人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(レビュー編)2018年 ホセ・クーラ、ヴェルディのナブッコをプラハで演出 / Jose Cura directs Verdi's Nabucco

2018-07-08 | 演出―プラハのナブッコ




6月28日に初日を迎えた、ホセ・クーラ演出のプラハのナブッコ。プルミエ公演は観客から喝采を受け、大成功したようです。
劇場や出演者、クーラのSNSで、喜びの報告があがっていますので紹介します。

また、いくつかレビューがでています。レビューの方は、高く評価しているものもある一方で、「美しい、しかし活気が不足」など、舞台上の動きが静的すぎることなどへ批判的な意見もみられました。現地の観客の反応も、出演者の手ごたえもとても良いようですので、今後、上演を重ねていくなかで、さらに良い舞台になるのではないかと思います。

今回、演出家としてのクーラの姿に焦点をあてた記事もいくつかありました。
主演のナブッコを歌っているバリトンのマルティン・バルタさんがクーラの演出について語っているインタビューと、インターネットのオペラ情報サイトの記事などから抜粋して紹介したいと思います。

(*舞台の写真は、ニュース動画より)





Musical preparation: Andreas Sebastian Weiser
Direction, set and light design: José Cura
Costumes and co-stage designer: Silvia Collazuol
Co-lighting designer: Pavel Dautovský
Chorus master: Adolf Melichar
Dramaturgy: Jitka Slavíková
The State Opera Chorus and Orchestra

Nabucco: Martin Bárta , Miguelangelo Cavalcanti
Abigaille: Anda-Louise Bogza , Kristina Kolar
Fenena: Veronika Hajnová , Ester Pavlů , Jana Sýkorová
Ismaele: Jaroslav Březina , Josef Moravec , Martin Šrejma
Zaccaria: Oleg Korotkov , Jiří Sulženko , Roman Vocel

≪公演予定≫
2018年――6月28、29日、7月1、3日、9月13、15日、10月30日、11月20日
2019年――3月4、18日、4月15日、5月14日、6月11、22、25、29日





*追加 劇場がYouTube公式チャンネルに予告編を掲載していました。美しい舞台と衣装、印象的な照明、最後にカーテンコールの様子もあります。

Nabucco v režii Josého Cury



≪初演成功の喜びを報告――SNSより≫


●プラハ国民劇場のFBにアップされたカーテンコールの画像。晴れやかな出演者の笑顔、喝さいを受けるクーラの写真も。
右上のFマークをクリックすると、直接、劇場のFBページで多くの写真を見ることができます。




●初日の舞台終了後に、祝賀レセプションがもたれたようです。その時の写真も、劇場のFBにたくさんアップされました。




●初日後にクーラがFBにアップした写真です。
――クーラのメッセージ
「ナブッコは終わった。 大成功!!! 国民劇場のすべての人たちの努力と献身に感謝!また近いうちに会いしましょう!
(何人かのエキストラと一緒に写真:素晴らしいプロフェッショナルで素敵なみんな)」




●こちらもクーラのFBから。
――クーラのメッセージ
「舞台を清掃する女性と。私が彼女に、舞台セットをきれいに保ってくれていることへの感謝を伝えた時、彼女には信じられなかった。
 すべての人たちが公演の成功に貢献している!」



この他にも、出演者、コーラス、劇場スタッフ、関係者やエージェントなど、いろんな人たちが初演の成功を喜び、インスタにクーラとのツーショットを投稿していました。










≪レビューより≫


●表現力豊かなビジュアル、独像的な作品

全体的としては、ホセ・クーラのナブッコに感謝しなければならない。
彼は非常に具体的かつ独創的な作品を制作しており、想像力豊かな快適なビジュアルと従来の一切を含めたコンセプトを非常にうまく組み合わさせている。
 
一方で、クーラはナブッコに敬意を表し、それを阻害する演出を行わなかった。かなり断片的に構築された静的な物語で、刺激的なシーンはなく、クーラがあまり指示していないことは事実だった。
(「casopisharmonie.cz」)








●美しいナブッコ、しかし活気が不足

カラフルな歌、衣装、セットによる壮大なキャンバス。しかしステージを越えた言及やインパクトには欠ける。

その点で、それは壮観だった。クーラがこのセットを設計した。遠近法による台形のセットで、アクションをフレーム化し、観客の視点を引き込む。
それを回転させ、屋外の設定を示すために表面をあらわにし、大胆なテーマにもとづくバックライトによって強化される。

衣装担当のCollazuolはロシアの画家ワシリー・カンディンスキーを衣装のインスピレーションとして引用した。また、ストーリーやキャラクターを強調する明るい原色が使われた。それらは、アビガイッレが緋色の魔女のように見える彼女の最初の登場の際のように、息を呑むかもしれない。または、控えめな青/善良な男、赤人/悪者、マゼンタ/軍事構成のように・・。
それらはすべて一緒になり、セット、照明、衣装の思慮深く統合された融合として、華麗である。

しかしそれでは、静的なプレゼンテーションはなぜだろうか?時には歌手には全く指示が与えられていないように見えた。
(「bachtrack.com」)








≪出演者からみた演出家クーラ――ナブッコ役マルティン・バルタ氏インタビューより≫

Q、ホセ・クーラとのコラボレーションは?ほとんどの音楽愛好家が彼を著名なテノールとして知っているが、彼はここで演出家とステージデザイナーだ。

A、(バルタ氏)もちろん、彼は歌手、作曲家、指揮者であるだけでなく、あらゆる分野におけるアーティストだ。彼は音楽から舞台・劇場に関してまで、あらゆることができる。クーラは経験豊かな人で、あらゆる面で私たちをサポートすることができた。彼は私たちにとってロール・モデルであり、私たちにアドバイスを与えてくれた。

演出家として、彼は非常に良い。彼は個々にそれぞれのところに来て、私はそれが本当にスマートだと思う。
このことは彼への信頼を強め、私たちは彼に最高のものを与えることができると感じている。彼は私たちをすべて自然に連れていく。

アンサンブルは共通の目的に取り組んでおり、彼の提案やアイデアは論理的であるため、彼の考えを行動に移したいと考えている。ホセ・クーラは、まさにアーティストとして私たちを引っ張って行く。ミュージシャン、歌手、指揮者のいずれであろうと。

コラボレーションは素晴らしかった。私は言わなければならない――本当に残念だ、私のキャリアの中で初めて、リハーサルが終わったことが悲しかった、と。

(「radio.cz」)








≪演出家クーラが得てきた高い評価――オペラ情報サイトの記事より≫

――今週のアーティスト:ホセ・クーラ、プラハで「ナブッコ」をマークする

長年にわたり、ホセ・クーラは、 "オテロ=Otello"、 "タンホイザー=Tannhauser"、 "ピーター・グライムズ=Peter Grimes"、 "サムソンとデリラ=Samson et Dalila"のサムソンのタイトルロールのような役柄を歌う、彼の世代のドラマティックなテノールの1人として際立った存在だ。演技と一体となった彼の優れた歌唱能力は、いくつかの忘れられないパフォーマンスを作りあげた。

しかし、クーラは著名なパフォーマーになっただけでなく、 "オテロ"、 "道化師 / カヴァレリア・ルスティカーナ=Pagliacci / Cavalleria Rusticana"、 "ラ・ボエーム=La Rondine"、 "つばめ=La Rondine" "トゥーランドット=Turandot"など、レパートリーで最も愛されている作品のいくつかを手がけ、世界でトップのオペラ演出家にもなった。

今週、彼はプラハ国立歌劇場で初めての "ナブッコ"を演出し、彼の履歴書にもうひとつの作品を加える。
この何年もの間に、クーラの舞台芸術は、批評家に注目され称賛されてきた。彼らは、「クーラは、パフォーマンスを構成するさまざまな機能のすべてを独力でコントロールしている」、「クーラは演出家の技能を習得した」、また「統合された総合的な芸術作品を創作し手がけるアーティスト」と指摘した。
このような高い評価を得て、彼の今後のプロダクションが聴衆と批評家を喜ばせるのは間違いないことだろう。
 
そして、プラハに行けない人々のために、クーラはタリン・オペラで演出と指揮を行い(9月、エストニア)、サンフランシスコ・オペラで「Cavalleria Rusticana」と「Pagliacci」のプロダクションを復活させる。
また、夏の間、ヨーロッパを回ってコンサートツアーを続ける。

(「operawire.com」)






●初演の舞台を鑑賞した方がインスタに投稿したもの。
これによると、開幕前の舞台には、緞帳がない代わりに、薄い幕がかかっているようです。
そしてそこに、バビロニアの楔形文字の石板が投影されていたようですね。

Kultuuura ❤❤❤ #culture #opera #verdi #nabucco #giuseppeverdi #hudebnidivadlokarlin #statniopera #classicalmusic #kultura #klasickahudba #vaznahudba #nightlife #vecernizivot #nekdoparinekdosekukturnevzdelava

Johanka Odstrčilíkováさん(@johankaod)がシェアした投稿 - <time style=" font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2018-06-28T17:01:13+00:00">2018年 6月月28日午前10時01分PDT</time>












プラハのTVニュースで紹介されたナブッコのプロダクション。
主なシーンの様子、クーラのインタビューなどがあります。画像をクリックすると動画のページにリンクしています。





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クーラが初めて手がけたナブッコの演出。初期のヴェルディの作品、クーラも以前のインタビューで、このナブッコは難しい作品だと語っていました。
私がインタビューや記者会見などの報道を読んで理解したのは、今回、クーラは、台本を忠実に解釈し、あえて、大胆な読み替えや観客を驚かせる舞台演出などをおこなわず、ヴェルディが新たな挑戦を始めた人間ドラマに焦点をあて、それを浮き彫りにすることをめざしたのだということです。そのためセットや衣装は、特定の歴史や地域を示さず、抽象的で、ストーリーやドラマに直接的に介入したり説明するものではなく、色彩によって感性に訴えるという手段をとったのだと思います。これは、これまでのクーラのアプローチとは違った新しい挑戦でもあったのではないでしょうか。

独創的で想像力豊か、特別な美意識に貫かれている・・など、どのレビューも舞台の美しさについては高く評価していました。一方で、ドラマの迫力、インパクトなどについては、いくつかのレビューが弱点を指摘していたのも事実です。

クーラ自身は、セットのないコンサート形式であろうと、どのような演出、セットであっても、演技と歌唱の力で、キャラクターの存在感とドラマを描き出す圧倒的な力量をもつパフォーマーです。もしこのナブッコにも、クーラ自身が出演していたら、レビューの評価も大きく変わっていたのかもしれません。また演出家クーラは今回、脚本と音楽に内在するドラマを描くために、あえて「静的」で動きの少ない演出方法を選択し、歌手の歌と歌詞そのものをストレートに伝えたいと願ったとも考えられます。

これが好きか、嫌いか、説得力をもって成功したか、否かは、実際に生の舞台を見て、観客それぞれが感じとり、判断する以外にありません。

紹介したナブッコ役のバルタ氏が語っている中身はとても大事だと思いました。クーラはまさにアーティストとして、論理的な指示、アドバイス、リーダーシップによって、出演者、スタッフたちから信頼を得て、素晴らしいコラボレーションをつくり、リハーサルが終わるのが悲しいと思わせるほどの、芸術的に実り豊かな時間をともに作り出していました。

今回紹介したSNSの写真も、クーラを中心とした、出演者、プラハの劇場関係者、スタッフの団結、パートナーシップのつよさを示しています。劇場の出演者だけでなく、オケ、合唱、エキストラ、スタッフ、さらには舞台清掃の係の人にまで、クーラは目を配り、みんなで舞台を作りあげるリーダーシップを発揮していたことがうかがわれます。こういう人間関係、連帯関係をつくり、それぞれが力を発揮できる場をつくるというのは、クーラの多面的な能力のうちでも、抜群にユニークなものの1つではないでしょうか。これからもクーラがどんな挑戦をしていくのか、楽しみです。




*写真は劇場や関係者などのSNSよりお借りしました。
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(本番直前編)2018年 ホセ・クーラ、ヴェルディのナブッコをプラハで演出 / Jose Cura directs Verdi's Nabucco

2018-06-29 | 演出―プラハのナブッコ




ホセ・クーラの新プロダクション、ヴェルディのナブッコ。6月28日の初日に向けて、ドレスリハーサルの写真が劇場や出演者のフェイスブックにアップされました。ちょうど今、現地では、初演の舞台が始まっています。

26日のドレスリハーサルには、プラシド・ドミンゴの息子で、プロデューサーや映画監督などをされているアルヴァロ・ドミンゴ氏が訪れ、クーラらと交流したようです。トップの写真がその時のもので、劇場のFBからお借りしました。

今回のクーラのプロダクションは、抽象的なデザインのセット、画家のワシリー・カンディンスキーの絵と理論からインスピレーションを得て、色彩と心理の関係を重視した演出構想ということで、どんな舞台になるのかとても謎めいています。大変興味深いです。本当はプラハに行って生の舞台を見たいのですが、諸事情からそうもいかず・・最新の写真や発言などから、できるだけ手掛かりを得たいと思っています。そのため何度も同じような記事になっていますが、お許しください。

先日の記事で取り上げた記者会見の続報も掲載されましたので、合わせて紹介したいと思います。

→ これまでのプラハのナブッコの記事一覧はこちらへ





Musical preparation: Andreas Sebastian Weiser
Direction, set and light design: José Cura
Costumes and co-stage designer: Silvia Collazuol
Co-lighting designer: Pavel Dautovský
Chorus master: Adolf Melichar
Dramaturgy: Jitka Slavíková
The State Opera Chorus and Orchestra

Nabucco: Martin Bárta , Miguelangelo Cavalcanti
Abigaille: Anda-Louise Bogza , Kristina Kolar
Fenena: Veronika Hajnová , Ester Pavlů , Jana Sýkorová
Ismaele: Jaroslav Březina , Josef Moravec , Martin Šrejma
Zaccaria: Oleg Korotkov , Jiří Sulženko , Roman Vocel

≪公演予定≫
2018年――6月28、29日、7月1、3日、9月13、15日、10月30日、11月20日
2019年――3月4、18日、4月15日、5月14日、6月11、22、25、29日



≪リハーサルの画像より≫

●舞台全景と群衆

これまでのリハーサルの写真では、幾何学的な神殿の柱を思わせるメインのセットだけが映っていましたが、本番では、歴史的背景である紀元前のバビロニアで使われていた楔形文字の文様が照明で投影されるようです。

また主役たちの衣装のカラフルで強烈な色使いと対比的に、コーラス=群衆はシンプルでシックな色調に統一されています。
こうして舞台全体を見ると、とても美しいです。




●主役たち

主要なキャラクターには、それぞれの色が割り当てられ、それらによる心理的効果が期待されているようです。
黄金色(?)の衣装は、このオペラのタイトルロール、バビロニアの王ナブッコです。




赤と黒が、激しい気性と野心をもつドラマティックなアビガイッレ、ナブッコの長女であり、実は奴隷の子。
青い衣装の男女が、アビガイッレの妹で正妻の娘であるフェネーナと、ナブッコが征服をもくろむエルサレムの王の甥イズマエーレ。2人は愛し合っている。




●さまざまなシーン

赤い衣装の一群は兵士たちのようです。
幾何学的な形のセットが場面で回転し、照明がそれぞれのシーンに合わせて色彩を変えるとともに、時には人物の影を大きく投影するなどして効果を出しています。
劇場のアシスタントディレクターのパブロビッチさんのFB掲載の写真です。



楔形文字が彫り込まれた粘土板(?)が投影された壁の前で、もう1人のアビガイッレ役アンダ - ルイーズ・ボグザさんと、副ディレクターのシルヴィアさん。




≪記者会見の詳報記事より≫

――ホセ・クーラはプラハで、非常に心理的で、オリジナルに忠実なナブッコの新プロダクションを開く

プラハ、6月27日 - アルゼンチンのテノールであり演出家のホセ・クーラは、明日プラハでジュゼッペ・ヴェルディのナブッコの新バージョンを初演する。
クーラは、王ナブッコの養子になった娘、主人公のアビガイッレの心理ドラマを強調した。

「アビガイッレのドラマは、心理学的には劣等感に分類される。彼女は巨大なコンプレックスを抱く女性であり、なぜなら彼女は自分の血統について何かが納得できないと感じていたからだ。"私の母はどこ?" "なぜ私は父に似ていないの?"―― それは、彼女がその訳が書かれた手紙を発見するまでつづく」
クーラは説明する。

4つの部分からなる叙情的なドラマは、旧約聖書のバビロニアの王、紀元前586年にエルサレムを征服したネブカドネザルに触発されている。一方、その娘のフェネーナは、エルサレム王の甥イズマエーレと恋をして、姉のアビガエッレと対峙して奴隷のヘブライ人を解放しようとしている。

スペイン国籍を持つアルゼンチン・ロサリオ出身のアーティスト、クーラは、プラハ国立歌劇場から委託されたヴェルディのオペラのこの新プロダクションを作った。1年半の準備を経て、明日6月28日、国立歌劇場が補修工事中であることから、カーリン・ミュージック シアターで初演される。

クーラは、物語の主人公が「コンプレックスを攻撃性に変え、他者への虐待的行為に変え、常に一種の戦争状態にある」と指摘する。
ここでは、ルーマニアのAnda-Louise BogzaとクロアチアのKristina Kolarが、ソプラノにとって様々な役柄の中でも最も難しいと考えられているこの役を担う。
「彼女たち(アビガエッレ)の歌における挑戦は、音の強さ=デシベルのための戦いではなく、彼女の巨大な心理的外傷を伝達するための方法だ」とクーラは言う。

「アビガエッレは、スタイルの意味でのワルキューレではなく、それは常にコロラトゥーラだが、それはまた常に、ヴェルディの発展方向であるベルカントとメロドラマの始まりとの境界の上にある」と彼は付け加えた。
したがって、クーラは、アビガエッレは「悲鳴をあげる歌手」ではなく、音楽を通じて多くの異なるカラーを伝えなければならず、一般に言われてる「声が大きくて騒々しい」キャラクターとは反対であると語る。





クーラによると、「ナブッコはまだ若いヴェルディによって作られた"図像オペラ"であり、オテロのような、作曲家がますますシンフォニックな歌唱に近づいていった後のオペラと比べて、まだ多くのオーケストラの仕事がある」。
 
作品としては、55歳のアーティストであるクーラの意見によれば、「基本的に、メロドラマの歴史の中で、またヴェルディ自身にとって、もしナブッコが最も重要な作品ではないとしても、ナブッコが成功したという事実が、非常に危険な心理的な状態からヴェルディを抜け出させることとなった」。これ以前の作品の失敗と、妻と2人の子どもを失うという悲劇の後、このオペラの成功は彼のキャリアを継続するために彼を立ち上がらせた。

「ナブッコは、オテロとファウストと結びつけるメロドラマの発展のためのキックオフだった」とクーラは語る。

プラハのステージングでは、クーラは"台本を礼儀正しく尊重する"忠実さを選択した。
ステージングに関しては、クーラの協力者であるSilvia Collazuolがサブを務めた。それについてクーラは、人間の魂の色の影響に関するヴァシリ・カンディンスキーの理論に基づいて、「それは非常に純粋主義的で、線、光、色のみ」であると語る。抽象化の先駆者であるロシアの画家の影響は、「各キャラクターの心理学にもとづいて」幾何学的な形や色で示されている。

ヴェルディはまた、作品自体に社会的または政治的意味合いを求めてはいないが、1842年の初演は、イタリア国家の創設に関連したナショナリズムの成長という文脈の中で行われた。
「私は自分のプロダクションでは常にニュートラルでありたいと思う。聴衆自身がその結論を引き出すのであり、私は私の精神的妄想を満足させるために、劇的な手段や納税者の税金を使うつもりはない。それでは敬意を欠くからだ」とクーラは言う。

プラハでは、2019年6月までにこのナブッコの公演が17回予定されている。準備が整ったら、国立歌劇場で上演されることになる。

「lavanguardia.com」





≪リハーサルの様子を伝えるスペイン語のニュース映像≫

現在のところ、映像として舞台の様子を知ることができるのは、このニュース動画だけです。
短いですが、いくつかのシーン、記者会見でクーラが語る様子のカットも。

José Cura estrena en Praga un Nabucco muy psicológico y fiel al original


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リハーサルも順調にすすんだのでしょうか。リラックスした様子のクーラの写真も、共演者のFBに掲載されています。
今のところ中継や録画放送などの情報は入ってきていません。初日の成功を願うとともに、このプロダクションが何らかの形で映像化されることを願っています。









*写真は劇場や共演者のFBなどからお借りしました。
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(リハーサル編)2018年 ホセ・クーラ、ヴェルディのナブッコをプラハで演出 / Jose Cura directs Verdi's Nabucco

2018-06-27 | 演出―プラハのナブッコ




ホセ・クーラが演出・舞台デザイン、照明を担当したヴェルディのナブッコ。プラハで6月28日初演です。クーラは歌いません。

これまでに (告知編)(準備編)(会見編)を掲載してきました。
今回は、劇場のFBに掲載されたリハーサルの画像を中心に紹介したいと思います。

現在発表されている公演スケジュールは以下のようになっています。
プラハ国民劇場のサイトで詳細情報の確認、チケットの購入ができますので、プラハ旅行を予定されている方、興味のおありの方はぜひご検討ください。

2018年――6月28、29日、7月1、3日、9月13、15日、10月30日、11月20日
2019年――3月4、18日、4月15日、5月14日、6月11、22、25、29日





Musical preparation: Andreas Sebastian Weiser
Direction, set and light design: José Cura
Costumes and co-stage designer: Silvia Collazuol
Co-lighting designer: Pavel Dautovský
Chorus master: Adolf Melichar
Dramaturgy: Jitka Slavíková
The State Opera Chorus and Orchestra

Nabucco: Martin Bárta , Miguelangelo Cavalcanti
Abigaille: Anda-Louise Bogza , Kristina Kolar
Fenena: Veronika Hajnová , Ester Pavlů , Jana Sýkorová
Ismaele: Jaroslav Březina , Josef Moravec , Martin Šrejma
Zaccaria: Oleg Korotkov , Jiří Sulženko , Roman Vocel


舞台で演技をつけているクーラ。右側はバビロニアの王ナブッコ役のバリトン。
   

情熱的な赤い衣装は、ナブッコの長女、実は奴隷の子であるアビガイッレ役のソプラノ。クーラが相手役に演じているようだ。


右の青い衣装の女性は、ナブッコの娘フェネーナ。アビガイッレの妹として育てられるが、ナブッコはフェネーナに王位を譲るつもりでいる。敵対するエルサレムの人質となっている。


中央の青い衣装の男性はテノールのイズマエーレ。ナブッコが征服しようとしているエルサレム王の甥。フェネーナと愛し合っているが、アビガイッレからも思いを寄せられる。
1995年にクーラはパリでこのイズマエーレを歌っている。


合唱の場面か? いつもクーラは、演出の際、群衆の1人ひとりに人格、役割を明らかにしながら動きをつけている。


主役級4人がそろった場面。アビガイッレが倒れているので、アビガイッレが毒を飲み、息絶える最後のシーンか。
中央オレンジとベージュの衣装がナブッコ?




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前回の記事で、記者会見の内容を少し紹介しましたが、このナブッコのプロダクションでは、色彩、色が大きな意味と役割をもっているようです。

プロダクションの副ディレクターで衣装デザインを担当したSilvia Cullazuoさんによる以下のような説明が、会見の報道で紹介されていました。

「セットと衣装をデザインするとき、ワシリー・カンディンスキーの絵からインスピレーションを得た。彼の色彩の理論によれば、芸術と魂は互いに影響を与える。
カンディンスキーは、人間の魂は多くの弦を持つピアノであり、そのキーは色であり、ハンマーは観客の目である弦を打ち、アーティストは鍵を演奏する手であると主張している。したがってアーティストは、色を使ってメロディーを演奏し、芸術作品を見て聞いているすべての人びとの魂の中の弦に触れる。

そして私たちが引き出したコンセプトでは、ステージは空白のシートであり、回転舞台を使用することによって、幾何学的空間内を移動する。
理論的には、場面の転換、カーテンの昇降は必要ではない。私たちは継続した連続性を継承を持つことができた。その中でキャラクターは、衣装、とりわけその色彩を使って物語を語る。」
(「prague.tv」)





少し調べた範囲で恐縮ですが、ロシア出身の画家であるカンディンスキーは、抽象画の道を開いた美術史上での革新的な存在だそうで、色彩によって人間の内面に働きかけ、色彩によって精神的な内容を表現するということをめざしたのだそうです。
私はこれ以上の詳しいことは知りませんが、当然、クーラと副ディレクターとで一致してこうした舞台コンセプトを採用したのだと思います。これまでのクーラのプロダクションは、リアルで具体的な舞台装置が多かったように思いますが、今回は、ガラリと方向性を変えて、抽象的な舞台セット、クーラは照明も担当しているので、衣装と照明の色彩によって、キャラクターの心理を表現する舞台になるのでしょうか。

宗教的対立のテーマそのものにはポイントを置いていないということです。あえて時事問題にはからめず、元の脚本に忠実であることが、現代ではかえって新鮮でオリジナルだと考えたようです。
クーラはもともと現代社会の問題について関心が高く、批判的精神を常にもっている人ですが、オペラの演出に関しては、社会問題を直接的に演出コンセプトに取り込むというより、オペラの脚本と音楽が描きだそうとしている人間ドラマを、今日の社会に生きる私たちにとって価値ある形で表現する、という姿勢に立っているように思われます。

今回も、青年ヴェルディが新しい革命的挑戦として、音楽によって描き出そうとした人間ドラマとしてのナブッコ、その先に傑作オテロへと結実していったヴェルディの先駆的なドラマを、キャラクターの苦悩や葛藤、愛と憎しみ、群集の動きに重点をおいて、現代社会に通じるものとして豊かな感情で描こうとしているのでしょうか。どんな舞台になるのか興味深いです。






多忙な仕事の合間に、劇場関係者と一緒にリフレッシュしている様子がSNSにアップされていました。
音楽でも有名なモルダウ川のクルージングをしたようです。バックにプラハ城が見えるとクーラがコメントしていますが、プラハの街をモルダウ川から眺めるというのは、本当に美しいでしょうね。残念ながら寒い日だったようで、厚手の上着を着た上に毛布を被っている写真もありました。







最後に、クーラがイズマエーレを歌ったパリの舞台から、イズマエーレ、フェネーナ、アビガイッレの3人の愛憎激しいドラマティックなシーンを。
Jose Cura 1995 Nabucco " Fenena! ... O mia diletta! "



左クーラ、中央は副ディレクターでクーラと長い協力関係にあるシルヴィアさん、右はアビガイッレ役クリスティーナ・コラーさん。


舞台全景、場面転換で回転する。

*写真は劇場やクーラのFBなどからお借りしました。
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(会見編)2018年 ホセ・クーラ、ヴェルディのナブッコをプラハで演出 / Jose Cura directs Verdi's Nabucco

2018-06-25 | 演出―プラハのナブッコ




ホセ・クーラが演出、舞台デザイン、照明を担当しているヴェルディのオペラ、ナブッコ。6月28日からチェコのプラハで始まります。
初日1週間前の6月21日、クーラが出席して、この新プロジェクトについての記者会見が行われました。
なお、このプロダクションではクーラは歌いません。

会見に出席したのは、クーラと、指揮者のアンドレアス・セバスティアン・ワイザー、衣装と共同舞台デザインのSilvia Collazuol、ナブッコ役マルティン・バルタ、アビガイッレ役クリスティーナ・コラーや劇場関係者のようです。

発言全文は出ていませんが、いくつかの報道で、今回のプロダクションの特徴などについてふれられていましたので、紹介したいと思います。
写真は、劇場のFBよりお借りしました。

公演の概要などこれまでの記事は → (準備編)(告知編)をどうぞ。





Musical preparation: Andreas Sebastian Weiser
Direction, set and light design: José Cura
Costumes and co-stage designer: Silvia Collazuol
Co-lighting designer: Pavel Dautovský
Chorus master: Adolf Melichar
Dramaturgy: Jitka Slavíková
The State Opera Chorus and Orchestra

Nabucco: Martin Bárta , Miguelangelo Cavalcanti
Abigaille: Anda-Louise Bogza , Kristina Kolar
Fenena: Veronika Hajnová , Ester Pavlů , Jana Sýkorová
Ismaele: Jaroslav Březina , Josef Moravec , Martin Šrejma
Zaccaria: Oleg Korotkov , Jiří Sulženko , Roman Vocel






≪ホセ・クーラは、プラハでヴェルディの「ナブッコ」を元の台本に忠実に演出する≫


プラハ、6月21日
アルゼンチンのテノールであり作曲家のホセ・クーラは、プラハ国立オペラ座と、ヴェルディによる有名なオペラ・ナブッコの新プロダクションを演出する。6月28日にチェコの首都で初演される。それは元の台本に忠実であるだろう。

「様々な取り扱いが可能な、繊細な作品だ。ヒトラーと強制収容所のバージョンを作ることは"デジャヴ"だと思う。オペラをつくる最善の方法は、オリジナルのバージョンを作ることだ。それはあまり行われておらず、それが最もオリジナルだ」
クーラは記者会見で語った。

アルゼンチン・ロサリオ出身のクーラが設計する舞台と照明、イタリアのSilvia Collazuolがデザインした衣装によるこのナブッコは、国立歌劇場が2年間の改修工事中のため、カーリン・ミュージック・シアターで上演される。

「ナブッコはヴェルディの革命の始まりであり、人間的なドラマ(メロドラマ)の始まりであり、それはオテロで完璧につながった。ナブッコのおかげだ」
演出家クーラは言った。

「宗教的な問題を強調することなく、物語は色彩で語られている」と、プロダクションの副ディレクターであり、2006年からクーラのキュレーターを務めているSilvia Collazuolは語る。
Collazuolは、この舞台芸術を、人間の魂に対する色の影響に関するワシリー・カンディンスキーの理論に基づいていると説明した。

「opi97.org」







≪ナブッコは、未来の音楽を試してきた若い作曲家の作品≫

ナブッコが、ヴェルディのわずか3作目のオペラであることは注目に値する。

「このオペラは、音楽を実験して、未来を予期してきた若い作曲家の作品だ」

演出のクーラは語る。クーラは、歌だけでなく、指揮や作曲、演出、写真、そして若い才能を教育するなど、多くの芸術的分野で長年、活動してきた。

「ナブッコはヴェルディの新しいオペラスタイルの始まりだった。ドニゼッティ、ベッリーニ、ロッシーニの影響は依然として聞こえているが、ベル・カント時代の巨匠たちのアリアとアンサンブルは、劇的な緊張と降下に奉仕するものへ完全に退いた。ナブッコは、将来のヴェルディを予測できるもので、非常に重要だ。ナブッコの主要な重要性とは、オペラの旅の地図の一種であるということ。このオペラがなければ、ヴェルディはオテロを書くことができなかっただろう」

これはまた、ヴェルディにとって典型的で頻繁な、父と娘の関係、バリトンの主要な役割についての、ヴェルディの最初の描写でもある。

「classicpraha.cz」





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28日の初日はもう目前に迫っています。
この間、リハーサルの写真もアップされていますので、次回また紹介したいと思います。
今回は、フェイスブックにアップされたいくつかの画像のリンクを掲載します。


「アビガイッレの孤独」とクーラがコメントをつけてアップした写真。神殿を思わせる幾何学的なシンプルなセットです。背景を照らす照明を様々に変えることによって、登場人物の心理状況を示しているのでしょうか。会見で説明されたワシリー・カンディンスキーの理論にもとづいて「色」と「心理」の関係を探求しているのでしょうか。このあたり、クーラの解説が待たれます。



立ち上がったばかりのセット。



衣装を着けていたり着ていなかったり。ナブッコは王冠を被っているけど短パン姿、ザッカリアはブーツを履いているが下着姿・・などなど、まだ衣装もバラバラな様子を面白がってクーラがアップした写真です。



有名な合唱「行け、わが 想いよ、黄金の翼に乗って」の場面のリハ。



リハーサル室での初期の様子。



衣装のデザイン画を前にした打ち合わせのようです。



こちらはリハーサルの合間のひと時。出演者の方の自宅のホームパーティのようです。クーラが赤ちゃんを抱いていますが、どなたか出演者のお子さんでしょうか。
交流を深め、リラックスしながら、長いリハーサルと公演の期間をのりきっていくのでしょうね。



*写真はプラハ国民劇場のFBやクーラと出演者のSNSからお借りしました。
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(準備編)2018年 ホセ・クーラ、ヴェルディのナブッコをプラハで演出 / Jose Cura directs Verdi's Nabucco

2018-05-29 | 演出―プラハのナブッコ




この6月、チェコのプラハで、ホセ・クーラが演出・舞台デザインするヴェルディのオペラ、ナブッコが開幕します。
以前も、すでに始まっている準備の様子を(告知編)で紹介しました。

プラハ国立歌劇場は、2001年にはクーラとともにヴェルディのアイーダで来日したこともあります。それ以外にも来日は多く、日本にもなじみの深い劇場です。

*補足 
チェコのプラハには、たくさんの劇場がありますが、そのうちの主要な5つ――国民(国立)劇場(1883年)、国立歌劇場(1888年)、エステート劇場(1783年)、新劇場(1983年)、カーリン・ミュージック シアター(1881年)が、国民劇場の傘下におかれ、オペラ、バレエ、演劇などをそれぞれの劇場で上演しているようです。
すべての演目は、国民劇場(The National Theatre)のHPで紹介されています。

今回、クーラのナブッコが上演される劇場は、ヨーロッパでも最も古い歴史をもつ劇場のひとつで、その美しさでも有名なエステート劇場カーリン・ミュージック シアターです。

*会場についてはカーリン・ミュージック シアターが正しいようです。失礼しました。国立歌劇場が2年間の修復工事中のためとのことです。


5月16日に、劇場がFBに、あたらしい写真を投稿してくれました。本格的なリハーサルにむけたプレゼンテーションのようです。この写真を中心に紹介したいと思います。
今回の演出構想などについて、クーラはまだSNSには掲載していません。どのような舞台になるのでしょうか。







Information
Musical preparation: Andreas Sebastian Weiser
Stage director: José Cura
Sets: José Cura
Costumes: Silvia Collazuol
Chorus master: Adolf Melichar
Dramaturgy: Jitka Slavíková
The State Opera Chorus and Orchestra





日程は、来年2019年6月までの15公演が発表になっています。6、7月分のチケットはすでに販売されています。ネットで購入できます。
来年の7月までのロングラン、この時期にプラハ旅行をご予定の方には、鑑賞をご検討されるようお勧めしたいです。
→ プラハ国立歌劇場HP



キャスト、スタッフらに具体的な演出内容を説明しているのでしょうか。




ノートPCを使い、プロジェクターでスクリーンにデザイン画などを映し出しながら、舞台構想、衣装などを紹介しているようです。




これが基本的な舞台セットなのでしょうか。昨年5月にボンで舞台デザインを手がけたピーター・グライムズの写実的な舞台とは打って変わって、抽象的で、シンプルなセットのように見えます。




今回は、衣装デザインはクーラではなく、別のデザイナーが担当しています。ナブッコの娘アビガイッレ(ソプラノ)の衣装の1つのようです。
これだけでは、まだ時代設定がいつなのかなどもよくわかりませんね。




スタッフか出演者からの質問に答えているところでしょうか。クーラはとても楽しそうです。





こちらはナブッコのもう1人の娘フェネーナを歌う、メゾソプラノのエスター・パウルさんのインスタから。彼女は以前、プラハ交響楽団のクーラのマスタークラスに選抜され、修了者とクーラとのコンサートにも出演したチェコの若手歌手です。すでにスコアにもとづくリハーサルが始まっているようです。


Rehearsal in National Theatre Prague :-) #rehearsal#nabucco#verdi#fenena#josecura#opera#music#singeroninstagram#

Ester Pavlů-Opera Singerさん(@esterpavlu)がシェアした投稿 - <time style=" font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2018-05-25T09:03:51+00:00">2018年 5月月25日午前2時03分PDT</time>




5月18日にアルゼンチン在住のお母さんを亡くしたクーラ。しかし舞台の初日は待ってくれません。初日は約1か月後の6月28日です。ゆっくりと母との別れを惜しむ間もなく、故郷から遠く離れた外国での多忙な日々に戻らざるを得ないと思うと、舞台人の宿命とはいえ、胸が痛みます。

自分のプロダクションの作業が始まると、早朝から深夜まで劇場に詰めきりになるというハードワーカーのクーラ。今年は、このナブッコの後にも、9月にはプッチーニの西部の娘の演出・舞台デザイン・指揮という新プロダクションも控えています。

多面的な活動で、常にフルに活動を続けています。ぜひぜひ、健康には留意してほしいものです。そして新プロダクションの大きな成功を願っています。




*画像はプラハ国立歌劇場のHP、FBなどからお借りしました。
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(告知編)2018年 ホセ・クーラ、ヴェルディのナブッコをプラハで演出 / Jose Cura directs Verdi's Nabucco

2017-10-29 | 演出―プラハのナブッコ



ホセ・クーラは、来年2018年の6月に、チェコのプラハの国民劇場で、ヴェルディのナブッコを演出する予定です。
10月4、5日のプラハ交響楽団のコンサートを前にした9月末に、この演出のためのプレゼンテーションをおこなったようです。劇場のFBに写真が掲載されていました。
現在までの情報を紹介したいと思います。

なお、クーラは歌いません。演出、そしていつものように舞台デザインも兼ねます。
2018年6月28、29日、7月1、3日の予定。会場はカーリン・ミュージックシアター。





Nabucco / Giuseppe Verdi
Národní divadlo Praha(The National Theatre Opera)

June 2018 THURSDAY 28, FRIDAY 29
July 2018 SUNDAY 01 , TUESDAY 03
The Karlín Music Theatre

Conductor: Andreas Sebastian Weiser
Stage director: José Cura
Sets: José Cura
Costumes: Sylvia Collazuol
Chorus master: Adolf Melichar
Dramaturgy: Jitka Slavíková

 

   





●クーラから、プラハのナブッコへの招待

こちらは劇場がアップした、クーラによるナブッコ演出についての動画です。英語で語っています。
オファーを受けた当初は、ナブッコという若いヴェルディのオペラ、そして大変に有名なこのオペラの難しさ、危険性を懸念したといいます。そしてチェコの国民劇場のスタッフ、専門家の協力を得て、ドラマ構成上の課題を克服したということなども語っているようです。
ぜひプラハへと、クーラからのお誘いです。

José Cura - Nabucco / José Cura about Nabucco




●2017年9月

劇場スタッフを前に、演出構想をプレゼンテーションするクーラ。劇場FBより
5、7月に演じたピーター・グライムズの余波で、長髪のまま、その髪を束ね、髭もじゃの姿は、クーラファンのあいだでも話題になりました(笑)









●2017年3月

こちらはその半年ほど前になりますが、2017年3月9日、ちょうどナブッコ初演(1842年3月9日)から175年にあたる日に開かれた、クーラと国民劇場スタッフとの打ち合わせの様子。
劇場のFBに掲載されました。









このプラハ訪問の時も、3月初めにプラハ交響楽団とのコンサートがありました。実はこの当時、2月28日までモンテカルロ歌劇場で、初のワーグナー挑戦タンホイザーのパリ版仏語上演という大きなプロダクションがあり、また直後のプラハ響コンサートではクーラの作曲作品の世界初演があり、そしてこのナブッコ演出の準備をこなすという、たいへんなハードワークの時期だったようです。



●クーラとナブッコ

残念ながら、このプラハのプロダクションでは、クーラは演出と舞台デザインだけで、指揮や出演はありません。
なので、これまでのクーラが出演したナブッコの動画をいくつか紹介しておきます。


こちらは、昨年夏のコンサートで、クーラがナブッコの合唱曲「行け、我が想いよ、金色の翼に乗って」を指揮している動画。

José Cura - Va Pensiero - Dubrovnik Summer Festival 2016



クーラ自身がナブッコのオペラに出演したのは、この1995年パリでの公演だけではないかと思います。
まだ若いこの時のクーラの出演は、大きな反響をよんだようです。
クーラのイズマエーレと、その恋人であり、ナブッコと奴隷との間に生まれた娘アビガイッレ、ナブッコの正妻の娘フェネーナとの重唱を。

Jose Cura 1995 Nabucco " Fenena! ... O mia diletta! "





こちらは全編
Giuseppe Verdi: Nabucco



今後また、クーラによるナブッコの作品解釈などがFBに掲載されるのを楽しみに待ちたいと思います。
イタリアの独立運動と深く結びついて語られてきたこのオペラ。「行け、我が想いよ」はイタリアの第2国歌ともいわれるそうです。クーラにとってもイタリアは、祖母の故郷でもあり、1991年に祖国アルゼンチンから移住した先がイタリアのヴェローナ近郊の町だったそうです。そこから移民排斥にあい、フランスに移り住み、その後はスペインに住んでいます。祖国や民族の問題は、今日の世界では、非常に複雑な課題と困難な状況を生み出しています。もちろんオペラであり、芸術作品としてではありますが、社会的課題に関心の高いクーラがどのような演出をするのか。どういうメッセージを込めるのか。プラハで鑑賞するチャンスがあればと切に思います。


The Karlín Music Theatre, at which the National Theatre will be performing some of its opera and ballet productions during the time of the reconstruction of the State Opera building, is one of the oldest and most beautiful theatres in Prague.









*写真は劇場のHP,FBなどからお借りしました。

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