メア・アイランド海軍工廠跡にある博物館には、工廠にあった器具や
そこで扱った艦艇などの装備品などが、アトランダムに展示されています。
見ていてあまり面白いとは思えないのですが、それが案外たくさんあって、
かなりの展示室のスペースを占めていたりするので、ここはひとつ
全く説明できないのを顧みずご紹介しておこうと思います。
Statifuxというのは、非破壊検査を行うための溶剤で、
原子炉や付属品などのピンホールを発見するためのものです。
表面にガラス加工を施したものは、機械的または熱的ストレスを受けた場合、
目視検査またはスパーク試験では検出できない小さな破損が生じることがあります。
Statifluxは、目に見えないほど小さな欠損部分を、表面にスプレーすると
それだけで見つけ出すことができます。
これが吹き付けるためのガンで、後ろに見えている筋の入った物質は、
目に見えない傷がスプレーした粉によって浮き上がったところです、
原子炉の様な、少しの傷も許されない容器に対し、訓練を受けた技術者は、
現場に行ってStatifluxのテストと分析を行っていました。
訓練用、とありますが、この機器はオシロスコープと思われます。(説明なし)
オシロスコープとはオシレーションという電気の振動を視覚化させ、
画像で見ることができ、その用途は主に電気系統の故障を解析したり、
回路の解析を行って誤動作の原因を探ることです。
このタイプはアナログで、ストアージという拡張機能を備えていて、
通常のオシロスコープでは1秒以内に減衰するトレースパターンを、
数分以上スクリーンに残すことができたと思われます。
左側に並んでいるのは、チューブでカバーされたコイルです。
X線のユニットです。
奥のブルーのケースは鉛の線、手前は鉛の数字。
おそらくX線を撮影するときに認識のために一緒に撮影する
数字の形をした鉛なのだと思われます。
手前は撮影フィルムのカセット、その向こうは鉛の脚台で、
いずれもレントゲン撮影に必要な道具です。
FAXITRONというのは現在キャビネット型のX線機器製造を専門とする会社で、
会社設立は1960年となっていますが、HPによると、
「FAXITRON」という会社名の起源は物理学者のジョセフ・ヘンダーソン博士が
それ以前に発明したこのキャビネット型X線から取られています。
現在同社は乳癌を対象にした医療機器メーカーとして
デジタルX線システムや生検のツールなどを開発しています。
このシステムの画期的だったのは、フィルムに現像することなく、
検査箇所の画像をリアルタイムで見ることができたところでした。
昔の医療機器というのは(当時のステレオもそうですが)どうしてこう、
木目にこだわるのか、と思いませんか。
これは
KODAK FILM PROSESSOR "B"
X線のフィルムの現像は手でやると50分はかかりますが、
この機械だと15分前後しかかりません。
ちなみに机の下にあるブルーと白の機械も現像器です。
フィリップスの
NORELCO
というX線機器です。
フィリップスはオランダの企業ですが、舶来ものの好きだったうちの父が
ドイツ製品とこのフィリップスの信奉者だったため、
なぜかうちにあるアイロンはこのフィリップス製です。
独立したときに家にあるのを持ってきたのですが、
不気味なくらい頑丈でいまだに一度も故障したことがありません。
それはともかく、このX線の機器は150キロボルトの高圧で、
狭いスペースでも使用できるようになっています。
ちなみに今フィリップスのノレルコ、で検索すると、
男性髭剃り器が出てきます。
こちらもオシロスコープだとおもいます。
BRANSONの縦長型は、デスクの上において使える設計。
ブランソン社は現在エマーソン・ブランソンと名前を変え、
測定機器の幅を腐食や圧力、ガスなどの測定、
ワイヤレスインフラに広げています。
ドイツのKRAUTKRAMER社の超音波ユニット。
(バッテリー駆動なので)延長コードをプラグに繋がなくても良くなりました。
これがアメリカで生産された初めてのバッテリー超音波ユニットで、
スペリー社(現在ユニシスの一部)とブランソン社がが製作しました。
これも超音波機器です。
病気(シックネス)の診断ではなくThickness、つまり
壁や艦体などの検査を行う専用の超音波検査器です。誰うま。
いずれも小型で、検査する人が現場に持ち運びできる大きさです。
こちらもブランソン製品。
超音波の瑕疵検査器です。
メア・アイランド海軍工廠では手持ちの材料でフレームを作って
簡単に持ち運びできるように工夫していました。
ブランソン社の関係者がメア・アイランドに視察にきて、
この工夫を自社製品に取り入れたという話があります。
この土管のようなものも超音波検査器です。
Blacklight inspectionといって、これで材料表面の開口欠陥(クラック)と
表面直下の欠陥を探し出す非破壊検査を行うことができます。
磁粉探傷検査といい、磁化させた材料に蛍光磁粉を含んだ検査液を掛け、
ブラックライト(紫外線灯)を当てると、もしクラックがあれば
磁粉模様が形成されるのでわかる、というわけです。
ちなみにこれが現代の磁粉探傷検査機械。
輪っかのところで材料を磁化させます。
ここにある機械との共通点が全くないのですが・・・。
軽量型のX線検査器です。
ここはドライドック。
まさにこの検査器で艦船(多分潜水艦)の外殻の検査をしているところです。
機械からのばした延長コードで検査チューブの先端を外殻に設置しています。
雰囲気を出すために額を飾っているのではなく、これは
X線で撮影した花です。
花びらが透き通って写るので実に幻想的な写真になります。
日本では「レントゲンフォト」などという呼び方があるようで、
X線フォト専門のアーティスト、なんていうのもいるようです。
部屋全体が写るように写真を撮ってみました。
昔の海軍工廠は、煉瓦造りで窓もフランス窓だったりします。
床はコンクリート。
よく見るとドアの下には隙間があるし、寒さの厳しい地方なら
いくら工場でも労働者には大変辛い環境ですが、
ここメア・アイランドはサンフランシスコの北にあり、
霧の出ないサンフランシスコのような感じで、夏は寒く冬は少し寒い、
といった1年間の気温変化があまりない気候です。
労働者はおそらく一年中同じような格好をして働いていたと思われます。
そう、この写真に写っているおじさんのような・・・・。
ところで、ここにこれだけの各種破壊検査、
超音波検査機器がある理由は、ここが海軍工廠だったからで、
例えばこのおじさんがやっているように、艦艇の外殻などに対し、
非破壊検査の必要が日常的にあったからです。
ちなみにこのおじさんは潜水艦の船殻に使用される
I-ビーム(I型鋼)の検査をしているところです。
さて、一応検査機器関係のご紹介は全部すみましたが、
個人的にあまり興味のない分野なので不承不承?始めたところ、
案外面白くて調べるうちに少しは検査なるものの概要がわかりました。
この頃に製品を作っていた会社は、そのほとんどが現在も健在で、
今はその発展した形の機器を扱っているというのもちょっと感動しました。
やっぱり技術を扱う企業というのは息が長いものですね。
続く。