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ミュージカル『ベガーズ・オペラ』再演<ジョン・ケアード版>@梅田芸術劇場

2008-02-12 | ステージれびゅー
2月の一本目は、史上初めて作られたミュージカルと言われている『ベガーズ・オペラ』。

今回観たのは、『レ・ミゼラブル』のジョン・ケアードの演出により2006年に大ヒットした日本版の再演。
1992年に、ジョン・ケアード演出によりロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで上演したものが元になっていて、日本版も彼が演出していると言うから、筋金入りの良作なんでしょう、きっと。

舞台上も、客席も、劇場が一体となって楽しめるのが、この作品の醍醐味です。

この先ネタバレ交えて書きます。

舞台全体にくみ上げられた4層構造の木造建築セットと、舞台の左右に張り出すように作られたオペラ劇場風の前桟敷席を合わせると、視界の全てが18世紀当時の『ベガーズ・オペラ』が上演された劇場となって迫ってくる感覚。

前桟敷と舞台の間にはステージ上席が設けられ、ここにも観客が数十名座っている。
前桟敷自体は観客の為に設けられた訳ではなくて、この中でも芝居が行われるので、観客席と舞台の境界が曖昧になり、役者達はS席側にも頻繁に降りてきて、近くに居る観客をいじりながら溶け込んで芝居が進んでいく。

芝居自体は劇中劇のスタイルを取っているので、“ベガーズ(乞食)役者”としての素を装った芝居の時と、役になり切っている時とで観客との近さに違いが生じるところが面白い。
ベガーズ役者を演じている時は、あくまでフレンドリーに観客と直接接し、それこそ舞台と客席の垣根が全く無い状態になる。

3幕に及ぶ長丁場のこのミュージカル、2度の休憩時間中もベガー達は3階まで客席をウロツキ、本職とでも言わんばかりに物乞い風でプレゼントを貰ってまわっていますw
モリクミさんなんて、両手で抱え切れない状態になってはりました。

慣れたお客さん達は、その事を見越していろんなプレゼントを用意して話しかけるし(もちろんマナーを守って休憩時間中だけですよ!)、役者さん達もベガーになり切って応対している所がなんとも楽しい。
こんなに観客と役者さんたちの垣根が無い芝居は、初めての経験。

前桟敷席の中でも役者さん達が常に細かい演技をしていて、舞台上と連動して進行する事もあるので、きっと何度観てもいろんな発見があるように出来てるんだろう。

最前列やステージ上席に関しては、通常S席12,000円に比べて500円だけ高い設定となっているので、S席で楽しんだ後は是非ともステージ上席や最前列を取って2度目を観てみたい気分になる事だろう。
最終的にはそこから何人か引っ張り出されて一緒に踊るような事もあるので、初めての方にはノリ的にお勧め出来ないかもしれない席です。

俺の場合、チケットを買おうとした時に丁度ステージ上席が数席と、S席12列目が選択出来たのですが、相当迷った後にS席12列目にして正解でしたw
芝居に引っ張り出されるのはほとんど女性なんですけどね。
あ、あと、ステージ上席は、文字通りステージの上に設けられた席なので、客席側から丸見え、さらし者状態なので、その辺が気になる方も気をつけられた方が良いかもしれません。


パンフレットやらWikiを読むと、元は1782年のジョン・ゲイが書いた戯曲で、庶民でもオペラを楽しめるような趣向で作られたものが、ミュージカルの元祖となったようです。

クルト・ヴァイルの『三文オペラ』は、これがモチーフになっているのだそうですが、ジョン・ゲイが誰なのか、『三文オペラ』って何なのか、そんな事は全く知りませんwごめんなさい。
パンフレットに細かく書かれてるので、買って読むか、wikiをどうぞ。


で、お芝居の中身ですね。

芝居が始まる前からステージ上の観客を、近藤洋介演じる老役者がいじっている。
観客に舞台の掃除をさせたり、道具をを運ばせたり…で、そのままいつの間にか芝居が始まっていますw

舞台は18世紀の劇場。
ベガー(乞食)役者達が集まり、一夜限り許されたオペラを披露するという設定。
橋本さとし演じる脚本家(演出家)が、指示を飛ばしながら、いつの間にかベガーによる劇中劇だと言うことを忘れるクオリティーで進行して行く。

冒頭で、大まかな内容を説明してくれる通り、普通のオペラのように何でもかんでも歌に乗せるのは辞めにして、大衆の好きなものを全部盛り込んだ、ボリュームたっぷりの一大エンターテイメントの展開。
オペラも悲劇も否定して、純粋に楽しいミュージカルがここに生まれる、その場に居合わせる感覚。
現代のミュージカルは、そんな能天気なものばかりではありませんけどねw

何が楽しいって、視界の全てで歌に踊りに、何か楽しい事が起きている瞬間の連続です。
全員が一体となって一糸乱れぬ踊りを見せるかと思えば、官能的な格好で映画『ムーランルージュ』のように淫靡なダンスを披露したり、様々なスタイルでどんどん見せ方を変えていく。
綺麗に日本語歌詞が乗った歌がまた気持ちいいし、歌ってるのが歌手としても実力派な方が多くて嬉しくなる。

セット自体に変化は無いんだけど、少ない小道具の組み合わせだけであっという間に違う場面に展開していく様子も軽快で良かった。

クライマックスで、劇中劇が終わってからのグダグダ感を、歌と踊りだけで吹き飛ばすには若干無理を感じましたが。


メインの役者さんたち。

内野聖陽は、ポスターにセクシーカリスマなんて書かれてましたが、観れば納得。
時に男らしく、時にエロエロモード全開、そして劇中劇の合間は、へなちょこベガー役者に戻る。
むちゃくちゃ男前やし、凄い役者さんですねぇ。

島田歌穂は、台詞を喋っている時の声質は微妙だけど、一旦歌い始めるとやっぱり島田歌穂、いいなぁw

笹本玲奈は、逆に若いせいか歌声が若干漫画声だけれど、台詞の時がステキ。
この二人のヒロインは組み合わせ的にも面白いですねぇ。

どしーんと存在感のある森公美子は、パワフルな見た目に何をやっても様になる声量の喋りと、迫力な歌声にやられました。
一度生で観てみたかった人ですが、味も相当ある舞台役者さんなんだなぁと改めて感じた。
この人の代わりが出来る人って(体格的な意味ではなくて)そうそう居ないですね。

橋本さとしがこんなところで観れるとはw
この人も一度生で観てみたかった役者さんなんですが、出てるって知らなかったのでちょいアガりました。
というのも、このチケット買おうかどうか迷ってた時、ボーっとネットのチケットぴあを見てたら良い席が空いてたからクリックしたので、その後何も下調べしてなかったんですよね。
今回は収穫が多い。

高嶋政宏はテレビで観る印象とずいぶん違っていい舞台役者さんですね。
歌も演技も、これからテレビでも観る目が変わりそうです。

村井国夫は、どちらかというとこういう役をやる俳優さんっていうイメージが無かったものだから、歌えるし悪党なのにどこか滑稽な深い演技をなされるし、面白かった。


そうそう、後ろに座ってたおっちゃんの、休憩中の会話がなんとも酷かったのでちょっと書いておきます。

ご家族で来ていたのか、連れの女性陣が「凄く面白いね」的な会話で盛り上がってたところを、おっちゃんは「芝居が始まる前からほとんど寝てた」だの、「どこが劇中劇なのか、何が起きてるのか意味が分からない」だのとのたまった挙句、「こんな舞台は20文字で済む」なんて言い出して女性陣を凍りつかせてました。
寝てて何が起きてたのか、どんなシーンが有ったのかも分かっていないのに、なんて凄い事を言うおっさんだ、でも関係無いから面白いのでそのまま聞いてると。
女性陣も「じゃぁ20文字で言ってみろ」等とがんがん突っ込んでましたw
おっさんは全く動じずに批判を繰り返してましたが…。

趣味に付き合って来ている人って、映画にしろ舞台にしろ、退屈なら「合わない」と言って外で終わるまでタバコでも吸ってりゃ良いと思う。
周りの人間がそうと気づく位にアクビや言葉で退屈を表すなら、付き合わすのも、付き合いで行くのも辞めりゃ良い分野だと思うんよね、映画とか舞台って。
お互いの為にならん。
特にこの時のように、相方さんが楽しんでるのに幕間の休憩で批判始めたら、その後が楽しめないっしょ。


パンフレットは、各役者さんごとにページを割いて色を出していたり、解説やインタビューも読み応えたっぷりで、2,000円じゃ比較的安い内容でした。


そんなこんなで2月の観劇1本目は終了。
次は、月末に蜷川シェイクスピア『リア王』が控えてます。
今回は、本格的なキャストと言うことで、華も薄めで寝てしまうんじゃないかちょっと自信が無いのですが、楽しみですw
3月は『ペテン師と詐欺師』。
4月は『MIDSUMMER CAROLガマ王子vsザリガニ魔人』と、『TRIP OF LOVE』。
5月は『トゥーランドット』と、全てチケットを購入済み。
何れも良席が押さえれたので、今から楽しみ♪
って、結局今年は昨年以上に観劇回数が増えてる…w
5月末の羽野晶、復帰初舞台も気になるところ。

『TRIP OF LOVE』は、これからブロードウェイに持っていくトライアウト公演なので、認知度が低いうえに公演期間が長いせいか、今なら簡単に良席が取れてお得ですよ。
実績が無いから、中身は未知数ですけどw

そういや『ベガーズ・オペラ』も公演期間が長くて完売してないのか、当日券が売ってました。
でも、私の見た週末の公演は、3階席までほとんど埋まってるので、良い席は無いと思います。
舞台から遠い席だとどんな感じに映るのかわかりませんが、この機会をお逃がし無く。

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