◆ 石原氏の責任問う裁判が新局面
汚染地購入の経過と責任 (週刊新社会)
東京都民の胃袋を賄う生鮮食品を扱う市場を築地(中央区)から豊洲(江東区)に移転する問題で、豊洲から発がん性のある有害物質が極めて高い濃度で検出され、またあるべきはずだった盛り土がなかったなど次々に問題が生起している。
移転の見通しが立たない中、仲買業者に対する都の補償問題などクローズアップされてもいる。
そうした中、豊洲市場の土地購入を巡って当時知事だった石原慎太郎氏の責任と賠償を求める住民訴訟の口頭弁論が2月9日、東京地裁(林俊之裁判長)で開かれた。
都はこれまで「金額は購入元との合意契約に基づくもので、石原氏に賠償責任はない」とする立場を取ってきた。
しかし、小池百合子都知事は1月20日の記者会見で従来の立場を再検討することを表明、2月3日の会見で新たな弁護団を発表した後の初めての弁論となった。
弁論で都側弁護団の勝丸充啓(みつひろ)団長は、「訴訟方針の変更が必要かどうかを検討するには相当の時間を要する」と述べた。
これに対し、原告弁護団側は「方針変更が前提との理解だ。提訴からすでに4年9カ月が経過しており、誠実で迅速な対応を求める」と述べた。
原告・弁護団は弁論後に東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、大城聡弁護士は「すでに求めている石原氏の証人尋問は必須。法廷で認識を明らかにしてほしい」と述べた。
原告の1人で一級建築士の水谷(みずのや)和子さんは、「事実解明のため当時の関係者は法廷で真相を話してほしい」と述べた。
閉廷後の進行協議で都側は4月27日までに方針を決めることを表明。次回の弁論は5月31日に行われることになった。
訴訟は2014年5月、都民40人が移転予定地の一部で土壌汚染が確認されたのに汚染対策費を考慮せずに購入したのは都知事の職権乱用で違法として、石原氏に土地購入費約578億円を請求するよう都に求めている。
一方、築地から豊洲への移転問題を審議している都議会の特別委員会は2月7日、石原元知事と用地買収を担当した浜渦武生元副知事らを参考人として招致することを全会一致で決めた。
民進や共産の提案に対し、自民や公明は慎重姿勢だったが、小池知事が移転経過の解明に意欲を見せる中、賀成に回り、全会一致となった。招致の日程は未定。
参考人は地方自治法に定められた議会の調査権限だが、強制力はない。このため、都議会にはより権限の強い調査特別委員会(百条委員会)の設置を求める声がある。
◆ 「議事録」ない公文書問題も露呈
汚染地購入の経過と責任
石原慎太郎元都知事は昨年10月14日、用地取得の経緯などに関する都からの質問に、「私自身は全く関与しておりません。全て浜渦(武生・元東京都副知事)に任せておりました」と回答した。
浜渦氏は古くは国会議員時代の石原氏の秘書を務め、石原氏が都知事に転身後は特別秘書や副知事として石原氏を支えた人物だ。
浜渦氏は2月2日放送の「ゴゴスマ」で都議会特別委員会や、設置が決まった百条委員会について、招致されれば出席する意向を表明したという。
石原氏の特別委参考人招致は3月18~20日のいずれかに行うことが決まっている。
住民による行政訴訟(2014年5月提訴)で原告は、都が石原氏に土地購入代金約578億円を請求するよう求め、豊洲の土地購入に関する議事録などの公開を求めている。
こうした中で小池百合子都知事は昨年11月25日の会見で、9月に表明した「情報公開」の方針に沿って、「ようやく海苔弁の海苔を剥がす状況になった」と述べた。豊洲市場の「消えた盛り土」に関する石原元知事の対応を聞かれての説明だ。
そもそも、安全性へのリスクが指摘されていた豊洲の東京ガス工場跡地に、生鮮食品を扱う市場の移転先として、誰がいつ、どのように話し合い、決定し、購入したのかという問題がある。
豊洲用地の所有者だった東京ガスと都との交渉記録について、これまで舛添要一都知事時代までの間、情報開示しても「全面黒塗り」状態で出てくるため、「海苔弁」などと批判されていた。
また、都に関する情報公開問題で昨秋、豊洲市場の盛り土問題で、地下空間を設けることを決めた会議の議事録などが残っていないことが発覚した。なぜないのか。
東京都には、所管する課長の判断(権限)で廃棄できる規則があるから廃棄されたと言えるだろう。つまり、行政(都)の公文書について作成し、残して管理するルール(条例)が整備されていないという基礎的な問題がある。
小池知事は、公文書管理問題について、2月1日の都政改革本部の会議の冒頭挨拶で、「条例化の準備を進めている」と述べたが、その内容は今後の課題だ。
国民の知る権利を守り、歴史を検証するには行政文書の作成・管理、情報公開の仕組みが行政(国・自治体)に求められる。
国の公文書管理法が施行されたのが2011年。その10年前、01年に情報公開法が施行された。
本来なら、公文書の作成・管理があって情報公開できるのであるから、順序が逆になった。「ない」ものは公開も、検証もできないからだ。
『週刊新社会』(2017年2月21日・28日)
汚染地購入の経過と責任 (週刊新社会)
東京都民の胃袋を賄う生鮮食品を扱う市場を築地(中央区)から豊洲(江東区)に移転する問題で、豊洲から発がん性のある有害物質が極めて高い濃度で検出され、またあるべきはずだった盛り土がなかったなど次々に問題が生起している。
移転の見通しが立たない中、仲買業者に対する都の補償問題などクローズアップされてもいる。
そうした中、豊洲市場の土地購入を巡って当時知事だった石原慎太郎氏の責任と賠償を求める住民訴訟の口頭弁論が2月9日、東京地裁(林俊之裁判長)で開かれた。
都はこれまで「金額は購入元との合意契約に基づくもので、石原氏に賠償責任はない」とする立場を取ってきた。
しかし、小池百合子都知事は1月20日の記者会見で従来の立場を再検討することを表明、2月3日の会見で新たな弁護団を発表した後の初めての弁論となった。
弁論で都側弁護団の勝丸充啓(みつひろ)団長は、「訴訟方針の変更が必要かどうかを検討するには相当の時間を要する」と述べた。
これに対し、原告弁護団側は「方針変更が前提との理解だ。提訴からすでに4年9カ月が経過しており、誠実で迅速な対応を求める」と述べた。
原告・弁護団は弁論後に東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、大城聡弁護士は「すでに求めている石原氏の証人尋問は必須。法廷で認識を明らかにしてほしい」と述べた。
原告の1人で一級建築士の水谷(みずのや)和子さんは、「事実解明のため当時の関係者は法廷で真相を話してほしい」と述べた。
閉廷後の進行協議で都側は4月27日までに方針を決めることを表明。次回の弁論は5月31日に行われることになった。
訴訟は2014年5月、都民40人が移転予定地の一部で土壌汚染が確認されたのに汚染対策費を考慮せずに購入したのは都知事の職権乱用で違法として、石原氏に土地購入費約578億円を請求するよう都に求めている。
一方、築地から豊洲への移転問題を審議している都議会の特別委員会は2月7日、石原元知事と用地買収を担当した浜渦武生元副知事らを参考人として招致することを全会一致で決めた。
民進や共産の提案に対し、自民や公明は慎重姿勢だったが、小池知事が移転経過の解明に意欲を見せる中、賀成に回り、全会一致となった。招致の日程は未定。
参考人は地方自治法に定められた議会の調査権限だが、強制力はない。このため、都議会にはより権限の強い調査特別委員会(百条委員会)の設置を求める声がある。
◆ 「議事録」ない公文書問題も露呈
汚染地購入の経過と責任
石原慎太郎元都知事は昨年10月14日、用地取得の経緯などに関する都からの質問に、「私自身は全く関与しておりません。全て浜渦(武生・元東京都副知事)に任せておりました」と回答した。
浜渦氏は古くは国会議員時代の石原氏の秘書を務め、石原氏が都知事に転身後は特別秘書や副知事として石原氏を支えた人物だ。
浜渦氏は2月2日放送の「ゴゴスマ」で都議会特別委員会や、設置が決まった百条委員会について、招致されれば出席する意向を表明したという。
石原氏の特別委参考人招致は3月18~20日のいずれかに行うことが決まっている。
住民による行政訴訟(2014年5月提訴)で原告は、都が石原氏に土地購入代金約578億円を請求するよう求め、豊洲の土地購入に関する議事録などの公開を求めている。
こうした中で小池百合子都知事は昨年11月25日の会見で、9月に表明した「情報公開」の方針に沿って、「ようやく海苔弁の海苔を剥がす状況になった」と述べた。豊洲市場の「消えた盛り土」に関する石原元知事の対応を聞かれての説明だ。
そもそも、安全性へのリスクが指摘されていた豊洲の東京ガス工場跡地に、生鮮食品を扱う市場の移転先として、誰がいつ、どのように話し合い、決定し、購入したのかという問題がある。
豊洲用地の所有者だった東京ガスと都との交渉記録について、これまで舛添要一都知事時代までの間、情報開示しても「全面黒塗り」状態で出てくるため、「海苔弁」などと批判されていた。
また、都に関する情報公開問題で昨秋、豊洲市場の盛り土問題で、地下空間を設けることを決めた会議の議事録などが残っていないことが発覚した。なぜないのか。
東京都には、所管する課長の判断(権限)で廃棄できる規則があるから廃棄されたと言えるだろう。つまり、行政(都)の公文書について作成し、残して管理するルール(条例)が整備されていないという基礎的な問題がある。
小池知事は、公文書管理問題について、2月1日の都政改革本部の会議の冒頭挨拶で、「条例化の準備を進めている」と述べたが、その内容は今後の課題だ。
国民の知る権利を守り、歴史を検証するには行政文書の作成・管理、情報公開の仕組みが行政(国・自治体)に求められる。
国の公文書管理法が施行されたのが2011年。その10年前、01年に情報公開法が施行された。
本来なら、公文書の作成・管理があって情報公開できるのであるから、順序が逆になった。「ない」ものは公開も、検証もできないからだ。
『週刊新社会』(2017年2月21日・28日)
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