★ 「がんばった人とそうでない人」というトリック (新勤評制度はいらない!全国交流会ニュース)
府教委アンケ設問8(1)「がんばった人とそうでない人に給与差を設けるのは適当だと思いますか」には異質感がある。ここだけ「努力」とかではなく「がんばる」という口話体が使われているのも何かうさんくさい。
こういった「俗な」コトバで教職員の仕事の実態を二分化したいのは、「がんばった人」という一群と「そうでない人」という一群を設定しておかないことには、「システム」の賃金構造(中・低評価者の賃金を高評価者に回す)が成り立たないからだ。
第一に、この設問は「評価・育成システム」に関するものではないことだ。
他の項目は、「自己申告票は仕事の成果の把握や目標の達成に向けて取り組むことに役だっているか」のように、「評価・育成システム」の具体的な内容について回答者がどう思っているかを聞いているのに対して、この設問項目は、一般的・抽象的な「給与格差に関する考え方」を問うているののだ。
「がんばったら成功する」というのは、今日、世間に行き渡った観念(イデオロギーといわれるもの)で、ウラを返せば「成功しないのは努力してないからだ」という自己責任論である。
項目8(1)はその観念に同意するか否かという問いなのである。
だから、この設問にyesという回答であっても、「システム」に対してyesというわけではない。
システムにおける評価は「業績評価」と「能力評価」の2本だてで、「がんばり(努力)」という柱はない。
自由記述には「がんばっているのに評価されない」という多くの指摘があった。
①「評価・育成システムの給与反映」への賛否を、「一般的・抽象的な給与格差に関する考え方=世間に行き渡った観念」への賛否にすり替え、
②「がんばり」を評価しない「システム」を、あたかも「がんばり」を評価するものであるかのように偽装したのだ。
「府教委まとめ」(2018年2月)が給与反映についての肯定意見として引用する5件の回答例が、「仕事に対する頑張りが、数値で評価され給与にも反映されるのは当然のことであると考えます」(*注)を初め、5件とも「『がんばり』が評価される」という前提で書かれている。「『評価結果の給与反映』についてはおおむね理解され、定着してきている」という結論を引き出すためのトリックとして仕掛けられたのが設問8(1)なのである。
(*注)この回答の全文は次の通り。
― 仕事に対する頑張りが、数値で評価され給与にも反映されるのは当然のことであると考えます。しかし、それを教育現場で行うべきであるかはもう少し検討すべき点もあるのではないでしょうか。何を正解ととるか、何を成果ととるかの基準が見えにくい教育現場で、評価基準を明確に保ちながら数値に基づいて業務実績を評価するのは難しいように感じます。(高10~20代)
府教委まとめは、「しかし、…」以下の部分をカットして引用している。
※ <新勤評制はいらない!全国交流会ウェブサイト>
http://www7b.biglobe.ne.jp/~kinpyo-saiban/
府教委に対する公開質問書(9月5日付)だけでなく、府教委の「まとめ」、昨年実施のアンケート本文、結果と全教職員、校長・教育長の回答、自由記述を見ることができます。
『新勤評制度はいらない!全国交流会ニュース 第16号』(2018.9.14)
府教委アンケ設問8(1)「がんばった人とそうでない人に給与差を設けるのは適当だと思いますか」には異質感がある。ここだけ「努力」とかではなく「がんばる」という口話体が使われているのも何かうさんくさい。
こういった「俗な」コトバで教職員の仕事の実態を二分化したいのは、「がんばった人」という一群と「そうでない人」という一群を設定しておかないことには、「システム」の賃金構造(中・低評価者の賃金を高評価者に回す)が成り立たないからだ。
― 頑張った人、そうでない人という表現はやめてほしい。教職員の仕事が一面的で薄っぺらく聞こえる。(高50代)設問8(1)にはトリックが仕掛けられている。
― 職員は、日々の業務を誰しもが「がっばって」勤務しており、8の(1)の質問のように、がんばった人とそうでない人に、はじめから分けるためのシステムであるのであれば、教職員相互の協力・連携を軸に教育活動に従事する我々には不必要なシステムといわざるを得ない。(支30代)
― このアンケートもなんのためなのですか。このアンケートの「頑張っている人が評価されるため」といった文言で、今の、現場をしらない方がつくられた評価システムなんだと再確認し苛立ちを隠し切れないでいます。(小30代)
― 教職員に精神疾患や持病がある方も多く、がんばりの評価が難しいと思う。このシステムが彼らをさらに追い詰めることになっているのではないかと苦しく思う。…評価をされて給与が上がることでやる気の出る人も、もちろんあるとは思うが、がんばれない人への優越感や蔑みの気持ちを引き出しているようにも思う。それこそいじめと変わらない。…教育そのものは経済効果にすぐさま現れるものではないので、数字や給与にこだわりすぎる評価には疑問を感じている。(高30代)
第一に、この設問は「評価・育成システム」に関するものではないことだ。
他の項目は、「自己申告票は仕事の成果の把握や目標の達成に向けて取り組むことに役だっているか」のように、「評価・育成システム」の具体的な内容について回答者がどう思っているかを聞いているのに対して、この設問項目は、一般的・抽象的な「給与格差に関する考え方」を問うているののだ。
「がんばったら成功する」というのは、今日、世間に行き渡った観念(イデオロギーといわれるもの)で、ウラを返せば「成功しないのは努力してないからだ」という自己責任論である。
項目8(1)はその観念に同意するか否かという問いなのである。
だから、この設問にyesという回答であっても、「システム」に対してyesというわけではない。
― がんばった人に対して給与が多く与えられるというのは、正当なことであると思う。しかし、教員というのは、頑張りが客観的に見えるものではないと思う。時間で測れるものでも、保護者の声で測れるものでも、学カテストの結果で測れるものでもないと思う。だから、給与に反映されるというのは、納得できない。(小40代)第二に、「評価・育成システム」はそもそも「がんばり(努力)」を評価の対象とするものではないことである。
システムにおける評価は「業績評価」と「能力評価」の2本だてで、「がんばり(努力)」という柱はない。
自由記述には「がんばっているのに評価されない」という多くの指摘があった。
― 現場の同僚から見ていても明らかに努力している方、指導に心血を注いでいる方がまったく良い評価結果につながらず、良いとこどりをしている方が高評価を得ている悪循環の結果、やる気のある教員の意欲低下を招いている状況を少なからず見ている。(高10~20代)「がんばっても評価されない」のは、たまたま評価者に見る目がなかったからではなく、「システム」の制度設計が「がんばり」を評価するものではないからだ。府教委の評価基準にも、がんばり(努力)を評価するという規定はない。
― 自分もがんばったし、児童も成長したと実感しても、評価できないことが残念。(小10~20代)
― 給与反映について、がんばった人に…という質問項目がありましたが、評価するのはがんばったかどうかで判断されるわけではなく、結果を出したかどうかで判断されるため、がんばった人という表現は不適切だと思います。(小40代)設問8(1)は、
― 今回のアンケートの中では「がんばりが報われた」などの表現が見られましたが、「がんばり」を評価するようなシステムにはなっていないと思います。あくまで結果を問われているように感じます。(小30代)
― 今回、このアンケートに回答することで初めて知ったことがあった。がんばりが給与に反映されると書かれていて、わたしは昨年3月の一か月病休をとらせていただくようなことになってしまい、だから評価が低くてもそのせいだと受け止めたが、だからがんばらなかったと言われるのは何か違うと感じる。それはがんばりうんぬんではなく、単に結果と思う。がんばりの評価はあいまいであり、結局評価されているのは結果だと思う。(小10~20代)
①「評価・育成システムの給与反映」への賛否を、「一般的・抽象的な給与格差に関する考え方=世間に行き渡った観念」への賛否にすり替え、
②「がんばり」を評価しない「システム」を、あたかも「がんばり」を評価するものであるかのように偽装したのだ。
「府教委まとめ」(2018年2月)が給与反映についての肯定意見として引用する5件の回答例が、「仕事に対する頑張りが、数値で評価され給与にも反映されるのは当然のことであると考えます」(*注)を初め、5件とも「『がんばり』が評価される」という前提で書かれている。「『評価結果の給与反映』についてはおおむね理解され、定着してきている」という結論を引き出すためのトリックとして仕掛けられたのが設問8(1)なのである。
(*注)この回答の全文は次の通り。
― 仕事に対する頑張りが、数値で評価され給与にも反映されるのは当然のことであると考えます。しかし、それを教育現場で行うべきであるかはもう少し検討すべき点もあるのではないでしょうか。何を正解ととるか、何を成果ととるかの基準が見えにくい教育現場で、評価基準を明確に保ちながら数値に基づいて業務実績を評価するのは難しいように感じます。(高10~20代)
府教委まとめは、「しかし、…」以下の部分をカットして引用している。
※ <新勤評制はいらない!全国交流会ウェブサイト>
http://www7b.biglobe.ne.jp/~kinpyo-saiban/
府教委に対する公開質問書(9月5日付)だけでなく、府教委の「まとめ」、昨年実施のアンケート本文、結果と全教職員、校長・教育長の回答、自由記述を見ることができます。
『新勤評制度はいらない!全国交流会ニュース 第16号』(2018.9.14)
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