国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

石油価格高騰は米国の石油過剰消費体質を直撃し、都市圏内・都市間輸送は深刻な機能不全に陥る

2008年04月18日 | 米国
米国の石油大量消費体質は日本の八倍のガソリン消費とジェット燃料消費に象徴される。そして、世界の石油生産が既にピークを越えて減少に転じはじめたと考えられていることから、今後世界的景気後退や代替エネルギーへの移行で原油需要が減少したとしても石油価格は容易に下落せず、高止まりを続けると想像される。石油市場が米国の石油過剰消費体質を攻撃しその是正を迫ることになるだろう。逆に言うと、米国の過剰消費が是正されるまで石油価格は上昇し続けるのだ。 ただ、米国のガソリン需要は自動車利用を前提とした広大な市街地や郊外住宅地から来る構造的なものであり、容易には減らないだろう。米国の住宅地はあまりに広大な土地に拡がっており、鉄道やバスなどの公共交通機関を整備するのに適していないと思われるのだ。根本的な解決策はガソリン自動車から電気自動車への転換を待つしかないが、それには膨大な時間とコストがかかるはずである。燃費の良い自動車に切り替えるにしても時間がかかる。米国の貧困層は自転車で通勤するなどの苦難の日々を過ごすことになるのではないだろうか。 ジェット燃料消費についても同様の構造的問題がある。日本や欧州では中心部に中枢機能が集中した人口稠密な地帯があり、そこでは高速鉄道が大きな役割を果たしている。それに対し、米国では広大な国土全体に多数の大都市が散らばっており、相互間の輸送需要に対処するためにハブ空港システムが必要になっている。この為に多くの国内線旅客が直行便ではなく遠回りな経由便を利用しており、米国のジェット燃焼消費が更に膨大なものになっているのだ。近未来の米国では、石油価格高騰により航空輸送需要そのものが縮小していくだろう(逆に言うと、需要が減るまで石油価格が上昇し続けるだろう)。 米国の石油大量消費体質は都市圏内輸送(自動車)や都市間輸送(飛行機)を中心とする構造的なものであり、石油価格高騰によってこれらの輸送は深刻な機能不全に陥るだろう、というのが私の結論である。 . . . 本文を読む
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