映画「U-571」二日目です。
冒頭画像は、この映画でもたっぷりと見ることができた、
潜水艦の乗員が対戦中上を見ている様子ばかりを集めてみました。
およそ世にある潜水艦映画で、海上の敵と対峙するとき、潜水艦の乗員が
上を見る表現がない映画は見たことがないというくらいで、
わたしも何度かそれを指摘してきました。
例えば、天井裏で何か物音がしたら、誰でも上を見ます。
音の正体を突き止めようとするからですが、潜水艦での戦闘中は
上を見ても天井しかないのがわかっているのに、それでも見てしまう。
おそらくその目は何かを見ようとしているのではなく、
潜水艦(と自分の身)に起きていることを把握しようとするとき、
情報を収集せんとして人間の体の持てる感覚全てが総動員されるため、
視覚もまたその一端として不随意に機能してしまうのだろうと思います。
さて、工作隊を乗せたボートがUボートに近づいていきます。
Uボートからは乗員が盛んに話しかけてきますが、情報将校ハーシュ大尉、
周りがせっつくのに、固まってしまって一言も声を発することができません。
これ以上黙っていると怪しまれる、という状況を救ったのはウェンツでした。
これは、ウェンツがドイツ人とのハーフだったのに対し、
ハーシュ大尉のドイツ語は、情報学校で学習したものだったため、
彼は緊張のあまり声が出なかった、と解釈することができます。
その後挙動不審を見破られた艦上のUボート乗員と撃ち合いになり、
これを全て掃討した工作隊は、艦内に潜入することに成功しました。
影に潜んで撃ってくる乗員に死ぬほど怯えながら艦内を進んでいくと・・・
ありました。エニグマ通信機が。
艦首に集まっていた水兵たちは抵抗することもなく投降。
次に行われたのは、Uボートの乗員を全員捕虜にしてS33に乗せる作業です。
常識的に考えてU-571がそうだったと思われるVII型の生き残り約40名を
全員捕虜にするなどあり得ないことで、もしこんなことがあったとすれば、
エニグマを奪取したあとは、Uボートもろとも爆破するしかなかったでしょう。
しかし、米海軍はそのような非道は決してしない正義の軍隊なので、
ここでも粛々と捕虜を艦内にご案内しております。
これ全員をどこに押し込めてどこに連れて帰るつもりなの。
「ウェルカムアボード、黒人見るの初めてか?」
ところがそのとき艦上の艦長が振り向くとこちらに向かってくる魚雷!
避けようもなく、なんと、その一発の魚雷でS33は轟沈してしまいました。
ここで大いなる疑問なんですが、ドイツのUボートに偽装しているはずのS33を
攻撃したのは、一体アメリカ軍?ドイツ軍?どちらですか?
もちろんタイラー大尉にもそれはわかりません。
Uボート艦上からそれを呆然と眺め、
「敵襲だ!」
だから、敵ってアメリカ?ドイツ?
この場合の敵とはアメリカ軍ということになりませんか?
ここにいる二隻の潜水艦はどちらも見た目Uボートなんだから。
新婚のラーソン少尉はこの衝撃で海に落ちてしまいました。
そのときタイラーは海に落ちたダーグレン艦長の声を聴きます。
"Andy! Andy Go! Take her down! Take her down! Dive! "
ここでお話しした「グラウラー」のギルモア艦長を覚えておられるでしょうか。
ここでは艦橋から乗員の命を救うため、自分を置いて潜行せよと叫んだ
実在の艦長と全く同じセリフを言わせ、トリビュートしています。
とにかく工作隊が帰るべき潜水艦は沈んでしまったのです。
爆破するつもりでUボート艦内にしかけたダイナマイトを慌てて消す”タンク”。
敵(だからアメリカ軍だよね)は、しかもまだこちらを狙っています。
Uボートのアンディら工作隊御一行様は、潜行による脱出を試みました。
しかし、こんな非常時に装備の表示がドイツ語で読めません。
ハーシュ大尉とウェンツが走り回って指示を行い、なんとか潜行に成功。
駆逐艦からは逃れましたが、今度はUボートがやってきました。
どうも、U-571の艦長がすぐに無電を打って助けを求めたようです。
というわけで今度は相手も潜水艦、攻撃をしなくてはならなくなったのですが、
案の定魚雷発射の手順でで大騒ぎ。
「魚雷発射管の均一バルブが見つかりませ〜ん」(涙)
「ジャイロ?」「ドレナージ?」
「バルブはどれなーじ?」
「圧搾空気(インパルス)?」
「圧力示差?」
「それを回せ!」
なんでこれでうまくいくのかが不思議ですが、魚雷発射成功。
向こうから二発、こちらから四発、魚雷が海中で交差しました。
向こうの魚雷は僅差で艦体をすり抜けていき、こちらが放った魚雷は・・・。
二発を外し思わず一人が十字を切った次の瞬間、爆発音が聞こえました。
難を逃れS-33の生存者を救出しに現場に浮上したU-571。
なんとか救出できたのはスチュワードと敵の電気技師二人だけでした。
タイラーはそのとき海面に漂う艦長の遺体を発見します。
生き残ったメンバーは今後についてミーティングを行います。
打電して救出を求めてはどうか、という意見に対し、ハーシュ大尉は
「だめだ。
Uボートが奪われたことを知られたらエニグマの暗号を変えられる恐れがある」
せっかくのハーシュ大尉のご意見ですが、実際にはそれくらいで
コードシステムを今更ドイツが変える必要はなかったと思われます。
エニグマは「ダブルステッピング」と呼ばれるプロセスを使用していたため、
通常でも16,000回以上のコード変更が常に可能といわれていました。
だからこそ連合国は解読にあれだけ苦労したのですから。
電気関係は、タンクの手で見事に復活。
海から救い、捕虜にしたUボートの電気技師は戸惑ったような顔をします。
鹵獲される直前まで、彼は電気が修復できなくて困り果てていたのですから。
しかし、この男を助けたことが、U571に今後危機を招じる結果に。
さて、U571からエニグマ通信機を奪取したものの、色々あって()自艦は沈み、
なし崩しにUボートで生きていくことを余儀なくされたタイラー以下強襲メンバー。
この段階でS33の乗員は黒人コックのテレンスを除き全滅。
強襲メンバーからは海兵隊のクーナン少佐、ラーソン少尉などが失われ、
9人になってしまいました。
今や副長のタイラーが先任ですが、どうも彼が艦長になることを
正式に却下されたという噂は下々にも広まっていたらしく、
水兵マッツォーラがCPOクラウにこんなことを。
「なぜチーフが指揮を執らないんですか。
艦長が副長をクビにする気だったって噂もあります」
しかし流石は先任伍長、
「タイラー大尉はお前の上官だ!敬意を払え!」
途端に胸ぐらを掴んで叱責してくれるのですが、
影でそれを聞いていたタイラーは(´・ω・`)ショボーンとなります。
乗っ取ったUボートの食堂には写真が残されていました。
本物のUボート乗員の写真かと思いましたが、この写真の真ん中は
トーマス・クレッチマン演じるワスナー艦長なので、加工したものです。
これは本物かもしれません。
サンディエゴで見たソ連の潜水艦の士官食堂にもこんな感じで写真が飾られていました。
Uボートの写真に囲まれて、タイラーが先任伍長に
「艦長心得」的なアドバイスを受けていると、敵機来襲。
タイラーは迷わず叫びます。
「相手はこちらを味方だと思ってる。手をふるんだ!」
うわ、これって前にわたしが漫画にしたあれそのまんま。
もちろんこの場合はUボートなので、相手がドイツ機なら誰でもこうするよね。
ところが、さっき先任伍長にシメられたばかりのマッツォーラ、テンパって、
「撃ち落としましょう!来る!キタキタ〜!」
「ラビット、撃て!撃ってくるぞ!早く!殺されるぞ!やれ!」
と騒ぐので、タイラーは飛行機が行ってしまってから、
マッツォーラを今度は自分できっちりシメます。
自分を尊敬どころか信用もしていないとわかって、怒りはなおさら。
ところでこの哨戒機、メッサーシュミット109のつもりらしいですが、
噂によると翼の形が全く違ってるようです。
そもそも、当時ドイツは空母を持っていなかったのに、大西洋のど真ん中で
どうやってメッサーシュミットを飛ばせたんでしょうか。
とりあえず向こうはU571を今のところ味方だと認識しているという状況。
マッツォーラは彼と乱闘になって殺害されてしまいました。(-人-)ナムー
やはり上を見ています。
皆が上を息を飲んで見るようなシチュエーションはあるんでしょうか。
確かに二重に鍵が掛かっているので、そう簡単には解読出来ないのですが、暗号の解読というのは、パソコンで暗号化されたファイルを人が読める文書に戻すのとは違って、あて先や発信元等、大事な部分が分かれば、すべての内容を完璧に平文に翻訳出来なくても、内容は推測出来、そこから段々と(とは言っても、大変な努力ですが)解読出来るようになります。
ダブルステッピングというのは、現代でも暗号化の一般的な手法ですが、暗号機内部のアルゴリズムと乱数表で二重鍵を実現しています。二つのうち、一つの鍵である乱数表を長期間、使っていると似たようなパターンが発生し、それが解読の糸口になります。そのため、定期的に乱数表は変更するのですが、変更されたら最初のうちは、解読する方は、またパターンをつかめるまでは読めなくなります。
ここで大尉が言っているのは、使われるはずがない場所あるいは時に暗号機が使われると、不正使用だとバレ、乱数表を変えられてしまうことを危惧していると思われます。
比較的大型でしたが1940年4月のノールウェー侵攻時の第1、第2次ナルヴィク海戦で10隻の駆逐艦が一気に全滅しました。
敗戦時残置していた駆逐艦も艦齢は若いにも関わらず保存状態不良で使い物となりませんでした。
エリス中尉の記述のごとく単艦での作戦はあまりあり得ませんし、映画の中のドイツ駆逐艦は小さく艦尾形状から曳船等に張りぼての大砲をつけて駆逐艦のようにみせていますが2本煙突に加工したとしてもどうみてもドイツ駆逐艦には見えません。