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魚雷発射の仕組み〜潜水艦「シルバーサイズ」

2022-10-27 | 軍艦

さて、潜水艦「シルバーサイズ」の魚雷についてお話ししています。

■2種類の魚雷

「シルバーサイズ」は蒸気式と電動式、2種類の魚雷を搭載していました。
Mk.14が蒸気式、Mk.18が電動式とご理解ください。

「シルバーサイズ」がMk.14をどれくらい搭載していたのかわかりませんが、
少なくとも、潜水艦「ティノサ」のように、
撃っても撃っても艦体に突き刺さるだけで全く爆発せず、
おかげで相手はまるで花魁のかんざしのように魚雷を突き刺して帰還した、
というような特殊な例には遭遇しなかったのは確かです。

これは、魚雷の当たる角度に助けられて、
信管の故障を疑うほどの失敗に至らなかったせいかもしれません。

残念兵器とまで言われているMk.14ですが、「ティノサ」の例は特別で、
少なくとも「シルバーサイズ」では普通に搭載していたようです。

そして、この後魚雷を装填してから何が行われるかの説明となりますが、
「蒸気式」とあることから、Mk.14についてのものだと思われます。

長さ22フィート、重量3,000ポンドのスチーム「フィッシュ」は、
時速45マイル、有効射程は2,000ヤードを超える
350馬力のアルコール・タービンエンジンを搭載しています。

魚雷は装填されてから、発射管の外側にある各種レバーによって、

●深度(逆回転プロペラの横にあるベーンによって制御)
●速度(高速か低速か)
●ステアリング ジャイロ(ラダーを制御する)


の設定を行います。


トーペックス(torpex、torpedo Explosive)爆薬
は艦首の近くにあり、その後ろには大きな圧縮空気ボトルがあります。
この圧縮空気で、高圧を発射管に送り込むのです。


これが発射バルブとなるのですが、発射バルブを開くのは、手動か、
ソレノイド(導線を巻いたコイル)と呼ばれるレバーを使います


魚雷プロペラは指示方向と逆に回転します。

ちなみに電気魚雷と蒸気魚雷の違いは、速度です。
電気魚雷は遅いのですが、蒸気の跡が残らず、
音響ホーミングヘッドを取り付けることによってステルス性は高くなります。

コンパーメント内に、親切なことに魚雷発射についてわかりやすく、
何が起こっているか書いたパネルがありましたので、それを書いておきます。

フロアデッキの下にはメイン バラスト タンク(MBT)#1、
ウォーター ラウンド タンク(WRT)
さらに
フォワード トリム タンク
があります。

MBTは潜水・浮上装置の一部、WRTは魚雷発射管への注水用水、
前部トリムタンクは魚雷発射後の重量減少を調整するためのものです。

では、魚雷はどのように発射されるのでしょうか?



まず、魚雷発射口を閉じた状態で、魚雷をローラーに載せて
ブロックとタックル(ロープ的な)で魚雷管内に引き込む。

その後、ブリーチドア(後部ハッチ)が閉じられるとチューブベントが開き、
チューブとWRTの間のドレインバルブが開き、
WRTが加圧されて水が引き込まれ、魚雷発射管内は浸水する。


コニングタワーの魚雷データコンピュータで決定された速度、深度、
ジャイロ角度を、チューブ側面の格納式ピンで設定する。

魚雷発射は、コニングタワーから電子制御で行われ、
発射ドアが開き、魚雷が発射される。
魚雷はプロペラに引き継がれる前に、圧縮空気を吹き付けて発進させる。

発射管から出ると、魚雷は正しい深度と速度を想定し、
正しい方位に旋回し、そこからはひたすら直進する。

管内に別の魚を再装填するには、外扉を閉め、ドレーンバルブを開き、
管内を加圧して管内の水をWRTに押し流し、ブリーチドアを開ける。



他のコンパートメントと同様、前部魚雷室は窓もなく、
窮屈で混雑した暑い作業空間でした。
この部屋を見ていると、ここで勤務していた乗組員の勇気、技術、
献身にただ驚かされるばかりです。

文章で理解するのが面倒!という方にはこれを。
最初はマーク14型の残念ぶりを説明していますが、
7:00~からは構造と発射の仕組みが
【ゆっくり解説】欠陥魚雷Mk14・構造としくみ



ところで、前方魚雷室は、圧力船体の前方40フィートを占め、
ボートが水面にあるときもほとんどは水中にある部分です。

ほとんどの潜水艦のコンパートメント同様、
このコンパートメントにも特に重要な部位がぎっしりと詰め込まれています。

先ほど、「前方にチューブは6つある」と書きましたが、


「ガトー」級潜水艦の、前部コンパートメントの断面図をご覧ください。

6つのチューブの後部3分の1だけが見えており、
残りは前方のトリムバラストタンクに埋まっています。(黒部分)


また、潜舵、バウ・プレーン・ティルトシャフトは、
ティルトの機構とともにチューブの上にあります。

これが正直どこを指すかよくわからんのですが、おそらくチューブの上の、
白くて大きな管の内部にシャフトがあるのではないでしょうか。
(ちょっと適当)


また、魚雷チューブの上部をご覧ください。



クロム製のベントブロー・マニフォールドというものがあり、
これで魚雷発射前に管から空気を排出して、管の内部を水で満たします。

魚雷の間にはグリーンの小さなスツールがありますが、
レバーの管理をする乗員の定位置です。



また、高圧空気弁は、発射後に管から水をブローつまり吹き飛ばします。

一発撃つごとにこれだけの準備と、撃ってからも一定時間を必要とするので、
一方の魚雷発射室には6基ものチューブが必要になってきます。


チューブの後ろには、長さ22フィート(約670cm)の魚雷ラックがあります。

ご覧の通り、魚雷発射室は乗員の寝室を兼ねていて、
魚雷の上下にバンクと呼ばれる兵員用ベッドが配置されています。



ウォー・パトロール、戦時哨戒に出発するときには、
合計18基の魚雷を満載していくのが通常だったので、
乗員は別のところ(どこだろ?)で寝なくてはなりませんでした。


部屋の中央頭上に配置されているのは、
油圧モーターを駆動するための電気モーターです、
これらの油圧モーターは、前方の潜水面を傾けたり、
あるいはリグを出し入れしたり、錨を上げ下げするのに使われます。

そして、その後方に、写真には写っていませんが、ここにも
エスケープ・トランクがあります。(図の甲板に続く部分)

沈没した潜水艦から脱出できる耐圧コンパートメントで、
「シルバーサイズ」には二箇所これがあります。


また、この後方には、魚雷を甲板から前部コンパートメントに積み込むための
装填ハッチ(トルピード ローディング ハッチ)があります。



装填ハッチの下が、これ。

そう、ヘッドとシャワー室です。
その他、二つのクロム超音波ソナーシャフト、
多数の電子制御および機械制御がぎっしりと詰まっています。




続く。


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4 Comments

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電池式と蒸気(エンジン)式 (Unknown)
2022-10-27 05:54:47
アメリカは、電池式(モーター)をあきらめて、蒸気式(エンジン)に行きましたが、ヨーロッパは電池式が多いです。

エンジン式の場合、ご説明のように高圧空気で発射管から撃ち出しますが、電池式の場合、発射管内でプロペラを微速で起動し、自らの推進力で飛び出すことが出来ます。

水中の音響を受信する能力が低かった第二次世界大戦当時では、あまり差が付かなかったと思いますが、能力が高まった現代では魚雷の発射音を静粛化することには、それなりの意味があります。

エンジン式の場合、高圧空気で撃ち出すので、それなりの音が出、気付かれやすいですが、電池式の場合は、微速で撃ち出せるので、気付かれにくいのです。我が国もアメリカ同様、エンジン式です。
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ガトー級魚雷発射管及び雷撃 (お節介船屋)
2022-10-27 15:16:19
前部発射管室に6門、後部発射管室に4門装備し、魚雷発射諸元計算盤を用いて艦首・尾発射管を統合した雷撃が可能でした。
魚雷搭載数24本

我が海軍は主に九二式方位盤改一が装備使用されましたが彼我の態勢を連続的に表示して潜望鏡観測の都度実際の方位を比較して的針、的速を修正する機構にはなっていませんでした。また艦首・尾発射管を統合して雷撃とはなっていなくて、ほぼ艦尾発射管が使用されなかったのではと言われており、魚雷発射指揮装置においても劣性であったようです。

参照海人社「世界の艦船」潜水艦100のトリビア
返信する
現代の潜水艦用長魚雷 (お節介船屋)
2022-10-27 17:38:39
第2次世界大戦までは直径が14、15.75、17.7、18、19、19.7,21、21.65インチ等各海軍でまちまちであったようですがその後は21インチ533㎜に絞られてきました。特に有名なのがドイツ海軍潜水艦で使用されたG7a熱機関魚雷で533㎜で6㎞44ktないし14㎞30ktの能力でした。
日本海軍は九五式酸素魚雷があり533㎜で9㎞49ktないし12㎞45ktで酸素熱機関で雷跡が減少という高性能でした。

現代は潜水艦用長魚雷は533㎜で動力源が化学燃料使用のピストン・エンジンまたはガスタービンか電池駆動電動機ですがロシアにはシュクヴァルとの名称のロケット推進で速力200ktと異色の高速魚雷もあります。

起爆には着発信管、慣性信管、音響信管、磁気信管等があります。

音響ホーミング装置で目標まで誘導するのが一般的でパッシブ、アクティブ方式選択で発射後一定距離まで有線光ファイバーで誘導される魚雷もあります。音響以外では目標の航跡を探知してのウエーキ・ホーミング方式もあるとのことです。

米海軍のMK48は6気筒ピストン・エンジンによるポンプジェット推進で1970年代から使用され、その後数度となく最新技術で改良され音響妨害に強いソナーや音響環境が複雑な浅海域の運用も可能で航走能力も32㎞55ktだけでなく音響探知能力も最大3㎞を越え、深度も760mの深海まで可能とも言われています。

ガスタービン駆動のポンプジェットの英海軍スピアフィッシも有名で低速から65ktの高速力まで可能で深海潜航能力等も高いそうです。
電池魚雷ではイタリアのブラックシャーク、ドイツのシーヘイク等が有名です。
スウエーデンはTp62という7気筒ピストン・エンジン駆動ポンプジェット推進で最大航走距離50㎞を誇ります。
我が国は89式等がありますが性能は公表されていません。

発射管は533㎜型4~6門装備が一般的ですが米海軍「シーウルフ」級は魚雷発射の静粛化で自走発射方式の660㎜発射管8門です。その後の「バージニア」級は発射に空気タービン・ポンプを使用しており533㎜4門となりました。
これは水圧発射ですが空気駆動ロータリー・ポンプにより圧力を得て、ウォーター・ラムの作動により従来方式より構成装置が小型で艦内占有容積が小さく、ポンプ作動に必要な圧縮空気の量が少なく、発射音も小さいそうです。
参照文献から転記しましたがこの機構についてはあまり良く分かりません。

ロシアは533㎜型が標準ですが650㎜や400㎜型の発射管もあるそうでスウェーデン海軍は533㎜と400㎜の2種類を装備するのが伝統のようです。

参照文献海人社「世界の艦船」潜水艦100のトビリシ
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ジャイロ・アングル (ウェップス)
2022-10-29 08:24:58
 得意分野なのでいくらでも語れますが、なるべく手短に…(^.^)

>魚雷データコンピュータで決定された速度、深度、ジャイロ角度を、チューブ側面の格納式ピンで設定する。

 ここがミソでして、魚雷は発射管から出た方向にまっすぐ走るのではなく、命中点に向けてあらかじめ設定された角度ぶん曲がってから直進します。この角度がジャイロ角度(ジャイロ・アングル G)です。
 航走深度と雷速は一度設定したらそう変わることはないのでやっぱなしておけばいいのですが、Gは刻々変わります。
 目標運動解析の精度が上がって、命中が期待できると艦長が判断したら「次に打つ(Final observation and shoot)」と号令をかけて、最新のGを魚雷にセットして発射します。(最近の魚雷は、装填後もケーブルで管制装置と繋がっていて、Gなどのデータはリアルタイムでインプットされます。ケーブルは発射時に切断されます。)
 艦長は「次に打つ」と号令したら、発射のタイミングはウェップスに任せます。映画のように艦長が潜望鏡を覗いたまま(見つかるっちゅーの(-_-;))「発射用意~てーーー!」などというのはウソです。(そういう打ち方もあるにはある。)

 ・・・やはり手短とはいきませんでした( 一一)
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