弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(商標)】市松模様

2021年06月14日 08時12分41秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
小雨ふる@湘南地方です。
雨の日は、微妙に偏頭痛があるような…。ここんとこの傾向です。

さて、今日はこんな記事

(財経新聞より引用)
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ルイヴィトン、日本の市松模様の商標審決で負ける

ルイヴィトンが、日本の昔からある市松模様の数珠袋の入れ物が、ルイヴィトンの国際商標登録に抵触するとして、京都府の神戸珠数店を相手取っていた商標審決で、ヴィトン側が負けていたことが分かった(判定2020-695001、商標審決Twitter)。2020年8月1日に、ルイヴィトンから販売会社に対して商標の侵害に該当するとの通報があり、ルイヴィトンが商標の判定請求を行っていたという。判定では

標章に係る模様は市松模様と称される日本古来の織模様である。

として本件商標権の効力の範囲には属さないとの判定を下している。
(以下略)
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(引用終わり)

上記記事には元情報である判定公報も添付されていた。
判定とは、権利範囲の属否について示す特許庁の専門的見解であって、これが訴訟における類否や権利範囲の属否の判断を拘束するわけではない。

が、本件の場合、経緯も含めてちょっと別の判断にはなりにくいかな。
別途侵害訴訟が提起されているのかは不明だが。

経緯としては上記記事は一部正しくなく、判定請求を行っているのは数珠屋さんの方
つまり、LVから数珠屋の取引先に対し警告がなされ、これを心外と考えた数珠屋さんが、
「いやこんなん権利侵害ちゃうやろ」ということを確かめるべく特許庁に判定請求したもの。

判定において特許庁は、
LVの登録商標の権利範囲
・LVの登録商標(こちら)と数珠屋の使用標章との類否については言及せず、
数珠屋の使用標章は「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない」
から「商標権の効力に属しない」と結論付けている(商標法第26条1項6号)。

上記結論に至る前提として、
1)布地などに用いられる日本古来の模様として広く一般に知られ、親しまれている「市松模様」と同様の態様といい得るものであること
2)使用商品に係るパンフレットにおいて、「市松模様」、「市松柄」及び「市松生地」の語が、使用商品の布地の模様を表すものとして、商品説明中に記載されていること
を条件として挙げている。「2)」の方が個人的には“引っ掛かる”。
じゃあ、「市松模様」と説明が付されていなかったら権利範囲に属する可能性があった、ということだろうか?

LVの商標権が無効、と言っているわけではないので(そもそもそういう判断をする場面ではないので)、
今後の同様の事例における指針として、
一応「市松模様」って書いておきましょ” というアドバイスが必要になる、ということかなぁ…。



コメント
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