潜水艦のことを「鉄の鯨」に喩えるのは言い得て妙だと
この写真を見るとつくづく思うわけですが、
シカゴの科学産業博物館にある捕獲されたU-505の展示から、
「サブ・ファクト」シリーズの4日目です。
今日はStern、艦尾部分です。
■ ディーゼルエンジン・ベント
そこで早速行き詰まってしまいました。
「U-505のディーゼルエンジンの排気は、甲板のすぐ下、
艦側面のクラムシェルのような通気口を通じて排出されました」
とあるのですが、この「クラムシェル」がどこにあるのかわかりません。
側面に確かに穴はありますが、これは違いますよね。
しかし、裏に回って左舷側を見ると・・・。
もしかしてこれのことでしょうか。「アサリ貝の通気孔」。
なぜ右舷側からそれが無くなっているのかはわかりませんが、
U-505はここに展示するに至ってとにかくあちこちを改装しているので、
何かの事情で穴を塞いだものの、その後再現できなかったのかなと思ったり。
この排気システムは、ディーゼルエンジンから発生した煙を冷却して
最小限に抑え、エンジンによって生成される火花を消すための
大きな「ウォータージャケット」付きパイプでできていました。
この写真を見るとつくづく思うわけですが、
シカゴの科学産業博物館にある捕獲されたU-505の展示から、
「サブ・ファクト」シリーズの4日目です。
今日はStern、艦尾部分です。
■ ディーゼルエンジン・ベント
そこで早速行き詰まってしまいました。
「U-505のディーゼルエンジンの排気は、甲板のすぐ下、
艦側面のクラムシェルのような通気口を通じて排出されました」
とあるのですが、この「クラムシェル」がどこにあるのかわかりません。
側面に確かに穴はありますが、これは違いますよね。
しかし、裏に回って左舷側を見ると・・・。
もしかしてこれのことでしょうか。「アサリ貝の通気孔」。
なぜ右舷側からそれが無くなっているのかはわかりませんが、
U-505はここに展示するに至ってとにかくあちこちを改装しているので、
何かの事情で穴を塞いだものの、その後再現できなかったのかなと思ったり。
この排気システムは、ディーゼルエンジンから発生した煙を冷却して
最小限に抑え、エンジンによって生成される火花を消すための
大きな「ウォータージャケット」付きパイプでできていました。
要するにディーゼルは水冷式だったということでよろしいか。
ウォータージャケットというのは現在でも
内燃機関で冷やしたいところだけを冷やすシステムとして使われます。
この頃の水冷エンジンの冷却は、とにかく
オーバーヒートしないことが重要視されていました。(今もか)
そのため、内燃機関でシリンダーヘッドの周囲に設けられ、
大量の冷却水をボア周辺全域に渡って流す通路があったのですが、
それをウォータージャケットと呼ぶわけです。
夜間は特にボートの位置を悟られないように、
火花を発生させない仕組みが必要でした。
■ 舵ーRudders
内燃機関で冷やしたいところだけを冷やすシステムとして使われます。
この頃の水冷エンジンの冷却は、とにかく
オーバーヒートしないことが重要視されていました。(今もか)
そのため、内燃機関でシリンダーヘッドの周囲に設けられ、
大量の冷却水をボア周辺全域に渡って流す通路があったのですが、
それをウォータージャケットと呼ぶわけです。
夜間は特にボートの位置を悟られないように、
火花を発生させない仕組みが必要でした。
■ 舵ーRudders
Uボートのこの部分を照らすライトの演出、
海中を構想するかつての姿を想起させて効果的で素晴らしいですね。
この写真における下に折り畳まれた「翼」のような部分が舵です。
この博物館の展示の素晴らしさは、海に浮かべる形式の展示と違い、
艦体がほぼ半永久的に劣化しない状態で、かつ、
海中にあれば、決して人が肉眼で見ることができない、
このような下の機関をはっきりくっきりと確認できることです。
わたしもアメリカ国内でいくつか潜水艦を見てきましたが、
こんな角度から潜水艦の艦体を見たのは初めてのことです。
しかし、この写真を何の予備知識もなしに見せられたら
これは潜水艦の後部だと初見で言い切れる人はあまり多くなさそうですね。
で、この縦部分が舵であります。
舵は言わずと知れたボートを方向転換するための装置で、
両舷に一つずつ合計二つあります。
どちらもブリッジ、司令塔、または制御室から
電気を通じて制御することができます。
ここで、U-505が捕獲されるに至った米軍の攻撃について思い出してください。
駆逐艦USS「シャトレーン」が海上から投下した爆雷の一つが
U-505の電気系統のコントローラーをノックアウトし、
舵が右に動かせなくなってしまったんでしたよね。
そのためハラルト・ランゲ艦長は、緊急操舵装置が作動するのを待たず、
乗組員に総員退艦を命じたということも。
そのまま浮上したので、U-505の舵はずっと右に切れたままになっており、
タスクグループが見ても、舵がスタックしているのは明らかで、
ボートは右舷に向かってきつい縁を描きながら完全に浮上していました。
駆逐艦「ピルズベリー」は、暴走する潜水艦に何とか接近しようと
ぐるぐる跡をつけながら奮闘を続けていましたが、
そのうち、Uボートの艦首が「ピルズベリー」に衝突し、
エンジンルームを含む二つのコンパートメントを浸水させてしまいました。
もうこうなったら艦体をUボートから引き離すべきかと全員が思った時、
アルバート・デビッド中尉が指揮する乗艦隊のうち誰かが、
潜水艦の甲板に飛び移って、乗艦隊のホエールボートを
ロープで手繰り寄せることに成功したのです。
この快挙は、空母の艦橋から息を呑んで見ていたギャラリー大佐に、
ぐるぐる跡をつけながら奮闘を続けていましたが、
そのうち、Uボートの艦首が「ピルズベリー」に衝突し、
エンジンルームを含む二つのコンパートメントを浸水させてしまいました。
もうこうなったら艦体をUボートから引き離すべきかと全員が思った時、
アルバート・デビッド中尉が指揮する乗艦隊のうち誰かが、
潜水艦の甲板に飛び移って、乗艦隊のホエールボートを
ロープで手繰り寄せることに成功したのです。
この快挙は、空母の艦橋から息を呑んで見ていたギャラリー大佐に、
「まるで野生の馬にロープをかけるカウボーイを見ているようだった」
と感嘆せしめ、最初の男が潜水艦に乗り込んだ瞬間、大佐はTBSを引っ掴み、
「ピルズベリー」に向けて高らかに放送したのでした。
「Hi Ho Silver!Ride 'em cowboy!」
「ハイホー・シルバー」は西部劇「ローンレンジャー」の決め言葉ですが、
それって「ハイヨーシルバー」じゃないのと思った人もおられますかね。
と感嘆せしめ、最初の男が潜水艦に乗り込んだ瞬間、大佐はTBSを引っ掴み、
「ピルズベリー」に向けて高らかに放送したのでした。
「Hi Ho Silver!Ride 'em cowboy!」
「ハイホー・シルバー」は西部劇「ローンレンジャー」の決め言葉ですが、
それって「ハイヨーシルバー」じゃないのと思った人もおられますかね。
アニメ「紅の豚」でも、ポルコ・ロッソと空中戦をするカーチスが
(わたしこのカーチス大好き)
「ハイヨー・シルバー!」
と言ってましたものね。
実は、アメリカ人でもこのセリフをなぜか
「ハイヨー、シルバー!」
だと思っている人が圧倒的に多く、実にどうでもいい話ながら
歴史の争点?になっているらしいんですね。
いわんや日本人においてをや。
"Hi Yo, Silver / Hi Ho, Silver "
ローン・レンジャーのキャッチフレーズの濁った?歴史。
歴史の争点?になっているらしいんですね。
いわんや日本人においてをや。
"Hi Yo, Silver / Hi Ho, Silver "
ローン・レンジャーのキャッチフレーズの濁った?歴史。
(ちなみにハイヨーではなくハイホーが正解)
後半の、
「Ride' em cowboy!」
は「行け行けカウボーイ!」という感じでしょうか。
後半の、
「Ride' em cowboy!」
は「行け行けカウボーイ!」という感じでしょうか。
これは1942年のカウボーイ映画のタイトルで、日本では
「凸凹(でこぼこ)カウボーイ」というタイトルで上映されたようです。
「凸凹(でこぼこ)カウボーイ」というタイトルで上映されたようです。
ギャラリー大佐は間違えずにセリフを覚えていたってことのようです。
■ 後部潜舵
後部潜舵、リア・ダイブプレーンとガードです。
三つの円の真ん中の丸の部分だとお考えください。
ラダーの「縦」に対してこちらは横に突き出しているものです。
Uボートの潜舵は、潜航した場合、ボートの深度、
そして角度を変更、または維持するための装備です。
実は恥ずかしながらこのわたし、ラダーとダイブプレーン、
具体的にどう違うのか認識があやふやだったんですが、
この実物を見て、初めて得心がいきました。
「シルバーサイズ」では言葉だけだったので理解できなかったのです。
こちらはコントロールルームから制御され、
前方の潜舵は深さを制御し、後方は角度を制御しました。
■ 後部潜舵
後部潜舵、リア・ダイブプレーンとガードです。
三つの円の真ん中の丸の部分だとお考えください。
ラダーの「縦」に対してこちらは横に突き出しているものです。
Uボートの潜舵は、潜航した場合、ボートの深度、
そして角度を変更、または維持するための装備です。
実は恥ずかしながらこのわたし、ラダーとダイブプレーン、
具体的にどう違うのか認識があやふやだったんですが、
この実物を見て、初めて得心がいきました。
「シルバーサイズ」では言葉だけだったので理解できなかったのです。
こちらはコントロールルームから制御され、
前方の潜舵は深さを制御し、後方は角度を制御しました。
ちなみにこれが艦首側を前方から撮影したものですが、
深さを制御する前方の潜舵がこちらとなります。
ダイブプレーンは最大限の効果を得るために、
スクリューの後ろに配置されていました。
そして、スクリューのシャフト?カバーが、スクリューの外に張り出して、
スクリューのガードの役目をしており、それはさらに
潜舵のガードにつながっています。
「ロッキン」のTシャツのおじさんが手をかけている部分は、
ちょうどそこでガードがねじれていて、潜舵が取り付けられています。
プロペラにものが当たらないようにする役目と同時に
潜舵のガードと補強の役割を果たしているというわけです。
■ スクリューとスクリューシャフト
つい図には原語通り「プロペラ」と書いてしまいましたが、
英語ではスクリューのことを普通に「プロペラ」といいます。
深さを制御する前方の潜舵がこちらとなります。
ダイブプレーンは最大限の効果を得るために、
スクリューの後ろに配置されていました。
そして、スクリューのシャフト?カバーが、スクリューの外に張り出して、
スクリューのガードの役目をしており、それはさらに
潜舵のガードにつながっています。
「ロッキン」のTシャツのおじさんが手をかけている部分は、
ちょうどそこでガードがねじれていて、潜舵が取り付けられています。
プロペラにものが当たらないようにする役目と同時に
潜舵のガードと補強の役割を果たしているというわけです。
■ スクリューとスクリューシャフト
つい図には原語通り「プロペラ」と書いてしまいましたが、
英語ではスクリューのことを普通に「プロペラ」といいます。
U-505の2基のエンジンは直接駆動です。
つまり、それぞれが減速機なしで二つのクラッチを介して
スクリューシャフトとスクリューに直接接続されているのです。
どのくらいダイレクトかというとこのくらいです。
視覚で囲んだ部分にエンジンが2基あり、
艦内のシャフトがそのまま外に突き出していってスクリューに直結します。
つまり、それぞれが減速機なしで二つのクラッチを介して
スクリューシャフトとスクリューに直接接続されているのです。
どのくらいダイレクトかというとこのくらいです。
視覚で囲んだ部分にエンジンが2基あり、
艦内のシャフトがそのまま外に突き出していってスクリューに直結します。
ちなみに赤線はわたしが書き込んだものですが、
下の平行線が目の錯覚で内側に歪んで見えますね(どうでもいいけど)
潜水艦をスクリューの位置とエンジンの位置で輪切りにしたところ。
ちなみにこれはU1の設計図ですが、ほぼ変わりないと思われます。
スクリューの羽は3枚。
素材はソリッドキャストブロンズで、
500rpmで33,000ポンドの水力を発揮します。
そしてボートを最高速度18ノットで推進しました。
下の平行線が目の錯覚で内側に歪んで見えますね(どうでもいいけど)
潜水艦をスクリューの位置とエンジンの位置で輪切りにしたところ。
ちなみにこれはU1の設計図ですが、ほぼ変わりないと思われます。
スクリューの羽は3枚。
素材はソリッドキャストブロンズで、
500rpmで33,000ポンドの水力を発揮します。
そしてボートを最高速度18ノットで推進しました。
参考までに、これが現存しているUボートの生きたエンジン。
2:40まで何やら色々と準備をし、ベルが鳴るとエンジンが動きますが、
後方の大きな舵輪がずっと回っているのに注意。
Start Up of a WW2 Submarine Diesel Engine of a German U-Boat 🔊
2:40まで何やら色々と準備をし、ベルが鳴るとエンジンが動きますが、
後方の大きな舵輪がずっと回っているのに注意。
Start Up of a WW2 Submarine Diesel Engine of a German U-Boat 🔊
動き出してからおじさんがステップの上に乗って色々とノズルを
仔細ありげに調整して見せますが、何のためかは全くわかりません。
このエンジンはタイプXIIIということなので、U-505(IX)より
かなり後のものだということになります。
仔細ありげに調整して見せますが、何のためかは全くわかりません。
このエンジンはタイプXIIIということなので、U-505(IX)より
かなり後のものだということになります。
メインテナンスがいいのか、元々堅牢な作りなのか、
ディーゼルエンジンのメカニックがいて、
「音が大変滑らかだ。
彼らがこれをコンピューターを全く使わずに作ったことは驚きだ」
とYouTubeのコメント欄に投稿しています。
他のコメントもエンジンそのものの設計への賛辞が多く、
「従来の潜水艦に乗ったことがあるなら、
これらは工学の傑作であり、見事に考え抜かれ、組み立てられ、
重要な機器にはバックアップシステムがついていることを知っているだろう。
これらのマシンを設計したエンジニアは、純粋な天才です」
ディーゼルエンジンのメカニックがいて、
「音が大変滑らかだ。
彼らがこれをコンピューターを全く使わずに作ったことは驚きだ」
とYouTubeのコメント欄に投稿しています。
他のコメントもエンジンそのものの設計への賛辞が多く、
「従来の潜水艦に乗ったことがあるなら、
これらは工学の傑作であり、見事に考え抜かれ、組み立てられ、
重要な機器にはバックアップシステムがついていることを知っているだろう。
これらのマシンを設計したエンジニアは、純粋な天才です」
そして、このエンジンをメンテナンスしている人に対しても。
「このエンジンが非常によく整備されていることがわかるだけでなく、
この老人が自分のしていることを理解していることがわかる。
冷静に手順をこなし、調整すべきところは素早く、
しかし決して急がずに調整する姿にそれが表れています。
この人は、自分の仕事を愛しているのだとわかる」
また、わたしがこのメカニックのおじさんが、
何か意味ありげに触っている、といったことについては、
別の太陽光発電の施工業者という人がこう言っています。
「わたしも仕事で毎日手を動かしていると、
しばらくして『何か』がただ流れてくるのを感じる。
映像に見られるこの男性の手を見ていると、
全てのタッチに確かな意味があることがわかります。
ある特定のレンチを引き抜く瞬間の、
そして空気の流れをテストする様子のスムースさには
畏敬の念を抱かずにはいられません」
世界のメカニックオタクたちの陶酔のツボがよくわかるコメントです。
続く。
動画を見たら、エンジンのうしろに発電機があるので、エンジンで発電機を回して、電動機でプロペラを回しているのですね。潜航中(電池航走時)は系統図がないので、どうしているのか、わかりません。
動画で若い人が棒をペコペコしているのは、潤滑油を回しているのだと思います。おじさんがエンジンの上で開け閉めしているのは、シリンダー内の圧力を図る弁を操作しています。
>映像に見られるこの男性の手を見ていると、全てのタッチに確かな意味があることがわかります。ある特定のレンチを引き抜く瞬間の、そして空気の流れをテストする様子のスムースさには畏敬の念を抱かずにはいられません。
このエンジンは、古いとは思いますが、デモで回すだけなら、分解清掃等の手入れさえ続けていれば、維持出来ると思います。動画を見ていると、ピストンやクランクの予備品が壁にあり、部品も揃っているようです。
実際の船だと、エンジンそのものよりも、潤滑油系統や冷却水系統が複雑で、船が古くなって来ると、パイプがよく切れます。これより、かなり大きいエンジンの相手をしていたことがありますが、機械室も大きく、計器で圧力低下(パイプがどこかで切れている)はわかっても、系統が複雑で、実際にどこが切れているのかを探求するのは結構大変です。意地悪を言うと、そういう状況で、てきぱき動ければ、このおじさんは本物です。
丁度左舷の排気口の反対側です。
大写し写真の丁度左側で切れて写ってないのでしょう。
排気口の前方に消音器が上部構造物にあります。
デイーゼル主機も海水冷却しているものと思いますが排気も海水冷却しているのではないでしょうか?
呉等で港内見学された時潜水艦が充電でデイーゼル機関起動で排気口から排気とともに水煙がもうもうと揚がっているのを見られたことがあるのではないでしょうか?
ただ参照文献にはⅦBの主機、主電動機の記述等がありますがⅨC型の記述がありませんので不明確です。
>ラダーとダイブプレーン
日本語では縦舵と横舵で、縦舵は方向を横舵は姿勢制御を司り、前舵の潜舵が深度変換を司ります。
X舵は4枚が後舵と呼ばれ、コンピューター制御で別々の作動となってしまいましたが縦舵、横舵とも2枚が同時に作動します。
縦舵は1枚のこともありますがⅦ型、Ⅸ型ともに2枚舵で操縦性を考慮してありますがプロペラ回転方向で水流の蹴り出しがあるため中心線から少し左右それぞれ内側にシフトしているのではないでしょうか?
プロペラガードを横舵に導設しているのはロープ等結構巻き込みますので設置となっています。
縦舵は吊り下げ舵ですが海底接触等もあり、下部を保護したり上下に支点を取ったりしますがその前船体中心線にスケグと言う部材が大きく設置してあるのでこの形式で大丈夫なのでしょう。
参照文献海人社「世界の艦船」No471