「こんごう」出港、という前エントリのタイトルでしたが、お読みになればわかるように、
わたしが乗ったのは同じイージス艦でも「ちょうかい」の方でした。
隣に「こんごう」が停泊していてその出港の一部始終を暇に任せて撮りまくったので、
その出港だけで一項を割いてしまったことをお詫びします。
「ちょうかい」は一般公募は取っていないのではないかという噂がありましたが、
蓋を開けてみると本番の乗艦数は結構なものでした。
18日は受閲艦にはあまり一般客は乗せないし、最も人数が積めそうな「いずも」には
防衛大学校生徒だけ。(当日安倍首相が「くらま」から乗り移る予定がされていました)
そして「てんりゅう」のように、ほとんどが政府関係者&招待客+一般人少々、
という艦もあったりしたせいで、ぎりぎりまで出航が決まっていなかったわりには、
最終的に「ちょうかい」も「こんごう」も700人は積むことになったのでした。
決してキャパシティの多くないイージス艦に、700名は、はっきりいって人大杉です。
さて、前回の続きから参りましょう。
「こんごう」は「ちょうかい」との間の舫を外し、ものすごい速さで艦体は離れていきます。
実は曳船が向こうにいて「こんごう」を引っ張っているんですね。
何度も言いますが、船は自力で横に動くことはできませんから、
この瞬間「こんごう」が動いているのは100パーセント曳船の力によるものです。
「こんごう」が離れて行くやいなや、待機していた曳船がこちらに横付けになりました。
まるで離れるのを待っていたかのように割り込んでくる感じです。
この曳船によって、まず、間に挟まっていた防舷物を取り除く作業が行われます。
木更津の防舷物は前面にタイヤが貼ってあって、どうやらカモメさん的には止まりやすい模様(笑)
自衛艦に乗ると、通路など至る所で目につくこのマクラメ編みのカゴは、
防舷物を艦体に繋いでおくためのロープに結ぶ、細いロープを収納するものです。
最初に曳船から渡された細いロープの先に、防舷物本体についたロープを結び、
(そこで『舫結び』が役に立つというわけですねわかります)
相手に渡して引っ張ってもらいます。
「こんごう」は完全に横に引き出され、そろそろ自力でバックして行く模様。
ここにも警邏のために水中処分員のボートが一隻走り回っていました。
ちなみに、横須賀で見た女性の水中処分員ですが、カメラマンのミカさん(仮名)
の知り合いで、艦艇勤務からこの任務に就くことを熱望して配置転換したのだそうで、
女性男性関係なく、現場の信頼厚い処分員であるということです。
ミカさん(仮名)によると、水中処分員というのは近年高齢化し、平均年齢40歳。
つまり成り手も少ない「絶滅危惧種」になりつつあるということです。
女性であってもやる気と体力さえあれば十分採用されるということなので、
これを読んでいる方で、もし興味があれば、男女を問わずぜひ目指してみてください。
(と簡単に言うほど簡単な仕事ではないのは百も承知で言ってます)
さて、防舷物をつなぐ太いロープを曳船の係員が引き寄せました。
専用のつなぎとめる舫杭にロープを繋いで・・・・、
防舷物一つ確保。
向こうには「こんごう」を引っ張り終わった曳船が待機しています。
「こんごう」さんはすっかり自力でバックしていっている模様。
そろそろ回頭して向きを転換するころです。
一方曳船はもう一つの防舷物の確保にかかりました。
同じようにロープを引っ張って・・・、
防舷物の両側のロープを決められた舫杭に縛り付けます。
二つ確保してすぐさま艦体から離れていきます。
「あすか」の防舷物を取るのもこの船かどうかはわかりません。
そんな簡単に受け渡しできるものではないので、もしかしたらこの船のお仕事はこれで終わりかな?
さて、ここでおもむろに近づいてくる曳船は、これから「ちょうかい」を引っ張りますよ。
曳船の乗組員のユニフォーム、真っ赤なベルトがなんだか粋に見えますが、
これはアイ・キャッチャーの意味があるのだと思われます。
護衛艦から降ろされた細いロープの先に曳航用のぶっといロープをくくりつけ、
またもや引っ張ります。
出入港作業とは、引っ張ることと覚えたり。
ロープの太い部分が引き上げられると、
護衛艦側の舫杭に引っ掛けて、これで引っ張られる準備完了。
外すところは見られませんでしたが、ある程度引っ張ったら曳船が近づいて
縄の張りを弱め、ロープを外して落とすのでしょう。
「ちょうかい」がでていってしまったころから、艦内の人が外に出てきました。
しかしまだ前後の甲板に出ることは許されません。
後ろ甲板は比較的のんびりした感じですが、観閲艦艇の一番後ろを航行する
「ちょうかい」では、カメラを構える人はほとんどが左舷の前列を狙って
今虎視眈々としているところだと思われます。
みなさん頑張ってください。(艦橋デッキのわたしには他人事)
「それじゃ引っ張るよ~、せーの!」
いつのまにかこちらにも曳船が付いていますが、こちらの子ももう引っ張ってますか?
ロープがピンと緊張しました。
「こんごう」は艦首を向こうに向けてすでに航行を始めています。
ものすごいパワーで後進をかけているので、白波が立っています。
信号員が同時に速力信号表を動かしに来ました。
この速力信号標は艦の左右両側にあり、内側にある小さな旗の
「回転信号標」との組み合わせで現在の艦の速力を細かく表すことができます。
速力信号票は速度を表し、回転信号標は、速力のプロペラ回転数のプラスマイナスを表します。
右舷の黒標がプラス、左舷の赤標がマイナスの修正回転量をそれぞれ高さで示しています。
この写真を撮った時にはまだ出航準備前だったので、全てがゼロゼロの状態です。
この表示は、その時点のスピードを現すものではなく、艦の意志として
速力をこの表示値に設定した事を示すので、加減速時などは、実際の速力とは異なります。
旗は国際信号旗の「P」「R」と同じ小旗を使用しています。
この方式の速力表示を用いるのは世界で唯一、海上自衛隊だけだそうです。
ここでやおらレンズを広角に交換してみるのだった。
波頭の立ち方で、曳船がどのように艦を引いているかよくわかりますね。
あらあら、気づいたらいつの間にかこんなところまで押されてきました。
こちらの曳船は「くくる丸」というようです。なんかかわいいね。
「あすか」には防舷物を撤去するために曳船が近づいていっています。
ところで、はっきりとではありませんが、本艦出港中、どこからともなく
行進曲「軍艦」が風に乗って聴こえてきていました。
「あすか」にはなんと陸自の音楽隊が乗り組んでいたようです。
いいなあ。
そういえば、三年前の観艦式で「ひゅうが」に乗り込んだときにも音楽隊は陸自でした。
わたしが生まれて初めて出港時に聞いた「軍艦」だったので、それが
海自音楽隊の演奏でなかったのは残念といえば残念でしたが、音楽隊の乗り組みは
海自音楽隊以外は関東在住の音楽隊(陸自中央音楽隊、東部方面音楽隊、航空中央音楽隊)
に限られるので、音楽隊の同乗があった艦に乗れるだけでラッキーだったのです。
観閲と展示以外のすることのない時間、何度となく艦上でパフォーマンスが聴けるわけですからね。
ちなみに旗艦の「くらま」には常に東京音楽隊が座乗します。
ふと見ると、今まで我々の出港支援をしていた2隻はすでに「あすか」に取り掛かっていました。
今回は艦橋から出港を見守ることになって、一連の出港作業を詳らかに見学することになり、
わたしとしては大変勉強になりました。
これでいつ出航の時舫引きに駆り出されても作業を手伝えます!(←嘘)
水中処分員が、ボート艦尾の自衛艦旗をうち振ってお見送りしてくれました。
甲板の皆はほとんどが手を振ってそれに答えています。
さあ、いよいよ平成27年度自衛隊観艦式の始まりです。
続く。