ところで前回の祝賀会の写真を見て、お気づきになりましたか?
画面にほとんど彩りがなく、グレーか黒か紺の集団ばかりが写っていたことに。
そう、護衛艦の就役行事に参加する人たちのというのは、ほとんどが
制服の自衛官でなければ企業関係、防衛省関係で占められていたということです。
もちろん一般に対して公募されたものでもありませんから、
そういう絵面になるのは当然として、艤装員家族の皆様以外には女性すらおらず、
わたしのいた「会社招待」出席者の式台は、ふと後ろを振り返ってみると、
確認する限り全員がスーツの(わたしもスーツでしたが)男性ばかり。
艤装員家族以外は、防衛省関係で夫に連れられてきた奥様のような感じで、
女性お一人様参加というのは、わたし以外には、自衛官を再就職で積極的に雇用しているらしい
会社の社長らしき人(妙に具体的ですが、あるきっかけで知った) くらいでした。
さて、バスで再び会場に。
黒塗りの車が止まっているので、だれがこんな早く来ているのだろうと思ったら、
自衛隊の制服組でした。
「いずも」の艦尾側には、この護衛艦を手がけたJMUの社員たちが
見送りのために集合しています。
報道陣の前には、式台に向かって吉野艦長、そして海曹長、海士長が
立って出航式典の始まるのを待っていました。
海士長というと旧軍の上等兵、セーラー服を着た海士たちのトップです。
3曹に昇任するか11年以内に退官するのが普通なので、セーラー服を着ているのは
100パーセント、20台の若者ということになります。
まあ、おじさんにセーラー服は似合いませんよね。そういう問題じゃないか。
艦橋デッキからは乗組員たちが顔を出して、知り合いに手を振ったりしています。
全員の視線が艤装員家族席に向けられていますね。
ここで手を振っている隊員をアップさせていただきました。
上げた手を横から掴んでるらしき別の手が見えているんですが、
これ、確かに右の2佐の手なんでしょうね?
出航式典が始まりました。
海上幕僚長、JMU代表、あと1名が式台に立ちます。
台の袖にずっと花束を持って控えていたJMUの女子社員たちが、
「いずも」乗員代表に花束贈呈。
吉野艦長はもらった花束を海曹長に預けて敬礼。
「いずも」乗員代表としての就役への決意を述べる挨拶を行いました。
ところでこのシリーズをアップしてから、吉野艦長の知人である方が
さっそく「いずも」に突撃してこられ、そのご報告をいただきました。
それによると吉野1佐が任官した30年前は、まだ「たかつき」型や「やまぐも」型が主流で、
「はつゆき」型がちらほらいるという状態。最大の船が「しらね」だったそうです。
吉野艦長自身も、よもや自分がその艦長になるとは思わなかったとおっしゃっていたそうです。
そうと知って見る艦長の様子からは、「感無量」という言葉がその面持ちに窺えますが、
この
「本当にここまでなっちゃってわたし夢でも見ているのかしら」
は、多くの自衛官たちにとって共通する感慨でもあるそうですよ。
「幸せすぎて怖い」ではないですが、これからどうなっていくのかということも含め
皆が気の引き締まる思いをしている、というのもまた・・。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/8a/85cfcd91f7ea7be14f15ea9766dfdbe8.jpg)
その感激と誇りを胸に、今「いずも」に乗艦する自衛隊指揮官の後ろ姿。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/df/eade82b76ce11b0d8b50a06f769b7823.jpg)
二人分の花束を持った海曹長もきりりと口元を引き締めて。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/85/6d79b5d30d8328fe78c9541f038a9b1a.jpg)
海士長も続き、これで全員が「いずも」に乗艦しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/b9/9bf472e6215da6e880f4ea291822f0b5.jpg)
その途端、舷門で待機していたヘルメット着用の自衛官たちが中から飛び出してきました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/2a/402b85c63d7a9f98d644bfddebd9cd8e.jpg)
ハッチを閉める準備を一斉に行います。
まずは赤絨毯の撤去。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/e5/006246c77f0cf4565c1306f61bc7a5a4.jpg)
なんと絨毯ではなく滑り止め付きの赤い板でした。
一枚の板を8人で持ち上げて奥に運ぶのですが、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/04/5685db9de6735c6f25b77fef152e3072.jpg)
一番手前の板にまで作業する人が行き渡らず、なんと一番手前の
小柄な女子自衛官が、この超重そうな板の下端を一人で持つことに・・・。
「あああ、早く誰か来てあげなきゃ!
女の子一人にあんなところを持たせるなんて、酷いなあ!かわいそうに」
隣のMさんがしきりに気を揉んでいましたが、女性自衛官もこんな作業に
普通に加わっているあたりが、現代の護衛艦だなあとわたしはちょっと感動しました。
やはり彼女には(文字通り)荷が重かったらしく、腰が上がらない状態でしたが、さすがは自衛隊、
彼女が苦労している様子を見て上から一人が飛んできて(それでも6名ですが)
無事に全部運び終え、わたしもほっとしました。
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そして即座にハッチの扉が地面と平行に持ち上がっていきます。
報道陣は熱心にその様子をカメラに収めていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/8c/0e515df4691b1b103c136ad58ee8afca.jpg)
舷門とちょうど同じ高さに持ち上げた後、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/3c/72d2ac6c1001399acc565228c3a93c0c.jpg)
二人が出てきて、固定しているらしい棒のようなものを引き抜きました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/18/f52a5ee7d7345bdebfa56cfa4d587281.jpg)
ここからはまず内側のハッチ扉が閉じていきます。
二重の扉だったんですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/2a/f45d7f03c50e732aa638ed32fd2eab1a.jpg)
ちょうど内扉の隙間から中の作業を見守る人たちが見えました。
防衛省市ヶ谷勤めの陸上自衛隊写真中隊カメラマンが近接して写真を撮っています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/af/86f423ccbc7b7c8e7ab243d1be3d5ebb.jpg)
内扉はこのまま「いずも」艦体にむかって折るように倒れていき、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/66/9319d6d5a530c7909ca73dfb661870a2.jpg)
こんな状態になりました。
つまり、このまま手前が上に来るような形で壁になるようです。
この時には外壁となる外扉が半分ほど引き出されている状態。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/83/1f3e6d9fab834f8da9fe64702627902b.jpg)
内側に向かって閉じていきます。
動くスピードは結構早いものでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/02/7daff416023e039847cdc73471bbbef1.jpg)
外壁と内壁の隙間というのは大変広くとってあるらしいことがわかりますね。
2メートル前後はあるのではないでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/ee/f98a1661bb50aead342bfe0d797725d9.jpg)
閉まるう~~~!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/dc/67d52d50becc54671e1236d0b74b6e47.jpg)
ぴったりです。当たり前か。
扉の上角に打ち出したような微妙な凹みがあるのがなんだか気になりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/c1/92ae0805495615990563934b84feac44.jpg)
カメラ目線のJMU社長(たぶん)。
全員が息を飲むようにして見守るハッチを閉じる作業でした(笑)
いよいよ「いずも」が、艤装員からこの瞬間乗組員となった隊員たちを乗せて出航です。
続く。