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空母「ホーネット」見学記~悪魔の囁き

2014-04-08 | 軍艦

「天使のささやき」って曲なら知っているが、というスリーディグリーズな方、
本日タイトルにはあまり意味はなく、当エントリでのエリス中尉の
ささやかな告悔への前振りであると軽く考えていただければ幸いです。


さて、CV-12、空母「ホーネット」は、現在サンフランシスコのベイエリアである

アラメダの埠頭に係留されて歴史博物館になっています。
この、「キアサージ」として運用される予定だったフネは、ちょうどその時に
日本軍の攻撃によってCV-8であったホーネットが撃沈されてしまったため、
急遽名前をひきつぐ形でデビューしたという逸話を持ちます。

沈められてしまったから、というよりも、アメリカの場合軍艦の名前は
代々引き継がれるのが慣例となっており、このホーネットも8代目となります。
この代で以降ホーネットを引き継ぐフネはなくなったわけですが、それはおそらく
ホーネットというとどちらかというと戦闘機が主流となったためだろうと思います。
(おそらくそうですよね?)

ホーネットのことについては何度かお話ししてきたのですが、艦載機や甲板、
艦内の資料室のことばかりで、肝心のホーネット内部のことがまだでした。

今日は、この広い広い艦内をたった一人で探検したときの写真を
比較的淡々と挙げていきたいと思います。



平日のせいか、見学客がいないわけではありませんでしたが、
何しろ広大な空母の艦内、しかもほとんどどこでも自由に出入りできるとあっては、
ほとんどの瞬間わたしは人気のないこういった通路でたった一人。
ほとんど誰にも会うことがありませんでした。(伏線)



見学のため公開されているハンガーデッキより下はこの階層だけで、
この写真のEXITの文字の下の黒い部分がそうであるように、
下の階への階段はすべて遮断されていました。

入館してきた階をハンガーデッキ、ここをセカンドデッキといいます。

もちろん博物館ですからどこにいって灯りがが煌々としてとても明るいのですが、
一日の電気代だけでも大変なものではないかとふといらない心配をするほど、
くまなくどの部分も蛍光灯で照らされている様子がまた妙な不気味さでした。(伏線その2)

艦内は森閑として、そこが海の上だと全く思わせないような安定感があります。
ほんのときおり、めまいのときのようにぐらりと揺れる瞬間があり、
あらためてこれが今も海に浮かんでいることを認識するくらいです。



ガベージ・ディスポーザル、つまりゴミ捨て場。
日本の軍艦はスカッパーというゴミ捨て口から海に捨てていましたが、
アメリカの空母がどうしていたのかはわかりませんでした。
まとめて海に捨てていたのだと思いますが、コーラの瓶とかはどうしたんだろう・・。



立ち入り禁止の部分は鎖を渡してあります。
この公開されていない部分には当博物館の事務所があるのだそうです。



よくわかりませんでしたが、「トルピード・ショップ」とだけ解説にあったので、
おそらくかつてここで魚雷の調整をしていたのだとおもわれます。



ここは艦尾部分に当たります。
かつてここは艦載機を乗せるエレベーターが稼働するスペースで、
今はエレベーターが使用されていないので資材置き場と化しています。
「ひゅうが」の巨大エレベーター部分をふと思い出す雰囲気です。



ふと上を見ると・・・・おお、これが昇降するわけか。
ところでエレベーター壁面に書かれた

「NO SMUCKING」

って、何なんでしょう。
NO SMACKINGなら「平手打ち禁止」だけど・・・・・・。



これはハンガーデッキ階にあったロッカー。
かつてのものなのですが、よく見ると現在も使われています。
すなわち、手荷物をここに入れてコインロッカーのように使ってもよかったのです。
ところどころ貼られた紙には「ロッカー使用注意」が書かれており、
いくつかは誰かが使っていたらしく鍵が無くなっていました。

カギは持ち歩かずその場で売店のレジに預けるように、と書いてあります。



ホーネットとは関係ないと思いますが、天井から
翼のついたタンデム三輪車が吊られていました。

左に見える階段の上の部屋は、かつて偉い人がいるような場所でしたが、
今は展示室の一つとして、日系アメリカ人兵士の資料が展示されています。
わたしが訪れたとき、この展示室は完成してまもなくであったらしく、
ニューオープン!と書かれていました。



ハンガーデッキを艦尾の方から出ると、イスとテーブルがしつらえてあり、
ここで休憩できるようになっています。
 


ジュースを飲んでいるスタッフらしい人が一人いただけでした。
テーブルは昔からここにあったものでしょうか。



手旗信号をするデッキを見つけたので写真を撮りました。
ここへの上り下りは、奥のポールでするわけですね?
ここに立って手旗をするのもたいがいだけど、これを昇り降り・・・。
高所恐怖症なんて甘っちょろいことを言っている場合ではありません。

 

ペナントに見えるシースカウト、というのは実はスカウト運動のなかでは最も古く、
1908年から行われているものだそうです。
カヤック、カヌー、ボートなどの水に基づく活動について学ぶ団体で、
日本でも昔は兵庫県西宮市(今でもヨットハーバーがあります)を発祥としてありましたが、
現在は、「海洋少年団」の活動を残すのみとなっております。



艦橋の最も下の階にあるパイロット控室のようなところ。



ここでいったん甲板に出てしまいます。
また再び下におりていき、セカンドデッキへ・・。



セカンドデッキの一部には「マリーン・デタッチメント」の居住区があり、
海兵隊が警備や艦長の警護、囚人の監視(!)や儀仗を行うため、
出張(デタッチメント)しここに滞在していた名残があります。
床が赤いのはマリーンのカラーに敬意を表してのことかもしれません。

 

儀仗に使われるらしい木製のライフルが収納されていました。
もう使われることは無いのでしょうか。
それともホーネットでの儀仗の際には今でも使われる?



兵員の寝室・・・・なんですが、これ、最上段に寝る人は下段に足をかけて、
上にのぼっったわけですよね・・・・・靴を履いたまま?
アメリカ人は基本寝室でしか靴を脱ぎませんが、 特に常時非常体制の空母で
連中がわざわざ下で靴を脱いでこれを登っていくなどというのは考えにくいのですが・・。



と思っていたら、やっぱり(笑)
全くアメリカンってやつらはよお・・・・・。

旧日本海軍の釣り床も快適性にかけてはかなり辛そうですが、これも凄いですね。
時化の時はもちろん、こんな小さいキャンバス、寝返り打っただけで落っこちてしまうではないの。
おまけに天井までの距離が30センチくらいしかなさそうな最上段の閉塞感は半端ないですね。

みんなニコニコして楽しそうに見えますが。



ここは・・・なんだったか忘れました。
右側の紙に説明が書かれているのですが、ピントが甘くて読めません。



ランドリールーム。
こちらが洗濯機で向こうは乾燥機?



シーツの水切りとしわ伸ばしを同時に行うローラーと見た。
機械にでかでかと会社名が書いてありますが、「海軍御用達企業」であることを
宣伝にしているという感じですね。



仕上がった洗濯物はここに一時収納していたようです。
現役時代の洗濯物がそのまま置いてあるらしく、
ほとんどのものは黄色くなってしまっていました。



郵便取扱部署。
人影が見えたのでぎょっとしたのですが、マネキンでした。
この写真は小さな郵便物受け取りの窓からカメラを差し入れて
中を撮ったもので、実は外からはほとんど見えません。



艦内電話。受話器が外れないように固定されています。



使わないように「故障」の張り紙が貼られた便器。
艦内の洗面所は普通に使えるところがいくつかありました。



パントリー。
当時の什器機器がほとんどそのまま置かれていました。
雰囲気を出すためか果物のイミテーションまで・・・。

実は、この部屋、途中まで普通に入ることができたわけですが、
ふとわたしはそこにぞんざいに置かれたコーヒーカップに目を止めました。
美しいブルーのラインに「ホーネット」と描かれたカップ。
それは手を伸ばせば届くところにあり、その気になれば持って帰れます。

皆様に今ここで懺悔いたしますが、このときわたしは1万分の1秒の間だけ、
このカップを欲しい、と思い、今ならバッグに入れて持って帰れるかもしれない、
とその可能性を心の中でシミュレーションしたのでございます。

そこがたとえ何分佇んでいても、誰も通らないほぼ無人の空間だったことで
一瞬とはいえわたしの心の悪魔がつまらんことを囁いたのでしょう。
もちろんわたしは現実にそれを実行に移すなど、日本人としてありえない、
とその心の迷いを笑って打ち消したのでした。


今にして考えると、もしかしたらどこかに監視カメラがあったかもしれませんし。



見学客が座り込んだりしないように(部屋の外から見るようになっている)、
椅子を全部机に乗せた状態の士官用ワードルーム
士官が食事をしたり、ミーティングにも使われたそうです。



艦内売店。
「オフィサーズ・ストア」となっていますから、士官専用です。
というか、このセカンドデッキはほぼすべてが士官用の居住区となっています。
ここより下の階層には下士官、さらに下に兵員用区画があるのでしょう。



一番上の段はコルゲートの歯磨きや歯ブラシ、タルクなどの医薬部外品、
二段目にはジッポーのオイルやマルボロなどのタバコ、そしてインク。
一番下は本で、黄色い本が「ナショナルジオグラフィック」、「アガサ・クリスティ」、
そして「ドゥーリトル隊」の本。トランプにゲームなどなど。

これは艦首部分にあるフォグ/フォームステーションのオフィス。



これがそのフォグ/フォームステーションです。

艦内で火災が発生した時、プロテインベースのフォームを吹き付けると
フォームは炎を包み込み、消火することができるのですが、ここは
そのフォームを製造するステーションの一つで、艦内にはいくつかあるそうです。



フォームは水と一緒にセットし火災に向かってスプレーするのですが、
それはなぜかというと、水はオイルや燃料による火災の場合もすばやく広がり、
フォームを炎の部分にいきわたらせることができるからです。

各ステーション(たくさんあるらしい)で製造された濃縮フォームは、
5ガロンのボトルにいれられラックに常に蓄えられており、
艦の隅々まで迅速に送り込むために、艦内にめぐらされたパイプは
バルブを開ければいつでもフォームが出てくるようになっていました。

特に気づきませんでしたが、艦内の「緑のパイプ」はフォームが通っているのだそうです。

我が帝国海軍では消火設備に炭酸ガスを使用しており、
そのためついでに艦内でラムネなんかも作っていて、海軍さんのみならず
世間の人々にも好評だった、という話はご存知ですよね?



さて、というわけで、ホーネット見学記、もう少し続けたいと思います。