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お茶とコーヒーの話〜アメリカ西海岸生活

2023-08-27 | アメリカ

■ コーヒーと水の研究所で「ゲイシャ」を飲む



サンノゼの日本スーパー、「ミツワ」のあるモールに、
新しくできたコーヒーショップに行ってみました。
お店の名前が「コーヒー・ウォーター・ラボ」なんて、期待できそうです。



「ミツワ」の敷地内にあるせいか、このお店、
「コーヒーと水の研究所」と日本語のサブタイトル?がついています。

水にもこだわったロースター、ということで、
5ドルのプアオーバーを頼んでみたところ、なかなかよし。
家に帰ったらメールのアカウントに払ったカード経由で
次に来た時の2ドルのチケットが届いていたので、もう一度行って、
一番高くてやめた「ハニー・ゲイシャ」という豆を注文しました。

真ん中がわたしの頼んだ「ゲイシャ」

「ゲイシャ」(Geisha)は、世界で最も高価なコーヒーのひとつです。
「ゲイシャ」というのはエチオピア原産地の地名で、
日本の芸者とはまったく関係がありません。

味は・・・・普通でないというか、とにかく変わっていました。



スーパーマーケットのコーヒー売り場は、どこも品種が多く、
どれにするかいつも迷ってしまうのですが、一つの手がかりとして
「ローカル」と書かれた商品を選ぶのも手です。

サンタクララにある「クロマチックコーヒー」は、
そのパッケージがなかなか美味しそうで注目していたのですが、
一度朝車を飛ばして本店(ここしかありませんが)に行ってみました。



一つのロースターでこのバラエティの多さはさすが有名店。


コーヒー屋とレインボーフラッグの親和性の高さは異常。

カフェは閉鎖していて、中で注文したコーヒーを
外の窓で受け取るという方式でした。

コロナ以降人手を減らしてこの形で営業しているのでしょう。

■ ティーテイスティング

Mサンフランシスコのお気に入りのティーショップ、
SONG TEAの週末イベント、「ティーテイスティング」があると知り、
申し込んで参加しました。
オンラインで予約がオープンになった途端、売り切れてしまう人気です。

もっとも、参加人数は一回のパーティに6人というもの。
参加費は一人50ドルと、決して安いものではありません。



ティスティングは営業開始前の9時から11時まで行われます。
9時に間に合うように車を飛ばして、まだ人気の少ない
週末のサンフランシスコに到着し、店に入れてもらいました。

すでに用意ができています。



時間には6名の参加者全員が集まりました。
2時間の間、茶ソムリエ(とはここでは言いませんが)の話を聞きながら、
5種類の台湾・中国茶を2煎ずついただくという内容です。



中国茶の淹れ方をこんなにまじまじと見たのは初めてです。
5種類を2杯ずつ飲むのは大変に思われますが、
中国式のティーカップは本当に小さいので「味わう」程度の量です。

最初はソムリエだけが喋っていましたが、他の四人の参加者が
(アジア系カップル、アジア系とアフリカ系の男性カップル)
質問をしたりして、話が弾んできました。

わたしたちは日本人特有の引っ込み思案そのものでひっそりと黙って
でも話に相槌を打ちながら参加。

アジア系カップルは自分達の話はしませんでしたが、
アフリカ系の若い男性が、ボストンの大学のビジネススクールを出ていて、
こちらで数学の勉強をしたのだが、アジア系男性と二人で
コーヒーのお店を持ちたい、というようなことまで話していました。

セッションが終了した時、全員で最後に挨拶したのですが、
そのときにわたしがアフリカ系男性に、

「わたしたちもボストンに住んでいたんですよ。
夫があなたと同じ大学にいたので」


といったところ、彼は、わたしが着ていたパーカのMKの大学のロゴを見て、

「じゃその大学には?」

と聞くので、

「これが行っております」

とMKを指差したところ、驚いたことに、彼が数学を勉強したという
こちらの大学とは、MKと同じ大学院でした。

彼とMKはその後しばし大学のカリキュラムの話で盛り上がっていました。
なんでも、MKの取った授業は「難しいので有名」で、
あれは取ってはいけないと言い伝えられているということでした。

なぜそれを取ったMK。

しかし、TOの大学とMKの大学院、同じコースを選んだ人と、
たった六人のティーテイスティングで遭遇するとは縁は異なものです。



合間にいただく果物が用意されていました。

正直最初はお茶を味わうのに50ドルって高くない?と思っていたのですが、
参加した人たちとの触れ合いも含めて、値打ちがあったと思います。



その後、ソムリエが近くにあって美味しいといっていた点心の店、
その名も「ダンプリング・ストーリー」に行ってみました。

芽キャベツを頼みましたが、これほど美味しく料理されているのは初めてです。
こんなならアメリカの子供も芽キャベツ嫌いにならないのに・・・。



小籠包は当店オリジナル、専用おたまに乗せていただきます。
これがまたよくできていて、お玉に乗せて皮を破っても
スープがこぼれ出ることなく、無事に食べることができます。
正直、この後行ったモールのティンタイホンよりかなり上でした。



魔がさしてデザートのエッグタルトを頼んでしまいました。
これは失敗。ちょっと甘すぎました。



■ ホームレスとヴァーブの店長

アメリカ生活もすっかり落ち着いて生活のサイクルができたころのこと。

MKと朝コーヒーを飲みに行く店は、ユニバーシティストリートの
バーブ(Verve)コーヒーと決まっていました。

車が停めやすく、高速の入り口まで近くて、なんといっても
プアオーバーが安定していつも美味しいからです。

一杯一杯を手で入れるプアオーバーは、人によって微妙に味が違いますが、
その微妙な違いも毎日飲んでいるからこそわかってきます。

そして、毎日同じ場所に訪れることでわかってくることも。



どうやらこの辺りでは、このVerve コーヒーが、
住民の間ではいちばん「イケてる」と認識されているらしいこと。

お店の前のこのオープンエアの道向かいは実はスターバックスなのですが、
いつ見てもここほど人は訪れていないように見えます。

ここには、20年前のスターバックスや、少し前の
日本のブルーボトルコーヒーのような、「第一線」のお店が持つ
特有の輝きと、スタッフの気概から生まれてくるらしい高揚感があります。



この日は珍しく朝の8時で曇っていますが、夏の期間、
カリフォルニアには雨は降らず、朝は爽やかな風が吹く晴天です。

お店のカウンターは外に向かってオープンエアで、人々は、
こんな恵まれた気候を当然のように享受しながら、美味しい(そして高い)
コーヒーで1日を始める自分に、心から満足しているかに見えます。

そんなこのコーヒーショップに平日はほとんど毎日訪れているうちに、
わたしは何度か、オープンエアで、明らかにホームレスであろうと思われる、
アフリカ系の若い男性を目にしました。

この辺りにはホームレスもいて、広場の角のベンチを独占し、
そこに一切合切を集めて住んでいたりするのですが、
こんなふうにカフェのスペースに入ってくることは余りありません。

いうてホームレスですから、いくらオープンスペースでも、
堂々と座っていたりすれば、おそらく客から文句も出るし、
お店としても排除せざるを得なくなるので、彼らも配慮しているのでしょう。

しかし、そのホームレスだけは、ひっそりとではありますが、
周りに人がいないとき、ベンチに荷物を置いて、
ここのマークの入ったカップで何かを大事そうに飲んでいたりします。

そして飲み終わったカップをきちんとゴミ箱に捨てて、
彼をホームレスであると窺わせる大量の荷物を持って去りますが、
一連の態度から、彼が、自分が周りに不快感を与えないように
精一杯気を遣ってふるまっているように見えました。

言い方は変ですが、その様子はいつも何やらいじらしく、
胸に詰まるものを感じてMKにもそのように話したものです。

ある朝のことです。

わたしとMKが店内でコーヒーのできるのを待っていると、
カウンターに件のホームレス男性が近づいてきました。

活気のあるカウンター内では、いつも数人の店員が立ち働いていますが、
この日はその中に、ここの店長らしい、いかつい感じの白人店員がいました。

ホームレス男性が黙ってその男性の前に近づき、前に立ったところ、
店長(たぶん)は、これまた何もいわずに、アイス用カップに
たっぷりの水と氷を少々入れて、黙ってカウンターに置いたのです。

ホームレス男性は、もしかしたら一言何か言ったかもしれません。

が、黙ってカップを受け取り、ペーパーナプキンを一枚手に取ると、
他のものに彼の手が触れないように細心の注意を払いながら、
重ねられたカップの蓋を上から一枚取り、もらったカップにはめました。

そして、そのまま静かに店を出て行きました。

その後、店長らしき男性がカウンターにいないときには、
ホームレスも現れないことにわたしは気がつきました。

どういうことがきっかけでこのやりとりが始まったのでしょうか。

ただ一つ、この、おそらく店長の独断で暗黙のうちに与えられる
一杯の清潔なカップに満たされた水が、ホームレスの男性にとって
生きる気力の助けになっているであろうことは容易く想像されます。

帰国までにまた彼を見ることがあったら、そのとき
「これであなたのためにコーヒーを買ってください」
といってお金を渡すことはありだろうか、なしだろうか。

わたしは今、そのことを密かに悩んでいます。




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