するものとする」という規定に基づいて実施されている。この目的は生徒の内心に踏み込んで国旗国歌を強制することではない。国旗国歌の指導は教育課題の一つとして実施されているという以上の意味はない。→質問23の答は、前回回答の繰り返しでお茶を濁しており、何の「対策も講じて」いないことを自ら認めたに等しい。
217. 付属文書13(注*)で述べられている通り、一般に、全て公務員は、あらゆる市民の奉仕者として、公共の福祉に奉仕し、職務の遂行にあたって法令及び規則、且つ、上司の命令を尊重することが求められる。同様に地方公務員である東京都立学校の教員もまた教育活動を遂行するに当たって、法令及び規則、且つ、上司の命令を尊重する職務上の義務を負う。上司である校長が上記教員に入学式などの儀式において、学校教育法とその施行令に基づくカリキュラム基準である学習指導要領に基づき国旗と国歌を指導するよう命令した場合、教員はその命令に従う職務上の義務を負う。
〔* 地方公務員法30条(服務の根本基準) 、32条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務) 〕
218. この点に関して、2011年6月6日の最高裁判決は、卒業式などの儀式において慣例上の儀式的所作として国歌斉唱時に起立して歌うことを求める職務命令は,その命令の目的と内容および制約の形態を総合的に判断すれば、命令によってもたらされる制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められると判じている。
219. したがって、これらの命令は規約18条の目的に反しない。
→質問26の答は、最高裁判所の国内判例を引用して正当化を図っているだけで、国際基準を無視している。
<D> 政府報告に対し、NGOがカウンターレポートで反論
質問23「公共の福祉」
○聞かれている「講じた対策」に何も触れていない。前回の勧告から6年間、放置してきた政府の怠慢は明らか。
○人権制約概念の国際基準(注1)はどうなっているのか、「公共の福祉」が他国の憲法では(注2)どのような扱いを受けているのか、何の研究も行わず、主観的な自国の解釈を国際社会の中で押し通そうとしているだけ。
○担当部署ないし審議機関を設けて、期限を定めて解決に向けて対策を講ずるよう、勧告を求めた。
(注1) 人権制約概念の国際基準は、『世界人権宣言』(1948)29条2項(自由権18条3項と同趣旨)
(注2) 「公共の福祉」を用いている憲法は、ドイツ・デンマーク・ブラジル・韓国。前三者は「所有権」「財産権」の制約に限る。
質問26「10・23通達」
○「10・23通達」が名指して問われているのに、発出した東京都教育委員会は「締約国の地方公共団体として国際人権規約について答える立場にありません」と、条約遵守義務を否定し、NGOの質問に一切答えていない。
○「10・23通達」は、普通に考えて、規約18条第3項の人選制約が許される厳しい3条件を満たしていない。
・「立法」(law solely):「起立斉唱」を明文化した法令はない。東京都の場合は、法律によらず処分するため、「10・23通達」に「教職員は国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」と記載し、「職務命令」違反という外形を用意した。
・「目的」(purpose):敬意表明行為の国家による強制は、愛国心という一定の価値観の押しつけであり、「慣例的な儀礼的所作」という表現は、政治的意図を覆い隠す詐術。都教委の真のねらいは、生徒の起立斉唱への誘導。
・「必要不可欠」(necessary):CD放送代替も可能だし、教員の不起立によって式典に影響が生じたことは立証されていない。
○教職員の市民的権利が尊重され、不利益に扱われないよう勧告を求める。
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