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「いずも」引渡式・自衛艦旗授与式観覧記~「いずも」出航!

2015-04-04 | 自衛隊

というわけで、護衛艦「いずも」が引き渡され、出航してから一週間もの間
その式典についてお話ししてきたわけですが、今日で終わりにしたいと思います。




このころになって初めて気がついたのですが、艦体中部の第二煙突の下に、
このような電光掲示板がありました。
通常装備なのか、それとも今日のような日なので見送り客にアピールするため、
特別につけたものかはわかりませんが、これは明らかに岸壁で見ている人に向けたもの。
このときもわたしはついにこの瞬間しか文字を目にすることはなかったのですが、
「いずも」総員からのご挨拶メッセージが流されていたようです。

どうも彼らは日本国民に対して何かお約束をしてくれていた模様(笑)

ところでこの電光掲示板を見ているうち、ヘリ搭載艦型護衛艦は、

右舷接岸するものだということに、改めて気づきました。
甲板が広く取られており、艦橋が右舷に寄せられているからなんですね。
そういえばホーネットも右舷接岸だったし、こういうところも「空母」と同じなんですね。



旗旒信号は「御安航を祈る」の下に三角の日本の国旗のような「1」がついています。
「御安航」の「U」「W」旗を揚げられた船が回答として「1」を足し、

「あなたがたのご協力を感謝する」

という意味を持つそうです。
つまり、見送ってくれた人々の「いってらっしゃい」に対するお礼ですね。



画面右側は発着艦管制官室。
甲板で同時に複数の発着艦があるので、護衛艦では初めて「ひゅうが」に
このシステムが採用されました。

さらに「いずも」の最も特徴的である外観はこの昇降機にあります。
「ひゅうが」以前の護衛艦、汎用護衛艦DDや「あたご」型は、ベア・トラップという
ヘリコプター降着装置をRASTという名称で運用しています。

「ひゅうが」型以前のHS(ヘリコプターシステム)運用の考え方は

DDHに3機
DDに1機

このRASTを搭載することで継続的な対潜戦を可能にするというものでした。
実際には8隻の艦艇とヘリ8機という編成となり、これを

「八八艦隊」

と呼んでいました。
八八艦隊ったらあれだろ?旧海軍の戦艦八隻、巡洋戦艦八隻の88だろ?
と思ったあなた、わたしも88艦隊といったらそちらしか知りませんでしたが、
現代の自衛隊というのはなにかにつけてこういう「旧軍懐古名称」を
左巻きがそこまで目をつけないのをいいことにこっそり使っているようです。

皇紀と西洋暦の違いこそあれ、「89式」とか「93式」なんていう制式も
普通に旧軍と同じように使ってますもんね。

それはともかく、「ひゅうが」以降、この「八八艦隊」の概念は大きく変わることになりました。
「いずも」では一つの護衛艦にヘリ部隊をまるまる一個飛行隊ごと載せることが可能です。
これはどういうことかというと、哨戒ヘリを広い甲板から運用することによって、
連続した敵潜水艦の探知が可能になるということになるのです。

探知された潜水艦はそれ以上艦隊に接近することもできなくなるというわけです。 



左端は女性自衛官(でも一番背が高い・・・)ですね。
「ひゅうが」への女性自衛官の乗組みは予定されていたことではなく、
直前に決まったことだったと言われています。
つまり「ひゅうが」の就役のとき、出航に際して舷側で「帽振れ」をWAVEが行ったのは、
練習艦隊以外では自衛隊で初めてだったということになるのでしょうか。



艦尾付近に立っているのが海士たちというのがまたいいではないですか。

自衛隊旗とセーラー服の取り合わせは実に絵になります。

陸上ではそうでもありませんでしたが、海上、とくに艦上では風が強いらしく、
セーラー服の襟がはためいているのがわかります。

もともとセーラー服というのは風の強い船の上で音声を聞き取るため、
持ち上げて集音できるようにあの様な形になったという説もあります。



大きな護衛艦を持つということがどれだけ内外に衝撃を与えたかについては、
就航してからこの一週間の間に、メディアの言うところの近隣諸国が軒並み
懸念とも取れる報道をしていたり、それを近隣諸国以外の国が評価したりと、
とにかく「いずも」が世界の話題になっていたことでも窺い知れます。

しかも、大きさはともかく海上自衛隊の護衛艦は世界では”駆逐艦”に属するので、
「ひゅうが」「いせ」、そしてこの「いずも」も、艦種記号には駆逐艦を表す
デストロイヤーの”DDH”を用いているわけです。 

ちなみに「こんごう」型は”DDG”、「むらさめ」型もDDですね。

何でもかんでも駆逐艦にしてしまっている関係上(笑)、ここに至って「いずも」は
「世界最大級の駆逐艦」となってしまったというわけです。(´・ω・`)
基準排水量13,500トンの「ひゅうが」型ですらすでに「こんなでかい駆逐艦があるか!」
と突っ込まれていたのに、「いずも」は19,500トンですから・・・。
 
運用の問題はともかく、護衛艦にしては大きすぎる、というのは確かなことなんですね。 

「近隣諸国」や、日本より近隣諸国の側に立っているメディアはこのことに文句を言っとります。
ちょっと面白かったので、ある論評をそのままご紹介しましょう。


海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」が3月25日に就役した。
だが、全通甲板を持って多数のヘリコプターの運用が可能で、艦砲、対艦ミサイル、
対空ミサイルを持っていない事実上のヘリ空母(航空母艦)、あるいは揚陸艦などを兼ねた
多目的空母と諸外国では称される艦を護衛艦=駆逐艦と称することに問題はないか。


われわれ日本人は呼称を変えると、あたかも本質まで変わるかのように思い込む性癖がある。
戦時中は「全滅」を「玉砕」、「退却」を「転進」と呼び変え、戦後は「敗戦」を「終戦」、
自衛隊の前身である警察予備隊やその後の保安隊の「戦車」を「特車」と呼び変えてきた。


近年では「売春」を「援助交際」と呼び変えてきた。
これを不思議とも思わないが、外国にはまったく通じない屁理屈でしかない。
筆者は、ヘリ空母や多目的空母の導入自体には賛成だが、このような納税者を謀るようなやり方には断固反対だ。

 
海自では、諸外国で巡洋艦、駆逐艦、フリゲイトなどと呼ぶ水上戦闘艦をすべて「護衛艦」という名称で呼ぶ。
これは防衛省の訓令で定められている。
自衛隊の艦は「自衛艦」と呼ばれ、「護衛艦」はその中の大分類では「警備艦」に属する。
さらに中分類では機動艦艇があり、機動艦艇は護衛艦と潜水艦の2艦種しかない。
つまり海上自衛隊の戦闘艦は水上戦闘艦である護衛艦と、水中戦闘艦である潜水艦しか分類上は存在しない。
「潜水艦ではないから護衛艦である」と、いうわけだ。

だが護衛艦とは、駆逐艦とほぼ同義語である。
海自の護衛艦の種類はDD、DDH、DDGなども略号で称される。
汎用護衛艦はDD(Destroyer=汎用駆逐艦)、ヘリコプター護衛艦はDDH(Destroyer Helicopter)、
ミサイル護衛艦はDDG(Destroyer Guided Missile=ミサイル駆逐艦)、
DE(Destroyer Escort=護衛駆逐艦)などと分類される(Dが2つ重なるのは国際的な慣例である)。

つまり海上自衛隊が護衛艦と称している船は、すべて駆逐艦、ということになる
(DEは排水量からすれば国際的にはフリゲイトと認識されている)。
「いずも」はDDH(ヘリコプター護衛艦)であるから、諸外国ではヘリコプター駆逐艦となる。
だが世界の海軍関係者で「いずも」を「駆逐艦」と思っている人間は皆無だろう。
どう考えてもヘリ空母である「いずも」を護衛艦=駆逐艦と強弁するのは、
国際的な軍事常識から外れているだけではく、不正直、あるいは
論理的な議論や常識が通用しない相手であると思われる。

または何か良からぬことを企んでいるのではないかと勘ぐられても仕方ないだろう。

余談になるが、このような日本的な言葉の言い換えがまかり通るのであれば、
以下のようなことをフランスの農家が主張したとしても文句を言えない、ということにもなる。
「日本は輸入チーズの関税率が30%と高い。
しかし、これは発酵食品であり乳の漬物である。漬物と同じ関税を適用せよ」。

ところがわが国は軍事評論家までもが「『いずも』は空母ではない、護衛艦=駆逐艦だ」
海上自衛隊の肩を持つ
確かに、「いずも」は米海軍の原子力空母のように多数の固定翼機の戦闘機や攻撃機、
早期警戒機などを搭載でき、強力な攻撃力を有する空母ではない。
だが明らかにヘリ空母であり、広義の意味では空母と呼んで差し支えがない。

「いずも」は空母なのか駆逐艦なのかと問われれば、明らかに前者であり、
これを駆逐艦と強弁するのであれば見識を疑われる。




おもわず声出してワロタ状態になってしまいました。
この「言葉遊び」を左側からいうとこうなるのだなと。 

見識ときたか見識と(笑)
駆逐艦じゃないだろ?空母だろ?と大きさだけで発狂しているわけです。
そんなこと言い出したら先日問題になっていたように自衛隊じゃないだろ?軍隊だろ?
ってことから始めないといけないと思うんですが。

国際通例上艦種をどこかに当てはめなければならないのでデストロイヤーとしているわけで、
日本では「軍」じゃないから「自衛隊」と称しているのと全く同じ伝で、
「駆逐艦が使えないから護衛艦」としているだけじゃないですかやだな~。

しかもこのおっさん、自分で「潜水艦以外は皆護衛艦と呼ばれている」と解説しながら
「いずも」にだけ「駆逐艦じゃねえええ!」とキレておるわけですが、
護衛艦=駆逐艦ではなく、水上艦=護衛艦なんであって、見識も何も立法府でそう決められた分類なんす。

ちなみに、他にも

「他の艦に給油する能力は被弾した際脆弱性が高く有事には危険である」

とか、

「DDHを4隻調達するにしても1艦種だけにすべきだった」

とか、興味深い意見が満載なので、興味のある方は読んでみてください。


文民統制の放棄!なぜ「空母」が生まれたか
護衛艦「いずも」は護衛能力のない被護衛艦

 

大きいからダメだ!といっているようで、「脆弱だからダメ」と言っていたりorz
うーん、これ、対潜哨戒と災害時派遣が主目的なんですけど・・・。 

それにしても援助交際を喩えに出すか。



バスで岸壁に戻ったとき、タグボートが二隻鼻づらを「いずも」の艦体に
押し付けるようにしていましたが、いったいどういう動きをしたのか謎です。 

岸壁から離れるだけなら「いずも」だけでできると思うのですが。



艦尾付近が前を通り過ぎていきます。





巨大な艦体が岸壁を静かに離れ、やっとのことでカメラに全体が収まるようになったとき、



「いずも」はわたしたちに向けて挨拶をしました。




第1、第2煙突から同時に煙を噴き上げたのです。

この日の真っ青な横浜の空に、白煙が二筋立ち上りました。



わたしは「ふゆづき」の就航のとき、前にも書いたように同行の偉い人に

むしろわたしを気遣ってのことだと思うのですが、帽振れが終わるやいなや、
促されて現場を去ったため、「ふゆづき」が同じことをしたかどうか知りません。

こういうときに護衛艦が煙を吐くのが慣例なのかどうかもわからないのですが、
そうであったとしても「いずも」の機関長のはからいだったとしても、
このとき、「いずも」そのものがわたしたちに手を振り返したようにしか思えませんでした。



艦尾の「いずも」という文字の右側に小さな舷門がありますが、

ここからは数人の自衛官たちとJMUの社員らしい人影がこちらを見ていました。



やはりここでも「帽振れ」が終わった途端、人が退出を始めました。
ただでさえ当初の半分くらいの人数になっていたのに、残っているのはほとんどが
乗組員の家族らしい人たちだけ。

そういえば祝賀会ではこういう感じの人たちを全く見なかったのですが、
もしかしたら家族だけ別の会場で行われたのでしょうか。



タグボートが見えてきました。

左舷側の2隻は、ずっと同じ位置について一緒に移動しています。
ところで今までタグボートが押さなければならないような瞬間ってあったっけ・・・?



「いずも」がここIHIジャパンマリンユナイテッドで進水式を行ったのは

去年の8月6日のことだそうです。それから約半年、今母港の横須賀に向けて
静かに巣立っていく「いずも」。

おそらくこの日の横須賀には、「いずも」初めての入港をカメラに収めるために、
たくさんのファンが詰めかけていたのだろうと思われます。 




対岸に海保の艦船がドック入りしているのが見えました。

「護衛艦」と同じく、やはり日本の国土を護る任務にあたる船です。



「いずも」の一般公開は4月11日行われますが、3月31日をもって
抽選の申し込みは締め切ったようです。
公開後は内部の写真もたくさんアップされることでしょう。



この自衛艦旗は、先ほどこの「いずも」に授与され、初めてここに翩翻と翻っています。
旭日紋様が真っ青な空になびき、凛々しい青年たちがきりりと表情を引き締めて
その旗のもとに立つさまは、日本に海軍が生まれてから幾度となく繰り返されてきたものですが、
わたしはこれを見て、そんな歴史的な瞬間に立ち会うことのできた感激をあらためて噛みしめました。


護衛艦「いずも」誕生の、ごく少ない目撃者の一人になれたことを心から誇りに感じた一瞬でした。


終わり。