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『MIDSUMMER CAROL ガマ王子VSザリガニ魔人』再演@シアタードラマシティー

2008-04-15 | ステージれびゅー
4月の一本目は、後藤ひろひとによる脚本、G2による演出の『MIDSUMMER CAROL ガマ王子VSザリガニ魔人』。

昨年から突然芝居にハマり、行き当たりばったりで興味をそそる芝居を片っ端から観てるもので、今回は昨年観た劇団Piperの『ひーはー』や『スイミンのひみつ』繋がりで、内容についてはあまり調べもせずに梅芸の会員予約でチケットを購入。

何も知らず、タイトルからイロモノ系の芝居なんだとばかり想像していたのですが、直前になってよくよく調べるとこれが凄い。
脚本の後藤ひろひとと、出演者の中に山内圭哉、楠見薫と、Piper絡みの人ばかりに注目していたのですが、昨年から三本も観てしまった蜷川シェイクスピアで毎回唸らせてくださった吉田鋼太郎をはじめ、他の出演者も豪華なことこの上ない。

よくよくきちんと調べてみると、今回は4年越しでキャスト総入れ替え(一人を除いて)での再演で、初演の後には「伝説的」とまで評された名作。
この秋、中島哲也監督により装いも新たに『パコと魔法の絵本』というタイトルの映画版が公開されるのだそうで。
って、中島哲也監督と言えば、ここ数年の邦画で一番面白かった『嫌われ松子の一生』の監督じゃないですか!

前回のキャスト、今回のキャスト、そして映画版のキャストを観ても、この脚本の面白さをうかがい知ることができるかもしれません。
前回の公式サイトは →こちら
今回の公式サイトは →こちら
映画版公式サイトは →こちら

いやー、泣いた泣いた。泣いたし、よー笑ろた。
基本的には悲劇のはずですが、絶妙な間合いで笑いと悲しみ、そして感動が繰り返し沸き起こり、最後まで泣きながら笑っての観劇。
ステージれびゅーを書き始めて、最も泣き、最も笑い、観終わって一番充実を感じた舞台。
明るくなり、立ち上がって役者さんたちの向かいで拍手している間も油断すると吹いた涙が再び出てきそうでした。

この先はネタバレです。

文章能力が無いもので、“凄かった”以上の事を書こうと思っても、何を書いても陳腐にしか見えないのが悲しいんだけど、いや凄かった。

吉田鋼太郎の強烈に存在感ある“じじい”の重厚な演技と、山内圭哉演じる関西系ノリ“ヤクザ”の力技。
二人の全く対称とも言える演技がひとつの舞台で共存してるところはマジで観モノ。
それぞれが笑いも泣きも予想外の変化球を投げてくるから、観ている側はとにかく押し寄せてくる感情に翻弄されながら、それが心地よくなって来る。

そこに楠見薫のお節介おばちゃん、新妻聖子の熱血ヤンキー看護婦の加勢。
一方では、笠原浩夫の大成しなかった元子役と、新妻聖子による根性ドラマやら、中山祐一朗のドジでも使命感に溢れるナイスガイ消防士との比喩。
TEAM NACS戸次重幸演じる“じじい”の甥と、月船さらら演じるその嫁の恐妻関係に、“じじい”との駆け引き。
全てを優しく見守る岡田浩暉演じる医師と、患者たちのまったりとした信頼関係。
さらに、“じじい”を客観的に見つめつつチャチャを入れるストーリーテラーの春風亭昇太。

人間関係が複雑に絡み合う病院を舞台に、志村玲那演じる謎の少女パコと、大貫“じじい”の交流を中心に物語は微笑ましい展開を見せながらも、悲しい結末に向け、観客席では常に笑いと涙が渦巻いた状態で展開していく。
悲劇なのに、芝居自体の面白さに幸福感でいっぱいになります。

くるくるとセットが回りながら場面が移り変わるんだけど、回転したり暗転したりで次の場面に変わる間も前のセットの中で演技が途絶える事なく続く、転換がシームレスなところは新鮮だった。

しつこいけれど、それにしても吉田鋼太郎。
オセロー』と『リア王』からそのまま抜け出てきたように葛藤し、大いに喚く大貫を演じる貫禄は、一見他の俳優たちと不釣合いにも観えそうだけれど、各々が一番光る演技を持ち寄ったようなこの舞台の中ではアリ。
『オセロー』でもかなり笑いを取ってた人だし。

「ああぁぁ!」とシェイクスピア風に嘆く彼に続くのは、「いやーん」と嘆く山内圭哉w
しかも山内圭哉は、顔を真っ赤にして嘆きながらも絶妙な間合いの台詞で観客を笑いに笑わせる。

そうかと思えば、自殺願望が有って酒を飲んでわめき散らす笠原浩夫は、最終的にはオカマのザリガニ魔人…、ってとことんまで真面目にやって、とことんまで笑わせる。

これぞエンターテイメント!

と考えれば、中島哲也監督が目を付けた理由も、どんな映画に仕上がるのかも想像が付くし、今から楽しみでなりません。
唯一、二度の舞台と映画版の全てに出演する山内圭哉にも大注目です。



MIDSUMMER CAROL ガマ王子VSザリガニ魔人

ポニーキャニオン

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こちらは初演版のDVDです。
帰りに買ってしまいましたw

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2 コメント

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NHK BS2で。 (悠雅)
2008-09-13 22:13:01
こんばんは。ご無沙汰ばかりしています。

映画のほうにお邪魔したら、舞台をご覧になっていたと知り、
こちらにもお邪魔しました。
わたしは先日、NHK BS2の放送でこの舞台作品を観ました。
妙なタイトルだけど、天下のNHKを信じて観てみようと録画、
観てみたら、コレが何と思った以上にボロボロ泣きながら笑う、
凄い作品でビックリ仰天。
期待を持って映画公開を待ってましたが、
筋書きはほとんどそのままで嬉しかったです。

長らく生の舞台から遠ざかってるんですが
(奈良県民なのでドラマシティはよく行ってました)
こういう作品に出会うと、「生で観たかった」と思うんですよね。
でも、なかなか、梅田まで観に行くことが辛くなっている昨今です。
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>悠雅さん (そーれ)
2008-09-16 14:27:22
どうもご無沙汰しております!
夜中に放送してましてね^^
私も観に行く前はタイトルからインパクト勝負のイロモノなんだとばかり想像していたものですから、劇場の入り口に“映画化”のポスターを見てびっくり。
実際に舞台を観てみて、周囲の目も気にせず大泣きしながら笑顔でスタンディングオベーションでした。(みんなそんな状態でしたからw)
ドラマシティーは良い箱ですよね。
観劇にはまったのは昨年突然なので、よくわかってないところもあり、とりあえず片っ端から観て勉強している最中です。
奈良からでしたら難波とかに良い箱が出来ると便利なんでしょうか?
関西にはそこそこ収容出来る劇場が少ないせいもあって、上演期間も短いので辛いですよね。
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